魔法少女リリカルなのは Preparedness of Sword   作:煌翼

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読む専としてはかなり長いのですがこの度、初めて小説を書きます。
拙い文章ですが楽しんでいただけたら幸いです。

この作品は5年ぶりの新作であったreflectionでなのは熱が暴走した作者の妄想でできている・・・

ではいつもの始まり方で行きましょう。

魔法少女リリカルなのは Preparedness of Sword始まります・・・


交差運命のprelude
出会いと別れのprologue


プロローグ

 

第97管理外世界---地球。

そしてここは海沿いに位置する街、海鳴市。

2月末、寒空の下を1人の少女が歩いていた。

 

 

 

「にゃはは、今日は久々に寝坊気味だよぉ」

 

 そう言ったのは長い栗色の髪を頭の横でサイドポニーに束ね、私立聖祥大学附属中学校の制服に身を包んだ少女、高町(たかまち)なのは。小走りで歩を進めていた。

 

 なのはは人気洋菓子店の経営をしている両親や裏社会では名の知れた剣術を修めている兄姉が早起きなのを差し引いても朝が得意なほうではなく、今日は起きるのがいつもより遅かったために普段よりも家を出発するのが遅れてしまったようだ。

 

「あっ!ここって・・・」

 

 急ぎ気味だったなのはは公園の前で足を止める。この公園は彼女にとって特別な場所であったからだ。

 

 

 

 

 幼い頃、ボディーガードをしていたと聞かされていた父、高町士郎(たかまちしろう)が生死を彷徨うほどの重症を負って入院していた時期がある。一家の大黒柱である士郎が倒れてから、なのはの生活は一変することになった。

 

 兄は何かに憑り付かれたかのように剣を振るい、母と兄姉はオープンしたての洋菓子店の経営を軌道に乗せるべく働き続け、家族から笑顔が消えた。

 

 その家族も家に戻ってくるのはいつも夜遅くだ。幼いなのはに洋菓子店の手伝いができるわけもなく、家族に構ってもらえない寂しさを抱えながらも自分にできることを模索して実行した。

 

 

 それは家族に心配をかけない()()()でいること。

 

 

 もし、なのはが構ってくれと喚き散らしていれば家族の目がなのはに向いて、以前ほどではないものの何かしらの形で気にかけてくれていたかもしれない。

 

 しかし、高町なのはという少女は同年代の子供よりも達観した部分を持っていたため、家族に向けて自分の感情を素直に爆発させることができなかったのだ。

 

 

 公園のブランコに腰を掛け、沈んだ表情で周りを見渡して、溢れそうになる涙をこらえる日々……日が沈むと誰もいない家に帰り、一人で夕食を取る。

 

 家族のみんなが大変だから迷惑をかけるわけにはいかない。お父さんが元気になるまで良い子でいる。そうすればまた昔みたいに戻れる……それが当時のなのはを支えていた感情であった。

 

 

 

 

 そんなある日、なのはがいつも通り公園のブランコに腰掛けて俯いていた時に事件が起きる。

 

「ひぅ!!??」

 

 なのははブランコの鎖を握りしめて恐怖に体を震わせた。首輪のついていない小型犬が唸り声をあげ、敵意を剥き出しにしているためだ。

 

 この場から離れなければと駆け出そうとするも、元々の運動神経の無さ、そして目の前の出来事に完全に気が動転してしまい、足をもつれさせて盛大に転んでしまった。痛みと恐怖で零れ落ちる涙、犬の声が聞こえて、もう駄目だと目を閉じる。

 

 

「……あれ?」

 

 

 噛みつかれるのだろうか、引っ搔かれるのだろうか、恐怖に震えるなのはであったが痛みが襲い掛かることはなかった。

 

 恐る恐る目を開いたなのはの視線の先には・・・

 

 

「大丈夫か?」

 

 走り去っていく犬、目の前には男子にしては長めの黒髪と蒼い瞳が印象的ななのはと同じくらいの年齢であろう少年が手を差し伸べている。

 

「ふぇ?うん……あ、ありがとう!」

 

 高町なのはという少女にとって初めての友人であり、最初の幼馴染というべき少年との出会いの瞬間であった。

 

 

 

 

 なのははグシグシと服で涙を拭い、少年の手を握って立ち上がろうとしたが、緊張状態が解けたためか先ほどまでは感じていなかった転んで擦りむいた際の膝の痛みを感じて、その場にうずくまってしまう。

