彼等は総じて化け物(モンスター)である   作:千点数

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 諏訪ぶち込みます。
 もうちょい。もうちょいで西暦編クライマックス・・・・・・であります。


33:龍の、暴走

 昼。

 疎らに雲が流れており、真っ青な空が何処までも続いていそうな気さえする、快晴のある日。

 

 「りゅーくん! 戦線持たせてくれてサンクス! ライスボール作って持ってきたわよ!」

 「ありがたい。パス!」

 「味わって食べな、さいっと!」

 「ナイスボール」

 

 俺達は、戦場にて命のやり取りをしつつ、昼ご飯を食べていた。

 うん、美味しい。山賊お握り最高。

 

 戦い始めて随分と経つが、バーテックスの群れは留まる所を知らず、むしろ勢いを加速させてこの諏訪を攻め滅ぼそうとやってくる始末。

 

 何が言いたいのかといえば、昼飯を食べる時間が無い。

 腹が減っては戦は出来ぬ、というように、腹が減れば人によっては集中力が削がれる。俺がそうだ。

 

 そこで、一度歌野に戦線離脱してもらい、お握りを作ってもらって、今こうしてかじりつきながら『りゅうのはどう』でバーテックスを蹴散らしているのだ。

 普段は、作物の事を考えて『りゅうのはどう』なんて余波が凄い高威力技を使ったりはしないのだが、今回はそんなことを言っていられない。

 ただでさえ片腕に今、うたのん特製山賊お握りを持っているのだ。悠長な真似をしていたらやられてしまう。また、作物は俺が責任を持って復活させよう。

 

 「歌野はもう食べたのか?」

 「イエス。あなたが今食べているものと同じライスボールをね。

 ・・・・・・どう? 最高? 美味しい? デリシャス?」

 「後ろ二つ同じ意味だろ・・・・・・うん、山菜だけなのに食いごたえがあって、味付けもしっかりしてる。最高。美味しいぜ」

 

 忘れないでいただきたい。

 今、俺達は戦闘中である。断じて昼飯時の食卓じゃあない。

 片手で『りゅうのはどう』をブッパし、歌野は鞭でズバズバ敵を叩いて、時に裂いているのだ。

 とても戦場でする会話ではない、と自分でも思うが・・・・・・

 

 「ん、それはよかったわ」

 

 そう言って花がぱっと咲いたような笑顔見せられちゃあ、ここを戦場だっていうことを忘れてしまう。

 しょうがない。可愛いんだもの。

 

 まあ、

 

 「Geyaaaaaaaaaaaaaaaaaa!!」

 「五月蝿い今歌野と話してんだよ、木っ端が」

 

 油断はしないが。

 

 どんなに会話が和やかであろうと、戦場は戦場。

 いつ、何が起こっても良いように油断はしない。

 

 『りゅうのはどう』を右手で放ち、もう片方の左手に山賊お握りを持ってむしゃむしゃ。

 ・・・・・・嫌な感覚が、首から右肩、そして背中から臀部にかけてどんどん広がるが、気にしない。気にしていると何時か自分が変わっていく様子に耐え切れず発狂してしまう。

 

 数はそれこそ普通であれば戦いが終わっている位には倒したのだが、まだ俺達を分断させてから囲んで袋だたきにする程の数は揃っているようで、俺と歌野は良いように分断されてしまった。

 

 「ちっくしょうが!」

 

 『ドラゴンクロー』を右手に発動し、左手に持った山賊お握りの残りを口に突っ込んでから、近づいてきたバーテックスを掴むようにして『ドラゴンクロー』で引き裂き、『りゅうのまい』を一瞬発動してから『ドラゴンテール』で後ろのバーテックスを吹き飛ばし、玉突きのように複数のバーテックスに衝突させて爆散させる。

 

 雑魚が幾つ集まっても無駄だと学習したのか、超巨大な、山のようなバーテックスが四方を囲み、近づいてきて俺を圧殺しにかかる。

 

 『ドラゴンクロー』を発動していなかった左腕が巻き込まれ、潰されて激痛が走るが、その痛みを口内の肉を噛んで掻き消して右手にまだ発動していた『ドラゴンクロー』で左腕を肩口から切断し、切断した事で幾分か空きスペースが出来、そこから上に脱出する。

 

 上に飛び上がった瞬間、好機とみたのか板のようなものを持ったバーテックスがうじゃうじゃと群がってくる。

 

 「邪魔だ畜生共ぉおおおおおおおお!」

 

 それら全てを『ときのほうこう』で周囲に沢山存在した進化体バーテックス共を文字通り消し飛ばし、着地してから歌野の居るだろう場所へと一気に駆け抜けた。

 

 頼むから無事であってくれ。そう願いつつ、俺は左腕を切り離した影響で激しく失血するのも忘れてただ走った。

 

 バーテックスが異常に群がっている、その中心。

 そこに歌野が居るはず!

 

 「道塞いでんじゃねぇ、退けろ!」

 

 『りゅうのまい』を発動して素早さと攻撃力を上げ、『ドラゴンクロー』で、バーテックスを切り裂き、引き裂き、時に握り潰しながら群がっている奥へと進む。

 

 そしてとうとう、バーテックスが群がっている中心。そこに。

 

 「歌野!」

 「りゅー、くん?」

 

 右足を食いちぎられ、座り込んでしまっている歌野がいた。

 

 「え、ぁ・・・・・・」

 

 それを見た瞬間。何かが弾けた気がした。

 

 右腕と、背中の辺りに未知の感覚が走る。

 パキパキと音がして、左目の視界が青く、蒼く、碧く染まっていく。

 

 「ぅ・・・・・・」

 

 自分が自分でなくなっていくような、そんなあやふやな感覚と共に、自分の体が人間じゃない何かに変貌していく。

 自分がわからなくなって、あやふやになって意識が、ぐっちゃぐちゃで、自分が何のためにいま、なにをどうして・・・・・・

 

 

 

 俺は、何のために、この世界にいる?

 俺の、存在意義は何だ。

 

 ああ、そうだ。

 人を、勇者を、巫女を護る。ただそれだけの為だ。

 それだけ出来れば、何でも良い。

 

 俺が、化け物になったって構うものか。




 次回。

 北海道。

 番長の、クールな作戦。
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