彼等は総じて化け物(モンスター)である   作:千点数

11 / 63
 夜空を見上げたら、星が降っていた。
 キラキラと赤く光り輝く、幾筋もの光の尾を見て、私は両手を合わせてお願い事をした。

 もし、出来るなら、化け物がいない、平和な世界に戻って欲しい。
 平和な世界になってほしいーーーーーーと。



本編/西暦/プロローグのような余興
1:龍星


 星が降る。

 

 その流星は見事な放物線を描き、私達に襲いかかっていた化け物・・・・・・バーテックスを吹き飛ばすだけでは飽きたらず、周囲に存在する全てのものも纏めて消し飛ばした。

 

 「来いよ、化け物共」

 

 万を超える数のバーテックスを相手に、威風堂々とした様子で言い放ったその姿は勇者ではなく、まるで、『魔王』、若しくは・・・・・・全てを破壊する、化け物のそれだった。

 

 *

 異世界転移、という言葉をご存知だろうか?

 別世界になんらかの理由で拉致られる、というアレである。

 

 ・・・・・・それを、今正に経験した奴がここに一人。

 はい。俺、草薙竜介は、今しがたその転移とやらを体験した。それも、ライトノベルで引っ張りだこな、『神様が~』のそれである。

 神様に無理矢理別世界に連れて来られ、力を押し付けられ、転移させられた。

 

 ・・・・・・そう。『させられた』のだ。

 神様の勝手なご都合で呼び出されたのだ。

 

 神様が、『何か人間滅びそうだから力貸して。あ、ちゃんと戦えるようにお前の記憶の中にある戦いに使えそうな力をお前にくれてやるから。ま、頑張れ!(意訳)』と、俺にバーっと言ってまだ理解がまだ進んでない俺を別世界に拉致ったのだ。マジでふざけるな。

 神は殺す!異論反論は認めない!!

 

 ・・・・・・まあ、神に対する殺意は置いといて、ここ何処よ。

 

 転移させられた俺の目に映るのは、最早、終末世界と言って差し支えないボロボロの街だった。

 道路のアスファルトはめくり上がり、ビルや家はボロボロ、蔦が無数に絡み付いている。

 

 「人類史マジで終わりかけてヤベーやつじゃねぇか」

 

 神の言った事は、誇張でもなんでもなく、マジでヤバい終末のお知らせだった、って訳か。

 うわぁ、詰んでんなぁ・・・・・・。どうするのこれ。

 というかまず、俺どんな力を持っているのかも把握してねぇのに・・・・・・。

 

 しかも化け物もいるし・・・・・・ってんん!?

 

 化け物ぉ!?

 

 見れば、真っ白い餅に口をはっつけた感じのきしょい化け物が、俺に向かってウヨウヨと集まってきていた。

 そして、何体か俺に襲い掛かってくる。それを避けつつ、この状況をどうするか考える。

 ・・・・・・ええ、本当にどうすんのこれぇ。

 

 とりあえず。

 

 「に、逃げるだぁー!」

 

 俺は回れ右して一目散に駆け出した。

 逃げるが勝ち。三十六計なんたらかんたら。

 さあ、リアル鬼(化け物)ごっこ、開始ってかオイ。

 

 *

 

 [十分後]

 

 詰んだ。

 四方を化け物の群れで囲まれて、今にも絶対絶命。

 というか、積むの早くねぇ!?もうちょっと頑張れよ俺!?

 

 化け物は、俺に向かって口をあんぐりと開けて迫ってくる。

 ・・・・・・流石に、食い殺されるのは嫌だなぁ。

 

 「く、『来るんじゃねぇええええええええええ』!」

 

 俺が苦し紛れに放った砲声。

 だが、この、親から拡声器とも称されたこの砲声が、この状況を変えた。

 

 化け物が一斉に止まり、逆にジリジリと後退し出した。

 まるで、何かに恐怖して、生存本能が働いたかのように。

 

 どういう事だ?と、考えていたら、俺自身から放たれる圧倒的なプレッシャーを感じた。

 

 「え、何これ。俺、特性:プレッシャーでも持ってんの?」

 

 自分から放たれるものに困惑し、驚いていると、一匹の化け物が俺に向かって急接近してきた。

 突然の突撃に、ヤバい。と思ったが、次の瞬間。

 

 ザクンッ・・・・・・!!

