何時まで続くのか、分からない。そんな持久戦。
みんな疲弊して、作戦の通りにローテーションで休んで次・・・・・・といった具合にやっていても、疲れが溜まって、動きが鈍る。
丸亀城の屋根の上から、ボウガンで危ない所を援護するけど、それでも焼け石に水。
あの人が来れば・・・・・・なんて考えが過ぎる。
何度も、何度も。これじゃあダメだ。とらぬ狸の皮算用。不確定要素過ぎる。私は自分で、「あの人は来ない」と、そう自分に念じ続けた。
あの人は、諏訪にいたのだ。
昨日の朝、神託があって直ぐに四国に向けて走り去ったと連絡が入ったけれど、諏訪から四国までの距離からして、勇者でも、毎日全力疾走するとして二日程かかる。
高々一日経たずで着く訳が無い・・・・・・
そこまで考え、一旦落ち着こうと息を吐いた瞬間。
「伊予島さんッ!」
一番近くにいた、千景さんの声が聞こえた。
ハッとして、すぐ近くにバーテックスがいることに気がついた。
あの人の事を考えていて、周囲の警戒が散漫になってしまった!
私は自己嫌悪をするのは後回しにし、大口を開け、私を丸呑みにしようと押し寄せて来るバーテックスに目を向ける。
ボウガンで大口開けた中に矢を放るけど、全て捌ききれず、とうとう至近距離にまで近づかれ、ボウガンをかみ砕かれてしまった。
矢を一本手に持ち、バーテックスを追い払おうと試みるが、無駄。
他の人が駆けつけようとするけれど、多過ぎるバーテックスによって壁ができ、私に対する援助は出来そうに無い。
完全なる詰み。私という王将は、バーテックスという駒によって完全に囲まれ、逃げ場を失ってしまった。
遠くの方で、タマっち先輩が私の名前を叫ぶ声が聞こえる。
やけに視界がゆっくりと動く。
みんなとの思い出が頭の中を巡って、最後に、あの人との、短い間の逢瀬の時間が頭を巡る。ああ、これが走馬灯。
星屑に囲まれ、逃げ場を失い、最後に思うのは、思い人の事。
最後に一体でも。そう考え、振り上げた矢は。
「ーーーー死なせる、もんかぁーーーー!」
目の前の星屑に当たる寸前、辺り一帯に発生した暴風もかくやという威力の衝撃波によって対象が吹き飛ばされ、掠りもしなかった。
「何、が」
何が起きたのか解らずに、呆然としてしまう。
・・・・・・でも、直ぐに原因は判明した。
だけど、有り得ない。
今、目の前の光景は私の作り出した幻影なのだろうか。
幻影だという方が、まだ信じられる。
だけど、今、目の前にいる人・・・・・・釘宮天地さんは、私のその疑念を払うように、私の頭をくしゃり、とちょっと乱暴に撫でる。
「ワリィ、ちょっと遅くなった」
今まで見てきたどんな女の子よりも可愛い、女顔の男の子。
だけど、私の目には、物語に出てくるような王子様以上にかっこよく映った。
「ちょいと待ってろ。直ぐに、終わらせる」
そう言うと、天地さんは私の元から離れていった。
・・・・・・もう少し一緒に居てほしかった、なんて考えを押し潰し、見送る。
戦いが終わってから、好きなだけ寄り添えるから。
*
何だか熱に浮かれたような視線を受けるんだが、気にせず行こう。
何やら技を使う度に身体能力が上がる。『ビーストブースト』の特性のおかげ・・・・・・という訳でもないらしい。一体どういう訳なのだろう。
何やら薄寒いものを、この現象に感じるがーーーーむしろ、これのお陰で俺は杏が死ぬ前に駆けつける事が出来た。
自分の身体を不思議に思うのは、取り合えず後にして。
先ずは、目の前のバーテックスをどうお帰り願うかについて考えよう。
さっきの『きあいパンチ』であらかた消し飛んだ筈が、追加で奥から出てくるものだからキリが無い。
『マッハパンチ』を連発して速攻するが、それでも減ったように感じない。
「ああもうッ、雑魚も数が揃えばいっちょ前だな!」
際限無く上がっていく身体能力に辟易としつつ、星屑共を殴り飛ばす。
勇者全員に疲弊が見える。さっさと終らせなければ、こいつら全員危険だ。
だが、バーテックスは際限無く現れる。
完全なる物量で、押し切ろうと迫って来る。
『限り』という言葉の存在を俺が疑い始めた頃だった。
カッ!!と目の前が真っ白になった瞬間。
辺りに雷鳴が響いた。
・・・・・・俺は、この感じを覚えている。
最初に会った時と同じ。
これは、
「釘宮天地ぃいいいいいい!! 預けた命、今日こそ取りに着たぞッッ!」
神鳴り・・・・・・天の神が響かせる神の力、その一端。
あまりの眩しさに閉じていた瞳を開けると、そこには予想通りーーーー
真っ白い装束に身を包み、有り得ない程のオーラを放つ剣を持った美青年・・・・・・武甕槌が、そこにいた。
目測、千を超える数いた自らの先兵であるバーテックス全てを先ほどの一撃のみで、全て消滅させるという極上の前座を用意して。
「あ、靴履いて来んの忘れた」
・・・・・・馬鹿も丸出しにして。
次回
神 対 化け物
あんずん以外と普通・・・・・・なんて思ったら、全然冷静じゃなかった件。