夏休み、学生は遊びに色恋など様々なものに頭を悩ませる事になる。中でも取り分け悩みのタネとなる、学生である以上夏休みから切っても切り離せないモノがある。宿題だ。
うちの学校には芸能科なんてものはないので、アイドルをやっている神谷さんも例外ではなく大量の宿題を課されていた。もちろん、同じ学校に通う自分にも同量の課題が存在している。いや正確に言えば、いた。
夏休みを迎えるにあたって、宿題なんてものは順次発表されていくものである。普段の授業態度は決して真面目とは言えない自分だが、こと休みが掛かっているのなら話は別であった。
課題の範囲が出された教科から順に、その日の内に進められる分量を最大限コツコツ進めておけば何ということはない。机に向かいたくはないというモチベーションの問題も、いざ夏休み本番を迎えた時に遊びまくれる事を思えばなんのその。テスト前なんかよりも勉強が捗るのである。
「頼むっ、宿題を手伝ってくれ!」
「神谷さんは、まだ終わってなかったんだ」
「まだって、一週間しか経ってないのに終わってる方がおかしいだろっ!」
どうやら神谷さんは夏休み前に宿題を終わらせて置く派では無いようで、自分が既に終わらせたことを伝えると一緒にやってくれないか、と頼み込んできた。
夏こそテレビにイベントに引っ張りだこな346プロの面々で、早めに宿題をなんとかしよう週間が行われているらしく、事務所に来て一緒にゲームをする時間を神谷さんの宿題消化に当てたいとのことだった。
宿題をなんとかしよう週間では、仕事やレッスンがある時間を除いた全ての時間を拘束され、宿題が終わるまでは永遠に開放されないそうだ。
モチベーションを考慮して、事務所内外のお友達も助っ人として呼んで良い事になっているらしく、元々誘う気ではあったと言う。その時に、他に人は居ても2人で一緒に勉強できたらな……と思っていたが、まさかの俺はもう終わっている宣言で、それじゃあ時間を取って悪いけど手伝って欲しいと頼んだとのこと。
部活も体育館の使用権の関係で1日に3時間程度しか無く、特にやろうと思っている短期バイトも無い。さらに言えば、悲しいことになぜだか学校の男友達から遊びに誘われることが減った。理由を問いただしてみても自分で考えろボケとやけに辛辣である。全くもって不思議だ。
そんなこんなで意外とヒマしている夏休み、神谷さんの宿題がピンチなら手伝ってあげようそうしよう。
「そしたら神谷さんと一緒にいられるしね」
「ばっ、バカッ!急に何言ってるんだよっ!?」
「あ、宿題手伝うのは良いけど、それが終わったら神谷さんを1日自由にできる権利が欲しいな」
「1日、自由にできる、権利!? な、何考えてるんだよっ! うぅ……でも勉強に付き合ってもらうわけだし……」
「あ〜あ〜、大事な夏休みの時間を、宿題が終わってるのにな〜」
「ううぅ……分かったってばっ! あ、あたしを自由にしてもいいって!」
「えぇ〜奈緒ってば、だいたーん!」
「奈緒、高校生らしい付き合いをしなきゃダメだよ」
「なぁ!?」
神谷さんがこちらの要求を呑んで問題発言をした所で、丁度ドアを開けて入ってきた北条さんと渋谷さん。
からかうような笑顔を浮かべて神谷さんに話しかける北条さんは、大体の経緯を察したのかいいネタを掴んだと言わんばかりの意地悪な表情をしている。
対して、渋谷さんはかなり深刻そうな真剣な表情で、神谷さんの肩に手を置き語りかけていた。
いや、渋谷さんもよくよく見ると口元がヒクヒクと震えている。完全に故意犯だ。
おそらく最も見られたくなかったであろう2人に見つかった神谷さんは、自身の脇腹をつつきながらすり寄ってくる北条さんと、笑いをこらえた引き攣った表情で凄んでくる渋谷さんを何とか手で押しのけながら、涙目でこちらに助けを求めている。
た・す・け・て、と動いた口、その真剣な眼差しと、何とか2人を押し止めようとする震えた手。
流石に放って置く訳にもいかず、2人の圧迫感に押される神谷さんに近づいて声を掛けた。
