隣の席の太眉乙女   作:桟橋

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日曜日、主人公たちは必要な食材の下見のため業務用スーパーへ。


買い出し1

「おはよー」

 

「お、来たなっ。」

 

「ちょっと遅いんじゃないか?時間ギリギリだぞ」

 

「それをついさっき来たアンタが言うわけ?」

 

「うっ…………悪い」

 

 

 集合場所として指定された駅前につくと、今日一緒に行動する予定の3人はもう既に集まっていた。

 文化祭の同じ係で、隣の席の神谷さん、お調子者の川原、強気な木下さんだ。

 

 食材などの様々な必要なものを用意するには学校から支給されるお金が必要であり、かかる費用を予め予算として申請しなければならないのである。ついでに言えば、なるべく安価で賄おうとしている団体へ優先的に予算が承認されるようなので、係が3つの班に分けそれぞれ異なる場所の業務用スーパーを下見することになった。

 

 それぞれの場所で予算をまとめ、比較して一番安く食材を購入できる予算を組もうということである。まぁ、品物の値段は日によって多少変わるが問題ないだろうということだ。

 

 

「えっと、ここから歩いて行くんだっけ」

 

「そうそう。10分もかからないから、さっさと行って終わらせちゃいましょう」

 

 

 木下さんはあまりこの下見に乗り気じゃないのか、スタスタと目的地の方へ進んでいってしまう。

 

 

「はぁ〜!ああいう協調性のないやつが居ると困るよな〜!待ってろ、俺が足並み揃わせてやる」

 

 

 川原の方は木下さんとは対照的に、みんなで楽しむのが一番だと考えているようで、ずいぶん先の方に見える木下さんの方へ走って向かってしまった。

 先に行っているとは言っても、木下さんは歩いているので、当然走っている川原がすぐに追いつき横から声をかけていた。

 

 木下さんの足が止まる。川原がヘラヘラ笑いかけながら前に回り込みジリジリと距離を詰める。木下さんが一歩後退した。それでも川原は気にせず尚も近づいていく。何かを木下さんにつぶやきながら両手を上げ捕獲の姿勢に入った。

 たまらず木下さんはこちらへ振り向きダッシュで駆けてくる。川原の方は決して追いつきはしないスピードだが、後ろにピッタリとくっつきながら何かを木下さんに話しかけ続けている。

 

 

「ちょっと!コイツ何とかしなさいよ!……いやっ!来ないでよっ!」

 

 

 逃げ惑う女子高生の後ろに近づきながら、何かを話しかけ続け両手を掲げて今にも襲いかかろうとしている男の図。マズイ、通報されても何も言えないぞ。完全に変質者だ!

 

 どうにか場を修めなきゃと焦る自分の横で、指をさしながら大笑いしている神谷さん。涙がでるほど笑っている顔はとても素敵だけど、できれば今じゃない場面で見たかった……!

 

 とにかくこちらに向かっている2人を止めようと、手を広げて2人の前に立ちはだかった。

 木下さんはとっさにかがんで俺の横を通り過ぎる。その先で神谷さんに飛び込んだ。

 川原の方はどうにか止まろうとしたのだろうか、足でブレーキをかけ減速するも、スピードは殺しきれずにそのまま俺の広げた手に首を引っ掛け、その場に崩れ落ちた。

「「ぐぇ」」横と後ろからカエルが潰れたような声が上がった。

 

 

 

 

「ほんとにごめんなさいっ!悪気はなかったの!」

 

「いやいや、ほんと大丈夫だって。ほら、ケガとかないしピンピンしてるから」

 

 

 隣から木下さんが神谷さんに謝る声が聞こえる。俺の(図らずしもなってしまった)ラリアットを躱した後、勢いよく神谷さんを押し倒してしまったらしい。幸い特にケガはなかったが、木下さんはずっと気にしているようだ。

 

 本来なら全ての原因である川原こそ謝るべきなのだが、倒れたときに尻をしたたかに打ち付けたとかで、今は俺が背負っている。何が悲しくて休日に男をおんぶしなければならないのか。

 打った尻が痛むのか、後ろからシクシク、シクシクさめざめと涙を流す声が聞こえる。泣きたいのはコッチもだよシクシク。

 

