まちがった青春を送るオリヒロ達の夕べ   作:ぶーちゃん☆

7 / 10

みなさま、大変長らくお待たせしました!
このオリキャラ短編集が始まってから早ウンヶ月。名前はまだ出さないので本編開始まで誰かは解らないでしょうけども、ついにアイツの登場です!


長らくお待たせしてしまったこと、さらにはお待たせしまったわりに、彼女のSSの中で内容が史上最高にどうでもいいことのお詫びしまして、彼女の大サービスカットをお届けしちゃいますねっ(*> U <*)





???「お待たせのかしこまっ☆」

【挿絵表示】





ラノベの神様は悪戯がお好き【前編】

 

 

 

 なんつって、ふへ。

 

 

 常夏の砂浜での、愛しの比企谷先輩とのそんな妄想(前書き参照っ☆)をにへらと楽しみつつ、ひとり街に繰り出しおNEWの水着選びに勤しんでいる私は、皆さんご存知ないかとは思いますが、どうも家堀香織と申します♪

 やったね! 香織ちゃん初の水着回キタコレ!! (妄想)

 

 

 

 例年より遥かに早い梅雨明け発表が、きゃるんとしたお天気お姉さんの口から声高らかに宣言されたこの時期ともなると、季節はサマー待ったなし。サマった無し。サマし。もうサだよ、サッ! と、もう誰も覚えていないであろうミス・メリークリスマス(元バロックワークス所属)が突然降臨しちゃうくらいには、溢れだすパトスとテンションが隠しきれなくなる興奮と魅惑のサマータイムなのである。

 

 

 誰もが興奮する夏本番目前になると、恋に恋する乙女たちは来るべきバカンスに向けて、愛しのダーリンを悩殺しちゃうチャンスに備えて否応なしに気持ちを昂ぶらせ始めるというもの。ほら、水着の準備とかダイエットとか、あとはハミ出し厳禁ムダ毛処理とかさ。ムダ毛処理早すぎだろ。

 

 そんなわけで(どんなわけだ)、本日私は休日を使ってダラダラと水着売場を冷やかし中なのであーる♪

 

 

× × ×

 

 

 ウホッ! こんなエッジの鋭い際どすぎな角度じゃハミ毛しちゃわね!? とか、いやん布面積狭すぎぃ! これじゃちょっと強い波にでも襲われたらサクランボがひょっこりコンニチワしちゃうじゃない! とかドキドキしながら、あれでもないこれでもないと色んな水着を物色しつつふと思う。

 

 まぁ、ね。こんなのがただの不毛な妄想だってのはわかっておりますよ。ぶっちゃけ今んとこ水着を新調する予定もないしね。

 だってこの夏比企谷先輩と海に行く約束なんて取り付けてない……どころか、そもそも会う約束さえしておりませんし。

 そ、それに、大体あの人受験生だしね……! そりゃ気の利く可愛い後輩たる私は、気を遣ってお誘いしないよう努めちゃうってなもんよ!

 まるで先輩が受験生じゃなければ当然誘えてたんだZE☆ みたいな言い回しである。

 

 それにしても私ってばハミ毛気にしすぎィ! 言っとくけど、私うっすらですから! 決して剛毛とかじゃないのよん?

 おっと、シモの話題はここまでだ! シモの毛の心配はこれくらいにしときましょうかね。

 

 

 それはそうと、トップカーストリア充JKなんだったら、なんで休日にぼっちで買い物楽しんでんだよ。水着くらい友達と買いに来いよ、とか思う人もいるでしょう。いやいや、言っとくけどリア充が毎度毎度友達とお出掛けしてると思ったら大間違いよ? 休みなんて一人で家に居ることの方が多いっての。

 とはいえ、実際今日のウインドウショッピングはみんなで行こうかなー? とか思ってはいたのよ。でもね、なんか予感がしたんだよねー。……あ、今日はなんかあるぞ? ってね。

 

 私ってこう見えて、結構ラノベ主人公的なご都合主義イベントに遭遇する事がままあるのよね。なんか節目節目で、とっても都合よく素敵イベントにエンカウントしちゃうのだ。

 現に、私が初めて比企谷先輩とデートするきっかけとなったのは千葉の本屋での偶然の出会いだし、初めて比企谷先輩とシーデート出来た時だって、ららぽの本屋に行った時たまたま遭遇しちゃったからこその嬉し恥ずかし一生の記念イベントとなったわけなのだよ。ふひ。

 

 つまり今日、なぜ一人で街に出て来てぼっちショッピングを楽しんでいるのかと言うとぉ、…………それはもう偶然の出会いという名のご都合主義イベントを狙ったやましい気持ちで一杯だからだッ! や、やだ! い、言わせないでよねっ、恥ずかしい……!

