「・・・・・・来たぞ」
樹海化した四国の地に、ユーラシアを攻め滅ぼした
「結局、彼は帰ってこなかったわね」
隣にいる千景が残念そうに言う。
思えば、彼女はあの男が来てから楽しげな表情をすることが増えたのだったか。
少し、残念そうな表情の理由が理解出来てしまい、苦笑が漏れる。
「しょうがないだろう。天地は諏訪にいたんだ。急いで戻って来ている、としても、もうしばらくは戻って来ないだろう」
今回の大侵攻について、神託があったのが昨日。
神託のあってすぐに諏訪からこちらに出発したと聞いた。どれだけ急いだとしても、今、この場には間に合わないだろう。
「さあ皆。気を引き締めて行こう。決して油断だけはするな。天地の分まで私達がこの四国を守るッ! 四国勇者、出陣!」
私の掛け声と共に、皆の気合いの入った雄叫びが響いた。
*
常に二人一組で。
それが、今回の戦いの中で、伊予島さんに念押しされた事だ。
一人を丸亀城の戦いの時のように交代要員として取っておき、残りの四人がペアを組んで戦う。
交代要員の人は、戦場を俯瞰的に見て、疲れが見えた人に代わり、戦場へと出る。
「高嶋さん、交代しましょう」
「ぐんちゃん? ・・・・・・うん、わかった! 無理しないでね?」
「ええ、わかってる。少しの間休んでいて、高嶋さん」
明らかに疲弊が見えてきていた高嶋さんと交代して、戦場へと出る。
大葉刈を振るい、近くにいたバーテックスを切り飛ばす。
「来なさい。纏めて
明確な殺意をもって、バーテックスと向かう。
隣にいる土居さんが少し引き攣った顔をしていたけれど、得に気にせず近くの敵を、刈り取るようにして真っ二つにしていく。
小さい奴も、大きい奴も関係ない。
全て刈り取る。
ただの一匹も、残しはしない。
*
仲間として、だけじゃない。
勇者という概念を無視して、ただの一人の友人として、人間として愛してくれている、愛を向けてくれている彼の分まで・・・・・・
「殺すッ!」
*
あと、もうちょっと。
あともう少しで中国地方に入る。
「超特急で飛ばしても、間に合わなかったか・・・・・・ッ!」
もともと攻撃力以外全てのステータスが死んでる俺の身体も、大体人間辞めてるから行けると思ったんだが、どうやら間に合わなかったようだ。畜生めが。
遥か遠くには、神樹が張った神々しい結界が見える。
「待ってろよ・・・・・・もう、少しで・・・・・・」
走れメロスの気持ちが、何となく解ってきた夜だった。
「沈む太陽の十倍以上速く走らねぇとな」
急げ。
手遅れになる前に。
次回。
それぞれの決戦