彼等は総じて化け物(モンスター)である   作:千点数

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 剣の人ですよ。


7:太陽と拳闘と

 [岡山県南部/瀬戸大橋の近く/年月不明/多分明朝]

 

 「やぁっと・・・・・・つぅいたぁぁぁぁ~」

 

 疲労がマッハで溜まっているが、それは隅に置いて、今はこの喜びを噛み締めよう。

 着いたのだ。瀬戸大橋に。後はこれを渡れば、目指す四国だ。

 

 何故俺が四国を目指しているか。

 それは、とある夜の事。

 四国とその周辺の島に、明かりが付いているのが見えたのだ。

 いやぁ、それを見つけた時は、思わず狂喜乱舞したね。

 

 もしかしたら、極限状態に陥った俺が錯覚を見ただけなのかも知れないが、目指す価値はあるだろう。

 行かずに後悔するよりも、行って後悔する方がマシだ。

 

 「・・・・・・うし、行くか。・・・・・・四国に!」

 

 俺は一歩踏み込んだ。

 

 *

 

 「何!それは本当か?」

 『はい。私達は無事ですよ。強力な助っ人のお陰で』

 

 昨日の夕方、急に入ってきた通信の内容を思い出す。

 それは、通信が一ヶ月近く途絶していた諏訪からの、無事の一報だった。

 

 あの時は思わずポロッと涙がこぼれてしまった。

 だが、強力な助っ人とは、一体誰の事なのだろうか。

 

 ・・・・・・その考えは、今日の朝出された作戦で吹き飛んだ。

 

 「瀬戸内沿岸で戦っている存在がいる!?」

 

 一ヶ月と少し前から、本州の岡山県南部の沿岸で不自然な土煙が上がっているという報告が何件もあり、もしかしたら、という事らしい。

 勇者か誰かはわからないが、発見次第、助けて四国に。

 また、瀬戸内海で新型の進化型バーテックスが生み出されているらしいので、それの偵察もかねてとの事だった。

 

 ・・・・・・なるほど。やけに最近、バーテックスの襲撃があるにはあるが数が少な過ぎると思ったが・・・・・・。そういう事か。

 

 開始は今日の昼。

 ・・・・・・もう少し耐えてくれ。名も知らない戦士よ。

 

 *

 

 [岡山県南部/瀬戸大橋/年月不明/多分お昼]

 

 太陽があった。

 巨大な太陽が、海の上で悠然と佇んでいた。

 

 俺を何時も襲ってくる化け物が次々と融合していき、その太陽を形作る。

 なるほど。つまり化け物は合体してパワーアップするのか。

 

 ・・・・・・そして、その化け物達の近くには少女の姿・・・・・・って少女ぉ!?

 

 俺は橋げたの上から目を見張り、端の方に寄って太陽の化け物の方を見やる。

 攻撃一点特化な俺だが、視力は転移する前よりも馬鹿みたいに上がっている為に良く見えた。確かに、太陽の化け物の側に少女が数人いて、化け物から逃げようとするが周囲を化け物に囲まれ、太陽の化け物に炎の塊を投げつけられてピンチっぽい。

 

 ・・・・・・さて、俺は正義の味方でもないが、そんなに薄情でもない。というか、薄情になるには甘すぎてなることが出来ない。

 

 そんな俺がピンチっぽい少女達を目の前にしてボーッとしている訳がない。

 

 気がつけば疲労が溜まりまくって瀕死の死にぞこないの癖して太陽の化け物にジャンプして突撃、体操選手もビックリな大跳躍をして太陽の化け物に一撃『きあいパンチ』をぶち込んで、なんか炎の塊から逃げるのが遅れたらしい、白い装束を着た、ボウガン持ってる少女の前に立ち、『せいなるつるぎ』を発動して無造作にそれを振った。

 

 青いオーラで形成された半透明の刃が空を切り、高い(高すぎる)攻撃のお陰かその一振りで衝撃波が発生して炎の塊を全てかき消した。

 

 「よぉ、お嬢さん。目をつぶるのは良いが、せめて目の前の敵と攻撃を全てぶっ飛ばしてからにしようぜ?」

 

 あきれた感じの口調になってしまった・・・・・・。

 まあ、今はどうでも良い。後でフォローしとこう。

 目の前にいる太陽をどう落とすかが問題だ。

 

 ・・・・・・うん、もうあれだ。数秒あれこれ考えたけれど何も良いものが思い浮かばないからいつも通り(脳筋戦法)で行こう。大抵物理で殴ればどうにかなる。

 雑魚な化け物倒しまくって攻撃ガン上げして太陽殴れば倒せるでしょ。テキトーだけど。

 

 なんか俺を見て不安そうな目で見てくるさっき炎の塊から助けた少女に自信出来るように、安心させる為に笑って見せてから、太陽の化け物に向き直る。

 まあ、俺のような脳みそまで筋肉なばかやろうに見える奴が信用ならんのは解るが、不安そうな瞳を向けるのはやめて。俺にその仔犬のような目は効く。

 

 ・・・・・・なんか背後から目の前の太陽よりも熱い視線がぶつかってくるけど、まあ、気にしないでおこう。

 

 「さあ、ショータイムだ」

 

 『グロウパンチ』を発動させて、俺は太陽の化け物と、その取り巻きに向かって考え無しに、いつも通り突貫した。


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