オリジナル要素が多々含まれますのでご注意あれ。
11/25 赤奈ちゃんの格好を変更。勇者服無かったの思い出したんで。ジャージにしました。
[東海道線跡/年月不明]
ボクはひたすら、ただひたすら歩いていた。ボク以外の人間と会う為に。
・・・・・・街中で拾ったとても大きなバックパックにいろんな
マズイ。マズイけれど、これを食っていかないと、生きていけなかった。この世界に来た日、化け物に会って、倒して、食らって、吐いて。
死にそうな目に何回も遭った。
だが、こうしてボロボロになりながらも生きている。
「今いるのは・・・・・・と」
この世界に来て、もうかれこれ半年が過ぎようとしている。
この世界には、人間が見つけられず、ただ化け物が跋扈している世界で、この半年化け物に襲われない日はなかった。
まあ、その分食料には困らなかったんだけれどね(マズイケド)。
ただひたすらに、西へ、西へと歩いていく。時々看板も確認して、自分がどこにいるのかの把握も忘れない。
そして、日がてっぺんからだんだん落ちはじめた頃。
「・・・・・・これはあれかい?俗に言う『家出少女』ってやつかい?だとすると随分と勇気があるね・・・・・・」
化け物を『かげうち』でぶっ飛ばしながら、足元に倒れている少女を見てボクは言う。
その少女は、小麦色の肌が目立つ、赤い髪の、ちょっとスタイルが良い感じの
体中傷だらけの埃だらけですすけているが、一目見て美少女だという言葉が出る程かわいい少女だ。
「取り合えず、今日の野宿先に連れていくかな・・・・・・」
流石に、意識がない少女を寒空と化け物がウヨウヨしている空の下に放置するほど鬼畜じゃない。
俵担ぎをして、少女をお持ち帰り(直球)した。
*
[同日/夜/物陰の焚火の傍]
「・・・・・・これ、飲むかい?」
「うん、ありがとー・・・・・・」
近場の水辺で汲んだ水を、拾ったマッチとそこらへんの可燃物で作った焚火で沸騰させて、タンブラーに注いで隣にいる女の子に手渡す。
女の子はそれを受けとると、ふーふーと冷まして一杯、また一杯と、少しずつ飲んでいく。
起きてからなんか傷を負った野生の獣並に警戒されたけど、どうにかこうにかボクが白だと説明して、やっっっと警戒が解けて、今に至る。
「さて、何故あんな場所にいたんだい?ボクのような、化け物をムシャりながら生きる馬鹿でも無いのなら、よっぽどの事情が無いとこんな東海道線の跡地にいないだろう」
「え、ここ東海道線だったの初めて知った」
「・・・・・・まさか本当に家出少女だったりするのかい」
疲弊しきった顔で、彼女はここがどこかを聞いた瞬間、溜め息を吐いた。
「まあ、ちょっとした事情があってね、追い出されたんだよ」
そして唐突に始まる少女の自分語り。
「唐突だね。良いよ、聞こうじゃないか。続きを話してくれ」
「オーケー、じゃ、続き行くよー・・・・・・」
簡単に言えば、七十年ちょっと前、人類は天の神々に勝利に近い形で引き分け、しばらくの平和を手に入れたらしい。
そして、それを成した張本人が・・・・・・勇者と呼ばれる少女と、その勇者よりも強大な力を持った少年達。
その人達は、戦いが終わった跡に消息不明になってそのあとどうなったかは解らないらしい。
まあ、それは置いといて。
実は少女は、現代における四国の勇者なんだそうだ。
・・・・・・で、何故勇者がこんな場所でボロボロになっているのか。ここは、四国からだいぶ離れた場所のはず。
「実はねー、半年くらい前に、急に四国の人間が全員、天の神を信仰し出したんだよ」
「へぇ?」
理由は解らないが、彼女以外の四国の人間全員が七十年昔に人類を滅亡の危機に陥れた天の神を信仰し出したらしい。
・・・・・・そして、四国を守る神樹と呼ばれる神々の集合体の力が急速に弱まっていき、逆に天の神々の力が上がっていったようだ。
神の力とは、即ち信仰。そうなっても仕方ないだろう。
「私は、まあ追い出されたというより、殺されそうになって脱出したってのが正しいんだよね。だって、四国の勇者は神樹の力で変身して戦うんだから。それで、殺されそうになったところを命がけで逃げてきたって訳」
逃げる事が出来たのは、一重に少女に味方する神のおかげだという。
「私が逃げられたのは、その神様が私に力を貸してくれてるから」
彼女は悲しそうな顔で、話を続ける。
「諏訪にこの前行ったんだ。・・・・・・そこにいるみんなも同じ感じで・・・・・・私に、襲い掛かってきた」
そんな事になっている原因は、ただ一つ。
・・・・・・天の神が、洗脳した。信仰によって、戦力を、力を手に入れ、人間を再び滅びの道へと誘う為に。
俺の目の前で俯く彼女は、勇者だったというよりも、『神懸かり』によって、彼女に味方する神の分霊を取り付かせているから、その洗脳に耐えられた。
結果がこれだ。この、彼女に、味方と呼べる存在がいない、人類が滅びに向かっていく世界。
「一つ聞こう」
「なんだい?」
気がつけば、声が出ていた。
「クソッタレな天の神をぶっ飛ばす気概はあるかい?」
「できる事なら、ねー。でも、手を貸してくれる人がいないし・・・・・・」
「なら、ボクが手をかそうじゃないか」
ハッとして、彼女がボクの方を見る。
ボクは、ニヤリと笑いながら、目の前の少女に向けて言い放った。
「ボクが、君の味方になろう。何があっても、どうなろうと、絶対に君の味方でありつづけよう。簡単に言えば・・・・・・天の神をぶっ飛ばす手伝いをする、という訳だ」
「でも、君は勇者でも、ましてや特別な力がある訳でもないのにどうやって・・・・・・」
「力なら、最低限あるよ?」
『シャドークロー』を発生させて、自慢げに見せる。
少女は目を丸くして驚いているようだ。
「・・・・・・良いよー。じゃあ、今日から二人っきりのレジスタンスだね。私の名前は赤嶺友奈。君は?」
「ボクの名前は影山
*
これは、歴史では語られない物語。
何もかもが記録にない虚構の、幻影のような、たった一ヶ月の、小さな、小さな神殺しの物語。
その物語は、たった今、始まった。
実は、赤奈ちゃん結構好きなキャラだったりします。