彼等は総じて化け物(モンスター)である   作:千点数

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 唐突なる格闘タイプ!


5:聖なる剣

 [近頃巫女全員が見たという神託について/大社のレポートより一部を抜粋]

 

 それは、全てを破壊する龍星群を降らせる龍。

 海を全て蒸発させる煉獄と青い炎の化身。

 聖なる剣の担い手。

 そして、凍える世界の支配者。

 

 外界より来たる戦士達はこの世界に破滅をもたらすか。

 若しくはーーーーーー人類の希望となるのだろうか。

 

 *

 

 「ここどこ・・・・・・?」

 

 気がつけば、終末じみた世界に俺はいた。

 風が吹き抜ける度に、ビルや割れたアスファルトから伸びる雑草がサラサラと揺れる。

 

 部屋でゲームをしていた筈が、気がつけばこんな場所にいた。

 

 いや、マジでここどこだよ。

 

 はぁ、とため息を吐く。

 考えてもしょうがない。頬を引っ張っても、これが現実だと言わんばかりに痛みを訴えるのだ。

 

 どうやら俺は、異世界転移という小説ではありがちな展開を体験してしまったようである。

 

 *

 

 暫くボーッとしていたら、頭の中で変な声が鳴り響き出した。

 何?『この世界の人間を救え』?意味わからん。というかこれやめろ。頭がキンキンする・・・・・・!

 偏頭痛みたいな感じでガンガンと痛む頭を押さえながら変な声を聞いていたら、不意にガツンと殴られるような衝撃と共に頭の中にイロイロと記憶のようなものが入ってきた。

 

 「っう・・・・・・!がぁあああああああああああ!?」

 

 思わず悲鳴のような声を上げる。

 記憶のようなものが無理矢理頭の中に詰め込まれるような感覚と、その後から体の中身をいじくられるような感覚が襲ってきて、最早死んだ方がマシだと思えるような痛みが体中に走る。

 

 余りの痛さに気絶しそうになるが、出来ないくらいのギリギリを保っているようで、気絶して痛みをカットすることも出来ずに、地獄のような時間が過ぎた。

 

 「う・・・・・・あ・・・・・・いっててて・・・・・・大体この世界の情報は察したけどさぁ・・・・・・もうちょいやり方にも工夫とかあんだろ・・・・・・」

 

 脳みそに無理矢理突っ込まれたのは、この世界についてと、ここでやって欲しい事、そして、それをやり遂げる為の力についてと、『もう元の世界に自身が戻れない事』の四つ。

 体が改造された感じがしたのは、力とやらが使えるように体を作り替えられたのだろうと解釈し、今の状況と情報をすり合わせる。

 

 ・・・・・・うん、オーケー。今の俺に死角はない。この世界について、概要は十二分に理解した。

 元の世界に帰れないのは・・・・・・ちょっと残念だな。最後の晩餐くらいはしておきたかった。

 

 まあ、後はこの世界を実際に肌で感じるしか・・・・・・ってうおっ!?

 

 「オイオイ、あれが件の人類滅びそうな原因ってか?」

 

 俺に向かって高速で飛んできた何かを避ければ、それは流線型の体をした化け物だった。

 見た目は無機質だが、間接があるから辛うじて生物に見える。

 原理はわからないが、浮遊しているのが解る。

 

 「なかなかデカいな~。あと、なんかワラワラと違う化け物が寄ってたかって来てるのはちょっとした絶望だよなぁ」

 

 ふと周りを見てみれば、三桁は余裕で超える数の化け物が俺の周囲を取り囲んでいた。

 大小様々な大きさの、沢山の種類の化け物がいる。超お得な化け物のバーゲンセールだな。誰が行くんだそんなの。漏れなく死ぬじゃねぇか。俺なら絶対そんなバーゲンセールいかねぇ。

 軽く絶望だなこれ。

 

 だが、ちょうど良いのでは、とも思う自分がいる。

 ちょうど、今が、俺が手に入れた力を試すところだろう。

 使い方なんかもさっきなだれ込んできた記憶から大体解る。この力ならば、眼前の化け物を殴り飛ばす事も可能だろう。後は、俺の覚悟と気合い、つまり心の問題だ。

 

 怖い、恐ろしい。いざ戦うとなれば、ちょっと尻込みもする。だが、

 

 「やってやろうじゃねぇの」

 

 こういう、戦闘狂な自分もいて、別の意味で怖いとも思う。

 ・・・・・・やはり、我が家特有の血の気の多い性格を俺が濃く受け継いでいるからだろうか。

 

 *

 

 「オラァ!」

 

 ドガァアアアアアアン!

