彼等は総じて化け物(モンスター)である   作:千点数

52 / 63
エピローグを投稿し直します。
なにぶん、文章が足りない部分がございましたので。
こんな作者で申し訳ございません。


エピローグ//西暦_Side-『S』_Light-side

 深く、深く。

 大海に沈み込むような、そんな感覚を覚える。

 もう余り見えない目を開けば、今自分は海に沈み込んでいるのだと理解出来た。

 

 ああ、そういえば、と灰となってしまっている右手を伸ばし、水面に翳す。

 その手は水中に溶け、今にもバラバラになりそう。

 

 (結局、一人にしちまったな。あいつ)

 

 ああ、こんな事になるのなら、恥ずかしがらずにもっとこちら側から話しかければ良かった、と後悔する。

 今まで直そうと思って直せなかったコミュニケーション下手を恨んでも恨みきれない。

 

 そろそろ、意識が無くなってきた。

 ーーーーまあ、それもそうだ。

 今、水面上に広がる青空と引き換えに、俺は神を自らの身を燃やして打ち砕いたのだ。

 今のこの身は、言わば燃え滓。残り物。もう燃える事など無い灰。

 

 ああ、何とも未練多い最期な事だ。

 

 そんなことを思った瞬間、体の力が全て抜けた。

 沈み込む感覚。

 最後に、何かあったかい感覚がしてーーーー。

 

 *

 

 『で? せっかくかっこよく再登場したは良いものの? 空から急降下一撃アームハンマーで右上腕粉砕骨折、と。

 ・・・・・・一つ言っていいか? 馬鹿だろお前。技出すなら体全てを強化するくらいしろよおバカ。精霊を拳だけに降ろすとか馬鹿か。馬鹿なのかそうか馬鹿か。勇者や大社・・・・・・いや今は大赦か、の奴らの方が扱いが上手いぞこのおバカ』

 「すみませんそろそろ正座解いても良いですかそれと膝の上に乗らないで下さい足痛いってぐりぐりしないで痛い痛い痛い痛い痛い!?」

 

 神樹の内部、根っこ部分の末端にて。

 俺は、友奈とよく似た外見の何かと会話を繰り広げていた。

 着物を着崩した美少女がある二つの部分が大きくて足の付け根がぷりんっ、としたグラマラスばでぃーをグニグニと自分の身体に押し付けられて、何とも嬉しいやら、正座の上に向かい合わせに座られてグリグリされて痛いやら痺れるやらで天国と地獄を同時に味わっている。

 

 いってぇな、この女郎。思いっきり体重かけやがって。

 

 『ほほーう? あわや最悪全身骨折といったところを? 救ってやった超絶美しい着物美()な女神様に対して? 思うことはお礼じゃなく悪態と。ほぉ~?』

 「ごめんなさいごめんなさい!? グリグリ止めてぇぇぇえええええええええええええ!」

 

 こ、このアホンダラ! 更に体重かけやがって・・・・・・畜生いてぇええええええええええ!?!?

 

 『ったく、せっかく救った命なんだ。もっと丁重に扱いやがれ。死者蘇生も出来ねぇ訳じゃあねぇけれどそれでも限界ってのがあるんだぜ?』

 「あーいてぅいまてーん」

 

 蹴り上げられた。

 どしん、と背中を強く、柔らかい地面に打ち付ける。あ、いや正確にはベッド。

 神樹内部から、一気に現実に引き戻される。

 

 「イテテ・・・・・・あの暴力おっぱい女、本気で蹴り上げやがって」

 「へぇ、天地くん。その暴力おっぱい女って誰なのか教えてくれないかなぁ?」

 「そりゃあモチロンあの着物美人を自称するドグサレに決まって・・・・・・んん?」

 

 変だなぁ。あのドグサレと似ているようでどこか違う、可愛らしい、ちょっと闇に落ちかけた声が聞こえるぞぉ?

 

 ・・・・・・うん、気のせいかな。気のせいだよネ!

 

 「ハハハ、友奈がまさかこんな場所には・・・・・・」

 「い、る、よ?」

 「ウェァアアアアアア!?」

 

 変な裏声が出てしまった。

 だって目の前にニッコリ笑顔の高嶋さん家の友奈ちゃんいるんだもん。かわいい。うん、いないと思ってたからビックリしたよ。

 

 だってここ、病院の俺のベッドだぜ? しかも友奈(たかしー)の後ろ、壁にある時計によると現在夜の十時。面会時間なんて終わってるよね。ねぇ?