 

 『無造作に俺の目の前に持ってきた左腕』から出現した『煌々と光り輝く緑色の鍵爪』が、『化け物の体を真っ二つに引き裂いた』。

 

 「ファッ!?」

 

 イキナリの出来事に、更に驚いた。

 煌々と緑色のオーラを発しながら光り輝く鍵爪を見る。

 その鍵爪は、半透明に透き通っていて、六角形の鱗のような紋様が浮かんでおり、まるで爬虫類のような印象を受けた。

 

 「これが『戦うための力』って奴か・・・・・・?」

 

 神の言っていた『戦う為の力』。恐らくこれがそうなのだろう。

 ・・・・・・ならば、今目の前にいる化け物を蹴散らすくらい出来るだろう。

 

 よろしい。ならば戦争だ(テノヒラクルー)。

 

 意識すると、右腕にも同じものが出せた。

 そのまま、化け物の群れに突貫する。

 

 化け物を引き裂き、えぐり、時に潰して、蹂躙した。

 そういえば、心なしか身体能力も上がっているようにも感じる。

 

 「ックク・・・・・・ハハハッ・・・・・・さあ、もっとだ!もっと抗え!」

 

 何かイケナイ扉を開いた気がするが、気にせず化け物を切り刻み続ける。

 最早化け物は後退し始め、逃げる奴らもいる。

 だが。

 

 無意識の内に、俺の口から放った咆哮。

 それが、龍の姿を形取り、逃げる敵に向かって突撃した。

 

 着弾した瞬間に、チュドーンッ!という音を立てて、ボロボロな街の一角が丸っと消し飛んだ。

 そして、今、俺が口から龍の形の咆哮を放った時に、うっすらと浮かんだイメージ。

 それは、あるゲームに出てくる、技の名前と、タイプと、その効果。

 

 「なるほどね・・・・・・」

 

 それで、大体察した。

 確かに、これなら化け物を蹂躙出来る。余裕だわ。

 

 「ポケモンの、それもドラゴンタイプの技か・・・・・そして、さっきの事から特性:プレッシャーかいかくのどっちかもプラス・・・・・・身体能力も化け物レベル・・・・・・チートじゃねぇかオイ」

 

 それにしても、先ほどの技、『りゅうのいかり』はそんなに威力が高い訳でもないんだが・・・・・・まさか街の一角が消えるとは。

 物理技でどうにかした方が良いなこれ。

 

 「はてさて、何の力を持っているのか判明した所で、続きと行こうか!」

 

 テンションアゲアゲ、中二なスピリット全開で、俺は尻込みする化け物共にそう言い放った。

 

 *

 

 「あー、疲れた」

 

 化け物を倒す為に、『りゅうのまい』からの『ドラゴンクロー』でめっちゃ暴れまくった結果、ボロボロだったのが更にボロボロになってしまって、最早瓦礫と化した街。

 その一角で、ボロボロのビルの屋上に寝転んで、スッカリ真っ暗になった空を見上げる。

 

 文明の光がないからか、やけに空の星が明るく見えた。

 

 *

 

 目が覚めると、目の前に真っ白いグミに口だけをはっつけた化け物の顔があった。

 もう触れるか触れないか、という距離だ。

 

 「オ、オハヨーゴザイマス」

 

 いかん。同様し過ぎて思わず片言になってしまった。

 はぁ、朝から口をあんぐりと開けた化け物の顔を見ることになると・・・・・・

 

 ・・・・・・というか化け物ぉぉおおおおおおおおおおおお!?

 挨拶してる場合じゃねぇ!?

 

 「『りゅうのいかり』いいいいいいい!」

 

 目の前の化け物を龍の形をしたエネルギーがぶっ飛ばし、そのまま天に上っていった。

 

 「はぁ・・・・・・はぁ・・・・・・あ、朝からまるかじりされるところだった!」

 

 思わず戦慄してしまった。

 寝起きドッキリってレベルじゃねーぞ!

 はぁ、朝から無駄に疲れた。死ぬかと思ったぜ畜生。

 

 それにしても、一体どうして俺は姿が丸見えなビルの屋上で寝ようと思ったのだろうか。

 頭が狂ってたのか?普通化け物がいるこの世界で、姿丸だしの状態で寝る馬鹿がいるだろうか(自分です)?

