少しマヌケをしました。
泣き虫な蓮子と菫子のお話です。少し毛色の違う感じにしました。
カップ……リング?
ナイスカップリングしか浮かばないよ(スパロボ脳)
サードニクスコメント
珍しく三人称。少し長いかも?
七月十三日ーーうだるような暑さを伴う夏のその日に、宇佐美 蓮子とマエリベリー・ハーンの2人は、墓地に来ていた。
2人は『秘封倶楽部』という大学のサークル(約2名)のメンバーである。サークルの活動内容は、この世の神秘を暴き、見つけること。
普段はこんな場所で楽しく、文字通りの馬鹿騒ぎに巻き込まれたりする2人だが、今は日中。夜中の活動が基本の秘封倶楽部の活動とは、また違った用事だった。
「日本の夏は暑いわ……」
「そうね……参っちゃうわ。でも、もうすぐよメリー」
メリーとは、マエリベリーの略称である。その名を呼んだ張本人である蓮子は、腕に花束を抱えていた。
すみれの花ーー蓮子の抱える紫のすみれの花言葉は、『貞節』や『愛』など。
その花は蓮子が自身で、祖母の名前に合わせて選んだものだ。
七月十三日ーー夏のこの日は、蓮子の祖母である宇佐美 菫子の命日である。
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「それで、蓮子のおばあさんってどんな人だったの?」
「なんていうか……不思議な人だったな。この帽子も、秘封倶楽部って名前も、私自身の名前も、全部おばあちゃんがくれたものなんだ」
「えっ、そうだったの!? 以外……」
「帽子は昔誰かにあげたらしいから、私にくれたのは若い頃に被ってたのによく似たものだって言ってたけどね」
そんな他愛もないことを喋りながら歩いていると、いつの間にか墓の前まで来ていたようで、暑さにうんざりとしていたメリーと蓮子は、墓参りを手早く、そしてせめて信心深く済ませようと口少なくなる。
結局、墓参りの最中には殆ど喋らなかった2人だが、合掌の済んだ直後、ふと、メリーがとある疑問を口にする。
「……でも、蓮子の言う不思議な人って、どれほど不思議なのかしら? 私、気になるわね」
「その言い草、また本の影響でも受けた? でもそうね……具体的に言うなら、超能力が使えそうなぐらい、かな?」
「…蓮子、なんだか楽しそう。よっぽど好きだったのね、おばあさんのこと」
「そうかな? 私には実感ないんだけど」
「だってほら、頬を触ってみて」
「頬を?………ああ」
蓮子が頬を触ると、湿った感触がした。涙の感触だ。
どうやら、メリーに祖母のことを話している間、気づかないうちに涙が出てしまっていたらしい。
「…やだ、ごめんね」
「ううん。蓮子ったら泣き虫ね」
(蓮子ったら……泣き虫ねえ)
「……………」
「どうしたの?」
「ううん、なんでもない」
「そう? あ、そうそう。ついに境界の綻びを見つけたんだけど……」
「本当!? さっそく今夜にでも行きましょう!」
一瞬祖母とメリーの顔がだぶる蓮子だったが、メリーの切り出した話題にすぐにいつもの調子を取り戻すと、さっきまでの暑さも忘れて、すぐに瞳を輝かせる。
その顔は、まだ少女のままだった。
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「ここが……」
「そう、境界が綻んでるわ……」
『境界を見定める能力』。それこそがメリーの持つ異能である。
この能力を使い、彼女はたびたび夢の中を経由して、謎の世界から人工衛星まで、さまざまな場所に迷い込んできた。
当然、蓮子はそれを羨むのだが、メリーがついに、現実の世界でも『異なる世界』へと行けそうな場所を見つけたのだ。場所は、古びた神社の境内。
現実の世界でこんな事ができるのも、メリーの能力が進化している故であろう。
「私には見えないけど……そこにあるのね」
「ええ。いつでも開く事ができる」
メリーの手が伸ばす先には、境界のほ・こ・ろ・び・がある。蓮子には見えないが、メリーには認識可能なそれが、彼女の指先、そのすぐ先にある。
「……よし、頼むわ、メリー」
「ええ、任せて蓮子」
メリーが瞳を閉じ、念じる。すると、蓮子とメリーは奇妙な浮遊感に襲われる。
「これは……!?」
「いつも夢の中で感じるような浮遊感……でもちょっと違う……」
気がつくと、2人は奇妙な空間に迷い込んでいた。その空間には上も下もなく、誰かに見られているような視線を全方位から感じる。その感覚に困惑した一瞬後、蓮子は、自分がメリーからだんだん離れていってしまっていることに気がつく。
「メリー!?」
「蓮子!!」
