幻想郷の悪魔さん   作:りっく

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正邪の行方

 

 

 冥界から帰ってきた霊夢と魔理沙は2日ほど幻想郷中を捜索し、正邪の賞金を藍に頼んでつりあげ、捕まえようとしたが、ことごとくが失敗に終わってしまった。

 

「全然捕まらないな」

 

 魔理沙はしとしとと降る雨を眺めながら言った。博麗神社は少し雨漏りがするので2人は魔理沙の家にいる。

 

「正邪の目撃情報すらないし……まだ探してないところはどこかしら」

 

 一向に成果の出ない正邪探しに流石の霊夢も疲れたのか、テーブルに突っ伏していた。

 

「命蓮寺と人里、魔法の森、紅魔館周辺は私が探したぜ」

 

「私は守矢神社と永遠亭。残るのは地底ぐらいかしら」

 

 地底。はぐれ者たちが集まり、暮らしている、元々地獄であった場所だ。一応地霊殿の覚妖怪が管理者となっているが、実際は無法地帯である。

 

「あそこに行くのはちょっと面倒じゃない?」

 

「でも正邪なら地底行きの条件はぴったりじゃないか? ていうかまず地底に探しに行くべきだろ」

 

「でも私、あいつあんまり好きじゃないんだよね。心読んできてちくちく嫌味言ってくるし」

 

「実際会ってさとりが好きな奴はなかなかいないだろうな……でもそんなこと言ってる場合じゃねえだろ」

 

「嫌だ。それならあんただけで行けば? 私はもう少し腰を据えて探すから」

 

 けんもほろろに霊夢は突き放した。

 

「じゃあ私だけで行ってくるぜ」

 

 魔理沙は立ち上がると、脱いでいた帽子を被り、箒にまたがった。

 

「私は神社に帰ってるから」

 

「おう、わかった」

 

 魔理沙は地底へ通じる穴のある、妖怪の山へと向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「なるほど、そういうわけでここへ来たのですか」

 

 魔理沙の目の前には地底に蔓延る怨霊を管理する地霊殿の主、古明地さとりがいた。その後ろにはさとりのペット、火焔猫燐が控えている。

 

「ああ、話が早くて助かるぜ。霊夢は嫌がったけどな」

 

「わざわざ2人で来るのは非効率的ですし、心を読まれるというのはやはり不快なものなのでしょう」

 

 さとりはそんなことには慣れっこだとでも言うようにため息をついた。

 

「ま、解説する手間が省けるから良いんだけど」

 

「魔理沙さんは後ろ暗いことを何もしていないからでしょう。今、“後ろ暗い”という単語を聞いてあなたが思い浮かべたことはありませんでしたし」

 

「私は、清廉潔白だからな」

 

 無論さとりの“心を読む程度の能力”でも本人の罪悪感が無ければ悪事を暴くことはできないのだが。

 

「分かりました、鬼人正邪が地底に来たか、土蜘蛛と橋姫の2人に話を聞いてみましょう。……というか私を通さずとも、直接聞けばよかったのでは?」

 

「両方どっか行ってたぜ。今日は祭りか?」

 

「あ、そういえばそんなことをお空が言っていた気がします。話を聞きに行くのならついでにこいしも連れて行ってください。祭りの雰囲気が好きらしいので」

 

「意思疎通できるのか?」

 

「ええ、無意識と言っても感情が無いわけではありませんし、ちょっとした頼みごとなどは理解してくれます」

 

「そうか」

 

 魔理沙はさとりの第三の目を見て、ふと思った。

 

「心が見えないようにするのは目を閉じる以外にあるのか?」

 

「あるにはありますけど……永遠亭で処方される薬を飲めば1日だけ心が全く読めなくなります。が、副作用が強烈で、効果が切れた後に激しい頭痛と吐き気、幻覚や幻聴、判断力の低下などがあって、正直普通に過ごす方が楽ですね」

 

 すでに試しているのだろう、それを語るさとりの顔にはうんざりだと書いてある。

 

「私はいろいろ仕事とか焼き肉……いえホームパーティの準備がありますので」

 