 

 ま、創作世界じゃあるまいし、リアルってのは往々にして厳しいモノ。ラノベの主人公どころか現実世界のモブな私には、そんな都合のいい事ばっか簡単には起きやしないわよねー、なんて、ヤレヤレ系よろしく深い溜め息を吐きながら、水着売り場冷やかしを早々に終わらせていそいそワクワクあの本屋へと向かう私。都合いい事なんてそう簡単に起きないぜ……、とか達観ヅラして言っときながら期待高過ぎ!

 だってせっかくの主役回の今日、一人街に出てなにも起きないわけがないのだから! メタァ。

 

 

 

 スペシャルウィークばりの上がり3ハロン33秒台の末脚でてけてけと早歩きして、ようやく辿り着いた一件の本屋さん。ここは、なにを隠そう比企谷先輩と初めてお外で遭遇したあの本屋さんなのだ。ここなら高確率で先輩と偶然遭遇できんよ! と辺りに期待の注意を向けつつご入店。お一人さま入りまーす♪

 

 これでもし遭遇できたとして、それって偶然と言えるのん? なんて思いながらも、ワクテカでラノベコーナーへとひた進んでいた時だった。私の背中に向けてこんな声が届いたのは。

 

「あれ?」

 

 

 キ! タ! コ! レ!

 

 やーん神様ありがとぉ!!

 

 人とは、神の子である。

 つまり親であるあなたは、優秀かつ美しく、そして優しく優雅な可愛い可愛い愛娘のヨコシマな願いを聞き入れてくださったのねっ!?

 フッ、私の予感は正しかった。やはり今日は神託を得る日だったのか! もう神様大好き〜!! なんて心の中で密かに天を仰ぎながら、キラッキラな瞳で振り返る神の子たるわたくし。さぁて、そんな香織ちゃんの視界いっぱいに広がった光景とは〜!?

 

「やぁ! 確かよくいろはと一緒にいる……、家堀さん、だよね?」

 

 私のキラキラな瞳と同じくらいキラキラした葉山先輩の爽やか笑顔でした!

 神様、先輩違いです。チェンジで(白目)

 

 

× × ×

 

 

 どうしてこうなった……

 

「あ、あの葉山先輩……?」

 

「ん? なにかな」

 

「あの……、なんで私は葉山先輩にナンパされたんですかね……」

 

「はは、ナンパとは穏やかじゃないね。さっきも言ったろ? 一度家堀さんとゆっくり話してみたいなーって、前々から思ってたんだって」

 

「……は、はぁ」

 

 

 偶然なのか必然なのか、神の悪戯(いやがらせ☆)により学校のアイドルとたまたま出会ってしまったあの本屋さんでの一幕。

 だがそこは完全無関係な二人。定型な挨拶をひとつふたつ交わしてして、ごきげんようなお別れになるだろうと信じて疑わずにいたってのに、ここからまさかの事態へ突入することとなった。

 

『あ。は、葉山先輩、こ、こんにちはです』

 

『こんにちは。家堀さんは買い物かなにか? 今日はいろは達と一緒じゃないんだね』

 

『え、ええまぁ、今日はソロ活動ってヤツですー……。そ、それじゃあ──』

 

『あ、そうだ。せっかくこんなとこで偶然会ったんだし、もし良かったらちょっとお茶でもどうかな』

 

『……は? あ、あー、いや、その』

 

『よし、じゃあ行こっか。実は前々から家堀さんにぜひ聞いてみたい事があって、二人で話してみたいなってずっと思ってたんだよね』

 

『へ? いや、ちょ、ちょっと……? お、おーい……』

 

 

 

 と、なんともスマートにナンパされてしまった私であった。いやマジどんだけスマートに女を誘うんだよこのイケメン。返答する余地さえ与えずスタスタと先行っちゃうんだもんあの人ってば。

 で、気が付いたらちょっと小粋なカフェの窓際で、学校のアイドルとテーブル挟んでアイスココアをストローでちうちう吸ってるっていうね。なんだこれ?

 

 しかし、何度も言うが私と葉山先輩の繋がりなど友達の先輩、後輩の友達という希薄な間柄だけ。いろはと一緒に居る時に何度か遭遇し、会話したことさえ片手の指で足りる程度なのだ。

 

 友達の友達はみな友達なのだ、などと言うどこぞのパパの座右の銘とは違い、私と葉山先輩は明確に友達ではないのである。そんなどこの馬の骨とも知れないようなただの一般人たる私を、この校内No.1モテ男がお茶に誘うとはこれいかに? こらっ! こんな可愛いリア充美少女に対して馬の骨はさすがに失礼だぞっ?