 

 拳を振り下ろしただけとは思えないような轟音が鳴り響く。

 その衝撃波で、周囲にいた化け物は吹き飛ばされ、マトモに受けた奴は細切れになった。

 

 なるほど、格闘タイプ、かなり強いな。

 

 俺の体に宿った力は、ポケットモンスターの格闘タイプの体と技全て、PP無限に攻撃一点特化のステータス、そして特性:ビーストブースト、だそうだ。

 うん、チートだわ本当に。まず、化け物を倒せば倒すほど、俺の一番高い能力・・・・・・俺の場合攻撃がグングン上がる。

 ビーストブーストの効果は、相手を倒した時、自身の一番高い能力が一段階上がる、というもの。そして、俺は攻撃一点特化な為に倒せば倒すほど攻撃がグングン上がる。相手に当たった時必ず自身の攻撃を一段階上げる技である『グロウパンチ』と合わせれば・・・・・・ヤバいな。

 

 ただ、弱点もある。

 余りにも攻撃に尖り過ぎて、他の能力がまずまずなのだ。

 流れ込んだ記憶から鑑みるに、特攻なんて、気休め程度にしか無いのだ。

 故に、『はどうだん』や『きあいだま』の威力もそこそこしか出ない。下手すれば一番の雑魚と思われる真っ白い奴も倒せない。

 

 防御や特防、HPなんかの耐久性能もそこそこで、正直心許ない。素早さも、他より拳一個分くらいマシな程度で、無いのと変わらない。

 全く、ピーキー過ぎるステータスだ。

 

 そんな愚痴をこぼしつつ、『ビルドアップ』で攻撃と防御を上げて突貫する。

 化け物を『グロウパンチ』で潰し、その度に特性との相乗効果で馬鹿みたいに上がる攻撃力を実感しつつ、化け物を更に潰していく。

 ・・・・・・掠っただけでも化け物が消し飛んで行くんだが。もう自分が人間じゃあないと言われても驚かないね。

 

 化け物を倒して行けば、不意に少し離れたところに、他の化け物とは一味違う感じの化け物が見えた。

 巨大で、デカい蠍のような形をしている。

 

 あちらはこちらに気がついているようで、俺が近付けば俺に向かってしっぽを突き出してきた。

 それを咄嗟に避ける。おおう、透明な尻尾の中に毒々しい液体が見える。

 多分毒だなありゃあ。見せかけの可能性もあるが。

 

 あの針、痛そうだなと思いつつ、蠍の化け物に近付く。

 時折飛んで来る雑魚共を拳圧でぶっ飛ばし、歩みを進める。

 

 拳を少し引き、構える。

 俺の拳は白く輝くと、まばゆい光を放ちながら光輝く。そして、光が収まるとそこには、青白いオーラで形成された両刃の大剣が握られていた。

 俺はそれを、

 

 「『せいなるつるぎ』。さて、堪えきれるかな?蠍の化け物君」

 

 蠍の頭と思わしい部分におもいっきり振り下ろした。

 

 *

 

 「面白い奴がいるな」

 

 その存在は、人間の形をしていながら、とても人間とは思えないような雰囲気を纏っていた。

 

 「おい、行くぞフツヌシ。少し・・・・・・楽しめそうな奴がいる」

 

 その存在は、手に握った刀にそう語りかけながら、自身の目に映る・・・・・・

 

 ・・・・・・青白いオーラを纏った両刃の大剣で、『蠍座』を真っ二つにした、見た目麗しい少女のような外見の少年を見て、ニヤリ、と、好戦的に笑った。

 手に持つ刀も、ひとりでにかちゃかちゃと鍔を鳴らす。まるで喜んでいるかのように。

 

 「武神として、戦う日が楽しみだ」




 男の娘系な格闘タイプ君。

 どしどし感想下さい(泣)。

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