彼等は総じて化け物(モンスター)である   作:千点数

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 目茶苦茶期間が空いてしまいました。

 戦闘描写しかございません。ご注意下さい。


30:神話の戦い(上)

 目の前で起こっている戦いから伝わる覇気で、身体が硬直してしまう。

 武人として、情けなく思うと同時に、悔しくなる。

 

 目の前で戦っている、見た目麗しい淑女のようにも見える男が、今全身全霊を持ってしてまで、私達の盾として戦っている事に。

 

 今、この場所にいることさえもあの男・・・・・・釘宮天地の足を引っ張っていると考えると、それがまた、悔しかった。

 

 *

 

 突き出される太刀を『ビルドアップ』で強化した肉体で、刀身に手を添わすようにして捌き、それと同時に一歩踏み出す。

 その勢いのままに一発、目の前にあった三日月辺りに気合いと共に打ち込むが、ハズレ。首を曲げて躱された。

 

 追撃に、胃の部分に蹴りを入れて一回間合いをとる。

 

 「・・・・・・ふむ。腕を上げたか?」

 「戦場に靴を忘れてやって来たアホタレとは思えねぇ速さの太刀筋だったな。イテテ・・・・・・切れちまった」

 

 太刀をそらした手をプラプラさせつつ言う。

 ああもう、一回そらすだけでこれか。

 

 ぐちゃぐちゃになった手の甲を、一応持ってきておいたサラシで無理矢理覆い隠し、補強する。

 

 ただ、そらす為だけに手を這わせ、そのうちの一瞬、その一瞬のみの摩擦で手が一つ、ヤバい事になった。一体どれだけの速度で突き出されているのか。衝撃波だけで着ている服がボロボロなのだから、音速は裕に超えているか。

 

 「ったく、小手調べだった筈が手一つ壊されるとか・・・・・・出鱈目にも程があんだろ」

 「それが神と言うものだッ!!」

 

 稲妻と化し、雷速で踏み込んで来たのを完全回避し、『マッハパンチ』で雷化を解いたところを急襲する。

 が、剣の腹で受け止められ、カウンターの蹴りをモロに食らって吹き飛ばされた。

 

 「ガァッ・・・・・・!?」

 「脇がお留守よのぉッ」

 

 吹き飛ばされている最中に、追撃とばかりに放ってきた切り払いを『ビルドアップ』の重ね掛けで物理的な防御力を上げて防御する。

 

 ズバンッ・・・・・・。

 

 そんな、何かが断ち切られる音がして、地面にドサリとたたき付けられる。

 

 「ガハッ!?」

 

 たたき付けられると同時に、脇腹に鋭い痛みと、体中の空気が全て出ていくような感覚がして、一瞬意識が飛びかける。

 が、膨大な殺気が、俺の後ろにいる勇者達に向けられていると悟ったとたんに意識を復活させて、脇腹から流れる液体と痛みを無視して武甕槌に肉薄する。

 

 「ハハハッ! 何時までも起き上がってこぬのならあの小娘共とじゃれ合おうと思ったのだがな!」

 「そう簡単にくたばるかよッ」

 

 そう言いつつ振り下ろしてきた太刀を『カウンター』でそらしつつ、武甕槌の腹に、一撃。

 

 「ぐッ!?」

 

 漸く、一撃。

 マトモに入ったのはこの一発が最初。だが、前は成す(ずべ)なくボコボコにされたのだ。これも、戦う旅に上がっていく身体能力と戦闘能力の為せる技だろう。

 直感が、この体は危険だと、これ以上戦えば『戻れなくなる』と意味不明な警笛を鳴らすが、それも無視して武甕槌と『マッハパンチ』で打ち合う。

 

 武甕槌は、異常に長い大太刀で防ぐが、それでもその長さが邪魔をして、迎え打つ事が困難なようだ。

 

 なら、この瞬間に畳みかけるッ!

 

 「『きあいパンチ』ッ!」

 

 一回、大太刀に拳を突き入れ太刀による防御を吹き飛ばし、そこに

 

 「『ばくれつパンチ』ッ!」

 

 がら空きの胴に拳を叩き込む!

