[諏訪/十一月中旬/早朝]
「あー、やっちまった」
俺の部屋。そのベッドの上で、俺は頭を抱える。
俺の両隣には、『これ以上ないくらい幸せ』といった風な顔をした、歌野と水都がすぅすぅと可愛らしい寝顔で寝ている。
・・・・・・ちなみに、俺とこの二人は全員真っ裸。生まれたままの姿なのだ。
さて、もうこれで昨晩ナニがあったか察した人もいるだろう。
「どーしてこうなったんだっけか?」
天井で見えない天を仰ぎつつ、俺は昨日のとある事を思い出した。
*
[諏訪/昨日/夕方]
なんか、大人の皆様方から飲みに誘われた。
歌野や水都は時々誘われて行くらしいのだが、俺はそういえばまだ誘った事がなかったと、そういう理由で誘われて、公民館で酒盛りが始まった。
当然俺達は飲めないのでラムネ等の炭酸飲料、もしくはお茶。
飲み物を飲みながら色んな話を聞いた。
農業の事、苦労話、恋の話、ちょっとした相談事。
イロイロ聞いている内に、酔っ払った若いおねーさんが、俺に絡みながら、
「ねーねー、貴方ってどんな娘が好みなの?どんなのがタイプ?」
そう俺に質問した瞬間、空気・・・・・・いや、世界が変わった。
空気がしぃん、として、俺の方を全員向いてくる。得に俺の隣にいる歌野と水都の視線が痛すぎる。お前らどうしてそんな興味津々なんだよ。
え、というか何この空気。
俺のタイプとかそれ重要案件だったりするの!?
「ええっと・・・・・・」
助けて!といった具合に歌野と水都がいる方向を見る。
・・・・・・んん?なんか二人とも嬉しそうな顔をしたぞ?
・・・・・・周りを見てみれば、なんかニヤニヤしてたりほーう、という感じの顔してたり、やっぱり?って感じの雰囲気出してる人がいたり・・・・・・え、何なのマジで。
「ほうほう、やっぱり坊主はこの二人か」
「くぅ~色男が!」
「何時も一緒にいるしね~」
「やっぱり歌野ちゃんと水都ちゃんか。はっはっはっ」
うん、何で!?
え、何でそうなった!?助けて!って感じの目をしてたよね!?何でそうとっちゃうの!?
俺の内心なんて無視でどんどん話は進み・・・・・・。
「なぁ、やっぱりここは神前式でさ」
「良いね、採用。ここにゃ本物の土地神様がいる訳だしな」
あのー?
何か俺抜きで盛り上がっていらっしゃる。
まあ、酔っ払いの冗談だろう冗談・・・・・・。
そう思っていると、背中にむぎゅ、と、歌野と水都が乗っかってきた。
「えへへー、大好き!」
「うにゃぁ~、竜介君が三人に見えます~」
何か酒臭!って思ってたら、うん、この二人酒飲んでるわ。
・・・・・・誰が飲ませた!?
「あー、水おいしい・・・・・・」
「不思議な味のする水ですね~」
おい!?水と間違えて酒飲むとか何べたな事やってんの!?
「す、すみません、この娘たち間違えてちょっと酒飲んじゃったみたいで、俺達これで失礼します!」
「おー、よろしくやってこい!」
「持ち帰っちゃいなよ!」
「しっぽりやって来な!アタシが許す、というかやらないとシメる!」
そんな声に見送られ・・・・・・そして、俺の部屋。
二人を、それぞれの部屋に寝かせて俺も寝ようと思ってたら無理矢理俺の部屋に押しかけられた。
で、どさり、とそのままベッドに押し倒された。
ぎゅう、と抱きしめられて逃げ場がない。
何かすごくドキドキする。
二人にじっと見つめられ、目を離せなくなる。で、その目を見て確信する。
「やっぱりおめーら酔ってなかったのか」
「イグザクトリー。まあ、ちょびっとだけだったしね」
「私、結構自信あるんだ。お酒の強さ」
「で?俺をこうしてお前らはどうするつもりだ?」
「・・・・・・ねぇ、気がついてるんでしょ?」
「私達の気持ち」
まあ、気がついてはいた。だが、まさか、と思って・・・・・・簡単に言えば、チキッてた訳だ。
「もう、我慢するの無理。という訳で」
「・・・・・・私達の気持ち、受け取って、くれる・・・・・・?」
目の前の少女二人は、不安そうに俺を見る。
・・・・・・こうまでされて、流石に気持ちを察せない馬鹿はいない。
・・・・・・まさか二人いっぺんにとは夢にも思わなかったが。
俺は二人を抱きしめる。
二人が一瞬驚くような仕種を見せるが、直ぐに消えた。
「後悔するなよ?」
「しないわよ」
「しないよ、絶対に」
で、後はまあ、お察しの通りで、冒頭に戻る。
*
「・・・・・・うたのん、今、私すごく幸せ」
「うん、私も今すごくハッピーな気持ちよ。みーちゃん」
「・・・・・・竜介君、すごかったね」
「確かに、私達よりも小さいりゅーくんが、ベッドの上じゃあんなにパワフルだったなんて・・・・・・」