「で、テストはどうだったんだ?」
「いや、全然手応え無かったよ」
「出たな〜!勉強しなかったとか言いながら高得点取るマン!」
「勉強はしたから埋めたけど自信がないな」
「アタシも埋められたけど全然合ってる気がしないんだよな〜」
テスト期間なので午前中で学校が終わり、時間を持て余した俺達は神谷さんのレッスンが始まるまでの暇潰しとして、事務所にお邪魔しいつも通りゲームをしていた。
この間のファミレスの勉強会は多田さんによって事務所に伝わり話が広まるも、自分と神谷さんの関係を知っている人は特に驚きもしなかったようで、唯一言われたことと言えばプロデューサーさんのスキャンダルに気をつけてくださいという小言だけだ。
一応、神谷さんもアイドルなのでいつどこでゴシップ誌に写真を撮られるかわからない、最近はジョニーズ事務所も不祥事で揺れているので346も気を引き締めていこうとのことで、勉強会を行うなら事務所でという取り決めが出来てしまった。
丁度どこの学校もテスト期間に入り、事務所は様々な年齢の学生アイドルたちの自習室になっているらしく、中高生だけではなく便乗して課題に取り組んでいる大学生も居るそう。
2人で勉強会がしたかったのにな……と少し拗ねている神谷さんを微笑ましく思った。
「う〜ん、ゲームも詰まっちゃったな」
「どうしようか、勉強する?」
「うっ、さっきまでテスト受けてたのに、どんな思考回路してるんだ……勉強なら先週散々やっただろ?」
「なんだ、せっかく2人だけだから付きっきりで教えてあげるのに」
「つ、付きっきり……って!学力は対して変わらないだろっ!」
「まぁまぁ。じゃあアニメ見ようアニメ。この前事務所にオススメのが置いてあるって言ってたよね」
「あぁ!それが良いな。時間は……3時間くらいあるから結構見られるなっ!」
ウキウキでソファから立ち上がり、TVラックに並んでいるDVDのパッケージを中腰で選別していく神谷さん。
制服のスカートを腰の所で折り曲げてすこし短くしているのか、なかなか危ない角度になっていてもう少し視線が下になれば何がとは言わないが見えそうだ……。
何を選ぼうか迷っている神谷さんの体が左右に揺れる。目が離せなくなり、だんだん体がソファからずり落ちていく……ズリズリズリ……み、見え……。
座っているとはとてもじゃないが言えない体勢までずり落ちた所で、見せたいものを選び終えたのか神谷さんがこちらへ振り返った。
背もたれに首しか付いていない姿をバッチリ目撃される。
「み、見たなっ!?」
手でスカートを抑え内股になった神谷さんが詰め寄ってくる。ぐっ、かつてないプレッシャーだ。
見たのか見てないのかを、肩を強く揺さぶられながら問いただされる。凄まじい勢いで口を開くことも出来ず、何とか首を横に振ることで見てないことを主張することしか出来ない。
「うううう〜〜!……はっ、悪いっ。やりすぎたっ……」
恥ずかしさと怒りで目を回しながら肩を揺さぶり続けていた神谷さんが、必死に首を振る俺の姿を見て正気に戻ったのか慌てて肩から腕を離した。
深呼吸して息を整えはっきりと見てないことを伝えると、安心したのか「なら良いけどな……」とDVDのパッケージを持ち隣りに座った。何とか誤魔化せたか、間一髪だったな……。
「って、ちょっと待てよ。そもそも覗き込もうとしてなかったか?」
「い、いや〜気のせいじゃない?それよりアニメ、アニメ見ようよ」
流石に見てないの一点張りじゃ言い訳に無理があり、神谷さんが真実に辿り着こうとしてしまった。なるべく動揺を隠してアニメを見ようと促すが、神谷さんは顔を赤くしてうつむいてしまった。
参ったな、動かなくなっちゃったぞ。非は完全にこちら側にあるので、なるべく神谷さんを刺激して爆発させないように慎重に顔を覗き込んだ。
「……へんたいっ……」
至近距離で涙目の神谷さんと目が合い、ささやくような声で責められる。罪悪感に居たたまれなくなり、ソファから立ち上がって机においてある適当なDVDをプレーヤーに入れる。すぐに読み込みが始まり、1話から再生された。
再生されたDVDは神谷さんの私物ではないらしく、気づけばうつむいていた神谷さんも顔を上げ食い入るように画面を見つめていた。
内容は、オタクな主人公がネットを通して知り合った女の子とコミケ?という祭りで出会い、意気投合して次第に仲良くなっていくという展開で、ほのぼのした日常系アニメだった。
数話を見終わりディスクを入れ替える所で気になったことを神谷さんに聞いてみる。
「コミケって言うのが何となく色んな人が集まるイベントって事はわかったんだけど、結局何をするイベントなの?」
「コミケか!具体的に何をって言われたら、自作の本……同人誌を作って売る場所で――」
質問をした途端、神谷さんが水を得た魚のようにイキイキ語りだしコミケについて詳しい説明をしてくれる。
要約すると同人誌を売り買いするイベントで、アニメ・マンガの二次創作やオリジナルなど何でも有りなため大変間口が広く、大量に人が集まる年2回開催されるビッグイベントということだった。
神谷さんは勇気が出ず今まで参加したことは無いが、事務所の先輩である大西さんと荒木さんにアドバイスを聞いて今年こそはと意気込んでいるらしい。
少し不安げにこちらを見つめ、「高橋もアニメとか、興味あるよな?」と聞かれてしまっては頷くことしか出来なかった。つい安請け合いしてしまったことに若干後悔したが、神谷さんの弾けるような笑顔を見るとこれで良かったと思えてしまうから不思議だ。
テンションが上った神谷さんが、俺の持っていたパッケージをとって既にディスクを入れ替えていた。
レッスンの時間になるまでもう少し、神谷さんとアニメを観ていられそうだ。
アニメを更に数話見終え夏の終わりが近づき物語が佳境に入った所で、もうすぐレッスンの時間だということになりアニメ鑑賞会はお開きとなった。
コミケ、海・プール、祭り、キャンプ、バーベキューなどなど、夏のイベント盛りだくさんのアニメを見てテンションが上がっているのか、しきりにスマホをいじって調べ物をしている。
時折、何かを想像しているのか目を閉じて動かなくなったと思えば、頭を振るといった奇行を繰り返すので不審に思いどうしたのかと聞くと、「た、高橋……その、夏休み……や、やっぱりダメだー!」と叫んで部屋から出ていってしまった。
その様子と直前まで見ていた内容から何となく言いたいことは分かったが、照れてしまって言い出せない神谷さんの様子が可愛らしいので自分からは言い出さないようにしよう。
今年の夏は楽しくなりそうだと、アニメを片しながら1人思った。
「着替え忘れたっ!」
部屋に忘れ物を取りに来た神谷さんに帰るけどレッスン頑張ってと伝え、事務所を後にした。
2,3日に1度更新になると思います(なるべく早く更新できるようガンバリマスが)。