虎白高校バスケットボール部   作:shgk

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3. ウィンターカップ、第1試合!

「とうとう、やって来たわね。ウィンターカップ!」

 

 ウィンターカップ、それは50年以上にわたり行われている全国高校バスケットボールの大会だ。毎年、バスケの頂点を決めるため熱い戦いが繰り広げられている。

 そして、その戦いに参加するため虎白高校もエントリーしていた。沢田が彼らを指導できたのはたった一ヶ月。されど一ヶ月。沢田は徹底的に自分の知識を部員達に叩き込んだ。個別メニューではそれぞれの個性にあった技を覚えさせ磨いてきたつもりだ。

 

「トーナメント式だから、今日の一試合目に負ければもう終わり。絶対に負けられないわ」

 

 これが大会の恐ろしいところだ。いくら練習したとしても一度負ければ速終了。チャンスは一度きり。

 

「ぜってー勝つぞ!!」

「おう!!」

 

 虎白のキャプテンである、通称"屁こきタイガー"、山下がチームに喝を入れた。山下に呼応して残り5人の選手が続いて大きな声を出す。

 

「…………」

 

 沢田は団結する虎白チームを不安げに見つめていた。沢田にやれることはすべてやったが、今一歩虎白の選手たちに覚醒した動きはない。あとは試合を通して成長し、何かを掴むことができればと祈るのだった。

 

 一試合目の相手は清宝高校。去年も一昨年も一回戦負けの高校だ。ほぼ無名に近い清宝に実力の高い虎白チームが負けるとは到底思えない。そんな考えが沢田の頭によぎる。が、すぐに考えを否定するように頭を振った。

 

「油断大敵。相手にとって不足はないわ」

 

 そして、コートに審判、選手達がぞろぞろと向かった。沢田と補欠の眼鏡、永田はベンチで待機する。ついに、始まるのだ。運命の一試合目が。

 

「両者、整列!!」

 

 審判がコートの中央に立ち、挟むようにして清宝と虎白の選手が整列する。

 

「それでは、虎白対清宝の試合を開始します。礼!」

 

 両者礼をして選手はそれぞれが位置についた。清宝からは身長が180cm程の高さの選手が、虎白からは山下がジャンパーとなりサークル内へ対峙する。

 息つく間もなく、審判がボールを下から垂直へトスをした。ボールが宙を上がり、同時に両者がジャンプする。清宝の選手より山下は背が低い。やはり清宝の選手の手が山下の手の位置より高くなる。周りのギャラリーの誰もが清宝の選手がボールをタップするだろうと思っただろう。

 

 そんな中、沢田はふふっと笑みをこぼした。

 

「山下君が伸びるのはここからよ!」

 

 

「アアアアアアーー!!!!!」

 

 

 

ブブブッーー!!

 

 

 踏ん張り声、尻から出る轟音と共に山下は上方向に加速する。

 やがて、その手は清宝の選手より高く飛ぶ。そして、ボールのタップに成功した。

 

「よし! 山下の屁が決まった!」

「この勢いで攻めるぞ!!」

 

 タップされたボールは、仲間へ渡った。虎白の選手がドリブルでコートを走る。……が、それよりも周りは清宝の選手の異変に気を取られていた。

 

「なんだ!? あの動きは!」

 

 清宝の選手は皆、両手を後ろに伸ばして走っていた。虎白の選手が困惑する中、沢田だけはその走り方自体は知識として知っているようで少し驚いただけだった。ベンチでは補欠の眼鏡永田も、清宝の動きに驚き沢田へ問い掛ける。

 

「監督! あの動きは一体なんなんですか!?」

「…………」

 

 それに対し、沢田はゆっくりと口を開く。

 

「……あれは、NARUTO走りね。試合で実際に使う選手は初めて見たわ、しかも全員だなんて」

「NARUTO走り? なんですかそれは!」

 

 沢田は淡々とした口調のまま続けた。

 

「見ての通りよ、両手を後方に伸ばしながら加速する走法。かつて忍者の間では、この走り方が一般的だったと言われているわ」

「でも、あれに何の意味があるんですか? 走りにくいだけではないんですか?」

「ええ、意味はないの。科学的側面から見ても速く走れるわけでもないし、使う体力も一般の走法と変わらないと言われているわ」

「ならどうして……」

 

 束の間、清宝の選手は走りはかなり素早くあっという間にドリブルしている選手に追いついた。虎白の選手は清宝の素早さに動揺し、その隙を点かれボールを奪われてしまう。それを見て、沢田は小さく舌打ちした。

 

「おそらく、自分に暗示をかけているんだわ。自分は忍者だから、素早く走れると」

「そんなことが……」

 

 暗示によっては、時に自分の持つポテンシャル以上の実力を発揮できる。清宝の選手は全員自分に暗示をかけていると見て取れた。

 

「並みの暗示では不可能だわ。でも彼らにはきっと、暗示に必要な具体的な対象がいるのよ」

 

 沢田はコートの、清宝の選手達に目を細めた。清宝の選手は第一クウォーターの序盤から声の掛け合いが激しく、特徴的な話し方をしていたためだ。

 

「絶対勝つってばよ! 俺にパスするってばよ!」

「分かったってばよ!」

「ナイスだってばよ!」

 

 清宝の選手は全員同じ語尾を使っていた。そして、鮮やかにボールをパスしていき、まもなくシュートし点をいれる。

 

清峰 2-0 虎白

 

 虎白の選手も未だ動揺を隠せていない。沢田もチームの様子に懸念を抱く。

 

「早く清宝の選手の動きに慣れないとこのまま持って行かれる可能性もあるわ……」

「そんな……!!」

 

 同じくベンチにいる永田は顔を顰める。しかし、沢田はチームに向き直った。

 

「でも、彼らは弱くない。このまま負けたりはしないわよ。そして、なにより……」

 

 そう言いかけて、視線を虎白のエースに送る。虎白ボールから始まり、虎白のエースにパスが渡った。清宝は先程と同じようにNARUTO走りでボールを追うのだが。

 

「おかしいってばよ!? 俺達が追いつけないなんて!」

 

 山下はドリブル中にも関わらず、清宝の選手をどんどん突き放していった。その走りは虎のように速く、何者も追いつかせることはない。

 

「何でいきなり速くなったんだってばよ!?」

 

 そして、山下を追う清宝の選手の耳にもその音が届き、加速の正体に気づく。

 

「な、まさか!?」

 

ブブブブブウウウブブブブウウウブブブブウウウ

 

「連続的に屁をこき続けることで加速している!?」

 

 それを見た沢田は言いかけていた言葉を発したのだった。

 

「うちには、屁こきタイガーがいる!!」

 

 

 

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