魔法少女リリカルなのは Preparedness of Sword   作:煌翼

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因果悪意のコキュートス

 管理局から選抜された魔導師が第151管理外世界ルーフィスに降り立った。その最中、地球からロストロギアを乗せて飛び立った船、そしてそれを捜索すべく局から派遣された船が行方不明になったと思われる空域を通過したものの、特にこれといった異常もなく、無事に到着したようだ。

 

「これは……」

 

 シグナムは目の前の光景を見て思わず目を見開いた。そこにあったのはまさに大自然。生い茂る木々、透き通った海、青い大空、原始時代を思わせる未開の無人世界といった様相であった為だ。

 

 シグナムと共にこのルーフィスにやって来たのは他に5名。

 

「では、周囲の魔力反応を探りながら、捜索対象を探すとしようか」

 

 この部隊の責任者であり、指揮官でもあるリョカ・リベラが周囲の魔導師達を見渡しながら言い放った。

 

「ええ、そうしましょう」

「そうじゃな」

 

 賛同するように声を発したのは40代半ばと思われる女性と初老の男性。

 

「互いのコールサインとポジションも確認したことだしな」

 

 40代と思われる男性も賛同の声を上げ、20代とみられる若い女性も静かに頷いた。

 

 バリアジャケットに換装し、歩き出した6人。

 

 シグナムは内心で自身以外の魔導師の面々に若干の戸惑いを抱いていた。事前に聞かされていた参加予想メンバーと今いるメンバーでは誰一人一致していないからだ。参加予想リストにあったのは局内でも名の知られた魔導師達であったが今ここにいるリョカ以外の4名は少なくともシグナムの記憶にない者達であった。

 

 そんなシグナムの想いとは裏腹に生き残った局員とロストロギアの捜索が続けられるが、一向にその気配を感じ取ることができないでいる。

 

 バリアジャケットの保護機能があるとはいえ、照り付ける灼熱の太陽は魔導師達の体力を着実に奪っていく。

 

 捜索から2時間が経過した頃、魔導師達は大きな木の下に集まって休息を取っていた。

 

 休息を終えて捜索を再開するものの、行方不明者の痕跡を一切発見できないまま、更に1時間が経過していた。

 

 

 

 

「頃合いか……」

 

 額の汗をぬぐったリョカ……そして……

 

 金属同士がぶつかり合う鈍い音が周囲に響き渡る。

 

 

 

 

「ッ!?何を!」

 

 背後から斬りかかられたシグナムは、振り下ろされたアームドデバイス“アルス”を自身の刀剣型アームドデバイス“レヴァンティン”で受け止めたが、突如として攻撃を仕掛けて来たリョカの狂行に驚愕の表情を浮かべている。

 

「手か足の一本は貰うつもりだったんだけど」

 

 リョカは鍔迫り合いから距離を取り、シグナムの方を眺めながら答えになってない答えを言い放つ。リョカの行動が引き金になったかのようにシグナムの周りを取り囲むように他の部隊メンバーが立っていた。その手には曲刀、戦斧、鞭、長槍とそれぞれのデバイスが握られている。

 

 

 

 

「何の真似だ!?」

 

「何の真似ですって……ふざけんじゃないわよ!この犯罪者が!」

 

 シグナムの疑問の声をかき消すように40代半ばの女性がヒステリックな金切り声を上げた。

 

「……今は仲間内で争っている場合ではないはずだ」

 

 シグナムは僅かに動揺しながらも女性に制止を呼び掛ける。暴走すれば次元震を引き起こしかねないロストロギアが複数個行方不明になっているのだから当然の反応であろう。

 

 

 

 

「ああ、探し物はこれかな」

 

 リョカは“アルス”に格納されていた“ジュエルシード”をシグナムに見せつけるように取り出した。

 

「それはッ……!?」

 

「ふふ、ははははは!!!!君は騙されたのさ。始めからロストロギアなんて行方不明になっていないし、捜索隊なんて出撃してもいない。君を人気のいないところへおびき出すため、こちらで流した偽情報だったんだよぉ!!」