 

 さっさと起き上がり、周囲を見れば・・・・・・化け物パラダイスとは正にこのこと。先ほどの『りゅうのいかり』の音を聞き付けてやって来たのか、周囲を全て化け物で囲まれていた。

 真っ白いグミに口だけをはっつけた感じの奴だけでなく、何か流線型の奴、真っ黒い盾みたいな奴、トゲトゲが付いた奴、天を突くほどのでかさの山みたいな奴と、種類、大きさ様々なより取り見取りバーゲンセール。

 今ならお得なパックセット一人様一個までってかオイ。

 

 「八方塞がりってか畜生・・・・・・」

 

 状況だけを見れば、確実にピンチだ。

 こちらは一人、それに対してあちらはもう数えるのも面倒臭い。

 

 正直絶対絶命なこの状況で、俺は気がつけばニヤリと笑っていた。

 

 「さあ、来いよ化け物共。まるかじりしようとした八つ当たりも含めてタップリとお世話してやる」

 

 この世界に来てから多少テンションがおかしくなる時があるな。俺の内に眠る中二(リアル)心が疼いたのか?

 

 *

 

 使える技は、『りゅうのまい』、そして『ドラゴンクロー』、『ドラゴンテール』等の物理技と、あとは雑魚い特殊技のみという縛りで化け物を蹂躙する。

 正直、特殊技の、威力が八十を超えるような技をぶっ放そうとは思わない。というか思いたくない。

 『りゅうのいかり』でボロボロな街の一角が丸っと消し飛んだ。

 ならば、『りゅうのはどう』、ましてや『ときのほうこう』、『コアパニッシャー』などを使った日にはどうなるか想像がつかない。

 ましてや時の咆哮(誤字に非ず)なんかをぶっ放そうものならこの世界の時間を歪めて日が一時間くらい長くなってもおかしくない。

 だから、よっぽどの事がないかぎり使わない事にした。別に使わなくても、今俺が相手をしている化け物くらいは倒せるし。

 

 「おら、よっと。ほぉーらぁー、どんどん行くぞオラァ!」

 

 ケンカキックで化け物を纏めてぶっ飛ばす。だが、派手に吹き飛んだだけであまりダメージを受けたようには見えなかった。

 やっぱり、威力が低くても技を使わないと、例え『りゅうのまい』をガンガン積んだ状態でも、普通のパンチやキックじゃあ化け物は倒せない。

 そのことを感じつつ、『ドラゴンテール』で後ろから近寄ってきた化け物を纏めてなぎ払う。

 

 それにしても、昨日の夕方から思いはじめた事だが、技のPPはどうなっているのだろうか。

 いくら使っても、全く使えなくなる気配がない。

 ・・・・・・薄々思っていたが、もしかしてPP無限だったりするのだろうか。

 

 もう何十回目かわからない『りゅうのまい』を積みながらそう考える。

 積み技にしてもそうだ。

 全然強化の上限が見えない。使えば使う程強化される。

 ・・・・・・まあ、そのかわり技を使っている数秒の間無防備になるという弱点もあるが。

 

 だが、別に良い。PP無限とか、積み技の強化上限が底無しとかそういうのは別にあって困るものじゃあない。というか、こちとら技のバリエーションが以外と少ないドラゴンタイプの技しか使えないのだ(他のタイプの技を使おうとしたが、やはり無理だった)。

 だから、このくらいのチートはあっても良いと思う。

 

 そんな感じで思考に意識を幾らか割いていたら、気がつけばぶっ飛ばされていた。

 ビルにおもいっきりたたき付けられて、肺の空気が強制的に排出される。

 

 「うお・・・・・・!?・・・・・・ガァッ!?」

 

 崩れ落ちながら視線を前に向けると、そこには悠然と佇む天秤のような形の化け物がいた。どうやら、あの先っぽに付いている重りのようなものに吹き飛ばされたらしい。

 

 そして、自分が攻撃が強いが、耐久性が紙な事に驚いた。

 

 「ああ、畜生が。どうやら俺のステータスは火力に一点特化な感じらしいな」

 

 ポケモンで表現するならば、攻撃と特攻が馬鹿みたいに高い。が、素早さは、今は『りゅうのまい』で上がっているが、強化する前はそこまでだったし、防御は今吹っ飛ばされた時のダメージからさほど期待出来ない事が解った。特防も恐らく防御と同じ。

 体力なんて、昨日から戦ってて解ったが転移して力貰う前とほぼ同じときた。

 

 砲台かよ俺は。若しくは燃費が悪いけれど火力が頭打ちな馬鹿力戦艦。

 

 つまり、だ。俺が化け物と戦うには、攻撃を食らわないように、超遠距離から特殊技をぶつけるか、『りゅうのまい』で攻撃と素早さを上げて物理技によるヒット&アウェーを繰り返すしかない。

 うん、これ、下手に敵の攻撃とかを防御したら死ぬな。

 