遠ざかるメリーに向けて、必死に手を伸ばす蓮子。しかしその手指はメリーの手のひらをかすめて掴めず、蓮子はなにか見えない力で引っ張られていく。
「なっ……!」
「あっ……!」
呼吸が漏れたその一瞬で、既にお互いの身体は遠く離れてしまっていた。
蓮子が声を出して、手を更に伸ばそうとしたその時ーー
その視界は、暗転した。
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「ぐう、う、う……ん」
「…………っ、は! ここは何処!?」
蓮子が次に目を覚ました時、周囲にはメリーも、あの謎の空間も無く、ただその視界には森が広がっていた。
木々の間から日が差している。今は昼間のようだが、蓮子は自身を囲む空気に、不気味なものを感じた。まるで、出・る・と噂の廃病院に行った時のような不気味さだ。
「ともかく、ここが何処か調べないと……星は見えな……ん?」
蓮子の能力は『星と月を見れば時間と場所がわかる能力』とでも言えばいいのか。ともかく星と月さえ見れば、日本限定ではあるが何処かは把握できる。
そう思い立ち上がった蓮子は、いつもの様に白いリボンが巻かれた黒い中折れ帽を抑えようとするが、頭部へと伸ばした手が感じたのは、自身の髪の感触だった。
「あれ? 帽子……ない?」
蓮子はあたりを見渡すが、何処にも帽子は落ちていない。普段ならば帽子を無くしてもまずは自分の身を優先する蓮子だが、祖母の墓参りに行ったばかりなせいか、この時は帽子を探すのを優先してしまった。
「どこに……」
すると、森の茂みの奥、自分が被っていた帽子と似た帽子が見えた。誰かが被っているのだろう、帽子は遠ざかっていく。
「あ……待って!」
茂みを掻き分けると、森の中とは異なる、整備された道へと出た。キョロキョロと蓮子があたりを見渡してみると、道の先に、蓮子と同じぐらいの背丈だろうか? 少女がいた。それが被っているのが、蓮子の被っていたものとよく似た帽子だ。
「あっ……!」
蓮子は走ると、歩く少女を追い抜いて前に出る。突然のことに少女は驚いているようだが、息を切らす蓮子にその顔は見えない。
(今度から、ジョキングでもしよう……)
「あ、あのー? 誰ですか? 何用ですか?」
少女の声に反応して、ばっと蓮子は顔を上げる。少女は少し後ずさるが、蓮子は逃さないようその肩を掴む。こうして顔を近づけてみると、蓮子と少女はよく似ていた。
「ぼ……帽子返して!」
「だ……誰!?」
その後、小一時間のゴタゴタが、近所の騒ぎを聞きつけてきた白髪の男性が来るまで続いた。
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「……それで、君は幻想郷の外から来て……菫子の被っている帽子を自分のものと勘違いしたと?」
「はい、そうです……ごめんね」
「いや、いいですけど……」
2人の騒ぎを聞いて来たのは、森近霖之助という男だった。帽子の少女ーー菫子の知り合いらしい彼は、混乱する蓮子と菫子を宥め、自身の店であるという香霖堂まで連れて来ていた。
そこで蓮子は霖之助から様々な話を聞いた。この世界の名前が幻想郷ということ、自分が外界から迷い込んで来た身であるということ、菫子も自身と同じ存在であること……。
はじめのうちは流石に申し訳なさそうにしていた蓮子だったが、霖之助の話を聞くうちにだんだんとこの幻想郷について興味を惹かれたのか、すぐに目を輝かせていく。
「……っと、外から迷い込んだのなら、霊夢に連絡しておかないと」
「霊夢? 」
「さっき話した博麗の巫女のことさ。取り敢えず、少し待っていてくれ。連絡をとるから」
「霖之助さん、行くの?」
「ああ、店番とその子の相手、頼んだよ」
店の奥から茶を持って出てきた菫子と入れ替わりに、霖之助が香霖堂を出て行く。件の博麗の巫女に話をつけてくるようだ。
菫子は蓮子を見て、そっと茶を出す。それを受け取り飲む蓮子は、どこか懐かしい味と感じた。
「…あのー、菫子…さん、でしたっけ?」
「…何ですか、えーと、蓮子……さん」
微妙な距離感の2人。無理もない、先ほど菫子は蓮子に詰め寄られたばかりなのだ。お互い、とても気まずい空気が流れる。
ーーと、そんな空気を嫌がったのか、蓮子が話題を切り出す。
「……菫子」
「え?」
「菫子って、いうんだ?」
「そう……だけど」
「菫子ってさ、私のおばあちゃんの名前なの」
「そうなの?」
「うん。無くした帽子……その帽子に似てるんだけど、おばあちゃんからもらったものでさ」
「……………………」
「だから、そのー……あー、なんか、ごめんね?」
蓮子が押し黙る。再びの沈黙だが、今度はすぐに破られる。……蓮子ではなく、菫子の手によって。