 

「な、なにを企んでるんですかね……」

 

「あはは……、た、企むって」

 

 訝しげな目を向ける私に、とっても爽やかな苦笑いを浮かべるイケメンさん。

 だってそりゃそうでしょうよ。なんか企みでもなきゃ、葉山先輩みたいな人がほぼ会話したこともないような異性の後輩をお茶に誘おうとなんて思わないってば! ホントに企みとか一切なく、ただ女の子とお茶したかっただけなんだとしたら、どんだけ女にガツガツしてんのよって話よ。

 ……あ、そういや私、ほぼ会話したこともないような比企谷先輩を、欲望の赴くまま無理やりカフェに誘い込んだ前科があったじゃない☆ いやん私ってばガツガツ常習犯!

 

「や、やー、だって葉山先輩が私と話してみたかったとか聞いてみたかった事があるとか、ちょっと意味がわからなくて……。だって私と葉山先輩って、今まで関わりとか全っ然無かったですよね……?」

 

「ああ、そうだね。ま、家堀さんからしたらそうなるか」

 

 そうぽしょりと呟いて、顎に手を添えふむふむ納得している姿もなんともサマになる。はぁ〜、こりゃやっぱカッケーわ。そりゃモテない男からしたら憎い敵でしかないよねー。

 ま、僻む気持ちはわからなくもないけども、自分には絶対に逆らえない妄想の中で別人へと魔改造しといて、集団で虐めて勝ち誇って喜んでるの見るのは寒いしカッコ悪くて仕方ないよね♪

 

「ですので、こうして葉山先輩にお茶に誘われる謂われがないというかなんというか。ほぼ関わったこともないのに、私に聞きたいことなんてなにがあるんです?」

 

「あはは、思った通り、やっぱり家堀さんて面白いね」

 

 あっれー? なんかいま私バカにされてなーい?

 面白いって、それ年頃の乙女に対しては褒め言葉にならないのよん?

 

 可笑しそうにくくっと笑う葉山先輩にひくひくっと頬を引きつらせつつ言葉の続きを待っていると、ヤツは傾けていたブラックコーヒーをソーサーに置いてゲンドウポーズを構え、なんともいやらしい笑みを浮かべた。

 

「……じゃあまぁ、単刀直入に聞いちゃおうかな?」

 

 突然様子が変わったイケメンの態度に、思わず生唾を飲み込んでしまう。な、なにを言うつもりなんすかね……!?

 

「……最近、いろはがあざとくない件について、ずっと家堀さんの見解を聞いてみたいなー、と思ってたんだ」

 

「え!? うっそん急にメタトークなのん!? ……や、やー、それを私に聞かれてもちょっぴり困っちゃうんですけどぉ……! だ、だってホラ、あっちは原作が出てくれないと話を進められませんし……!?」

 

「メ、メタ……? え、えっとごめん。なんの話をしてるのかな……。あ、あとなんかその早口とテンション、姫菜を思い浮かばせてちょっと恐いんだけど……」

 

「あ、そっちじゃないのね。はー、びっくらこいた〜」

 

 ふぅ、あっぶね! もう、葉山先輩ってば! おどかさないでよ! あとあの腐った姫と同じ恐怖を感じるとか失礼だなチミは。

 

「こ、こほん、失礼しました、今のは忘れてください。……えと、どういうことでしょう……?」

 

「あ、うん……」

 

 若干引き気味の葉山先輩ではあるが、んん! っと咳払いをひとつすると、また元のイケメンキラースマイルに。

 

「ほら、最近……というか、生徒会長になった頃からいろは変わったろ? 彼女、前はみんなに愛されたいってタイプだったし、部活でもいつも部員達に可愛らしく振る舞っていたんだ」

 

 まぁ、みんなに愛されたいの後に“ただし男に限る”が付くけどね!

 

「でも彼女はあの頃から随分と変わった。部活に来ても、部員達に対する態度が明らかに変化したように思う。もちろん俺にもね。……ま、そもそもいろは、その部活自体にほとんど顔を出さなくなっちゃったんだけど」

 

 某夢の国のメインキャラクターのように、ハハッと笑いながら彼は言う。

 ホントあの子ってば、生徒会長成り立ての頃は「寒いから」って理由で行かなかったクセに、いざ穏やかな陽気になったらなっで全然行きゃしねーし。

 

 

「だからずっと聞いてみたいなって思ってたんだ。いつもいろはの傍に居る家堀さんに、君はいろはの変化についてどう思ってる? って」

 