 初めての死の気配に、ブルリと震え・・・・・・なかった。

 落ち着いていた。

 ・・・・・・力を貰った影響だろうか?かなり死に対する恐怖感が減っている。

 生物としてどうかと思うが、今はかなり好都合。死の恐怖に震えて戦えなくなるよりかは遥かにマシだ。

 

 「やってくれるじゃねぇの天秤野郎。・・・・・・さあ、来いよ」

 

 第二ラウンド開始ってな。

 特性なのだろうプレッシャー、若しくはいかくのようなものを周囲に発しつつ、俺はいつの間にか数が増えた天秤野郎を睨みつけた。

 

 *

 

 『りゅうのまい』で上がった素早さを活用し、九体に増えた天秤野郎の回転攻撃を避ける。

 回転の中心が弱そうなのだが、近寄ろうとすると他の化け物に邪魔をされる。

 ・・・・・・高速回転しまくって周囲の空間にかまいたちが発生してんな。ありゃむやみに近づけば体が一瞬でミキサーにかけられたみたいに木っ端微塵にされて人肉ジュースになっちまう。

 今も、回転に巻き込まれた木っ端が、塵になっていった。

 あの凶悪な回転をどうにかしなくては。

 

 そう思いつつ、遠くから『りゅうのいかり』を発動するが、弾かれて消えた。

 マズイ。あいつら防御が硬い。というか、回転で受け流される感じで弾かれた?

 

 ・・・・・・まあ、それもそうか。

 俺が馬鹿の一つ覚えのように積んでいる『りゅうのまい』は、攻撃と素早さを上げる変化技だ。

 つまり、特攻は上がらない。

 そして、俺が先ほど使った『りゅうのいかり』は特殊技。つまり、特攻の高さがダメージを左右する技だ。いくら火力がエグイとは言え、そんなろくすっぽ積み技を積んでもいない元の威力もくそ雑魚ナメクジの特殊技で力押しを計ったところで、弾かれるのは当然と言える。

 

 だからと言って考え無しに物理技で突っ込めば、確実に体がミキサーにかけられてしまうし、俺があの化け物をやらないと、いずれ回転に巻き込まれて死ぬ。紙防御で紙耐久の俺だ。あの回転に巻き込まれた瞬間に詰むだろう。

 だが、倒そうにも生半可な技では最早音速を超えてソニックブームを起こしているあの回転で弾かれる。

 ならばどうするか。

 

 特攻なんて関係ないくらいの技の威力と効果で押し切れば良い。

 ここはゲームの世界ではなく、現実だ。ならば、あの技であれば、いくら積んで強化してない特攻から放たれたとしても、余裕であれらを切り裂けるだろう。

 

 効果から鑑みて、少々被害そのほかを考えると恐ろしくて使えない技だが、そんな事を言っていられない。

 やらないと俺が死ぬ。ならば、やるしかない。

 

 まだ回転に巻き込まれておらず、まだ無事な方のビルの屋上に立つ。

 ここからならば、天秤野郎共全部が良く見える。

 そして、体を半身に反らし、右腕を引いて、左腕を前に出す。

 そして、ぐっと気合いを込めれば、次の瞬間、右肩と右肘から先の方に、紫色のエネルギーが渦を描きながら溜まっていく。

 天秤野郎共が、俺がエネルギーを溜めている事に気がついて、俺に向かって回転しながら迫ってくる。

 壮観だな。超巨大な台風が九つ。

 そんな災害が今俺の目の前にあり、俺を飲み込まんとする。

 

 だが、もう遅いぜ。天秤野郎共。

 

 俺の右腕に集中するエネルギーは一際大きくなり、紫の極光が一瞬辺り周辺を包んだかと思えば、次の瞬間ーーーーーー

 

 「・・・・・・『あくうせつだん』ッッッ!」

 

 緩やかなカーブを描く紫色の刃が、俺の眼前の全てを切り刻んだ。

 ・・・・・・勿論それは、高速回転していた天秤野郎共も例外じゃない。

 

 気がつけば、俺の立っているボロボロのビル以外の建造物は無惨に切り刻まれて、周囲は瓦礫だらけの更地になっていた。




 前作を見ている方は、お久しぶりです。
 今作が初めての方は、はじめまして。

 たけゆうと申します。

 前作の番外編として載せていたものですが、その番外編がものすごく長くなって、番外編という規模ではなくなってしまったので、このように、大幅にリメイクをして、一つの作品として載せました。

 次の話も、また、読んでいただけると幸いです。

追記ーー加筆、修正しました。
2019/10/28

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。