「なんでも自由にしていいって、録音したから」
「やめろォ!!」
「ふぅ……終わったああぁぁ……」
「思ったより早く終わったね、後は自由課題だけか」
「いやー! 高橋のおかげだなっ! 一週間丸々かけるつもりで居たけど、なんだかんだ3日で終わったからなぁ」
「単純作業は分担してやったから、普通よりかなり早く終わったと思うよ」
「ほんとありがとな!」
「いいっていいって。こっちにも3日付き合ってもらうから」
「えええええ!? 3日も好き放題されちゃうのか?!」
目をまんまるにして驚く神谷さんのリアクションを心地よく思いながら、好き放題することもないし3日というのも冗談だと伝える。
こちらの話を聞いてホッと胸をなでおろした神谷さんだが、同じ部屋に居る学生アイドル組からの視線に慌てて誤解を解こうと話しだした。
「奈緒ちゃん…………えっと、ロックだねっ!」
「りーなちゃん……それしか言えないのかにゃ」
「ああっ! アタシの奈緒が高橋くんにあんなことやこんなことを!」
「なおおねーさん、どうなるでごぜーますかー?」
「ち、千枝にはよくわからないですっ」
「あああ! 違うんだって! 説明するから聞いてくれぇっ!!」
分かっている人、分かっていない人、よく分からないけどノリで話している人それぞれの誤解を解こうと奔走する神谷さんを見ながら、神谷さんに付き合ってもらう1日をどうしようか考えていた。
レジャーに出かけるのはどうだろうか、この間は海に行ったから山なんて良いかも知れない。
いや、高校生の男女2人が山登りをして盛り上がる様子が想像できないな。変に外して考えずに定番の場所が良いだろう。
定番……遊園地とか?そう言えばこの間見たアニメが、近くの遊園地のお化け屋敷とコラボするとかなんとかニュースが有ったよな……。そうだ! アニメと言えば、神谷さんが好きなあのアニメの映画がもう公開しているはず……。
午前中に映画を見て、見終わった後はその周りでご飯を食べ、午後は遊園地を軽く回る。神谷さんは1日好きにする権利をかなり心配しているだろうけど、この分だとかなりマトモな、というか典型的なデートプランになりそうだ。
誤解を解くために話し続けていたので息の乱れた神谷さんを、取り敢えず落ち着かせ事務所の自習スペースから一緒に抜け出しながら頭の中で当日の予定を練る。
少し上の空になってしまい、話しかける神谷さんに対しての返答がおざなりになってしまったが、上の空なのは神谷さんも同じなようで、どんな事をされてしまうのか考えては否定するために頭を振る神谷さんは可愛い。
耳を赤くしながらナニかを想像して勢いよく頭を振る神谷さんに、少し頭を下げて耳元に口を寄せ、小声で囁きかける。
「なに考えてるの?」
「んっ!?」
ピンクな妄想をしていたのか、それとも吐息が耳にあたってくすぐったかったのか、色っぽい声を驚いた拍子に出す神谷さんにこちらもドギマギしながら、神谷さんを置いていつもの部屋まで走った。
「ちょ、ちょっと待てって! な、なんなんだよッ! も〜!」
その後、すぐ捕まえられて今のはなんなんだよっと問い詰められるも、神谷さんがなにを考えていたのか教えてくれたら話すというと、拗ねて沈黙してしまった。
そっぽを向いて自分の向かい側のソファに座ってしまったが、それでもこの前見ていたアニメの続きを再生すると、いつのまにか隣に来ていた神谷さんはツンデレな猫のようで、ついその様子に笑みをこぼすと不思議そうにこちらを見るのが可愛かった。
・活動報告のアンケートについて
コミケは経験が無いので、想像だけでは書けないかも知れないです。
体育祭は、主人公の性格的に盛り上がる要素がなさそうなのでカットをしようと考えています。
プールは参考にして海回を書かせていただきました。
その他展開の提案等も参考にさせてもらう事があります。
取り敢えず次回はデート回、その後1,2回挟んで修学旅行に入れればと思います。