彼等は総じて化け物(モンスター)である   作:千点数

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 今日が七夕だって事を、夕方にいきなり思い出した。


ゆゆゆいにおける、七夕(?)

*1

 

 七夕。

 それは、天の川の両端にそれぞれ住んでる織り姫と彦星が年に一度、カササギの橋を渡って出会うとか出会わないとか、まあ、そういう銀河レベルのラブストーリーが繰り広げられるというリア充爆発しろな日である。

 

 と、武田兄貴(高)と武田兄貴(中)は認識していた。

 

 「「と、言う訳で明日校内のリア充を潰そうぜ♪」」

 「馬鹿だコイツら・・・・・・!どうしてそうなった・・・・・・!?」

 「単一音源(モノラル)口調でとんでもねぇ事をサラリと言いやがった・・・・・・!!明日コイツら命ねぇな・・・・・・」

 

 正直言おう。馬鹿である。作者も思う。

 

 七月六日の深夜。例の教室には、兄貴二人組と服部鬼十郎、そして草薙竜介が集まっていた。

 他の面々は・・・・・・察して戴きたい。

 

 「だってそうだろう!?人目も憚らずあいつらリア充はイチャイチャと・・・・・・!!」

 「同意」

 

 悔しいのう、悔しいのう・・・・・・と、バカバカしく叫び声を上げる二人の兄貴(馬鹿)

 そんな二人を見て、鬼十郎と竜介の二人は、

 

 「馬鹿だコイツら・・・・・・明日の晩、確か例の集まりだったよな?」

 「ああ、確か七夕特別集会だっけ?・・・・・・ったく、一日早くSNSで呼び出されて何事かと思ったじゃねぇか・・・・・・恐らくコイツら明日は来ないな。主にメガロポリスなゆーゆガチ勢とその片鱗が垣間見える護国思想満載少女に意味深な理由で襲われて」

 「確かコイツら、あんなに、最早病んでるだろって言う感じの一歩手前まで愛されてて、『いや、看護されてるだけだから』とか抜かしやがる種無し共何だろ?・・・・・・確かそのせいでまだ好意に一切気がついてない二人だろ?」

 「コイツらの、ゆーゆとビッグわっしーとリトルわっしーに対する印象が『事あるごとに監禁しようとして来る怖い少女』だからな・・・・・・一瞬、人生の墓場に入るかもって考えも浮かんだらしいが、『それはねぇな。だって告白を一度もされた事がない俺だぜ?』って考えで切り捨てたらしいしよ」

 「うっわバッカだなぁーあいつら。

 というか、そもそもあの集会もコイツらが俺達の苦労話を聞いてプギャーwwwするための会議とか言ってたもんな・・・・・・あー、本当にコイツら早く理性我慢出来なくなった恋する乙女に襲われねぇかな。確かまだDTだろ?そんな馬鹿な認識のせいで」

 

 最早相手をする必要無しと言った表情で、呆れたように二人に対する愚痴をグチグチ言っていた。

 

 

 

 

 

*2

 

 七月七日。七夕当日。

 織り姫と彦星が年に一度の逢瀬をする日。

 

 「「リア充シスべし慈悲はねぇ!!!!」」

 

 武田兄貴二人がヒャッハー!!と、世紀末な叫び声を上げながら学内でイチャイチャしているカップルを撲滅しにかかっていた・・・・・・真にはた迷惑な連中である。

 で、そんなジェノサイドを繰り広げている彼らの背後から、冷たい、冷めた声がかかった。

 

 何故かガタガタと震える体を押さえピタリと立ち止まって二人が振り返ると、そこには。

 

 「兄貴くん・・・・・・?」

 「たーくん、なにをしてるの?」

 「兄貴さん・・・・・・?」

 

 東郷美森、結城友奈、そして鷲尾須美の三人がハイライトを何処かに投げ捨てた瞳で兄貴二人(馬鹿共)を見ながら、壊れた笑みを浮かべていた。

 