 

 リョカは自身の周りに6つのジュエルシードを浮遊させながら、心底愉快だという表情を浮かべている。

 

 

「ふふふっ、ここは君の断罪場なのさ。闇の書の守護騎士さん」

 

 リョカが言い放った一言“闇の書の守護騎士”……夜天ではなく“闇の書”という言い回しと、先ほどの女性の言い草からしてシグナムにはこの事態の原因がおおよそ理解できてしまった。

 

 

「そうじゃ!娘を返せ!殺人犯め!!!」

 

 初老の男性が声を荒げた。

 

「娘……?」

「以前のお前達が起こした事件で闇の書の暴走に巻き込まれたワシの娘は死んだんじゃ!!」

 

 地球で起きた最後の“闇の書事件”においては管制人格を除けば死者は出ていない。つまりは前回以前での出来事ということであろう。

 

「そうよ!息子を返して!!」

 

 先ほどの女性もシグナムを糾弾する。彼女もまた闇の書により家族を失ったようだ。

 

「昔、てめぇらに魔力を取られた後遺症でリンカーコアがぶっ壊れちまった。そのせいで俺は魔導師としての道を断たれたんだ!責任を取れよ!なぁ!!!」

 

 40代くらいの男性もシグナムを血走った瞳で睨み付け、最後の1人の女性は無言で手に持っていた槍の穂先を向ける。

 

 闇の書事件の被害者や遺族の糾弾を受けて揺れるシグナムの眼差し、“レヴァンティン”の切っ先が下に降ろされた。

 

「そして、僕は母を失った。当時、管理の武装隊員だった母は君達に戦いを挑み、完膚なきまでに叩きのめされ、魔力を奪われた後、衰弱して死んだんだ!!闇の書は夜天の魔導書が悪意ある改変を受けて壊れた姿?君たちのプログラムも壊れていた?主のために蒐集するしかない?……そんなこと僕らには関係ないんだよねぇ!!!」

 

 リョカは人が変わったように喚き散らす。

 

 闇の書事件の概要やはやてや守護騎士達が置かれていた状況を知るものは多い。

 

 今回の事件でシグナム達が、極一部を除いて魔法生物以外からの魔力蒐集を行わなかったこと、蒐集せねば主が命を落としていたこと、最終的に現地の管理局員に協力し、闇の書の無力化に尽力したことを加味され、減刑を受けて管理局、聖王教会に手厚く迎え入れられた。

 

 はやてらに対して同情する声も少なくなく、彼らの騎士としての能力の高さや希少な古代ベルカ式の使い手であること、周囲を引き付ける優れた容姿とカリスマ性から管理局、聖王教会においても重要な存在となりつつあり、一部の面々を除けば評価も高い。

 

 だが、被害者遺族にとってみれば、罪の大半を背負って管制人格が消えてしまい、残った騎士達は贖罪という名目で管理局に所属した後、次々と功績を立て、今や局内でも知らぬ者のいないトップエースへと上り詰めている。

 

 

「管理局が罰を下さないから、僕が君を断罪してあげようと思ってわざわざこんな場所まで出向いて来たのさ。“闇の書”に関わる全てが許せないが、特に許せないのは君達欠陥品の騎士様達さ」

 

 リョカの糾弾が続き、瞳に宿った憎悪が狂気へと塗り替えられていく。

 

「そうよ!息子を殺しておいて自分達は管理局の英雄だ、なんて許されると思って!?」

 

 女性は髪を振り乱しながら叫ぶ。はやて達に下されたのは、“夜天の書”の詳細データ開示や、暫くの観察処分、奉仕活動といった判決であった。

 

 守護騎士の境遇や置かれていた状況を間近で見た者達からすれば、彼女達もまた闇の書の被害者と言えるため妥当と思うかもしれないが、被害者遺族からすればあまりに軽い判決であったと感じるかもしれない。

 

 被害者遺族は戦果を挙げ、階級が上がっていく八神家の面々に対して不用意に手出しすることができずおり、大切なものを失った悲しみから目を背け続ける日々が続いていた時、リョカから今回の話が持ち掛けられた。彼らの忘れようとしていた悲しみ、抑え込んでいた憎悪が爆発し、この状況に至る。