 さとりはそう言うと、そそくさと部屋を出て行った。そして、肩を誰かが叩いたような気がして魔理沙が振り返ると、古明地こいしが立っていた。さとりの第三の目とは違い、その目は頑なに閉ざされたままである。

 

「お祭りに連れて行ってくれるんでしょう?魔理沙」

 

「あ、ああ」

 

 正直面食らったが、他人の無意識に溶け込んで姿が認識できないという予備知識はあるので、すぐに落ち着きを取り戻した。

 

「どこへ行く? 焼き鳥屋か?」

 

「お空が気絶しちゃうよ。わた菓子食べたい」

 

 普通に会話ができているようだが、さとりによるとこれは半分眠ったような状態であるらしい。思えば魔理沙は“意識のある”こいしとは一度も喋ったことがない。もしも目が再び開くことがあったらこの無意識のみで構成された人格は消え去るのだろうか。

 

 魔理沙は古明地姉妹の間にはある種の空洞があるような気がして、うすら寒さを覚えた。

 

 

 

 

 地底の旧都はいつも騒がしいが、今日は一段と喧騒が大きい。魔理沙が周りを見回すと、ちらほら屋台や出店が見えた。

 

「やあ、魔理沙じゃないか。久しく顔を合わせてなかったね」

 

 声をかけてきたのは一本角が生え、特大の杯を持った鬼だった。

 

「おお、ちょっと用事で来たんだが……なんで祭りなんかやってるんだ?」

 

「気晴らしだよ。いつも酒飲んで適当に騒ぐだけじゃあ皆腐っちまうからな。一度派手にイベントをやって節目を作ってるんだ」

 

 勇儀はそこまで言って、魔理沙の後ろにいるこいしに気がついたようだった。

 

「ん、そこにいるのはこいしか。一緒に遊びに来たのか?」

 

「私は違うけど、さとりに頼まれてついでに連れてきた」

 

「へえ。あいつが連れてきたらいいのにな。ずっと地霊殿に引きこもるつもりかね、妹の方がアクティブじゃないか」

 

「はは……ところで、ヤマメかパルスィはここにいないか?」

 

「ああ、確かさっきまでこの辺で呑んでたはずだけどな」

 

「そうか。ちょっとこいし任せていいか?」

 

「そういえば用事って言ってたな。分かった」

 

 勇儀とこいしと別れ、辺りを探すと、すぐにヤマメとパルスィは見つかった。

 

「え? 正邪? 来てたけど」

 

 訊くとヤマメはあっけらかんと言った。

 

「本当か!? いつ来たんだ?」

 

「3日前かしら」

 

 つまり正邪は薬を盗んで1日地上に留まってから地底へやってきたことになる。その空白の間に誰かに薬を飲ませていなければ良いのだが……

 

「とりあえずあいつを捕まえればいいか。ヤマメ、あいつが地底のどこにいる分かるか?」

 

「さあ……というか正邪はもう地底にはいないよ。昨日地上へ戻ってたし」

 

 パルスィは答える。

 魔理沙は舌打ちしたくなった。丁度入れ違いとなっていたのだ。正邪は転々と居場所を変えて逃げ回っている。

 

「分かった。と言うか今度あいつが入ってきたら捕縛して知らせてくれ。地底でもあいつを受け入れるのは危険だぜ」

 

「………まあいいわ」

 

 答えを確認すると、魔理沙は地底を出て博麗神社へと向かった。

 

「霊夢、正邪は地底に潜ってからまた地上にー……ん?」

 

 霊夢はいなかった。代わりに、“人里で死体が見つかったから、そこに行ってる”という書き置きがあった。

 

「なんだって……?」

 

 遂に第二の犠牲者が出たのだろうか。これが正邪ではなく薬を飲まされた誰かの仕業なのだとしたら……

 

 魔理沙はとてつもなく嫌な予感がして、身震いした。

 

 

 

 

 

 




ちょっと飛ばしすぎな気がしますが、一旦正邪を置いて、第一の犯人探しが始まります。正直忙しすぎてこれだけ書くのに時間が相当掛かりました。もしも続けて読んで下さるのなら気長に待ってほしいです。
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