気がつけば、俺は駆け出していた。
倒さなければならない、
自分でも何を言っているのか解らない、叫び声を上げながら、突撃する。
目の前の敵しか見えない。そんな状態だ。
撃ち合う。身体が軽い。神という理不尽と撃ち合えるほど速くなっている。
もっと、早く、速く、疾く。打ち込む拳が分身して見える程に、はやく。
「ちぃ、貴様、それは最早、神々の領域に踏み込んでーーーー」
何か言っている。解らない。
「ーーーー戻れなくーーーー」
解らない。理解出来ない。
俺が聞いている声が、どのような事を意味しているのか、
「ーーーーそうか。貴様、とうとう人間を辞めたか」
嫌だ。
そんな
「Gaaaaaaaaaaaaaa!」
「人の言葉すらも忘れたかッ、っ、ぐぅ!?」
現実を振り払うように。
認めない、認めたくない事実を消し去るように。
ただ、殴る。蹴る。
・・・・・・何の?
なにを、おれは、みとめたくない?
・・・・・・そういえば、なにを、なんの、ためにたたかっているんだっけ。
あれ?
「Geyaaaaaaaaaaaaaaaaaa!」
「ッぐぅ、舐めるなよ獣畜生がぁあああああああああ!」
ピリッとした。
おれの、からだがぴりぴりする。
いたい。
なんで、おれはこんないたいおもいをしているんだ?
「止めだ。喰らえ、異界の戦士よーーーー!」
そっかぁ。
「Ge、」
めのまえの、アイツのせいだ。
「Gayaaaaaaaaaaaaaaaa!」
「!? ・・・・・・黒焦げの貴様の何処に、そんな余力が・・・・・・」
「『きあいパンチ』」
*
気がつけば、真っ白な空間にいた。
寝っ転がった状態で。
『やっと起きたか。
「いや誰だよ」
気がつけば、目の前に友奈・・・・・・にそっくりな、ロングヘアーの口が悪い誰かがいた。
俺をその大きな、紅い瞳で見下ろしている。
友奈よりおっきい・・・・・・何がとは言わないが。とにかくデカい。杏より多分大きい。メロンかスイカ? 尚且つロングヘアー。眺めとしては最高だな。
特においらんさんみたいに着崩した着物からこぼれ落ちそうなものとその谷間が素晴らしい光けーーーー
げし。
「へぶぅ」
『ド変態が。それが恩人に対して思う心かよ畜生』
顔を踏まれた。痛い。
『感謝しろよー? 力の本流に飲み込まれてお前の根っこがモンスターそのものになっちまう前に魂ぐぃいいいーっと引っ張り出してやったんだから』
「そーいやぁ、はぁ・・・・・・何かバーサーカー化してた覚えあるわ。はぁ。
あ、はい。感謝してますはい。だから、ね? ちょっと辞めて顔を踏んだ後にぐりぐりするのやめて。なまじ裸足なぶん良い匂いするわやーらかいわで新しい扉開きそうになる」
足を退けてもらう。
・・・・・・恥ずかしい。自分の力すら上手く使えない。
『恥ずかしい? はっ、そんなもん思うのはお門違いって奴だぜ? 人間』
「どういう事だそりゃ」
起き上がってあぐらをかく。
隣に、しな垂れかかるようにして友奈モドキが座る。
柔らかい、幸せな感触。最高。
『テメェにぐぁあーっと流し込んだのは、オメーのイメージに合わせた神々の力そのものだ。・・・・・・だからあのままいってりゃオメーのイメージに最も近い・・・・・・ええと。何だっけ? ポケモン? そんなのに近い何かになるに決まってんだろ? カミサマの力ってのはようはイメージだからな。お前のその力が格闘主体になったのは、オメーのイメージがそれに最も近かったからだ。だから、力に飲まれちまったお前の姿も、それに最も合った形になった』
・・・・・・つまり、最初っから暴走前提?
