待ってた人はいないかも知れませんが。
[何処かの部屋/Side 兄貴]
「知らない天井だ・・・・・・」
よっしゃ言えた。生きている内に言いたい名言第一位。
よく見てみれば、三ノ輪が入院している病院の病室のベッドの上か。服装がアニメなんかで見たことがある薄いブルーの病人服で、なんかイロイロ俺の腕にチューブが繋がっている。
・・・・・・にしても、だ。
「俺、間違いなく死んだ、とあの時思ったんだけどなぁ・・・・・・」
俺の左胸に、深々と光る矢が突き刺さったはず。なのに、俺は何故生きているのだろうか。いやぁ、やはり俺の鋼チートぼでーは伊達じゃないようだな。
よく見れば、俺の体にはイロイロ貼られている。電極やら何やら。うん、凄い。穴とか空いてた筈なのに全部塞がってるや。
体を起こすと、俺の太股に小さい人影が見えた。
「・・・・・・鷲尾?」
鷲尾は、俺の右太股を枕にして、「すぴー」と寝息を立てていた。
寝顔可愛い。乃木に写メったろ・・・・・・そういやケータイねぇや。というか何故いるし。
俺、重傷負ってたんだから普通面会謝絶とかなってなかったん?
俺が鷲尾のサラサラの髪をいじりながらその可愛い寝顔を見ていると、鷲尾が目を覚ました。
「うにゅ・・・・・・」
「おっはー、山ちゃんでーす。山ちゃん違うけど」
「ふぇ・・・・・・!?」
ボーッとしながら辺りを見回し、そして俺の顔を見た瞬間、驚愕したような表情になった。
「兄貴・・・・・・さん?」
「おう、名乗らない武田さんちの兄貴さんだぜ?わっしー。おはようさん。そういえば、俺何日おねんねしてたか聞いていい?」
どのくらい俺は
声を押し殺し、しゃくりあげながら泣きじゃくる鷲尾を見て、そういえば、俺、鷲尾の目の前で光の矢刺さった状態でぶっ倒れたんだっけ、と思い出す。オイオイ阿呆なのか俺は。普通ならトラウマもんじゃねーか俺の馬鹿たれ。
「はいはい、俺はちゃんと生きてますよー」
優しく頭を撫でておく。なんかイロイロと左腕に繋がっている為、右腕しか動かせないから片腕で我慢して欲しい。
腕、というか体全体が重い。全く、俺は長い間寝ていたようだ。心配かけさせてしまったな。
・・・・・・少しの間こうしとくか。
俺のいる病室に、しばらくの間泣き声が響いた。
*
目を真っ赤に腫れさせた鷲尾が俺のベッドの傍らで佇まいを正して、ちょこんと椅子に座る。
「その、お早うございます」
「おうお早う。何日ぶりなんだ?」
「い、一週間です」
「いっしゅーかん!!」
なんと、一週間も寝ていたらしい。通りで身体が怠い上に重い訳だ。
・・・・・・でも、この身体の『重さ』はそれだけじゃ無い筈。
呼吸が苦しい上に、何だか身体に・・・・・・ポッカリと穴が空いたような感覚がするのだ。
もしかしてーーーーーー
「なぁ、鷲尾」
「・・・・・・ーーーっ」
低い声で俺が鷲尾を呼ぶと、鷲尾がビクリと身体を震わせる。
「嘘偽り無く言ってくれ。どんな答であったとしても、俺はそれを真っ正面から受け止めようじゃあないか・・・・・・俺の身体、今どうなってるんだ?どんな状態なんだ?」
俺がそう問うと、鷲尾は俯くと、ぽつりぽつりと俺の問いに対する答を言い出した。
「正直に言ってしまうと、とても五体満足とは言えない状態です」
やっぱりか。
身体にあれだけ矢がぶっささったんだ。それ相応の怪我があるだろう。御都合主義なんてそう無いのだ。
「まず、肺が片方無くなりました」
鷲尾が、震える声で言う。
「次に、腸が切り取られました。消化に悪い食事はあまり出来ないそうです」
俯いた表情からはわからないが、とても、とても辛そうな顔をしていると思う。
「後遺症も残っています。身体のあちこちに、痺れが残るそうです。体中に付いている傷の跡も、一生残ります」
気がつけば、鷲尾はまたポロポロ涙を流していた。
「生命の維持には問題無いそうですが、それでも、生きていく事が、その・・・・・・」
嗚咽を漏らす鷲尾。
ああ、そこまでヤバいのね。
「大丈夫だって、言ったろ?お前を守るって。結局俺がやりたい事やって付いた傷だしお前が泣く必要無いっての。ほら、な、泣き止んでくれ。じゃないと俺の方が逆に罪悪感を感じてしまう」
女の子一人守れたんだし名誉の負傷だってこんなの・・・・・・そんな感じに思っていると、鷲尾が何か決意したような顔で俺の方を向いた。
なんだなんだと思っていると、
「責任取ります」
「へぁ?」
な、なんか素っ頓狂な言葉が聞こえたぞ?
「私を守って付いた傷だと言うのなら、私が責任を持って介護します。私の生涯をかけて貴方の世話をします」
「え、いや、その・・・・・・」
「いやだとは言わせません。ここを退院した跡は、私の家に来て下さい。確か、住む場所が無いんですよね?なら、私の家で寝泊まりしてください。ああ、貴方は何もしなくて良いです。私が全て『お世話』しますから」
そう言って鷲尾は、とても、とても綺麗な笑顔で微笑んだ。
目が深淵の彼方のような黒い瞳になっている事以外は、本当に女神の微笑みのようである。
・・・・・・な、なんかヤバい。何がヤバいって、真央の未来のお嫁さんである三ノ輪が真央に向ける愛の重さ並のヤバさを感じるからヤバい。
「遠慮は要りません。もう親に許可はとってあります」
「許可を親は何故出した!?」
「私の事を文字通り命懸けで、『生涯』守ってくれる事を誓ってくれた人だと言ったら直ぐに出ましたが・・・・・・?」
おおーい、尾ひれが付きまくってんぞー。
俺は確かに、『お前の事を守り抜いてやる』とか、『お前を守ると言ったからには、
・・・・・・あれ?俺が言った言葉、時と場合と聞きようによってはプロポーズじゃね?
なーにを口走ってんだ過去の俺ェ!もうちょい言葉のチョイスってもんがあるだろぉ!
「何も心配要りません。私と共に未来を歩みましょう?」
・・・・・・ゴメン真央。俺も人生の墓場に入りそうになってる。あの時テキトーな対応してマジでごめんなさい。