彼等は総じて化け物(モンスター)である   作:千点数

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 めっちゃ間が空いてしまってすみません。
 遅めの36話、どうぞ。

 ちなみに、諏訪のお話ですがドラゴンとは全く関係ないお話になってしまっています。すみません。


36:転移の理由(わけ)

 遠くで、咆哮が響いた。

 諏訪の外にいる俺にも聞こえて来る。馬鹿デカい声だなオイ。

 

 「諏訪のあんちゃんは化け物になっちまった、か。俺も後どれだけ理性保ってられるかねぇ」

 

 未だ会った事が無い自分以外の化け物。

 この時代にゃ俺合わせて四人いるらしいが・・・・・・全員化け物になるのが前提のパワーを授けられたのだとしたら・・・・・・やっぱりあの神モドキはクソッタレだわ。

 

 山びこのように反響する咆哮をBGMに、バーテックスを殴る、蹴る、凍らせる、砕く。

 とにかく、密度と数が多い。

 

 俺が作った、氷の壁。

 いくら数が揃っても砕けないように作ってある。何せ。マイナス二七三度で固定してある。

 空気が極低温で凍り続けてるんだ。壁は時間が経つにつれ、厚く、大きくなっていく。本当に『ぜったいれいど』様様って奴だな。

 

 だから、奴らは揃って俺を狙う。俺を倒せば、俺が発生させた氷の壁が消えると考えたんだろう。だから密度が高くなる。

 ・・・・・・何でこいつら頂点名乗ってるのか意味不明だな。

 頭使えよ。密度高くなったらぎゅうぎゅう詰めの押しくらまんじゅうで隣り合う奴らと動きを阻害し合って最終的にほぼ動けない状態になる事ぐらい理解出来るだろうに。

 

 「数が多いってのも不便だなぁ? オイ」

 

 『ふぶき』で、ぎゅうぎゅう詰め状態のバーテックス(アホども)を凍らせ、叩き壊す。

 

 息は白い。

 今の季節は冬だから当たり前・・・・・・だが俺の吐く息は、まるでダイヤのようにキラキラと輝いている。

 ・・・・・・とうとう、吐く息が零下に達したか。

 

 「『あられ』」

 

 天候を変化させ、氷タイプに有利な状況を作る。

 まだ、木っ端バーテックス共の数は多い。

 まだ、人間である内に終わらせる。

 

 「人間の状態で帰るってのが、俺の第一目標なもんでな。ワリィが早々に死んでくれ」

 

 空が曇り、霰が降りはじめた、その時。

 

 一瞬で、周囲のバーテックスが氷の彫像へと変化した。

 

 「ふぅ・・・・・・」

 

 息を吐く。

 

 また。

 身体が冷たくなった。

 

 そして。

 

 人間の身体じゃあ、どうやらこのくらいの温度が限界だったらしい。

 いくら氷タイプとは言え、冷えすぎてもいけないようだった。

 

 「あー、限界、だ、畜生が・・・・・・」

 

 *

 

 『ちゃっちゃと起きろ後がつかえてんだよ』

 「痛ったぁ!?」

 

 星が散ったかと思えば、意識がハッキリとしてきた。

 おでこが物凄く痛い。身体を起こして、目を開けてみればそこは見たことのある真っ白い空間・・・・・・

 

 そして、変顔の描かれた仮面を付けている神主がいた。

 そのふざけた面を、見たことがある。

 

 「よぉ、久しぶりじゃねぇかカミサマ」

 『おー久しぶり。いやぁ、ギリギリだったんだよ? 君の魂が氷ついて意思のある氷像になっちゃう前にこう、思念と魂だけグイッと引っ張り出してあげたんだから。ちゃんと、肉体までとってあげてる親切さ。素敵だと思わない?』

 「そんなになる力を俺に与えた時点で親切じゃねぇけどな」

 

 ケッと吐き捨てる。

 人間がそもそも扱えないような力をホイホイ渡すようなクソッタレにはコレで充分だ。

 

