[四国/香川/夕方]
「真央、まーお。どしたのそんなブルーな雰囲気纏って」
真央が
また、真央が今度は、三ノ輪のご両親を名乗る人とと大赦の役員の人達に呼ばれて、病院のロビーから去って行ったと思えば、三十分後くらいになんかめっちゃ重苦しい雰囲気を纏って帰ってきた。
ソファーに腰をドカッと落とし、まるで仕事帰りのサラリーマンみたいだと思った。
「何、やっぱあれ?三ノ輪さんとこの父親から「うちの娘はお前にやらん!」みたいな感じの事言われた?」
「ううん、違う・・・・・・」
「え、んじゃ良かったじゃん。あれか、「うちの娘とこれからもどうぞよろしくね」って感じで三ノ輪さんとこの母親から言われたん?」
「それだったらマジで良かったよ兄ちゃん・・・・・・」
そう言って更に暗い雰囲気を纏う真央。いやマジでどうした!?
「いや、ね?まず最初に、なんか僕がやったことを、機密以外の情報を少々のフェイクを交えつつなんか銀ちゃんがご両親に聞かせたらしくて、それで三ノ輪さんとこの父親から土下座される勢いで感謝されて、それでなんか娘をよろしくとか言われたあと、ちょっと、うん、何と言うか最初の町に魔王が現れたって感じの意味不明な事態があったんだよ・・・・・・」
「・・・・・・その意味不明な事態とは?」
俺が興味半分面白半分で聞くと、真央は震える声でこう言った。
「ええと、ね。「君が銀の婿になるのか、よし、確か君は家が無いんだったな、今日から家に来ると良い。かなり早い気もするが、同棲に調度良いだろう」って父親の方から言われて、母親の方から「末永くあの娘の事をよろしくお願いします・・・・・・」って言われた。
・・・・・・なんか、さ、もう婿入り決定してたよ。うん、もう十八歳まで苗字変えたくなかったけど、もう明日から僕三ノ輪真央とかになってそうだよアハハー・・・・・・うん、別に良いんだよ?僕も銀ちゃんの事好きだし。でもこうも展開が速いと戸惑うって言うか。というかさ、何処の馬の骨とも知れない僕と自分の長女、もとい愛娘をさ、こうさ、イキナリくっつけようとするかなぁ、もっとさ、あるじゃん。僕がどんな人間かーとか、本当に娘を幸せにしてくれるのかーとかさ。
うん、マジでこれに関しては永遠の謎。なんでそんなアッサリしてんの!?人の人生決める大切な事じゃないの!?」
あ、真央が外堀完全に埋められて詰んだ。
真央は確か、十八歳までは自由を謳歌したいとか言っていたが・・・・・・今回の事に関して、そうは問屋が卸さなかったようだ。
真央は三ノ輪の事が好き。だけど、もう少しジワジワと距離を積めていきたかったのが両想いというチートウェポンにより距離が一気に詰められて、ただでさえ近い距離がこの一時間弱でワープしてゼロになってそのまま
・・・・・・心がエベレストどころか火星にあるオリンポス山並に不動だと自負している俺もビックリだぜ。
「真央、良かったじゃん、とりあえず可愛いお嫁さんが出来るよやったねじゃん。とりま結婚おめー」
「・・・・・・ありがとう兄ちゃん、でもその台詞はあと八年後に聞きたかったな」
知ってるか真央、愛の前に法律なんてあって無いようなもんらしいぞ。
まあ、真央もなんだかんだ言いつつ頬がにやけて「えへへー」なんて嬉しそうな声漏れてるしめっちゃ笑顔でニヨニヨしてるし、この件についてはもういっか。後は真央、頑張れ。
・・・・・・貞操はとりあえず十八まで守っとけ。
尚、俺に三ノ輪のご両親とその他親戚が「あなたの弟の真央さんを下さい」と、ど下座ってきたのは完全なる余談だろう。
*
[三十分後/日の入りの時刻]
病院から鷲尾と共に出て、大赦のリムジンに乗る。
あのあと、検査の結果なんか右足が折れかけてたらしい乃木は病院で入院という事だった。普通に歩いてたり樹海じゃ三ノ輪に抱き着く為に小走りしてたけどな・・・・・・ちなみに、あのまま放ってたらマジで綺麗にポキン、だったらしい。
リムジンの中で、そういえば俺の住む場所どうなるんだろう、と考えていたら、急にリムジンが道の中途半端なところで止まった。
「オイオイ運転手、なんでんなとこで止まるんだ?おい、運転手無視か、オーイ!」
「違います、恐らくこれは・・・・・・!」
聞けば、樹海化とか言う現象の予兆として、時間が止まる現象が起こるらしい。え、またあの見た目が無機物な化け物とまた戦うん?
呆然としている内に世界が変わり、俺が最初に見た樹海となった。
遠くには、超でっかい太陽のような形をした化け物と、それを取り巻きのようにして囲む十一体の化け物達が見える。
それぞれ何処か見覚えのあるような形をしている。
鷲尾が勇者に変身し、状況を見て顔を真っ青にした。
まあ、当たり前か。勇者は鷲尾以外入院して、更に勇者に変身するアイテムであるスマホは確か鷲尾に渡されている予備機以外は大赦の役人の人達が勇者アプリとやらのアップデートの為に持って行ったと聞いた。
つまり、この戦場、俺と鷲尾の二人で持たせるしかないのだ。
真央の援護は宛にならない。
どうも真央は、三ノ輪を救うときに『Z技』を使ったらしく、俺はまあ通りであの時の雷はアホみたいな威力だったのかとひどく納得した。
『Z技』は、凄い威力を出すのと引き換えに、自らの『ゼンリョク』を使って攻撃する。ゲームじゃ一度っきりしか使えないというだけだったが、真央は樹海が解かれてから大赦、そして病院に行くまでの道すがら、「疲れてちょっと今日は激しい運動が出来そうにない」と言ったのだ。
つまり、『Z技』はこの現実世界においては文字通り一撃技なのである。そして、それを使った真央は、もう戦えないと考えて良いだろう。
うーん、余りにも鷲尾のメンタルがヤバそうだ。なんかもうガタガタ震えて、顔の色が消え失せている。
・・・・・・少々、元気付けるか。
「おい、鷲尾。なんか勝手に絶望してるとこ悪いが、こちとら負ける気はサラサラねーぞ」
「え・・・・・・」
鷲尾の不安そうな瞳が俺に向く。
俺はニヤリと笑いつつ、鷲尾の頭をわしゃわしゃーと撫でながら彼女に向かって自信タップリに言い放った。
「この防御特化の攻撃力くそ雑魚ナメクジが鷲尾、お前の事を守り抜いてやる。なぁに安心しろ。攻撃は一つもお前には絶対に
それに、困った時の
俺がそう言うと、鷲尾は少しの間俯いた後、覚悟を決めた顔で、
「すみません。・・・・・・兄貴さん、盾役の件、よろしくお願いします。・・・・・・バーテックスは、絶対に銀やそのっちの所には行かせない!」
そう言って、弓を片手に出現させた。
「よっしゃその意気だぜ鷲尾!よーし、んじゃ、いっちょやろうか!世界を守る御役目って奴を!」
「行きます!」
鷲尾の放った矢が、魚のような形の化け物を丸く撃ち抜いた。