 「悲しいわ・・・・・・まさかとは思ったけれど、私たちの思いが通じてなかっただなんて・・・・・・」

 「たーくん、後でお部屋で『もぐもぐ』させてね?」

 「兄貴さん、今日は二人で、ずっと一緒にいましょう・・・・・・?私がどれだけ貴方の事を愛しているか、その身に刻み付けてあげます・・・・・・」

 

 壊れたような、それでいて天使のような微笑みで兄貴(高)と兄貴(中)の二人に笑いかける少女達。

 障気が発せられているかのようなどす黒い雰囲気を纏いながら近づいて来る三人に、二人は思わず後ずさりして、

 

 「「うわぁああああああああああああ!?」」

 

 背を向けて逃げた。

 

 だが、所詮は鋼タイプ。

 耐久では多いに役立つが、素早さが馬鹿みたいに低い。

 ・・・・・・故に。

 

 「捕まえた!・・・・・・さ、たーくん、お部屋行こう?」

 「これから、沢山しましょう?」

 「え、何を?ちょ、怖いんだけど!?」

 

 「兄貴さん、たっぷり、お願いしますね?」 (『くろいまなざし』発動!)

 「」 (兄貴(中)は、もう逃げられない!)

 

 そして、それを物陰から見ていた他の転移者は、

 

 『あーあ、バッカでー。そしてご愁傷様』

 

 冷めた目でそんな風景を見ていた。

 

 「ま、年貢の納め時って奴ですね」

 「ですね♪」

 

 最後に真央(中)と真央(小)が締めくくって、ちゃんちゃん♪

 

 

 

 

 

*3

 

 その頃。何処かの場所にある、和風の家にて。

 ゴーストタイプの転移者、影山幽は、七夕という事で、造反神が庭にムニュッと生やした笹の木の枝に紐で短冊をくくり付けていた。

 

 「『今年こそ自由に外出が出来ますように(嘆願)』っと。よし、改心の出来だね」

 

 折り紙で出来た飾りが、よく見える星空の下で夜風に吹かれているのを見て、彼は一つ頷くと、縁側から家の中に入っていった。

 居間に行くと、赤嶺友奈が机に座り、短冊に願い事を書いていた。

 

 「お帰り幽くん。飾りを飾ったの?」

 「ああ、後で見てくるといい。改心の出来だ」

 

 自慢げに言う幽を見て、赤嶺友奈はにこりと笑う。

 幽は、友奈の手元にある短冊を見て、

 

 「そういえば、お願い事、君はなんて書いたんだい?」

 

 そう聞いた。

 ・・・・・・そして、言ってから後悔した。

 

 聞いた瞬間。

 友奈の体から物凄くいやーなオーラが吹き荒れて、幽の背中は冷や汗でぐっしょりになってしまったのだ。

 友奈はゆらりと立ち上がり、幽を抱き寄せ、耳元でボソリと呟くように聞いた。

 

 「幽くん、見たい?知りたい・・・・・・?」

 「えっと、ハイ」

 「良いよー・・・・・・。はいこれ」

 

 友奈は幽に短冊を渡した。

 幽はそれを震える体を抑えて読む。

 

 『幽くんと何時までもずっと、退廃的な生活を送れますように』

 

 一見普通(?)のお願い事。

 ・・・・・・だが、文字に込められた思いとその重さ、そして、何よりも身近にべっとりと感じるオーラと重圧で、幽はガクガクと震えていた。

 

 「う、うん、良いお願い事なんじゃないかな」

 「そうかな。うん、そうだね。じゃあ、くくり付けてくるよ」

 

 震える声で幽が言うと、友奈は軽い足取りで庭の方に向かった。

 ・・・・・・幽に、「愛してるよ♪」と、軽く、されどもトン単位の重さの言葉を言い残して。




 七夕、なんてお願い事しました?

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