 

 

「抵抗するのは自由さ。でも君がそんなことできるわけないよねぇ!仮に僕たちを退けたたとしても、管理局に牙を向いた犯罪者として主を含めた君達の信用は地に堕ちる。結局、“闇の書事件”を経ても何も更生なんてしてないってね!!」

 

 リョカは勝ち誇った様子でシグナムを嘲笑う。

 

「真実を話したって無駄無駄!!君達程度の訴えなんて父さんに握り潰してもらえばいいだけの話だし、ここで僕たちを全員を殺して口を塞ごうとしても無駄だよ。この光景は僕のデバイスから父さんの部隊へライブ中継されている。君がこちらに攻撃を仕掛けた時点で即指名手配行きなんだよね。つまり、チェックメイトってわけさ!!!……っ!?」

 

 完全に状況をコントロールし、場の支配者となっていたリョカがだったが、シグナムの行動に思わず絶句した……

 

「―――私は元より貴方達に向ける刃は持ち合わせていない」

 

 シグナムは“レヴァンティン”を左手に出現させた鞘に収め、地面に放り投げた。戦うための武器を自ら手放したのだ。

 

「な、何をしているんだ君は!?」

「見ての通りだ」

 

 リョカだけでなく、周囲の魔導師達も驚愕の表情を浮かべているが、シグナムは淡々と答えた。

 

「貴方達が闇の書により、地位と名誉を、未来、大切な人を失ったのならば……それは、私に刃を向ける理由になろう。例え、原因がどのようなものであったとしても、今まで我らのしてきたことは不変の事実であり、貴方達に悲しみを背負わせてしまっていた責は私達にある。だが……」

 

 

 シグナムは目の前の面々に向かって深く頭を下げる。

 

 

「我らの主だけには手を出さないで欲しい!勝手を言っているのは分かる!!だが、あの方もまた、闇の書に人生を狂わされた被害者なのだ。私の事は如何様に扱ってもらっても構わない。それで貴方達の怒り、悲しみが少しでも収まるのなら……」

 

 騎士道精神を重んじ、由緒正しいベルカの騎士として知られているシグナムが犯罪者まがいの行動をしている自分達に恥も外聞もなく、深々と頭を下げて懇願してきた。

 

 

 40代ほどの男性が思わず一歩後退した。その隣で初老の男性は滝の様な汗を流している。

 

 

 

 

「どうか、我らの主だけは……」

 

 自分達の行動に憤るわけでもなく、絶望するわけでもなく、目の前の騎士は凛として佇んでいた。

 

 シグナムの脳裏には自身がこれからどうなっていくかということなど、欠片も浮かび上がってこない。

 

 あるのは“闇の書”により全てを狂わされた彼らへの罪責感……そして、恐らくは残すことになってしまう、主や他の騎士達の事ばかりであった。

 

 戦うことしか、殺すことしか知らなかった自分達を温かく迎え入れてくれた最後の主。空から叩き落されようと、地に塗れようと何度も立ち上がって自分達に向かってきた2人の少女。

 

 時空(とき)を超え、主を変え、記憶を失いながら、ただ命じられるままに機械の様に戦い続けるだけの日々が永遠に続くと思っていた。だが、その地獄のような日々は数年前、終わりを告げた。

 

 その時から、敵を討ち続け血塗られたシグナムの刃は誰かを護るための物となった。訪れたのは家族と、仲間達と過ごす暖かな時間。それは誰もが当たり前に享受している物であり、シグナム達にとってはようやく得た穏やかな時間である。

 

 

 

 

———皆、主の事は任せるぞ

 

———そして、我が主、八神はやて……共に生涯を終える事叶わず、先立つ不義理な騎士をどうかお許しください。短い間でしたが私は幸せでした

 

 

———ふっ、これから死ぬというのに不思議と恐怖はない、空に還ったお前もこのような気分だったのだろうな

 

———もう間もなく……そちらに逝く……

 