 ──ふむふむ。なるほど、そういう事かー。

 つまり葉山先輩は、いろはが急にあざとくなくなった頃の私達と同じ疑問を抱いてるってわけね。

 

 確かにあの頃は私達も頭に疑問符をふよふよ浮かべてたっけ。でも私達はソレの真相を知る機会を得られた。そう、我ら1Cの教室への、比企谷先輩の来訪という機会を。

 でも機会を得られたうちのクラス以外の人達にとっては、未だにいろはの変化に理解が及んでいないという事なのだろう。ソレを聞く相手も居ない人達にとっては、その謎は永遠に解ける事のない謎迷宮(ミステリーラビリンス)なのだ。なんだよミステリーラビリンスって。コナン君か。

 

 だからこの人は私との偶然の出会いを好機と捉え、半年以上彷徨い続けたミステリーラビリンスからのエスケープを試みたのかもしれない。ミステリーラビリンス気に入っちゃったの?

 

「なるほど。葉山先輩の意図は理解しました。真実はいつもひとつですからね」

 

 名探偵よろしく声音を低く渋く、顎に手を添え訳知り顔でゆっくり二・三度頷く。その姿、まるで眠りの小五郎のごとき堂々とした佇まい。ダメじゃん。寝ちゃってんじゃん。アレ人型スピーカーじゃん。

 

「あ、うん」

 

 いやそこ、あんまり引かないでくれます? なんか私がスベッてるみたいじゃないですか。

 

 私的には一切スベッた自覚なんてないけども、なんか知んないけど顔も身体もカァーッと熱くなってきてしまったものだから、ここからはいつもの香織ちゃんで受け答えしちゃうぞ? スベッた自覚なんてないけども。大事な事なので二回。

 

「……でもごめんなさい。それはいろはのパーソナルな話題になっちゃうんで、さすがに本人の許諾なく私が勝手にお答えする事は出来ませんよ?」

 

 そう。二つ返事で会話を断ち切ろうとしてしまうのはちょっと申し訳ないけども、いくらいろはが比企谷先輩にぞっこん過ぎてあざとさを忘れてしまったからって、対外的にはまだ葉山先輩ラブという事になっているのだ。だから私が答えられるワケなどない。

 

 だいたい女の子の秘密を他人から聞き出そうだなんて、そんなの甘すぎるしデリカシー無さすぎだよ葉山先輩。そんな事もわからないのだろうか、この人は。

 みんな仲良くとか言って場の空気を整える事に長けてるクセして、本人の許可なく友達を利用して女の子のパーソナルにこっそり踏み込もうとするだなんて、この爽やかイケメン君はマジ最低だな。なんかムカムカしてきちゃったゾ?

 

 

 ……だから私は、このデリカシーの無いなんちゃって爽やか野郎に反撃の意味をたっぷり込めてこう返すのだ。額に血管が浮き出てしまっているかもしれないけれど、先ほどまでと変わらぬ笑顔を浮かべたままで。

 

「ていうか、その頃にいろは色々あったじゃないですか。ずっと憧れてたどこぞの先輩にディスティニーで振られちゃったりとか。……葉山先輩、いろはが変わっちゃった原因が自分にあるかもとか、少しくらい考えたりはしないんですかねー」

 

 まぁいろはの変化は葉山先輩に振られた事とは一切無関係だけどね! むしろ、変化があったからこそ振られるの前提で自爆しにいったんだし。つまり逆なのよ。葉山先輩に振られたから変わったんじゃなくて、変わったから振られたの。

 

 そんなことは百も承知にも関わらず、私はちょっと葉山先輩を責めるように言ってみた。女の子のプライバシーに首突っ込む前に、ちょっとは自分のやった事を振り返ってみなさいよ、って嫌味を言外にたっぷり込めて。

 

 それなのにこやつ──

 

「あはは、いろはが俺に振られて変わった? そんな事あるわけないだろ?」

 

 と、あっけらかんと可笑しそうに言い放ったのだ。

 

 は? なに言ってんのこの人。あんたにとっちゃまとわり付いてきた女を振り払うなんて日常茶飯事すぎて、振り払われた相手も自分と同じように大した出来事ではないはずだとか思ってんの?

 ……あんなんでも、いろはは一応親友なのよ。まぁ何度も何度も抜け駆けして、その親友から男を取っちゃおう☆ と目論んでる私が言うことじゃないですけどもっ!