うわぁ。糞野郎だコイツ。
『やっぱりコイツ魂全てモンスターにガラッと変えちまった方が良かったか?』
「さーせん」
土下座。上位存在には逆らわない。これ常識。
「そういや今更だが、ここ何処だ。そして、
『本当に今更だな。あとモドキ言うな。・・・・・・あの馬鹿天神はお前の『きあいパンチ』とか言う一撃でズタボロ。俺がズバッと止め刺しといた。感謝しろよ? そして、ここはとある
「位置に関しちゃ大体察した。あの天の神にはやっぱり格闘タイプが効いたのか・・・・・・鋼っぽい感じだったし・・・・・・あと馬鹿とは何だ馬鹿とは」
本当に口が悪い。
そして、位置に関しちゃ察してない。ただ、ノリで言った。糞ウッドって何だよ。そして何処だ。
『・・・・・・で、だ。これからオメーはどうする』
「むしろこれからどうなる?」
『戻ってオメーが御執心なゆるふわきょぬーを助けるか、ここで俺のたのしーたのしー永遠の
「ぜってぇ前者。つか、何で御執心って解ったお前」
『だって顔にマジックペンでサラサラーっと書いてあるし?』
「俺の顔は紙か何かか!?」
ともかく、さっさと行かなければ。
俺はどうなろうと構わない。
けれど、アイツは、あいつらだけは・・・・・・
・・・・・・ああ、なるほど。こんな土壇場で自覚するのかよ畜生。
「で、だ。俺の身体に戻せ。さっさと」
『覚悟完了して自分の気持ちをやっと理解した鈍感野郎にゃ悪いが、まだ俺と一緒に居てもらうぜ。まだ言ってない事があるしな』
「サッサと言え友奈モドキ」
『モドキ言うなボケ。・・・・・・で、お前はあの身体に戻ったところでまーたポカーンと理性無くすだけだ。これは理解出来るな? 人間に、もうあの身体じゃあ戻れねぇ事も。そのチンケな頭で理解したな?』
「ああ、もうそれこそ嫌という程な。で?」
『新しい身体をドドンと用意した』
「・・・・・・は?」
え、何言ってんの?
『だーかーら。入れ物新しいの用意したんだよ。面倒だったんだぜ? 用意するの』
「俺の元の身体はどうするんだよ」
『有効活用する。具体的には精霊にでもサクッと改造して使ってやるよ』
「やっぱり糞野郎だお前」
人の身体を改造する奴は糞野郎で充分だ。
「で、新しい入れ物用意してどうする気だお前。まさかお前みてぇな糞野郎が慈善事業って訳じゃねぇだろ」
『ったりめーだ。お前は今から俺の端末。具体的に言うなら依り白。オーケー?』
「・・・・・・なるほど。お前の存在を
『あとはまぁ、オマケに元の身体改造して作った精霊の外部出力機能も付けといた。勇者の限界レベルまでしか動けねぇが、充分だろ?』
「・・・・・・まーな」
ったく、糞野郎なのか良い奴なのか・・・・・・。俺の必要な部分もちゃっかり用意してくれやがって。
『で、改めて聞こう鈍感野郎・・・・・・今、樹海じゃ天神共が乗り込んで大騒ぎだ。お仲間さんもピンチ。どうする?』
「行くに決まってんだろ。二度も言わすな馬鹿」
『・・・・・・んじゃ、さっさと行ってこい。ストーンとな』
友奈モドキが発したその言葉と共に・・・・・・足元に穴が空いた?
『天の神共が化身した真っ赤な雲の上に出口開けといた。あとは好きにしろ』
やっぱりコイツ糞野郎だわ。
*
俺の、
釘宮天地クン?
*
上空目測一万メートル。
パラシュート無しのスカイダイビングを人生で初体験。あの糞野郎。いつか会ったら絶対にぶっ飛ばす。右ストレートでぶっ飛ばす。
・・・・・・やーらかい感触だったなぁ。
閑話休題。
さて。
眼下には、真っ赤な雲・・・・・・雲?
そして、隣には俺と一緒に落ちる、お人形みたいな大きさのルカリオ。
「何だこりゃ」
抱きしめてモフる。青い部分が真っ赤な以外は、普通のデフォルメされたルカリオみたいな、そんな不思議生物。
「・・・・・・なるほど、これが精霊。物理的に癒されるなオイ」
『Gau』
はなせぇ、とジタバタ暴れるルカリオを無視し、今までと同じような感じで技を使ってみる。
すると・・・・・・抱きしめていたルカリオが、俺の拳に吸い込まれた?
「ああー、なるほど。お前がエンジンにして入力装置か。まぁ、確かに。普通に考えりゃそうだ。だって、元々俺の、めちゃくちゃな力が内包された身体だもんな。そりゃそーだ」
そして、納得する。
・・・・・・なら、あとは穿つのみ。
天の神は、上から俺が来ている事に気がついてないのか、下界への攻撃に集中しているのか、俺には一切攻撃を仕掛けて来ない。
有りがたい。今はその、神の油断に付け込ませてもらおうか。
「何時でも何処でも
『アームハンマー』。
見事に決まったその不意打ちの一撃は、天の神が化身したとかアイツが言っていた赤い雲にヒビを入れ、砕いて、ぶち抜いて。
そして、
「よぉ、何泣きながらボーガン撃ってんだ杏」
「天地さん・・・・・・天地さん!」
本日二度目、カッコイイ登場を俺が果たし、杏がそこに抱き着いてきて。
真っ赤に枯れて行く樹海も、その侵食が止まり。
世界は、樹海から、現実へ。
空は勿論、青々と晴れていた。
少々疾走気味?
さて。
次回。
諏訪。
アーンド北海道。
長くなるかもです。