 

 「で、教えてよ天地くん。さっき言ってた暴力おっぱい女って、どんな女の子なのかなぁ?」

 「・・・・・・ヒェ」

 

 かわいい。かわいいのに、目がヤバい。具体的に言うと他の女の子と話してる時に見る杏の目みたいな感じ。なんか知らないがアイツは俺の事じぃ、っと見つめるからなぁ。得に女の子と会話してる時。

 

 おかしいなぁ何で君がそんなお目目をするのかなぁ?

 いや、うん。まぁ、お友達としての付き合いはありましたよ?

 

 何で病んでるのぉぉぉおおおおおおお!?!?

 

 俺の良心ダブルコンビの片方である"ぐんたか"の時の雰囲気は何処にすっ飛んだ!?

 

 あ、すみませんちょっとマジで落ち着いてくださいここを見られるとヤーバイのが一人居るので・・・・・・

 ほら、今もチョロッと開けたドアの隙間から真っ黒い目をしてこっちを見ている・・・・・・ってマジで居るし。終わった。

 

 ハイライト何処に落っことしたの? ねぇ。

 ハイライトってそんなコンタクトみたいにポロポロ落っこちたっけ?

 

 ・・・・・うん、なんで居るのか疑問だけど今はあえて無視だ。

 あ、また目の深度が上がった。

 

 「ねぇ、ねぇ・・・・・・ね?」

 「や、あの、そのぉ・・・・・・」

 

 いや怖い怖い怖い!?!?

 ハイライト無いのに何か瞳が無機質に光ってて怖い!?

 それとベッドに乗ってにじり寄るんじゃあなぁあああああああい!

 

 「あは、もしかしてぇ、押し付けられたりとかしたのかなぁ?」

 「ええと、そのぉ・・・・・・」

 

 答えにくいわぁ!?

 

 「精霊助けtムグゥ!?」

 「私のじゃ、だめ?」

 

 押し付けられてる!

 何か凄く柔らかい、ちょっとハリがあってフニフニした、メロンってわけじゃないけれど確かに感じられるマシュマロとプリンが合わさったかのようなプニふわなサムシングがぁああああああ!?

 

 ドッパァンッッ!!

 わーすごい病院の扉が一瞬でハリネズミになって消し飛んだぞー(白目)?

 

 「もう限界っ、私も混ぜてぇ!」

 

 杏さん、俺は意識を保つのが限界です。胸に埋もれて死ぬのは幸福ではありますが別に本望では無いので助けて下さい誰か。

 

 ・・・・・・。

 

 当然院長から正座させられて怒られた。

 

 *

 

 「探せ! せっかく四国に着いたってのに!」

 「もう、裕也ァ! マジで恨むぞこの野郎! 罪作りにも程があるぞ畜生ー!!」

 

 *

 

 海が好きだ。

 優しい父親のように、全てを受け入れてくれる。

 

 だから、この愛に溺れて、今から身体さえも、命さえも溺れようとしている私も包み込んでくれるだろう。

 

 「この海の向こうに、裕也、おまえはいるんだろう?」

 

 今、そっちに行く。

 

 ・・・・・・誰だ、私の行き先を邪魔するのは。

 手を引っ張られたら、彼の元に行けないだろう。

 

 「離せ、私は、古波蔵棗は、彼の元に行かないとーーーー!」

 「・・・・・・残念だが」

 

 ・・・・・・悪いがそっちに、自分はいない。

 

 「ゆう、や」

 

 *

 

 諏訪。

 

 湖に住まう神が守護するこの土地。途中滅びかけたがそこは、念願の低身長脱却に成功したある少年によって窮地を脱した。

 

 「まあ、俺の事なんだがな・・・・・・」

 

 四国のある少年からの依頼で、この先の緩やかな『諏訪の滅び』を見守ろうと決意したところでこんな嬉し恥ずかしな文章を綴らねばならなくなった。

 

 題名は勇者御記だとか。何処の伝記だよ。ネーミングもう少しマシにならねぇのコレ。

 

 まあ、ツッコミはこの際無しだ。なぜならばツッコミをすればするほど、まるで叩けばいくらでも湧き出る埃のようにツッコミ所が指数関数的に増えていくからな。

 

 ・・・・・・いや、四国の方の『二人』が最初にページを埋めているんだが、どうにもフェイクが多い。何だよ「女らしさは微塵も無いイケメン」って。何だよ「コミュニケーションが上手い口上手なイケメン」って。

 

 明らかに嘘八百だろうが。

 天地は、神になる前に出会った初対面の俺からすれば女にしか見えないくらいの容姿を持っていたし、声も透き通るようなソプラノボイス。美少女らしさはあったがイケメンらしさなんて微塵もカケラも無かったぞ!?

