彼等は総じて化け物(モンスター)である   作:千点数

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 あー、シリアスとかむぅーりぃー。


28:龍の覇槌

 首を撫でる。

 ・・・・・・少し、ザラリとした感触が手に伝わる。

 

 あの二人には、隠している事。

 ・・・・・・さて。何時までごまかせるかなーーーー。

 

 *

 

 まるで世界中のバーテックスが集まってきたのでは、という光景だ。

 

 日本海側の全ての山の頂から麓まで、数億はいそうなバーテックスでびっしり。真っ白いゴキブリみたいで気持ち悪い。

 

 「おい、最近ここの神の力減ってんだろ。大丈夫なのか歌野」

 「大丈夫」

 

 ・・・・・・には見えないんだが。

 ここの神は、俺の『ドラゴンタイプの肉体』という、存在そのものが神秘そのものな俺から少しずつ神秘を吸収して、一時的に元気になってはっちゃけつつ力を永らえていた、らしい。

 

 ・・・・・・が。

 どうやら、限界が来た。

 

 簡単に言ってしまえば、神が腹を下した。

 俺の、神のそれとは少し違う神秘を吸収したおかげで、ズルでその力を永らえたせいで、そのツケがまわってきた。

 神のそれ(しんぴ)と、俺のそれは何もかもが別物だ。

 

 残業中にエナジードリンクを飲んでハイになっているのと、同じ状況を作ってしまっていた。

 そんな、無理に無理を重ねた神様に護られていたのが、今の諏訪。

 

 もう、そう永くはない。でも。

 

 「死ぬなよ、歌野」

 「ドントウォーリー、竜介。精一杯このライフを楽しんでからじゃないと、死んでも死に切れないから。まず、今のところダイする予定無いし」

 「そっか」

 

 歌野は装束にもう着替えを済ませ、俺の隣で鞭を軽く振るう。

 俺は、拳を掌に打ち付け、気合いを入れる。

 

 「じゃ、開戦ののろし(・・・)は俺が」

 

 できうる限り、相対するバーテックスの数は減らしておきたい。

 

 大技を使う。

 

 俺が掌を正面にかざす。

 その瞬間、風が吹き荒れた。

 掌の周囲が歪んでいく。空間では無い。歪んでいくのは、時間。

 

 俺の体の至るところで歯車型のオーラが回転し、唸りを上げる。

 

 ・・・・・・それと同時に、首から肩にかけて広がる、気分のあまり良くない感覚。

 

 突き出した掌に、だんだんと群青色のエネルギーが溜まっていく。

 

 今から起こすのは、神話の砲撃。相手を時間の彼方に吹き飛ばす時を司る神の龍の咆哮。

 

 「『ときのほうこう』」

 

 周囲の時間を歪め、狂わせながら、俺の放った一条の群青色の一撃がバーテックスの集団に突き刺さった。

 

 *

 

 彼が放った有り得ない威力の砲撃が終わってすぐ、私は駆ける。

 砲撃の余波で衝撃波と風が凄いが、それは農業で鍛えたパワーで無視してバーテックスのいた方向に、全速力で駆け抜ける。

 

 砲撃がぶち当たっている場所は、それはもう酷く、山は三つほど消し飛んで、周囲の山も四つほどハゲ同然の様になっていた。

 バーテックスの数も、最初と比べれば幾分か目減りしているように感じる。

 

 「う、りゃぁあああ!」

 

 気合い一声。鞭を振り、バーテックスを複数匹纏めて吹き飛ばす。

 背後から迫って来るのを感じつつ、横凪ぎに回転しつつ打ち払う。

 

 向こうではかなり大きな音が響くのが聞こえる。彼がバーテックスとガチンコファイティングしているんだろう。

 まったく、頼もしい夫だと思う。結婚はしてないけれど。

 

 向こうのあまりの攻撃力に、余波だけで吹き飛ばされて来るバーテックスを時折打ち落とし、又は引っ掴んで他のバーテックスに投げつけたり。

 

 「馬鹿ー! こっちにバーテックス飛ばして来るなー!」

 「おっと悪い歌野。以後気をつけるッ」

 

 まったく、あの馬鹿は・・・・・・。

 本当に馬鹿だ。窮地に陥った私達を土地ごと救っちゃうし、バーテックス飛ばして来るし、『自分に起きてる体の変化を秘密にしてるし』。

 

 毎日布団に潜り混んでいるのだ。

 不自然に、怪我もしていないのに首に包帯を巻いているなんて怪し過ぎる。

 一度みーちゃんと見たときは絶句した。みーちゃんのあんな表情は初めて見た。

 みーちゃんの霊視能力によると、どうやらどんどん人間を辞めていっているらしい。

 

 竜介は、体の変化を私達にひた隠しにしている。最近は、一緒に寝る回数も減った。

 ・・・・・・多分、怖いのかもしれない。私達に、だんだん変わっていく自分の姿を見られる事が。

 そして、拒絶される事が。

 

 ・・・・・・そんなこと、有り得ないし、しないのに。

 今度そういう素振り見せた瞬間・・・・・・どうしてやろうかしら?

 

 まあ、今はそれは置いといて、バーテックスを追い返そう。

 戦いを生き残れば、後でいくらでもごうm、いや快楽d・・・・・・いや違う。ええと、そう。詰問出来る。

 

 覚悟しなさい、竜介。逃がさないから。

 

 私の中で、何かが決まった瞬間、また真っ白いバーテックスがドカンという音と共にポーンと・・・・・・。

 

 「シーット! バーテックス飛ばすなー!」

 「ゴメーンッ!」

 

 *

 

 ・・・・・・押されてるわよ。

 

 『人類にこれほどの戦力がいたとは驚きですね。勇者だけではなかった、という訳ですか』

 

 ・・・・・・どうにかこうにかしなさい。人間がこれ以上付け上がっているところを見るのはイライラするわ。

 

 『大丈夫。まだこれは前哨戦。これからですよ(うじ)神様』




 次回。

 四国/あの男の娘、ついに参戦(もう本戦間近)
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