 また、良い突きが入った。突きを繰り出す度に上がる身体能力を武器に、このまま押し切る。

 

 「その身体能力・・・・・・貴様、実は人間では無いな!?」

 「残念、生物学上は人間だよッ!」

 

 軽口をたたき合いつつ、拳をたたき付け合う。

 一発一発が、一撃で相手の命を容易く刈り取るような威力を持っている。

 

 「オイオイ、押し負けてんじゃぁねーのかよォカミサマァ!?」

 「ぐッ」

 

 太刀を、武甕槌の右腕ごと『ばくれつパンチ』で吹き飛ばし、顎に『スカイアッパー』を叩き込む。

 それでも、倒れない。流石は武神、と言ったところか。

 

 「まだ、倒れはせんぞ!」

 

 武甕槌は体勢を立て直すと、左腕に雷鳴と共に稲妻を纏わせ、光もかくやといったスピードで懐に潜り混んでくる。

 それを膝蹴りで出会い頭でも取ろうとしたところを、だらんと垂れ下がった右腕で制され、そのまま肺の辺りに左拳を叩き込まれる。

 

 攻撃はそのまま終わらず、突きの残心を取る間もなくそのまま右回転するようにして右足でこめかみの辺りに回し蹴りが飛んできた。

 

 それを防御しきれず、くらったところに喉元を駒のように回転しながらその回転エネルギーを利用した蠍蹴りをくらい、意識が一瞬ブラックアウトする。

 

 「ガフッ、ゲホッ!?」

 

 息が出来なくなり、目眩が起きる。が、その瞬間殺気が飛んできた瞬間、強制的に意識を取り戻し、本能のままに頭を下げる。

 先程まで頭があった場所を、横凪ぎの(しゅう)(げき)が通り過ぎていく。

 

 「っぶな。当たってたら死んでたな」

 「油断は禁物、だッ!」

 

 稲妻を纏った左拳の突きが飛んで来るのを視界の端でとらえ、顔を狙ってきたそれを逸らして回避し、それと同時に前に出て『とびひざげり』で武甕槌の脇腹に向かって攻撃する。

 短い呻き声の後、がっしりと足を捕まれる。

 

 「捕まえた、ぞ」

 「チィッ」

 

 俺はそれを振り払おうとした。

 

 ザクンッ・・・・・・!

 

 が、一歩遅かったらしい。

 

 「が、ァアアアアアアアアア!?」

 

 鋭い痛みが右足に走る。

 視界の隅に映るのは・・・・・・男らしくない、華奢な印象を受ける自分の右足。

 血飛沫を上げつつ宙を舞うそれを見て、漸く俺は、自分の右足が切られた事を認識した。

 

 「天地さん!?」

 

 後ろから、悲痛な声が響く。

 ああもう、女の子の目の前で足切り飛ばされるとか・・・・・・無様にも程がある。

 

 痛みを俺は咆哮で掻き消し、残った左足をバネを縮ませるようにして曲げる。

 そして返礼の一撃に、左足の瞬発力を最大限に活かした突きの一撃を武甕槌のだらんと垂れ下がった右腕に叩き込んだ。

 瞬間、引きちぎれるようにして武甕槌の右腕が宙に舞う。

 だが、俺の右足とは違い、血が出る事は無い。

 

 「・・・・・・『きあいパンチ』。さっきの例だ」

 「右足を切り飛ばされて尚食らいつき、まさか、負傷していたとは言え我の右腕を吹き飛ばすとは。本当に人間か怪しいぞ貴様」

 

 武甕槌の悪口と称賛が入り混じった言葉に俺は、片足でバランスを取りつつ言った。

 

 「だーかーらー、生物学上は人間だって言ってんだろ?」

 「そうだったか」

 

 惚けたようにして武甕槌が言う。

 俺はそれにイラッとしつつ、痛みを無視しつつ言う。

 

 「俺を勝手に化け物にしてんじゃねぇよヒトデナシ」

 「我は神故に。人では無いから言い返しようも無いなッ!」

 

 武甕槌が言い終えた瞬間、枯れ始めた樹海で俺の『せいなるつるぎ』と武甕槌の大太刀が激突した。

 

 *

 

 本当は分かってる。

 

 自分(おれ)が、おかしいって事くらい。




 次回

 決着。

 そして、???VS勇者、開幕。
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