彼等は総じて化け物(モンスター)である   作:千点数

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 兄貴を鈍感系キャラにすると、ただのヘタレにしか思えなくて不思議な今日この頃な作者です。


6:決戦(前)

 目の前のこれは一体何なんだ。

 

 俺は、自分の目を疑った。

 いたのは、先日倒した筈のバーテックス共。

 そして、最後に俺を死の間際まで追い詰めた弓兵野郎と、それを守るようにして存在する一体の巨大な盾のような形をしたバーテックス。

 

 ・・・・・・全く。こっちは摩耗するばっかりで、あっちは生産力無限ってか畜生。

 

 「やってやろうじゃねぇか。高々神様の先兵風情が、俺を倒せると思うなよ?」

 

 俺は、真央や、そのほかの面々と共に片足を前に踏み込んだ。

 

 *

 

 [少し前]

 

 『満開』。

 

 勇者アプリとか言う、純粋な少女を勇者たらしめる為のアプリのアップデートの際に新たに追加された、必殺技のようなもの。

 後、もう何体か、これまでとは比較にならない程に強いバーテックスがやってくるという神託を受けた為に、急遽生み出された新たなるシステム。

 ゲージを溜めて放つ、らしい。

 ・・・・・・ゲームかよ。

 まあ、ふざけたツッコミは置いといて。

 

 俺、武田兄貴はこの満開とやらを疑っている。

 勇者が、服装から見るに花を基調としている事は大体察しが付いている。というか、誰でも見た瞬間解るくらいわかりやすい。

 

 それで、満開、というネーミングの必殺技。

 満開。そう言うからには、必殺技足り得る何かが発現するのだろう。正に、花が一番華やかになる満開等と言うネーミングを付けているからには、それこそ神々の先兵程度一撃で吹き飛ばせるのだろう。

 

 ・・・・・・だが。

 勇者は、確か神から力を授けられて戦っているんだっけか。

 で、多分この満開も神から相応の力を授けて貰って発動するのではなかろうか。

 

 ここから先は、俺の考えすぎかもしれないが。

 ・・・・・・神々が、何の代償も無しに高々人間等という彼らから見ればミジンコ以下の生命体に、そんな大層な力を授けるとはとても思えない。

 オタクとしての直感と、今までのアニメ作品及び小説から考えて、神々は大抵こういう必殺技やら何か強大なる物事をやらかす時には、何らかの『代償』を必要とする、というのはお約束の鉄板モノだ。

 

 満開。

 花は華やかに、力強く咲いた後は、きらびやかに、そして力無く散っていく。

 それと同じように、強大なる何かをやった後、代償として何かを失うなんて、そんな羽目になるとすれば・・・・・・

 

 ・・・・・・本当に、俺の思い違いであれば良いのだが。

 

 *

 

 それはさておき。

 

 夏祭りである。

 そう。夏祭りなのだ。

 

 浴衣姿の女の子を見ることができる男が誰しも鼻息を荒くする一大イベントではなかろうか。

 かく言う俺も、今隣で歩いている須美(名前で呼べと脅迫・・・・・・もといOHANASHIされた)の浴衣姿を見て、うむ、と一つ頷きつつ何かを達成したかのような表情で、真央にサムズアップする。

 真央も、三ノ輪の浴衣姿に愛を鼻から噴出させつつ、俺にサムズアップで返した。

 

 無論、乃木の浴衣姿もこれ以上無いほど可愛いので頭をわっしゃわっしゃーとなでくり回しながら褒めた。

 もっとやってーと来るので、もっとなでなでする。

 ・・・・・・妹とかいたらこんな感じなのかな。と思ったり。

 

 何故かわs・・・・・・すみません冗談ですだからその目をやめて須美・・・・・・隣の須美からの視線に物理的な攻撃力が篭っている気がするんだが・・・・・・まさか・・・・・・?

 い、いや、その可能性はない。勘違いするな俺。なぜならば、小学生の頃偽告白を三十回以上もされ続けた俺だからな!二歳年下の女の子が俺にお熱なんて、流石に有り得ない・・・・・・筈だ。

 

 一回『こいつ、俺と人生の墓場に入るつもりか!?』と、勘違いしかけたが、それは有り得ないと断じた。なぜならば、彼女は俺を『兄貴』と呼ぶからだ!故に、お熱なのではなくて単なる年上に対する憧れその他だ!・・・・・・お世話されているのは、あれだ。なんか責任取るとかそういうのだろ。まあ、身体の事を思ってくれているんだろうが、何時までもお世話されてたらダメ人間になっちまうし、俺もタダ飯食うのは嫌だからしっかり学校行って、十五になったらバイトしに行くつもりだ。いつかは一人暮らししよう。絶対に。

 流石にずっと鷲尾家に留まるのは迷惑だろうし(ただの馬鹿、若しくは鬼畜鈍感畜生種無しチキン男)。

 

 閑話休題!

 

 さて、流石の夏祭りとあって、神社は賑わいを見せている。

 そこかしこから笛の音や力強い太鼓の音が聞こえ、石畳で出来た道の脇には屋台がならんでいる。あ。真央が屋台の食べ物見て目を光らせてた三ノ輪に振り回されてる。大変そうだな。あっちは。

 

 まあ、こっちも大変なんだが。

 

 何せ自由自在に乃木がうろちょろしまくって、俺と須美はそれを後ろから見失わないようにしっかり付いていくしかなかった。

 ・・・・・・元気な娘が出来た気分だ。

 

 さて、それからあった事と言えば、乃木がなんか金魚掬いやったり、満腹になって満足した三ノ輪と三ノ輪に振り回されてボロボロになった真央を発見したり、射的で須美が出禁くらったり・・・・・・・と、なかなかに面白い出来事があったりしたが、それは割愛する。

 

 「なぁ真央。祭と言えば、最後はなんだ?」

 「そりゃ花火でしょ。兄ちゃん」

 

 という訳で、良く見える場所にて。花火を見ている。

 周囲にもちらほらと、人影が見える。この場所は案外人気なようだ。

 

 色とりどりの花火が、宙に大きく咲いては散っていく。

 綺麗だと、素直に思った。

 

 今までは真央と二人で、花火だけ見て帰っていた夏祭りが、初めて充実したものになったと思った。

 

 *

 

 さて、この数日後。

 俺達は、後に『大橋決戦』と呼ばれる戦いに、身を投じる事となる。




 次回。
 バトル。

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