虎白高校バスケットボール部   作:shgk

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過去篇3. 覚醒の兆し〜jump of bust〜

「出嘉子、皆帰ってしもたけどまだ残って練習すんの?」

 

 まだ体育館に残っていた私に真奈さんが声をかけてきた。

 外はもう日が暮れ、辺りはもうすっかり夜だ。

 

「はい、まだ練習しようかな、と。もう少しで何かが掴めそうなので」

「そうなんや……。じゃあ私も出嘉子の練習に付き合おかな」

「え、そんな! 悪いですよ!」

 

「ええのええの、ウチが好きでやっとることなんやから。で、今はどないな練習しとるん?」

 

 そう笑って真奈さんは片付けたバスケットボールを再び手に持った。

 真奈さんから助言をもらって以来、私は全体練習が終わった後もひたすら特訓に打ち込んでいた。

 真奈さんも度々こうして私の特訓に付き合ってくれている。

 でも、今私がしている特訓はバスケットボールを使わない練習だ。

 

「ありがとうございます……! えーとですね、今はおっぱいでピアノを弾けるように練習してるんです」

 

 このチームポリッツの体育館にはピアノがおいてある。普段バスケの練習で弾かれることもないので、勝手に私の練習用に使わせてもらっているのだ。

 

「なるほど……。自分の胸を繊細に動かせるように細やかな機微を感じ取る練習やな。いいんやない? ついでに聞いてみたいな、出嘉子の演奏」

「人に聞かせられるほど上手くないですけどね〜」

 

 あははと笑いながら、ピアノの前に私は座る。そして、そっと鍵盤に自分の右胸を載せた。

 

 ドレミファソラ〜

 

(うーん、やっぱり難しい。曲として成立させることすら……)

 

 私は、下手くそで不器用な音を奏でた。こんな演奏じゃあ真奈さんにも笑われるな、なんて考えていたが、真奈さんは目を瞑ってただ静かに聞いてくれていた。

 これも真奈さんの優しさなのだろうか。

 

 

 もうそろそろいいかと、演奏を止めようとしたその時だった――――。

 

 

 

ブッ、ブッ、ブッ、ブッ、ブッ、ブッ

 

 

 一定のリズムで爆発音が響く。まるで、私の下手くそな演奏に合わせるかのごとく、メトロノームのようなオナラ。

 

 真奈さんだった。私の音に合わせて屁をこいてくれている。そして、そのお陰か私は格段に演奏しやすくなっていた。先程より、スラスラとリズムよく演奏できている。

 

ブッブブブー、ブッブッブッ。ブッブブブー、ブッブッブッ。

 

 やがて、真奈さんの屁はパーカッションと化し私と真奈さんのセッションが始まった。

 ピアノとオナラが奏でる、ハーモニー。私のワルツの音に合わさる、軽快な爆発音。私が、演奏するのは、ショパンのワルツ第六番「子犬のワルツ」だ。

 さしずめ、お尻から吹き上がるオナラをバネに、軽やかに子犬がステップしていく、そんな物語だろうか。

 

 

「すごいやん、出嘉子! 右乳と左乳、別々に動かしてるのに、どっちもえらい滑らかに鍵盤を叩いとる!」

 

 ワルツが終わると、真奈さんは私に賞賛の拍手をしてくれた。

 ……でも、そんな演奏ができたのは、

 

「真奈さんのお陰ですよ。真奈さんが屁でリズムをとってくれたお陰で胸を動かすことに集中できたんです」

 

 

 真奈さんの力もあって、今日はかなり成長できた気がする。

 それに当たり前のようにやっていたけど真奈さんの屁技……。

 

(屁の音程まで操作していた。そんなこと、人間に可能なの……?)

 

 やっぱり真奈さんの屁技は底知れない。私がこの人に追いつくのにどれくらいかかるんだろう?

 

「もう一曲、やらへん? なんや出嘉子と演奏するの楽しかったわ」

「あ、はい! いいですよ! じゃあ次は――――」

 

 

 その日は、夜遅くまで私と真奈さんは体育館で綺麗な旋律を響かせたのだった。

 

 

 私がおっぱいを操る特訓を始めて数ヶ月が経っていた。

 最近では、かなり上達し練習でも胸技を度々使うようになった。

 

「出嘉子! パス!」

「はい!」

 

 練習中、仲間から私へパスが出される。そのパスを私は自分の右胸でキャッチした。

 

 そして、私はキャッチしたボールを手に持つことはせずそのまま地へとバウンドさせ、浮き上がったボールをまた左胸で受け止める。

 それを続けながら私はコートを走り出した。

 

「えっ、手を使わずに!?」

「出嘉子がおっぱいでドリブルしてるわ!!」

「確かにすごいけど……。あれはちょっと……」

 

 

 チームメイトがざわついていた。それは、そうだ。今まで一度も、見せたことなんてなかったんだから。私の新しい技は、他の皆には新鮮に見えるのかもしれない。

 おっぱいの繊細な動きをマスターして始めて、おっぱいドリブルは成功できるのだ。

 

(私はもっと強くなる。ポリッツのために、真奈さんのために――――)

 

 

 千豊真奈はそんな出嘉子の様子を遠い目をして眺めていた。

 

「手を使わないでドリブルを成立させるやなんて、ほんま上手くなったなあ。しかも、胸の激しい動きは相手の目から見ても予測しにくい、どうしても翻弄されてまう……。ものすごい化け物が現れたもんや」

 

 出嘉子の可能性にいち早く気づき、助言を与え、支え続けたポリッツのエース。

 彼女は誰よりも出嘉子の強さに気づいていた。

 

 

 それは、出嘉子がポリッツに入る前から――――――――。

 

 

 

「いずれはウチをも越えるかも……しれへんな」

 

 その呟きは、体育館に響き渡るボールの音でかき消された。

 

 

 

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