[数時間前]
俺は軽トラを走らせていた。
理由はただ一つ。
「番長! 右ッ」
「うえからもー。化け物いっぱい!」
バーテックス共から逃げる為。ただそれだけに全力で軽トラを飛ばす。
この間、タンクのガソリンを満タンにしておいて助かった。
北から急に大群で現れて、尽くを消し飛ばしながら、まるで俺達をしらみつぶしに探しているようだった。
で、発見されて、今逃げている。
「雪花ぁ! 狙えるか!?」
「はいはいー。よっこいせっと!」
荷台にガキ男三人と雪花、助手席にガキ三人娘を詰め込んで爆走している為、あまりスピードが出ない。
そのため、バーテックス共に追いつかれる。
攻撃力が体内に宿っている精霊頼みで、神からのバックアップを望めない雪花だけだとバーテックスを蹴散らすには心許ない。
だから俺も、運転しつつ範囲技の『ふぶき』や『こごえるかぜ』で凍らせて応対するが・・・・・・焼け石に水。数が減らない上に、しぶとい奴らが特攻してくるからうっとうしい事この上ない。
「ああもう! 世界中のバーテックスでも集まってんじゃねぇのかこれ!?」
叫びながらハンドルを切る。現在地が何処なのかサッパリな上、北海道だから大量のバーテックスからの逃げ場が殆ど無い、という現状。無理ゲーにも程がある。
だが、それを俺はやり遂げなけりゃならない。
餓鬼共と、雪花の為にも。
「ぶっ飛ばすぜぇッ! 全員捕まれ!」
「え? ・・・・・・きゃぁああああああ!?」
高速道路の残骸が見えた。まだ使える。
そのまま軽トラを家屋の屋根の残骸に載せ、ジャンプ台のように使って高速道路まで一気に跳ぶ。そして、滑りつつタイヤを接地させ、瞬間的に見えた看板をチラ見する。
「・・・・・・来た! きたきたきたぁ!」
そして、思いがけない幸運にニヤリとする。
看板には、こうあった。
寂れて折れて、錆びていたがそれでも、その文字を見間違える筈がなかった。
[室蘭IC 2km]
室蘭は北海道の南側、それも海岸線がある。ICから下りれば直ぐだ。
そして、そこから海を凍らせて行けば本州だ。
今までの旅で、もといたカムイコタンから直線距離で百キロ以上離れているこの室蘭の近くにまでやって来ていた事が幸運だった。
「全員! 聞こえるか!?」
「餓鬼隊男子全員聞こえるぜ番長!」
「何、鬼十郎君!?」
「女子三人聞こえる。何?」
全員いるようで安心しつつ、俺は喜色円満に叫ぶ。
「生き残れるぞ、この絶望からッ!」
*
[現在]
「うっそだろうオイ」
室蘭ICを降り、追って来るバーテックスを減らしつつ海岸線へと向かっていったのはよかった。
・・・・・・だが、現実はそこまで甘くはないらしい。
目の前の海は大荒れに荒れ、その海の中には想像を絶する程の巨大な体躯を持った、まるでレックウザのような超巨大バーテックスが唸りを上げつつ荒れる海を泳いでいた。
全長は・・・・・・間違いなくキロ単位。ここまで大きいと、海ごと凍らせたところでその膂力で氷を割られ、すぐさま反撃に移られるのがオチだろう。
後ろには大量のバーテックス、前には荒れる海とそれを泳ぐ超巨大バーテックス。
前門の虎、後門の狼とはよく言ったもんだ。まさしく今、俺達の状況を言い表すとすりゃあそれが一番正しい。
「・・・・・・良いぜオイやってやるよ畜生!」
あまり使いたくなかった。
これを正常に使えるのはあともって五、六回。
だが、今の状況だと使う以外有り得ない。
俺は、運転を雪花に任せ、先ずは後方のバーテックスへと向けて技を繰り出す。
「『ぜったいれいど』!」
俺がそう言った瞬間・・・・・・
俺の周囲に、身の毛も凍るような風が吹いたかと思えば、次の瞬間には氷の世界が出来ていた。
「さあ来い、化け物共」
俺はそう言って、自分の体が
*
気がついたのは何時か忘れた。
だが、遅かれ早かれ気がつく。自分の体の事だから。
俺の心が、また少し凍りついた気がした。
『化け物』タグが漸く仕事をする日が来たぁ!