 

 その後、なのはは少年の肩を借りて、公園の水道で傷口を洗った後に二人でベンチに腰を掛ける。暫くして口を開いたのはなのはの方だった。

 

「ご、ごめんね。私のせいで迷惑かけちゃって」

「迷惑なんて思ってないから別にいいよ。それより足は大丈夫?」

「うん、もうちょっとしたら歩けると思う」

 

 日が沈み始めた公園で言葉を交わすこと数十分、なのはの様子も幾分か落ち着いてきた。

 

「こんな時間だし、そろそろ帰ろうか。君の家はどっち?」

「えっと、あっちなの」

 なのはは立ち上がった少年の質問に対して、足を庇いながら立ち上がって指差しで答える。

 

「そうか……じゃあ、行こう」

「ふ、ふぇぇぇぇぇぇぇ!?」

 

 少年は先ほどなのはを運んだ時のようにその腕を肩に回して、ゆっくりと歩き出した。状況についていけていないのか、なのははどこか間の抜けた声を上げて少年に引きずられていく。

 

 ただでさえ時間のかかる子供の歩幅に加えて一人は怪我人ということもあり、高町家に到着する頃にはすっかりと日が暮れてしまっていた。

 

 到着した高町家では、なのはの兄姉、高町恭也(たかまちきょうや)高町美由希(たかまちみゆき)と鉢合わせした。

 

 恭也と美由希は洋服を砂まみれにして見慣れない少年の肩を借りながら戻ってきたなのはに対して慌てながらも怪我の手当てを施し、少年となのはから事情を聞いて少年へと礼を述べる。

 

 そして、少年はなのはを助けてここまで送ったことに対して高町兄姉からの礼を受け取り、自分の家に帰ろうとしたが、日も暮れているということでその道のりには恭也が付き添うこととなった。

 

 

「では、行こうか」

「はい、お願いします」

 

 玄関から出て行こうとした2人だったが……

 

「ま、待ってほしいの!」

 

 特徴的なツインテールをひょこひょこと揺らしながら近付いてきたなのはに引き留められる。

 

「えっと、君のお名前を教えてほしいの!私はなのは!高町なのはなの!!」

「そっか、まだ名前を言ってなかったね。俺は蒼月烈火(そうげつれっか)。よろしく」

 

 黒髪の少年―――蒼月烈火がなのはに対して自らの名前を告げた。

 

「そうげつ……れっか君。じゃあ烈火君だね!私のことはなのはって呼んでね!!」

「わかったよ。なのは」

 

 そして、互いに名を告げ合った烈火は恭也と共に高町家を後にした。

 

 

 

 

 その翌日、なのははいつもの公園でブランコに腰かけている。だが、それはなのはにとって寂しさと辛さを胸に抱え込んでいた昨日までとは大きく意味合いが違う。どこか落ち着きがない様子で公園の入口をチラチラと見つめている。

 

「あ、烈火君だ!」

「お待たせ、なのは」

 

 目的の人物が現れて一目散に駆け出していくなのはと、歩いて公園に入ってくる烈火。なのはにとって初めての友達が姿を見せたのだ。

 

 これは父親が倒れてから灰色になってしまった世界に再び色が戻ったということを指し示している。なのはと烈火はそれから毎日のように顔を合わせて遊ぶようになっていった。

 

 

 

 

 

 

 既に2人が出会って数週間が経過しようとしていた。

 

 今日も共に過ごしていたなのはと烈火は太陽が沈みかけ、茜色の光が照らす中で並んでベンチに腰かけていた。

 

「えへへ、今日も楽しかったの」

「楽しかったのはいいけど、ちょっとは気を付けてくれよ。また転びそうになってたしね」

「ぶー、烈火君が助けてくれるからいいもん!」

 

 心から楽しそうな表情を浮かべている少年と少女。

 

「烈火君……明日もその次の日も、これから先もずっといっしょなの」

 

 なのははニコニコと笑みを浮かべて烈火の腕を抱き締める。烈火もなすがまま引っ付かれているが、その表情はとても安らいだものであった。

 

 幼い二人が何気なく交わした言葉。しかし、この日々は突如として終わりを告げることになる。

 

 

 

 

 

 

「え、引っ越し!?」

「うん、急に決まっちゃってね。何日かしたらこの街を出ていかないといけないんだ」

 