 

 

 

 魔導師達は一点の曇りもなく透き通ったシグナムの瞳に見惚れていた。目の前の騎士の高潔さに、その忠義に圧倒されているのだ。

 

 

 

 

「な、何よ!?アンタなんか!!」

 

「ッ!」

 

 40代くらいの女性が鞭状のデバイスを振るい、シグナムの騎士甲冑の肩口に焦げ跡を作った。

 

「はぁはぁ、お望みどおりにしてあげるわ!大体何なのかしら!その下品な体は!気持ち悪いくらい整った顔といい、生意気なのよ!!!!……いいわ、一生、人前に出られないくらいズタボロにしてあげる」

「そ、そうだ!俺みたいな出来損ないにめちゃくちゃにされて、泣き叫んでるところを絞め落としてやるぜ!!」

「娘の無念……ここで晴らしてやる!!」

 

 リョカと槍を持っている女性以外がシグナムに詰め寄っていく。

 

 

 そして、シグナムはすべてを受け入れたかのように、その瞳を静かに閉じた……

 

 

 

 

「え……ぁぁぁ、あぅ?……ああああああああああっっっっぅ!!!!!???」

「な、なんだよこれぇ!!!」

 

 シグナムの耳に突如として聞こえてきたのは自分に近づいて来たであろう魔導師達の絶叫であり、目を開いた先には、鞭を振るった女性の左肘から先が失われ、血飛沫を上げている光景が広がっていた。

 

 その隣では40代半ばの男性が戦斧で何かからの攻撃を防いでいる。

 

 そして、シグナムの背後からも襲撃者が迫っていた。

 

「ちぃ!っっ、ぁぁ!!!」

 

 シグナムは振り下ろされた刃に対して、赤紫色の魔力を纏わせた手甲を突き出して防御した。そのまま、相手の攻撃の勢いを利用して背後に飛ぶ。目指すのは地に転がっている愛剣……

 

 しかし、シグナムに次なる襲撃者の刃が迫る。その襲撃者を蹴り上げ、空中で身を捩りながら、攻撃を躱し、レヴァンティンの柄を掴み取って抜刀、振り上げて一閃、追ってきた相手に一閃、2つの影を斬り裂いた。

 

「こいつらは一体!?」

 

 シグナムが斬り飛ばしたのは人ではない。3~4mほどの生物であり、細長い体躯に手には大きな鉤爪、鋭く生えそろった歯、硬質な鱗に割れた瞳孔、原始的な竜種と呼べる生物であった。

 

 

 

 

「うああああああっぁあああ!!!!!こっちに来るんじゃあない!!!!」

 

 シグナムが悲鳴が聞こえた方に目を向ければ、初老の男性が尻もちをついて、刀身がへし折れた曲刀を振り回している。

 

 男性の目の前で体長10m以上はあろうかという双頭の狼が雄叫びを上げており、口元からはみ出すほどの大きな2本の牙、獰猛そうな目付き、男性は恐怖に震えていた。

 

 

「いやあああああぁぁぁ!!!!はなしてぇぇぇ!!!」

 

 

 先ほど鞭を振るった女性が4mほどの大きな鳥に肩を掴まれ、大空へと連れ去られた。悲鳴を上げている女性だったが、もう一羽の怪鳥が女性の両足を後肢で掴み取り、2匹の怪鳥の爪が肩と足を突き破る痛みに泣き叫ぶ。しかし、そんなことなど気にも留めず、2匹の怪鳥はこの獲物は自分の物だと言わんばかりに空中でドッグファイトを繰り広げており……耳を覆いたくなるような音を発し、空に鮮血が舞い散った。

 

 

「う、うおおおおおお!!!!この化け物共がぁぁぁ!!!!」

「待て、闇雲に突っ込むな!!!」

 

 戦斧を持った男性が空へ飛び上がり、怪鳥の群れに突貫していく。それを受けたシグナムは目の前の竜種を斬り飛ばしながら制止をかける。

 

 何故ならば……

 

「え……?な、んだ……!?」

 

