隣の席の太眉乙女   作:桟橋

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デート2

「なぁ、結局今どこに向かってるんだ?」

 

「う〜ん、もう少ししたら分かるから待ってて」

 

「待ったら分かるってどういうことなんだ?」

 

「まぁまぁ、楽しみにしててよ」

 

「高橋がそうやって言うなら待ってるけどさ……昼ごはんはそこで食べるつもりなんだよな?」

 

「そ。何か食べたいものとかあった?」

 

「いや、特に無いけど……まぁ、美味しいものがいいな」

 

「はいはい」

 

 

 映画を見終えた後、今日の予定は終わりだと勘違いした神谷さんの素直にならなきゃ発言から少しして、恥ずかしさに居たたまれなくなった神谷さんが帰ろうとするのを引き止めながら、次の目的地である遊園地へ向かう電車に乗り込んだ。

 

 最初は、もうダメだお家に帰りたいと言い続けていた神谷さんだが、これからも行く目的地についてや、さっき見た映画の感想を話している内にいつもの調子を取り戻していた。

 

 9時から映画を見て2時間、その後に移動で40分と、もうすぐお昼時なのでお腹が減ったのだろう、気づけば話が食欲の話題にシフトしている。

 朝飲んだフラペチーノもカフェモカも美味しかったけれど、どこかの誰かのせいで味わうどころじゃなかった、なんて不満を言う神谷さんに、自分は2人で飲んでいたから美味しく感じたけど? と言うと本気で言ってるのかコイツみたいな顔で引かれてしまった。

 

 

「人の飲み物を物欲しそうに見つめていたのは、神谷さんの方じゃ無かったっけ?」

 

「う。飲みたいとは思ってたけど、おねだりなんてしてないだろ!」

 

「おねだり! そうか、思いつかなかったな。今度から何か分けてあげる時は、神谷さんからおねだりしてもらってからにしよう」

 

「ぜ、絶対やめろよ! それ! フリじゃないからなっ!」

 

 

 電車内の会話でちょくちょく神谷さんをイジりながら楽しい時間を過ごしていると、目的の駅に着いたので立ちあがり神谷さんの手を引いて降りる。

 駅名で目的地の察しがついた神谷さんは、さらにニコニコの笑顔で改札を通り抜ける。早足の神谷さんに急かされるように自分も改札を抜けた。

 

 

「遊園地か! 高校に入ってからは色々忙しくて行ってないな〜。あ、加蓮とかは仕事で来てたっけ」

 

「へぇ、イベントとかあるんだ」

 

「そうそう。そういえば加蓮のヤツ、デートしちゃった〜なんてプロデューサーさんとの2ショット写真送ってきてたっけ」

 

「やり返せば? こっちはデートしてるんだし。2人で自撮りして送っちゃおう」

 

「で、デート!? た、確かに傍から見たらそうとしか見えないよな……」

 

「しっかり手繋いでるしね」

 

「それは! そっちから繋いできたんだろっ!」

 

「じゃあ離しちゃおっか?」

 

「ま、待ってくれ! 別に嫌じゃないからっ!」

 

「へぇ〜」

 

「はっ!?」

 

 

 自分の失言にワンテンポ遅れて気づいた神谷さんが、こちらの追求の眼から逃れようと身体を捩って逃げようとする。

 なんとか目線を合わせないように頑張る神谷さんだが、残念ながら腕がつながっているので逃げられず、少し腕を引っ張ると逆の方向を向いていた足がもつれて、こちらの方に倒れかかって来る。慌てて受け止めた。

 

 片手をこちらの胸に置いてもたれかかってくる神谷さんが倒れないように、繋いでいない方の片手で支える。

 

 

「っとと、…………大丈夫?」

 

「あわわわわ、あ、あたし先に行くからっ!」

 

「え? ちょっと待ってって」

 

 テンパった様子の神谷さんは、自力で体を起こしたあと、繋いでいた手を離して目的の遊園地がある方向へ駆け出してしまった。自分も見失わない程度に神谷さんの向かった方向へ追いかける。

 割と本気で走っていたであろう神谷さんは、1つ目の交差点を直進し、2つ目のY字路で両方の道をしばらく見比べた後、こちらへ振り返った。

 

 

「……これ、どっちか分かんない」

 

 

 その場で動かず足を止めた神谷さんを確保し、一緒に遊園地まで向かった。

 

 

 

 

 

 

「おぉ、ウマそうだっ!」

 