 取り敢えずスーパーに行かなければならないので、周りから変な目を向けられようともくじけずに目的のスーパーを目指して歩いた。途中で俺の首をコントローラーのようにグリグリ回す川原を置いていったが、先にスーパーへ行けばそのうち追いついてくるだろう。

「いやー!捨てないでよー!」と叫びながら尻をさすっている姿には流石にドン引きした。

 

 

 

 

 目的地につくと木下さんから二手に分かれて探そうと言い出したので、じゃんけんでペアを分けた。

 神谷さんと俺でカレーと飲み物、木下さんが焼きそば、とそれぞれ必要な食材や調味料を探して回ることに。

 

 

「なぁなぁ!キロ単位で買うんだよなっ!いや〜とんでもない量だなぁ!」

 

「水も2lのを何本か用意しなきゃいけなくて。ソフトドリンクも必要だな」

 

「いや〜!数百人分の材料なんて人生でそうそうないよなっ!今からすっごいワクワクするなー」

 

 

 普段利用するようなスーパーではなかなか見ない単位で品物が置かれているのを見て、テンションが上がりっぱなしの神谷さんはあっちこっちをキョロキョロしながら忙しなく動き回っている。

 分量と値段をメモしていると、面白いものを見つけたのか腕を引っ張って連れ回され、最低限必要なものをメモした後は2人で面白いもの探しのようになってしまった。

 

 

「コレって食べれる肉だよな……?」

 

「そういうお肉は暴力団に消された人で出来てるんだよ」

 

「ヒィィッ!や、やめろよ!」

 

 

 数キロ単位で置いてある謎の肉を、不思議そうに眺めている神谷さんに冗談を言ってからかったりしていると、いつの間に合流したのか川原と木下さんが2人でこちらに来ていた。

 

 

「私達はもう調べたから帰れるけど、そっちはどう?」

 

「なんだお前ら、ずいぶん仲良さそうにしてるじゃんか」

 

「あぁ、実はコッチも結構前に調べはついたから終わりにするよ」

 

「そう?じゃあ一旦店を出て、他の班にメッセージを送ったら帰りましょうか」

 

「それでいいと思う」

 

「なぁ無視ってひどくないか!?」

 

 

 木下さんの方も調査が終わっていたみたいなので、業務用スーパーから取り敢えず出て文化祭の係グループにメモの写真付きでメッセージを送る。ぼちぼち他の班も調べ終わっていたみたいで続々とグループにメッセージが来ていた。

 

 届いたメッセージを確認し、4人で来た道を戻り駅へ向かう。神谷さんが20kgはあるだろう米袋を持ち上げようとして腕を挟み抜けなくなった話や、川原が腰をさすりながら歩いているとおばあさんから湿布を貼ってもらった話など、雑談をしながらだと10分程度はあっという間で、気がつけば駅に着いていた。

 

 

「また集まるのは、文化祭の前日準備の時だな!それじゃ!」

 

「アンタは学校に行かないつもりなの?また会うでしょ!……またね」

 

「あぁ、また」

 

「学校でな!」

 

 

 帰る方向が同じ2人が先に別れを告げて同じ路線の方へ向かっていった。残されたのは、俺と神谷さんの2人だ。

 

 

「今日は楽しかったな!ああいうとこ初めて行ったし、文化祭に向けて動いてるって感じで」

 

「ほんと、楽しかったよ。神谷さんが子供みたいにはしゃいでたし」

 

「な、なんだよ!せっかくなのに楽しまないほうが間抜けだろ!」

 

「だから楽しかったんだって。一緒になって遊んじゃったし。今日はほんとありがとう」

 

「え、その……。うん。こっちこそありがとな」

 

「じゃあ!また!明日学校で」

 

「そうだな……また!」

 

 

 このまま続けるとお互いにありがとうを言い合う、ありがとう合戦になってしまいそうなので無理やり挨拶をして今日乗ってきた路線のホームへ向かう。

 神谷さんと別れる時はいっつも変な空気になっちゃうな……。もしかしたら神谷さんも、同じ様に思っているだろうか。

 なんて考えながら電車に乗り込んだ。

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