 先ほど襲撃してきた怪鳥の5倍近い大きさの鳥が空を陣取るようにその羽をはばたかせていたからだ。2対4枚の大きな翼を広げたかと思えば、そこから何かを連続で射出していく。

 

「こ、こんなもん!あ……えっ……!?」

 

 男性は戦斧から魔力を炸裂させ、カートリッジを1発消費しての魔力壁を生成し、防御にあたるが、巨鳥の羽毛はそれをバターを斬り裂くように貫通し、間の抜けた声を上げた男性が一瞬で全身をバラバラに刻まれて持ち主を失った戦斧が無残にも地面に転がる。

 

「馬鹿者が!!しかし、あんなものを撃たれ続ければこちらは全滅……ならばッ!!」

 

 シグナムは面での範囲攻撃を上空から撃たれ続けることを嫌ってか、自身も地を蹴り、巨鳥を目指して大空へ舞い上がる。シグナムの接近に反応して巨鳥は再び、羽毛を射出した。

 

「これは……羽毛の一枚一枚に魔力が纏わりついている!?」

 

 シグナムは羽毛の弾幕を躱しながら接近するが、通りすがっていくそれに魔力が付与されていたことに驚愕した。

 

 巨鳥は範囲攻撃が当たらないと見るや、上羽2枚を振るって魔力を纏った真空波を撃ち放った。シグナムは身を捩り、迫り来る2つの衝撃波を躱す。威力は先ほどまでの比ではない。

 

 だが、高威力の代償か攻撃範囲は狭く、連射速度も大したことはない。しかし、それを補うかのように範囲攻撃の時には巨鳥の背後に控えていた怪鳥達が間髪入れずにシグナムに襲い掛かる。群れ全体での波状攻撃に切り替えたようだ。

 

 “リンカーコア”を持った生物は数多く存在する、上位の魔法生物の攻撃に魔力も宿ることはある、しかし、状況に応じて技を切り替え、それに合わせて群れ全体での攻撃方法を切り替える……最早、戦術と言っていいかもしれないそれを完全に扱いこなしている目の前の鳥達は明らかに普通ではない。

 

「雑魚に用はない!」

 

 シグナムは全身に赤紫色の魔力を纏い、群れの中央を強引に突っ切っていく。狙いは1匹だけだ。

 

 自身に危害を加えないまま、既に2人の犠牲者が出ている以上、この件の企んだリョカ達にとっても不測の事態であることは明白。つまり、この生物たちを打倒することに関して、管理局への体裁について一切気にする必要がないということ……シグナムは“レヴァンティン”の非殺傷設定を解除した。

 

 そして、包囲網を突き破ったシグナムと巨鳥が相まみえる。

 

「“レヴァンティン”!!」

 

《Explosion!》

 

 シグナムは上段に構えた“レヴァンティン”の撃鉄を叩き起こす。炸裂した2発のカートリッジが排出されると魔力が膨れ上がり、刀身が炎を纏う。

 

 対する巨鳥も前翼に魔力を纏わせ、魔力刃のようなものを形成してシグナムに向かって振り上げた。

 

 

「紫電……一閃ッ!!!」

 

 

 シグナムの爆炎を纏った一太刀は巨鳥を刃と化していた翼ごと一刀両断した。

 

 先ほどまでの魔力ダメージでの攻撃ではない非殺傷を解除した本物の一撃を受け、全身を炎で焼かれながら、真っ二つに両断された巨鳥が地面に墜落する。群れのリーダーを失った怪鳥達は統率を乱して我先にと逃げ始めているようだ。

 

「これで制空権は奪った……あの男、何をやっている!?」

 

 シグナムは最大の脅威であった上空から弾幕による範囲攻撃を繰り出す巨鳥を打ち倒したが……

 

 

 

 

「くそぉ!くそぉ!!くそぉぉぉ!!!!なんだよ!これはぁぁぁぁ!!!!!???」

 

 リョカは余裕のない表情で迫り来る2mほどの狼達に自身の剣型デバイス“アルス”を叩きつけるが、なかなか決定打とならず、数の暴力から後退を余儀なくされている。

 

