[北海道/とある道の脇、建物の廃墟の近く/十月末]
軽トラの側で、子供達がはしゃいでいるのを見る。
町外れのにあった道の駅の廃墟。そこで
毎日、化け物・・・・・・バーテックスに怯える日々。
『百戦錬磨の
・・・・・・本当に、子供達があんなにはしゃぎながら廃墟やガラクタの上で遊んでいるあの光景も、奇跡に等しいだろう。
普段から旅路故に満足な生活もさせてやれない上に、化け物が日常的に闊歩してビクビクしながら生きていかねばならないのに、あの子達は本当に元気で、笑顔だ。
・・・・・・でも時々、夜に静かに泣いてしまう子もいたりする。
俺の隣で静かに子供達を見守っている雪花も、この居場所探しの旅を初めて数週間経つが、未だに眠れない夜があって、その日は決まって俺の寝床に潜り込んでくる。
やはり、この毎日は俺以外の奴らも堪えているらしい。
・・・・・・せめて、あの子達と、雪花に、普通の生活って奴を送らせてやりたいものだ。
*
『彼』・・・・・・服部鬼十郎君は、数週間前、バーテックスが結界を破って入ってきた大侵攻によって、もう北海道が滅びを迎えた時にやってきた。
あの時には、私は四方全てをバーテックスに囲まれて、絶対絶命だった。生きる為に何でもやってきた私だけど、あの時は文字通り、私の命は絶対に終わったと思った。
だけど、その絶望は、人の形をした厄災によって蹂躙された。
服部鬼十郎という、人の形をした『絶対零度の世界』によって、街ごとバーテックスは氷付けにされた。
勇者としては、この街一つ凍らせた事に関して一つ言っとかないといけないけれど、先ほど死にかけた身としては、そんな余力はなくって、ただ先程までの死に対する恐怖、そして、私を片腕に抱く学ラン姿の鬼十郎君の、その街一つを凍らせる力に対して震えるのを抑える事しかできなかった。
だけどまあ、そんなのも一瞬で吹き飛んだ。
鬼十郎君が放った、あの言葉でもう恐怖とかそんなの全てどうでもよくなるくらいの殺し文句で、私の心はガッツリと捕まれてしまった。
「よお、理不尽と孤独からお前を救いに来たぜ」
これはもう反則。
これが、私が今まで出会ったような、含みのあるような、自分を利用するような感じの人間から放たれた台詞なら心の奥底で鼻で笑っていたところだけど、鬼十郎君にはそういうのは全然なくて、勇者としてのではなく、女の子としての私を見て、そう言ったように感じた。
・・・・・・で、私は結局、この台詞一つであえなく陥落してしまった、と。自分ながらチョロいな~。
この先ずっと、心の底から信用できる人もいないままひとりぼっちで生きて、そのままバーテックスとの戦いで死んじゃうのかと思っていた。
でも、彼なら・・・・・・隣にいても、良いかもしれない。
というかずっと、ずっと・・・・・・永遠に傍にいてほしい。死んでも隣にいて欲しいし、隣にいたい。
だから、鬼十郎君は絶対に誰にも渡さない。渡したくない。
もし、鬼十郎君が私以外の人のところに行ったら・・・・・・その時は、どうしようかな?
*
なんか背筋がゾクリとした。
その寒気が飛んできた方向にいる、隣の雪花を見てみれば、俺の腕を抱きながら、俺の方を見ていた。
「どうかしたか?」
「別に?」
「じゃあ何故俺の腕を抱く強さがハンパないんだ?正直痛いんだが」
俺がそう言うと、雪花は力を緩めて、逆に絡み付く感じで、体全体で密着しながらこう言った。
「・・・・・・鬼十郎君、万が一にもだけど・・・・・・」
「・・・・・・おう」
「私と、あの子供達の前からいなくなったりしない、よね?」
そう聞く雪花の顔は不安そうで、そして、瞳の奥底には一切の光を映しておらず、暗く深い闇が広がっていた。
「・・・・・・消えねーし、離れねーよ。お前らの前から、絶対にな。だから離れろ。子供達からの視線が痛い」
遠くから聞こえる「ひゅ~ひゅ~」とか、「すっごい・・・・・・おねーちゃん大胆だ・・・・・・」とかの声を意図的に無視しつつ、俺はこの先起こるだろう事を思って空を仰いだ。
(・・・・・・俺、この先どうなるんだろうか)
別の意味で、自身の安全が心配になってきた。
*
「『不安そうな表情』をするのは結構大変だったな・・・・・・」
ジジ・・・・・・ザザザ・・・・・・
『消えねーし、離れねーよ。お前らの前から、絶対にな』
ザザピー・・・・・・
「録音オッケー・・・・・・言質、取ったからね・・・・・・♪」
正直雪花さんのこの話書くのだいぶ悩みながら書きました。キャラ的に心情がムズイことムズイこと・・・・・・!
今回の話はちょっと上手く書けてるか自信ないんでちょっとしたら少し内容変わっているかもです。
次回も読んでくれればうれしいです。