スポッ
「……へ?」
「…私ので変わりになるかわからないけど、帽子、あげるよ。私は別に、そんな大事じゃないし」
「でも……」
「あーもう、目の前で泣かれたら気まずいに決まってるでしょ!」
「へ…………」
蓮子が目元を擦ると、感じる涙。いつの間にか、また泣いてしまっていたようだ。
「全く、あんた泣き虫ねえ……」
「あ……………」
(蓮子ったら、泣き虫ねえ……)
「……なに笑ってるの?」
「ううん、なんでも、ない」
菫子の言葉に、蓮子はクスリと笑う。涙を流したまま。
結局蓮子が泣き止んだのは、霖之助が戻ってくる、その直前だった。
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「それじゃあ、よろしくお願いします……」
「まあ、任せときなさい」
博麗神社、境内ーーそこで蓮子は、博麗の巫女に、帰還のための道を作ってもらっていた。
スキマを開くだのなんだのと言っていたが、蓮子には詳しいことはわからない。時間がかかるということなので、それまでに蓮子は、付き添ってきた霖之助と菫子に礼を言うことにした。
「本当に、ありがとうございました」
「いや、外来人が幻想郷に居続けるのは危険だからね。菫子みたいに特殊な方法で幻想郷に来ているならともかく……」
「特殊な方法?」
「ああ、夢の中からーー」
蓮子が霖之助から聞いた、菫子か幻想郷にくる時のプロセスは、蓮子にとって非常に興味深いものだった。
夢の中から、異界に赴くーーそれはまるで、メリーが普段やっているようなことだからだ。
「あの……」
「道、開けたわよー。ほら、さっさと入る」
もう少し詳しく話を聞こうとしたが、その前にタイムリミットが来てしまったようだ。改めて蓮子は霖之助と菫子に一礼すると、博麗の巫女が開けたスキマの前に立つ。
そのまま一歩を踏み出そうとした瞬間、蓮子はぱっと菫子に振り返ると、彼女からもらった帽子を掲げ、にっと笑って一言。
「あ、そうだ。帽子、ありがと」
そう言うと、蓮子はスキマの中に飛び込んでいった。
「……もう少し、あれこれ聞きたかったな……外来人は貴重なんだが」
「全く、霖之助さんはいつもそれですね……」
菫子は霖之助の言葉に呆れたような顔をするが、ふと、蓮子が消えた後を見て、ポツリと呟く。
「清らかな心、か……」
「ん? どうしたんだい?」
「清らかな心。蓮の花言葉ですよ。……いつか子供が出来るなら、そんな子がいいなーって。ま、子供ができたら自分が名付ける! って父さんも母さんも言ってるんですけどねー」
「?? いきなりなにを……」
「なんでもないですよ! それより、外から興味深そうな物をもってきて……携帯型扇風機っていうんですけど……」
「ちょっと見せてくれ」
今日も、幻想郷は変わらないーーしかし、そこに生きる外来人は、少し変化したのかもしれない。
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「……子、蓮子! 蓮子、起きて!」
「う、うう〜ん? ……はっ、メリー! ここは!?」
「神社の境内よ。さっき蓮子が現れて……ごめんね、私のせいで」
「メリーのせいじゃないわよ。でも、疲れた……今日の活動は終わりね。もう夜遅いわ」
古ぼけた神社の境内から、メリーと肩を並べて帰る蓮子。疲れた様子の彼女を心配そうに見つめるメリーだったが、蓮子のある変化に気づく。
「あ、蓮子! 帽子、変わってない? よく似てるけど……」
「ん、ちょっとね」
「…………」
「どうしたの?」
「蓮子、なんだか楽しそう…それに、嬉しそうね?」
「……そうねー」
「ね、なにがあったの?」
「それはー……」
「それは?」
「まだ知らない話、かな?」
今も世界は回っている。誰もかれもが、自分の名前の意味も知らずに。
だけどーーそれは、不思議な奇跡によって名付けられたものかもしれないのだ。
菫の花言葉は、『愛』
その愛は、きっとーー清らかな心を持つ子を、育むだろう。
天地優介さんコメント
もっと執筆スピード上げたいですね。
サードニクスコメント
後書き前書きはありませんでした。
・・・・・・って書きましたが私のミス。どうやら後から送るつもりだったようです。で、届きました。上記です。
・・・・・・恋愛限定とは言ってないし?家族の愛的なのですね。ちょっと泣きかけました。素晴らしい!花言葉を絡めるのは本当に面白い!
1話が一歩踏み出せない話で2、3話は出会いで4話は家族の愛・・・もう恋仲ってのはまだないんですねぇ。
あ、そうそう。今日例大祭行きました!!死ぬほど楽しかったです!