彼等は総じて化け物(モンスター)である   作:千点数

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 オリジナルキャラ出ます。苦手なヒトは注意です。

 因みに今回。
 非常に頭脳指数だだ下がりしている話です。スナック菓子程度の軽さでお読み下さい。




番外編4:記憶喪失少女、弥勒ちゃん

 どうしてこうなってしまったんだ。

 ああ、ボクは今、自分の中の本能と戦っていると言えるだろう。

 何せ、

 

 「・・・・・・」

 

 ボクの隣に、左腕をかき抱くようにして保持している少女、弥勒龍華からの生々しい感触が随時自分の左腕に伝わっているから。

 そして。

 

 「・・・・・・」

 

 何故か対抗するように、背中に抱き着く赤嶺からの刺激が強すぎるから。

 

 二人の、ボロボロに擦り切れたジャージ越しに伝わるむにゅむにゅとした感触に耐えつつ考える。

 

 ああ、もうどうしてこんな状況になってしまったんだ!?・・・・・・と。

 

 *

 

 時は少々、遡る。

 

 *

 

 アレからまた、数日。

 諏訪にいるだろう広域洗脳物体を破壊、若しくは倒す為に諏訪へと向かうボクらだが、その道中にバーテックスに襲われた。

 

 「ああもう、対人戦闘しかやってないからホントにやりにくいッ」

 「ボクも化け物相手は苦手だよ! 人間の方がまだやりやすい!」

 

 めちゃくちゃ可愛い男の娘の親友のお陰で野郎からの嫉妬には事欠かなかったからね。

 ひどい優越感を感じると共に悲しくなった覚えがある。

 

 相手からの攻撃を食らわないように、避ける。そして反撃。

 こういう戦い方で、徐々に数を減らしていく。

 転移初日からの一張羅であるこの学生服のズボンとカッターシャツ、パーカーしか着ていないボクと、ボロボロの黒と赤色のジャージ姿の赤嶺。防御力が紙の領域だからガンガン突っ込んでいく事が出来ない。

 

 それでも戦えているのは、やはりボク達二人が化け物レベルの強さを持っているからだろう。

 神懸かりでとある神霊の分霊を身体に突っ込んでいる赤嶺。

 ゴーストタイプの技が全て使え、尚且つゴーストタイプの肉体を持っているボク。

 

 絶対に人間じゃ出来ないような事が出来るからこそ、こうして戦えている。

 

 ヒットアンドアウェーの方法でバーテックスの数を減らしていると、不意に見覚えのあるものが視界の隅に、本当に『偶然』、入った。

 それは毎日見ていて、でもこの化け物(まみ)れの世界には相応しくなくて。

 

 ・・・・・・そういえば、ボク達が相手をする前、バーテックスは何か別の何かを追いかけていたような仕種をしていた・・・・・・。

 

 「赤嶺! 少しバーテックスの相手を頼むッ」

 「どうしたの!?」

 「ヒトだッ! まだ生きている!」

 

 力無く倒れ、それでも天に向かって手を伸ばす赤嶺と同い年かそこらの少女だった。

 すぐさまかけよる。

 黒と緑の、ボロボロに擦り切れたジャージ姿で、ショートカットの金髪が特徴的な赤嶺に勝るとも劣らない美少女だ。

 左手に、細身の両刃剣を持っている。

 

 怪我は・・・・・・額を打ったようで、たんこぶが出来てしまっている。直ぐに冷やさないと。

 

 「キミ、大丈夫かい」

 「あ・・・・・・う・・・・・・たす、け、て・・・・・・」

 「ああ、ボクの魂に誓って絶対に助けよう」

 

 ボクのその言葉を聞いた瞬間、少女はコテン、と電池が切れるようにして意識を失う。

 慌てて息を確認する。

 心臓はしっかりと動き、息も一定のリズムで確かにしている。

 

 ホッと一息。ボクはひとまず、あまり揺らさないようにして彼女を抱え上げると、『シャドーダイブ』で影に潜り、赤嶺の近くに出る。

 赤嶺は漸く全てのバーテックスを倒し終えたようで、一息ついていた。

 

 「ねぇ、この娘、キミと同じ勇者なのかい? どうにも、この娘が持っていた剣からとんでもない気配を感じていてね・・・・・・」

 

