[沖縄本島/古波蔵棗の家の一室/十月末]
この沖縄に転移して、早くも三ヶ月弱経過した。
最初の頃は、街の人が「棗ちゃんを助けてくれたお礼だ!」とか言って胴上げされたりだとか歓迎会じみたイロイロがあったりして割と慌ただしく、コミュニケーション能力皆無な俺にとっては何かと苦労する毎日だった。
が、そんな忙しい毎日も一週間程で終わり、今は化け物・・・・・・バーテックスが時々攻めてくるくらいで、その時は普通に『ブレイズキック』や『ほのおのパンチ』なんかの物理技で対処している。
さて、話は変わるが、現在俺は少々戸惑っている。
何故かと言えば、
べたべた。ぎゅむー。むにゅむにゅ。すりすり。
「・・・・・・大型犬に懐かれた気分だ」
「・・・・・・裕也の犬になら喜んでなるが?」
ちょっと待ってくれ棗さん!?
その発言はイロイロ危険だ。
「わんわん?」
「・・・・・・やらんでよろしい」
コレだ。棗の俺に対するスキンシップが激しいのだ。
鯨野郎の腹の中から出て来て、そして担いで彼女のもといた街に案内されつつ連れ帰っていた時、俺の寝床がない事を知れば、「私を助けてくれたお礼だ」とか言って、自身の家の一室を分けてくれた本当に、マジで心優しい少女であり、俺の転移前含めて唯一の友達とも呼べるこの古波蔵棗だが、最近、スキンシップがマジでヤバい。
一ヶ月くらいたったある日には、まだ仲の良い友達で済んでいた。
が、半月くらい前から急にべたべたし出して、今となってはぎゅーっと抱き着くのは当たり前、時々俺が抱きしめて撫で撫でしないと拗ねて、夜はかなりの確率で一緒に寝ていたりする。
いやマジで、出会った頃のクールなカッコイイ印象どこ行ったみたいな、そんな感じ。
・・・・・・正直、俺のあれとかがヤバいっす。はい。
*
錦裕也。私の命の恩人。
ある戦いの最後、バーテックスを倒し尽くしたかと思えばいきなり表れた超巨大バーテックスに飲み込まれ、その後意識を失っていたが、裕也に救われた。
出会った当初は、口数が少ない、ぶっきらぼうな少年だと思っていたが、半月くらいたった時から、ただのコミュニケーション能力が皆無で、更に恥ずかしがり屋だというだけだと解ってからはこちらからイロイロ話題、若しくは用事を持ちかけては、一緒に行動するようになった。
近くの海で一緒に泳いだ事もある。
彼曰く、私が最初で唯一の友達とも呼べる存在らしく、それをもじもじと恥ずかしがりながら彼から言われた時、妙に心臓が高鳴ったものだ。
それからも、何かと理由を付けては出かけたりして、何時も一緒にいた。
私は同年代から少々怖いと思われているらしく、同年代の友達とも呼べる人がいなかったからか、裕也という友人が出来て少し舞い上がってしまったのかもしれない。
そんなある日。
裕也がこの沖縄に来て二ヶ月半くらい経った時の事。
街中で裕也が、私の知らない女の子と仲良く話しているのを見かけた。
道案内でもしてもらっているのか、地図を片手に道を聞きながら雑談をしているらしかった。
・・・・・・何故か心がモヤモヤとした。
ただ、自分の大切な友達が道案内されているだけだというのに、何故か、胸が苦しくなる。
そして、私といるときに見せる微笑を、その女の子に見せたのを見た瞬間、私の仲で一瞬どす黒い感情が芽生えたのを良く覚えている。
「私以外にその笑顔を見せるな・・・・・・!」
俗に言う『嫉妬』、『独占欲』・・・・・・そういうものが溢れて止まらなくなった。
そして同時に、やはり、と、自分の中で暫く燻っていた感情を改めて自覚した。
(やはり・・・・・・好き、なのだろうか)
何か、決定的な何かがあった訳でもない。
別に口説かれた感じの事もされてないが、自分の心が、裕也を求めて止まない事に気がつくと共に、物凄く今、裕也といたいと思ってしまった。
(・・・・・・自分で言うのも何だが、重症だな、これは)
心から溢れ出す欲求を抑えられない。
・・・・・・ここまで裕也の事を想っている自分に苦笑しつつ、一つの決心をした。
(彼はどのくらい攻めれば陥落するだろうか)
他の女には渡さない。
他の女の物になる前に・・・・・・裕也を落とす。
*
[同日/夜中]
「さぁて、寝るか」
今日も棗にべたべたされまくったお陰で本当に欲求を抑えるのに苦労した。いくら友達でもあれは・・・・・・。
俺は、棗の事は好意的に思っているが、あんなにべたべたされると棗が俺の事好きだと勘違いしてフラれてしまう。フラれんのかよ。
せっかく出来た友達だ。大切にしないと。
あーもう今日はもう精神的に疲れた。さっさと寝ようと、敷布団に体をダイブさせ、ゴロゴロする。
・・・・・・と、その時、襖を開けて棗が入ってきた。
「・・・・・・どうした?棗」
「・・・・・・」
棗は半袖のダボダボのTシャツに短いズボンというラフな格好で襖を後ろ手で閉めると、無言で俺の対面に転がり、そのまま抱き着いてきた。
・・・・・・感触からしてノーブラです。本当にありがとうございます。
ああああああ、理性がガリゴリと大きな音を立てて削れていく。
「・・・・・・あの、棗?」
「・・・・・・裕也」
「・・・・・・何?」
棗が何か言おうと口を開いたかと思えば、横を向いていた筈の俺はいつの間にか天井を向いており、棗にマウントをとられていた。
棗の目が、爛々と光り輝いていて、何か怖い。
「な、何の真似だ」
「裕也は気がついてないのか?」
「何に!?」
意味不明。何に俺が気がついてないと?
疑問に思っていると、「じゃあ教えてやる」と言って棗は俺の耳元に顔を寄せると、ボソリとこう呟いた。
「好きだ、裕也」
「ふぇ?」
え?棗が、好き?俺を?
「散々アピールしてきたが、我慢の限界だ。
・・・・・・嫌だったら今すぐに蹴り飛ばしてもらっても構わない。だけど、嫌じゃないなら・・・・・・」
ーーーーーー今、お前を襲う。
って、は?襲う?俺を?多分シチュからして(意味深)のほう。
うわお直球。というか、今思ったけど告白がイケメンだな~。最近の女の子は肉食なのかな。それに対して俺は男の子の癖にチキッてヒロインみたいなことされてるよアハハ(脳内オーバーヒート)。
「抵抗する気は無し、か。なら・・・・・・ん、んちゅ・・・・・・んぅ・・・・・・」
「んむ!?」
脳内オーバーヒートしておめめグルグルしてたら、深い方のキスされた。
初キス奪われちゃったよ。
「・・・・・・っぷは。・・・・・・はぁっ、はぁっ・・・・・・安心してくれ。天井の染みを数えていればすぐに終わる」
「それ、男の台詞・・・・・・!」
我慢の限界とばかりに襲い掛かってきた、野獣と化した棗に、日付が変わる迄わんわん(意味深)された。