 『わぁお辛辣ぅ。でも、そんな力じゃなきゃあの星屑共さえも倒せないんだから、逆に感謝してほしいんだけどねぇ』

 「はぁ・・・・・・で? 此処に俺を呼び出した理由は何だ。テメェみたいな奴がまさか慈善事業で命を救う為だけにこんなことをするとは思えねぇ」

 『・・・・・・うーん、簡単に言っちゃうなら確認、かなぁ? 岡山県付近に放り出した一番最初の子はゆーなちゃんに取られちゃったし、僕が送り出した君達が一体どんな感じになっちゃったのかを君ともう一人、諏訪の近くに放り出した子で確かめて見ようかなってね』

 「確か、四人送り込んだんだろ。残りの一人はどうするんだ」

 『知らにゃい。ていうか、二人分でデータ充分だし、放っておくかなぁ』

 「お前やっぱり糞野郎だわ」

 

 カミサマってもしかしてこんなのばかりなのか。だとすると、慈悲も糞も()ぇ集団って事になるが。

 ああ、そもそも価値観が違うのか。だとすると納得だな。

 

 『何とでも言ってどうぞ。罪悪感なんて感じないし』

 「そうかい。何言っても無駄、か。

 んで、お前の言う確認ってのはどうするんだ」

 『もう終わってるよ』

 「いつの間に!?」

 

 俺が大袈裟に驚いて見せると、カミサマは顎を手でさすりつつ、喜色に満ちた声で言った。

 

 『いやぁ~、本当に良い結果が得られたよ。コレでまた、新しい転移者をこの世界に突っ込む時は長く遊べるね(・・・・・・)!』

 「っ、ハァ!?」

 

 コイツ、今何て言った?

 

 『いやぁ、本当におあえつら向きの世界があって良かったよ。僕ら神々は基本的に全能なもんで、意図的に全能じゃない身体を作ったりしてそこに入ってみたりとかして暇潰しをしていたんだけどね。飽きてきた所にちょーっと二級の神格共が人間滅ぼそうとしてたから、暇潰しついでに救ってやろうと思ってお前等に適当な神の力突っ込んで遊んでたのさ。

 いやぁ、まぁ化け物化しそうになった事については謝るよ? 何せ今僕は意図的に全能じゃない身体になってるものでね?』

 「て、テメェ・・・・・・」

 

 遊び、だと?

 俺が死にかけたのも、一人見放されようとしているのも、全て遊びの範疇で、あの世界がただのゲーム盤って事か?

 

 『ま、僕はあの世界がどうなろうと知ったことじゃ無いけれど、暇潰しをするためにも彼等には生き残って貰いたいね』

 

 畜生、こうやって戦ってきた事すべてがコイツの掌の上での出来事だったなんて。

 

 『・・・・・・あ、ちょっと喋り過ぎたかな。ま、良いや。別に知ろうが知らまいがどうでも良い事だしね。という訳で、もう君用済み。力抜き取って、化け物化した部分削って再構築した身体に魂入れ直してあげるから、もう戻って良いよ』

 「・・・・・・っ、待ちやがれ!?」

 『だーめ。待たない。後もう一人此処に呼び出す手筈なんだ。後がつかえちゃう』

 

 身体が透けていく。

 俺が一言言うにつれ、どんどんそれは加速していく。待て。一つ、ただ一つ確かめる事がある。

 

 「いいや、待って貰うぜ。俺の質問に一個答えるまではな! テメェ、あの世界をアレ以上酷くするなんて事にはしねぇだろぉな!?」

 

 コレは、ただの確認。

 敵がこれ以上増えるかも、という、恐怖から出た言葉だった。

 それに対してカミサマは、心底呆れたという風に言った。

 

 『君は僕の言葉を聞いてなかったのか? 僕は、あの世界がどうなろうと知ったこっちゃ無いんだ。だってただの暇潰しなんだから。世界を滅ぼした所でゲーム盤が一つ無くなるだけで、僕には何のメリットも無い』

 

 此処でカミサマは言葉を区切った。

 そして、背を向ける。もう言うことなど無い、と。そんな風に。

 

 「そうかい。そりゃ良かった」

 

 そんな様子のカミサマに、俺は史上最大級に安心しつつ、その場から消えた。





 次回

 諏訪

 ドラゴン(今度こそ)

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