「遊園地の中にも、結構美味しそうなレストランあるんだね」

 

「夢の国みたいに割高なヤツを想像してたから、これぐらいだと安心するよな」

 

「入場料もそこそこしたから、ここまで搾り取られたら学生は辛いよ」

 

「あ、映画のチケットは払ってもらっちゃったけど、他は割り勘だからな!」

 

「分かったって」

 

 

 遊園地まで駅から歩いて10分ほど、到着したのが丁度12時ごろになったので入ってすぐご飯を食べることにした。入り口でもらったマップを見て、良さげなレストランがあることを見つけたので早速入り注文する。

 夏休みとはいえ、まだお盆前で社会人は休みではないため園内はそこまで混雑しては居なかった。

 レストランも人は多いがまだ席は空いていたようで、すぐに席に座って注文した料理が届くまでマップを広げながらどのアトラクションに乗るか話し込んだ。

 

 

「ジェットコースターはやっぱり定番だよな〜! さっきちらっと見た限りだと、思ったより並んでなかったし」

 

「いいね。空いてると言えば、ゴーカートはあんまり人が居なかったよ。食べたら行ってみよっか」

 

「ゴーカートかー!ちっちゃい時に乗せて貰った以来だな〜。空いてるんだったら行ってみるか!」

 

「そうしよう。他に神谷さんが行きたい所ある?」

 

「他に〜? そうだな…………あっ!?」

 

 

 広げたマップを折り返しながら、どんなアトラクションがあるのか探していた神谷さんの目が一点で止まる。

 どうやら見つけたようだ。

 

 

「ここのお化け屋敷って、あのアニメとコラボしてるのか!? すごいっ、絶対行かなきゃだ!」

 

「気づいた……? 元々遊園地に行こうとは思ってたんだけど、調べてたらコラボするって記事があってさ。すごい偶然でしょ」

 

「いや〜! 映画を見た後に、コラボしたアトラクションまで行けるなんて思わなかった! ……って、もしかしてあたしがあの映画を見たいって分かってたのか?」

 

「事務所の子と話してるのを聞いたことがあってさ」

 

「うっ、壁に耳あり障子に目ありだな。そんなこと聞かれてるなんて」

 

「いつか使えるぞって思ってね」

 

「どういう意味なんだそれっ!」

 

 

 そんな話をしていると、注文していたオムライスとラーメンが運ばれて来たので、一旦料理に舌鼓を打つことに。

 食べるためにマップをしまってからも、行きたい場所を話しながら料理を食べきった。

 

 

 

 

 

 

「ゴーカートは只今待ち時間なし!」

 

「すぐ乗れそうだね」

 

「4台まででレースも出来るらしいぞっ」

 

「1つのカートに二人乗りも出来るみたいだけど」

 

「え。う、う〜ん……ふ、二人乗り……なんて……」

 

「後ろに並んでる人も居ないし、折角だからレースやろっか?」

 

「えっ……そ、そうだよな! ……ふたりのり……いやっなんでもない!」

 

 

 待機列用の柵を乗り越え、係員さんの方へ向かう。神谷さんには聞こえないように気をつけながら、二人乗りで乗せてもらえるように頼んだ。

 そんなことを露程も知らない神谷さんは、開き直ってやるからには勝つぞー! と気合を入れていた。

 

 すぐにカートが来て、乗り込むよう係員さんに促される。俺が運転席に乗り込んですぐ、係員さんは神谷さんも乗るように促して、よく状況を理解できていない神谷さんを助手席に押し込んだ。

 

 え?え?えっ?とハテナを浮かべている神谷さんを尻目に、係員さんは馴れた口調で注意事項の説明をしている。神谷さんは、わけも分からず一通り説明を聞いてシートベルトをつけていた。

 

 

「それではいってらっしゃ~い」

 

「え、ちょっとまってアレ?」

 

 

 係員さんの合図で、困惑している神谷さんを置いてけぼりのまま、アクセルを思いっきり踏み込んだ。

 

 

「うわあああああああ!?」

 

 

 なるべくスピードを落とさないように粗目の運転を心がける。カーブの度に小さく悲鳴をあげ、寄りかかってくる神谷さんが可愛らしく、ついつい調子に乗りすぎてしまった。





長くなったのでここで分割します。

気になっていた奈緒の一人称を、過去話も含めて”あたし”に統一しました。
元々、ひらがなだとどうしても目が滑ると思ってカタカナに変えていたのですが、ずっと違和感があったので原作に則って直すことにしました。
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