彼等は総じて化け物(モンスター)である   作:千点数

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VS武甕槌


13:脳筋同士の尋常なる闘い

 [何処かの原っぱ/十一月上旬/夕方]

 

 だからこそ、彼は武人であり、武神なのだろう。

 

 「さあ・・・・・・尋常なる闘いを始めよう!いざ!」

 

 太刀・・・・・・フツノミタマを抜き放ち、雷鳴が如く轟くその威勢と声と存在感、凄まじい覇気。

 

 そして、尋常なる闘いを望み、その一合に全力をかけるその姿勢。

 故に、武人。故に、武神。

 

 俺の眼前にいる神サマ・・・・・・武甕槌は、俺を打ち倒すという確固たる意思を持ってして、大いなる脅威として立ちはだかった。

 

 *

 

 始まりは突然だった。

 巫女さん達からの説教から解放されて、学校を出た瞬間、雷に連れ去られ(拉致され)気がつけば、だだっ広い原っぱにいた。

 そこで、武甕槌は笑いながら俺を見て、「勝負だ!」と言って、冒頭の口上を述べたのだったか。

 

 *

 

 キンッ!という、鋼と鋼がぶつかり合うような音が響く。

 

 「オラオラァ!どうしたぁ!?勢いが鈍っているぞ釘宮天地ぃぃぃいいいいいいいい!」

 「うるっせぇなぁオラァ!」

 

 太刀が上段から振り下ろされる・・・・・・かと思えば下からの掬い上げと、変幻自在に移り変わる太刀を高速で『せいなるつるぎ』を片腕で振るって打ち払い、空いている方の腕で『ばくれつパンチ』を武甕槌に打ち込む。

 が、神速で引き戻された剣に受け止められる。

 

 「だぁああああああああ!!マジで攻撃の一つや二つくらいやがれっ!」

 「断る!そんな威力の拳の突きを喰らったら当たったら(おれ)でもどうなるかわからんからな!」

 

 『せいなるつるぎ』を消し、『グロウパンチ』を発動させて手数で勝負する。

 が、それも全て見切られて太刀で全て弾かれる。

 

 「太刀に当たる度に攻撃力が増す技・・・・・・釘宮天地、貴様何でもありか!?」

 「当たるだけで攻撃力上がる技なもんでね!完全に威力を遮断しない限りは攻撃力が上がり続けると思えチート野郎!」

 「性別無いから野郎じゃないぞ(おれ)は!今は一応男の姿をしているがな!」

 「マジかよお前!・・・・・・って、うおっ!?今の突き危な!?」

 

 どうでもいいような雑談の中にも、致死性の攻撃の応酬を繰り広げる。

 光輝の拳が飛び、時に太刀が空を切り、空間を蹴りがえぐり飛ばしたかと思えば鋭い突きが心臓付近を襲う。

 

 あちらは神サマ・・・・・・神霊だ。防御硬そう。だが、こちらは物理攻撃力特化。特化しすぎて、普通のパンチでも空間ぶっ飛ばせるが、逆に他の能力はミジンコ以下。つまり防御の性能が紙。

 というか、紙よりペラい。攻撃を一発マトモに受ければ即終了。何そのクソゲー。

 なので、攻撃は攻撃で防御するか完全回避するしかない。

 

 だから、この攻撃の応酬の最中、例え雑談をしていようとも優雅に攻めつづける武甕槌とは対に、俺は防戦一方。

 辛うじて『グロウパンチ』で攻撃を上げつつ、最早拳圧でソニックブームが起きている為にどうにかかすり傷程度は武甕槌につける事が出来ているが、それだけだ。

 マシンガンよりも早い連射速度の高速の太刀捌きによる突きを、一発のパンチで起きた拳圧でぶっ飛ばす。

 

 「ふむ・・・・・・その物理攻撃力は最早この(おれ)を一撃で殺せるな。だが、当たらなければ意味がない」

 「はっ、言ってろ武甕槌。そして精々油断しろ。そこをついてやるから」

 「今決めた。絶対に油断しない」

 

 そしてそこからまた始まる俺と武甕槌による、拳と太刀の応酬。

 

 衝撃波のみで土地がえぐれ、吹き飛び、割れる。

 時々武甕槌の攻撃が掠って、裂傷ができる。

 武甕槌の身体にも、ソニックブームでかすり傷ができる。

 

 真っ直ぐに突き出された俺の拳と、武甕槌が上段から振り下ろした太刀がぶつかり合い、最早生身と金属がぶつかって起こった音では無いような音が周囲に鳴り響く。

 

 ガンッ!バキッ!ガガガッ!