 少女を、崩壊した町の、それも瓦礫の上に寝かせるのも忍びなく、街中で拾った毛布をしき、そこに寝かせる。

 そして、その少女が持っていた抜き身の両刃剣を赤嶺に見せる。

 

 「・・・・・・うん、その娘・・・・・・弥勒龍華さんも、勇者だよ。私と同じ四国の。そして、この剣は斗牟刈剣のレプリカ。多分、とんでもない気配っていうのはこの中に入ってる水神様の分霊の事じゃないかな」

 

 思わぬビッグネームに驚く。

 まさか、レプリカとは言え日本神話で有名な神剣の一振りに出会えるとは思わなかったな。

 

 びっくりとしつつ、そこいらに溜まっている水溜まりの中から水深が深く、綺麗なものを選んでそこで布を濡らし、弥勒のおでこ・・・・・・たんこぶが出来ている辺りにかける。

 

 「生憎、氷は持っていないものでね・・・・・・これで許しておくれ」

 

 *

 

 そして一時間後。

 

 *

 

 「まさか、自分の名前すらも忘れてしまっているとは・・・・・・」

 

 弥勒がどうやら記憶喪失である事が発覚した。

 

 気がつけば、何もかも解らない状態になり、ただ一人、ぽつんとこの廃墟塗れの街で一ヶ月程生きていたらしい。

 そして今日、何も解らない内にバーテックスに襲われ、意識を失いそうになったとき、ボクが彼女を見つけ、救った。

 という訳だ。

 

 だからだろうか。

 

 「・・・・・・」

 

 ぎゅむー。

 

 「・・・・・・ねぇ、キミは何故ボクの左腕に抱き着いているんだい?」

 「・・・・・・まだ、こわい」

 

 その目線から絶対的な信頼を感じるッ・・・・・・。

 ああ、そして何故か隣から物凄い威圧感を感じるよ・・・・・・。見てはいけない気配がする。

 

 「ねぇ、幽くん・・・・・・?」

 「ひゃひぃ!?」

 

 気がつけば、後ろから抱き着かれて耳元で、耳元でボソッて!?

 

 「私にあんな事しておいて、まさか他の女の子に目移りしちゃうの?」

 「いやいやいや、まずボクはキミにそういう事をした覚えは・・・・・・」

 

 あった・・・・・・。ああ、性格には一話前に!!やってしまった!!

 

 「いや、でもこれは」

 「うん、知ってる。でもね?」

 

 赤嶺は、そう言うとボクの耳たぶを甘噛みしながら、ぼそりと呟いた。

 

 「怖い、っていう、明確な理由があるのに・・・・・・弥勒ちゃんずるい、って、思っちゃった。

 ・・・・・・で、わかったんだ。私が、キミをどう思っているか・・・・・・」

 

 彼女は、自らの肢体をボクに絡ませながら言う。

 

 「覚悟してね? 逃がさないから・・・・・・」

 

 ・・・・・・なるほどそういう事か。

 ああ、どうしてだろう。いつから彼女はボクを、そんな風に思ってたんだ!?いつ、いつなんだ!?

 

 女の子の心は本当に良く解らない!!

 

 *

 

 回想終了。

 で、今の状態に至る。

 

 ・・・・・・理性がそろそろ限界だから、離して欲しいと思う。

 力が強くて振り払えないのがつらい・・・・・・ッ!

 

 「頼む、離してくれないか? そろそろ限界・・・・・・」

 「ナニが、限界なの?」

 「・・・・・・や。離れたく、ない」

 

 持ってくれ・・・・・・ボクの理性・・・・・・ッ!






 *レプリカ剣
 とある水神を鎮め払った際に尻尾から出てきた剣・・・・・・の、レプリカ。
 水神の分霊を業物の剣に突っ込んでおり、無理矢理オリジナルが起こす事象と同じ事象を起こす事が出来る。

 *弥勒龍華
 十三歳。記憶喪失少女。金髪ショートカット。
 あらゆる事を忘れてしまっている。少しだけ甘えん坊。
 赤奈と同じ勇者・・・・・・らしい。
 ゆゆゆい時空参戦はもう少し後。

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