 いつものように遊んでいた2人、解散しようとした別れ際に烈火が言いづらそうに切り出した。その内容とは烈火が引っ越しのため、この海鳴市から出ていくというものである。

 

 それを聞いた瞬間・・・

 

「そ、そんなのやだよ!!ずっといっしょだっていったの!」

 

 なのはは大きな瞳を潤ませて烈火を離さないとばかりに抱き着いた。程なくして大粒の涙を流し、嗚咽と共に体を震わせる。

 

「ごめん。でも、もう決まっちゃったことだからどうにもできないんだ」

 

 烈火も泣き出したなのはの背中を摩りながら悲しそうな表情を浮かべている。それから時間が経ち日が暮れ始めても尚、なのはは烈火を離さまいとしがみ付く。

 

「……なのは、サヨナラしちゃうけど、俺が大きくなったらまたこの街に来るよ。なのはともう一回会うために」

「大きくなってからじゃ嫌なの。ずっといっしょだもん」

 

 ギュッと烈火の服を握りしめるなのは。

 

「ごめん……今は一緒にはいられない。でも絶対にこの街に帰ってくる。何年後になるかわからないけど絶対に……」

 

 今度は烈火の方からなのはを抱き締めた。そのぬくもりを忘れないようにいつか来る再会の時まで……

 

「ホントに帰ってくるよね!?なのはに会いに来てくれるよね!!?」

「うん、約束するよ。だからそれまで……お別れだ」

 

 名残惜しそうに離れる少年と少女。

 

 数日後、蒼月烈火は海鳴市を発った。

 

 

 

 

 

「結局、あれっきりだもんね」

 

 それから何年もの時が流れ、高町なのはは13歳、中学2年となっていた。

 

 

 烈火と別れて数年後、小学3年生の時に起きた人生を変えたであろう魔法との出会い。

 

 なのはは魔法を使って大空を飛ぶために生まれてきたと絶賛されるほどの才能をいかんなく発揮し、地球で起きた2度の大きな事件を解決に導いてきたことを始めとして、様々な功績を上げ、今では時空管理局のエース・オブ・エースと呼ばれるまでになっている。

 

 事件の中で想いを魔導に乗せてぶつけ合い、分かり合ったことによって得た大切な人たちと絆を紡いできた。空を飛べなくなるどころか一生歩けなくなるかもしれない大怪我を負ったことすらあった。

 

 なのはは普通の13歳の少女ではまず経験しえないような濃密な数年間を過ごしてきたが、少年―――蒼月烈火との出会いと約束は忘却されることなく、今もまだ彼女の胸に息づいている。

 

「貴方は今どこで何をしていますか?……ってそろそろ時間がヤバい!!」

 

 感慨深そうに公園を見つめていたなのはであったが、元々遅めに家を出てしまっていたのを思い出したのか小走りでその場所を後にした。

 

 

 

 

 

 聖祥学園中等部に向かう途中で四人の少女と合流し、なのはを含めた五人組となり歩き出す。かつては下を向いて俯いていることしかできなかったなのはが自ら踏み出したことによって得た大切で特別な親友達……

 

「……私は今もここにいるよ」

 

 小さな声でなのはが呟いた。

 

「どうかしたの、なのは?」

 

 4人の少女のうちの1人。艶のある金髪を腰の下まで伸ばし、真紅の瞳を持つ少女がなのはに声をかける。

 

「ううん、何でもないよっ!さあ、今日も頑張ろ!!」

 

 なのはは幼い頃と変わらない、明るい笑顔を浮かべて親友達と共に歩いていく。

 

 

 

 

 

 

 

 

「……失礼します」

「お、来たな転校生。私が担任だ。よろしく頼むぞ。では教室に案内するからついてきてくれ」

 

 聖祥学園中等部の職員室に真新しい制服を着た男子生徒が訪ねてきた。

 

 

 少年と少女の再会の時は近い……




プロローグはいかがでしたでしょうか。
幼少期から一気に空白期までぶっ飛びましたが無印、A'sの展開は基本的に劇場版1st,2nd
通りに進んで行ったものと考えていただいて構いません。
この作品はTV版、劇場版、漫画、ドラマCDといろんな設定を取り入れていきたいと思っています。
よってグレアム一派はでてきませんし、登場人物たちのデバイス等は劇場版基準になります。
最後まで読んでくださってありがとうございました。

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