 

 空気が爆ぜて、空間が裂ける。

 俺と武甕槌が戦っている場所は、天変地異が通り過ぎた後のような感じで、もう辺り一面ぺんぺん草も生えてない。

 

 『ビルドアップ』を積んで強化し、『マッハパンチ』で高速の拳打を浴びせるが、武甕槌は全て太刀で打ち払う。

 ・・・・・・と、その時。

 

 ピシリと何かが割れる音がした。

 

 それは、武甕槌が持っている太刀・・・・・・神剣フツノミタマが割れた音。

 神々しい輝きを放っていた太刀は粉々に砕け、空気に溶けるようにして霧散した。

 

 俺は武甕槌に、

 

 「オイ、そっちは獲物を失ったが・・・・・・まだやるか?」

 

 こう問えば、

 

 「誰にもの言っている。こちとら武の神だ、拳にも少々心得がある」

 

 武甕槌はそう言って殴りかかってきた。

 

 ここからは、最早泥仕合。

 殴り、殴られの繰り返し。自分の防御が紙?知ったもんか。防御なんて気にしている暇なんてなくなった。

 倒れなければ良い。ただ、コイツを、眼前のコイツを打ち倒せればそれで良い。

 

 ぶっ倒れそうになりながら、拳と拳、互いに打ち付け合う。

 やはり防御の低い俺は、武甕槌の雷を纏った拳を受ける度に口を切り、鼻血を出し、骨が折れる。それでも尚、俺は拳を打ち付けあった。

 何十、何百、何千と、永久にも思える時間の間、拳の応酬を続ける。

 俺はもうボロボロの状態だが、武甕槌にはかすり傷程度しかついてない。

 流石は武神だ。俺の攻撃が全て見切られ、逆に反撃を喰らう。

 ・・・・・・が、それでも尚、俺は倒れるような真似はしない。せめて、一撃入れる為に。

 

 ずっと長い間続いた拳の応酬も落ち着き、一度俺と武甕槌はともに間合いを取った。

 

 ーーーーーー次の一撃で終わらせる。

 

 間合いを取った瞬間、俺はそう決め、とある技を発動させる。

 あちらもどうやら俺と同じ考えをしたらしく、眩しいばかりの雷を拳に纏わせていた。

 次の一撃で敗者が決まるだろう。

 俺は折れた右腕をだらりと下げ、半ば歪む視界で武甕槌を睨み、左腕を上げて構える。

 武甕槌も、余裕があるように見えて、実は隙も余裕もない構えを取る。

 もう準備は整った。あとは、全力をもって、相手に向かって放つのみーーーーーー!

 

 「『きしかいせい』!」

 「・・・・・・ぬぅん!」

 

 拳と拳がぶつかり合ったその時、『高ノ原』の片隅で雷鳴の如き爆音が鳴り響いた。

 

 *

 

 目が覚めたら、俺が通っている中学校の保健室のベッドだった。

 身体を上げ、腕を伸ばそう・・・・・・として、何か雑にぐるぐる巻きにされ、固定された右腕を見る。

 

 そういえば、折れてたんだっけ。

 

 勝負は、負けた。

 クロスカウンターとなり、俺の拳は届いたものの、武甕槌をぶっ飛ばすには至らなかった。

 

 「・・・・・・次こそ勝つ」

 

 今生きている事から殺されずに見逃されたのだろう。

 あー負けちまったなぁ・・・・・・と思っていると、枕元にある半紙に気がついた。

 ペラリと取って見てみると、そこには達筆な字で、何か描かれていた。

 

 [貴様が寝ている間に、電気屋と呼ばれる店から拝借した「かめら」と呼ばれるもので、貴様のマヌケな可愛い寝顔の「しゃしん」というものをとり、それを紙に写して貴様の仲間達にばらまいておいたぞ?

 かめらとはなかなか便利だな!]

 

 「・・・・・・次は殺す!」

 

 グシャッと手紙をまるめ、殺気を撒き散らしながら俺は保健室で静かにキレた。






近日公開予告!!:『仮題/勇気の章』

 ある兄弟は、人さらいに遭い、そして、殺される。
 ・・・・・・が。

 「「転生だぁ!?ラノベかよ!?」」

 本来ならばあるはずの無い『生き返り』そして『転移』。
 外界の神々より受け取ったのは、鋼と電気の力。

 転生したのはバーテックスと呼ばれる化け物が定期的に攻めて来る世界。

 「僕が君の後ろを守るよ。だから、前だけ見てて!」
 「なぁに、安心しろ。この防御特化の攻撃力くそ雑魚野郎が盾にでもなってやる。おもいっきり射ろ!」



 「兄ちゃん、やるよ」
 「ああ、これで終わらせてやる。行くぞ、カミサマ共」

 ・・・・・・彼らは、世界に平和をもたらす事ができるのか?

 *

 一週間後くらいに上げます。お楽しみに。

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