 でもそんな一応親友を軽く見られたように感じてしまい、私はこの人に対して更なる怒りが沸いてきた。

 ……やっぱムカつくわこの人。

 

 そして、その怒りに身をまかせ、さらなる追撃を仕掛けようと身を乗り出した時だった。思わぬ反撃を受けるのは、むしろこちらの方だったのだ。

 しかも、今までずって抱いていた──私がずっと葉山隼人に向けていた感情を、全てひっくり返される程の強烈な反撃を。

 

「だって、君だって解ってるだろ?」

 

 

 

 ──どうやら、私の怒りは完全に的外れだったらしい。私は、この葉山隼人という学内アイドルを見誤っていたのかもしれない。

 

 

 私は、正直この人が苦手だった。その爽やかな笑顔も、その紳士的立ち居振る舞いも、全てが全て作られた……、いや、創られたもののようで。

 確かにいい人なのだろう。確かに優しい好青年なのだろう。その見立てに間違いはないのだろう。

 でもその見立ての中の彼は、あくまでも中身のない空っぽ。後ろを覗けばなにもないハリボテのように、空っぽのガワに見せ掛けだけの優しさを貼りつけただけの創られたいい人。みんな仲良く。みんなで楽しく。そんな砂上の楼閣のような儚い幻に縋るだけの、ただの夢見がちななんちゃっていい人。

 

 

 そう思っていた。そう思っていたからこそ苦手だったのに、君だって解っているだろう? と私に問い掛ける彼のこの微笑みを見た私には、この人が到底そんな風には……、夢見がちのなんちゃっていい人には思えなくなってしまったのだった。

 

「……いろはが俺に告白してきたのは、むしろ今までのいろはと変わったからなんだって。変わってしまったからこそ、今までの自分にけじめをつける為に告白してきたんだって。いろはがあの時まで好きだったのは、俺ではなくみんなの葉山隼人に過ぎなかったんだって。……そして、そんないろはを変えてしまったヤツが居る。そいつが居たからこそ、今のいろはなんだって」

 

「……ほえ?」

 

 

 あまりの予想外の反撃に、私は思わず間抜けな声を出してしまった。

 

 そう。爽やかな笑顔とは程遠い、いたずらっ子のような悪いニヤリ顔を見た私は、葉山隼人に対しての認識を改めなければならないようだ。あれ? この人、思ってたほどいい人じゃないぞ? ってね。

 むしろいい人どころか──

 

 

 ……うわぁ! この人ホントは性格めっちゃ悪いよ! 絶対腹黒だよ! だって、聞きたい事があるとか質問してきたくせに、ホントはなんでいろはが変わったのか全部解ってるよこいつ! あの人の存在まで全部!

 ……全部気付いてるクセに、わざわざ私を誘ってまでこの話題を振ってきた意図はまだ掴めないけれど。

 

 

 そして葉山先輩は、動揺を隠せずにいる私を見据えた上で、その悪戯微笑をより色濃い物へと変化させる。こいつ……動くぞ!

 

 よ、よし、一旦落ち着こう私。このまま腹黒葉山に飲まれるわけにはいかない。

 なんで変わった原因を知っていて……、その原因が比企谷先輩にあると知っていて……、さらになぜ原因が比企谷先輩にあると知っていながらも、なぜこうして私との邂逅を求めたのかまで全然意味がわからなくて落ち着かないけども、とりあえずは若干渇いてしまった喉に多少の湿り気を与えてやらねばね。早く喉の渇きを潤して、一旦落ち着こう、私。

 ではではアイスココアを一口っと。

 

 なんだか嫌な予感をひしひし感じつつ、冷たくって甘ぁいココアをちうちうする私。よっし、喉も心もクールダウン。COOL! COOL! COOL!

 今まさに葉山先輩が先程の台詞の続きを紡ごうとしてるけど、落ち着いたから全然大丈夫。もう葉山先輩の口からどんな予想外の言葉が出て来たって、クールにスマートに余裕で対処できるんだから!

 大丈夫だ私。油断せずに行こう。

 

 

「そう。いろははあいつが居たから変わったんだよ。いろはと……そして君も心から惹かれているあいつが居たから、ね」

 

「ブフォッ!?」

 

 

 

 

つづくっ!

 





というわけで、まさかまさかの香織&葉山という、香織SS史上もっともどうでもいいお話でした!
前々から香織と葉山のやり取りを書いてみたかったんですけども、表でやる内容でもないですからねぇ(苦笑)
フッ、さすがはチラ裏さんだぜ。懐が深すぎんよ!


そして次回の中編では(事前に中編宣言……だと?)、香織の身にさらなるどうでもいい不幸が襲い掛かるッ!


ではではまた次回お会いいたしましょうノシノシ



香織「うふ、私の悩殺水着姿を今夜のオカズにして美味しく召し上がっちゃダメだぞっ?☆」

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