 それにこの間初めて精神世界で出会った『ユウヤ』はガッチガチのコミュニケーション下手な口下手野郎だったじゃねぇか。

 

 ・・・・・・つか、好き勝手書きすぎだろお前ら。『この物語はフィクションです』なんてテロップが出てもマジで気にならねぇ現実改変レベルの代物になってんぞコレ。

 

 つーか、突っ込んじまったよ!

 嘘八百が多過ぎてそれにツッコミ入れちまったよチクショー!!

 

 「コイツらマジで腹上死しねぇかな。主にこのツッコミ所満載の嘘八百ばかりのトンデモ書物書き上げた罪とかで私罪って感じで」

 

 この書物の行き先が不安になってくる。新しくなった大社改め大赦のお偉いさん方がどうにでも編集、改稿、検閲してくれるだろうが・・・・・・おい、『ユウヤ』テメェ。濡れ場なんて書くなよバカタレ。間違いなくコレR指定がひっ付く発禁本になるぞ!?

 

 オイオイオイオイ、うわぁー、あいつ生きてた頃こんなんやってたのか。

 う、うわぁー。ええ、そこにそれぶっさすの・・・・・・

 

 ・・・・・・うんコレ間違いなく発禁だわ。編集と検閲を頑張ってねお偉いさんの皆様方。

 

 *

 

 「はいあーん」

 「あーん、って自分で食えるわアホタレ。俺はお前と同い年だからな?」

 「見た目私より二つくらい下だから問題ない!!」

 「眼鏡光らせて何言ってんだこの変態眼鏡ッ!?」

 

 最近彼女のポンコツ化が激しいという本を出したら誰か買ってくれるだろうか。

 ああ、というかポンコツ化を誰か止めてくれ。俺があのドグサレに化け物化した部分削り落とされて物理的にちっちゃくなっちまってショタっ子になってからずっとこうだ。

 

 一つ、突っ込ませろ・・・・・・

 

 ヤンデレ何処に消えた!?

 

 オイオイオイオイ、お前病んでたよな?

 俺が正直お手上げってレベルで。いや、病み上がりは良いんだが変わりにポンコツ化ってお前苦労が前と全く変わらんぞ雪花!?

 

 「ばんちょー! あーそーぼー!」

 「おう少し待ってろチビスケ。このポンコツをどうにかしたらすぐ行く」

 「わかったー!」

 

 トテテテテ、と駆けていくちびっ子。うん、北海道から連れ出したが元気そうで良かった。

 

 嗚呼そして雪花。お前はどうしてそんなポンコツになってしまったんだい?

 眼鏡が変な光り方して真っ白い上にハァハァ息が荒いし、傍から見ると年下の小学生に興奮してる変態中学生だって自覚はお有りですか?

 

 ・・・・・・いかんいかん。つい、変なテンションになってしまった。どうにも俺は苦労人な気質があるから、こういう事が多くて敵わんね。

 うん、あのドグサレ(かみさま)から目茶苦茶ヤベー事聞いたり、体削られてショタ化したり、いつの間にか好きな女がポンコツ変態化していたり・・・・・・。

 

 何か酷い目にばかりあってるの気のせいか?

 

 「どうしたの鬼十郎君いきなり頭抱えて」

 「いや、どうにも苦労が多いなと思ってよ」

 

 得に今の状況。

 

 後ろから雪花に抱きしめられてご飯を全て『あーん』で食べさせられるという、ショタコン大歓喜な状況になっているのだ。

 というか最近、ポンコツ化してからいやに俺の世話を雪花は焼くようになったけれど、どうしてだろうか。

 ・・・・・・嬉しいっちゃあ嬉しいが、行き過ぎなのが玉に傷だなぁと何時も思っているのだが。

 

 *

 

 「ふふふ、おねーさんがぜーんぶお世話するからね? 鬼十郎君」

 「私が全部やってあげるから」

 「何時か、私がいなきゃ生きていけないってくらい依存させてあげる・・・・・・ふふっ」

 

 *

 

 このような感じで、彼等の戦いは終了し、日常へ戻ったんだ。

 でも、まだ。まだ、終わっちゃあいないんだよ。

 天の神はまだ完全に倒された訳じゃあない。あくまでも追い返されただけ。

 何百年経とうと必ず。いつかは戻って来る。

 そして、もう一つーーーー

 

 ーーーー君達はまだ、この物語における最大にして最上級の、ただ一つの謎を解き終えてない。

 

 さぁ、この世界の戦いの『理由(わけ)』をもう一度、考えてみようじゃないか。




錦裕也君がどうなったのかは本編描写からご想像にお任せします。

もう少し、エピローグにお付き合い下さい。

因みに、本編描写の何話かをこっそりと幾つか加筆していたりします。

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。