「へ、ぇ!?……あっ、ぁぁぁぁ!?」

 

 しかし次の瞬間、リョカの身体が宙を舞い、地面に叩きつけられた。手にしていたアルスは後方10mほどまで吹き飛ばされている。視線を向ければ、双頭の狼がリョカの方に向いて歩いてきているではないか、そして、その後ろには初老の男性の物と思わしき足首が転がっていた。

 

「ひ、ひぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!!!!!!????」

 

 先ほどリョカが吹き飛ばされたのは双頭の狼が前足を振った事によって起きた風圧が原因であった。防衛手段を失ったリョカは頭を抱え、その場で丸くなった。迫る6匹の狼・……だが6匹ともリョカには何の興味も示さず、その周囲を舞っていた“ジュエルシード”を1つずつ口で挟んで戦闘域から離脱して行くではないか……

 

 

「なぜ、ジュエルシードを!?……ッ!」

 

 渡すものかと上空から追いすがろうとするシグナムであったが、怪鳥の群れに阻まれ思う様に動けない。

 

「……くっ!?」

 

 他の面々とは違って小型の竜種相手に危なげなく立ち回っている長槍を持っている20代くらいの女性も、強奪の瞬間を見て追いかけようとするが、目の前の竜種の群れによって追跡を阻まれてしまい、現地の魔法生物に“ジュエルシード”を奪取されてしまった。

 

 

「もういやだ……どっかいけよぉぉぉぉ!!!!!!」

 

 

 地面で丸くなっているリョカは残存魔力をすべて使って、障壁を展開するが、先ほどの戦斧を持った男性の最期を思い出せば、焼け石に水だということは誰の目から見ても明らか……

 

 リョカの悲鳴と共に、双頭の狼の左側の顔が力を籠めるように持ち上げられ、突き出た牙の先端に魔力を纏わせながら振り下ろされた……

 

 

 

 

 しかし、1発の魔力弾が振り上げられた左側の顔を撃ち抜いて、その動きを強引に止めさせる。

 

 魔力弾を放ったのはシグナムでもリョカでも槍を持っている女性でもない。それが遥か上空から撃ち放たれたものだったからである。

 

「なっ!?上か!」

 

 シグナムが発射域であろう上空に目を向ければ、蒼い流星が高速で接近してきているのが視認できる。

 

 

 

 

 流星が煌めき、双頭の狼に着弾した。先ほど魔力弾を撃ち込まれた方とは逆の頭が首の付け根から斬り飛ばされ、宙を舞う。

 

 シグナムの瞳が映し出したのは、白い背中……

 

 その後姿には見覚えがある。長めの黒髪に、白のロングコート、手には純白の剣……

 

 数日前に知り合った少年、蒼月烈火がこのルーフィスに姿を現したのだ。

 




最後まで読んでいただきありがとうございます。

いつの間にやら読んで下さる方が増えてきていて感謝感激でございます。

正直、モチベが爆上がり中です!

その証拠に、これほど早く、続きをお届けすることができました。

ただ、大分スプラッタな内容になっていることをお許しください。
第2章は基本こういう話となります。

また、原作ではあまり描かれていない、グレアムやハラオウン親子以外の、闇の書の被害者達を直接、登場させるとこんな感じなのかなと思って書きましたが、原作キャラへアンチ的な表現になってしまうのは避けれられませんでした。

その代わりと言っては何ですが、シグナム姐さんには戦闘方面で活躍していただきました。
これまでで一番気合を入れて書いたかもしれません。
この第2章では実質主人公と言っても過言ではないほど出番が多いと思います。

そして、管理局員であるにもかかわらず、私情で法を犯した彼らの末路は、この話を見ていただいているならばお分かりになるかと思いますが・・・




PSP版や最新の劇場版があるとはいえ、STSはスバルが主人公と言っても過言ではなく、フォワードの成長がメインで描かれることが多いという風に感じています。

ゼストとレジアスや六課を取り巻く環境、陸と海の軋轢みたいなのは描写されていましたが、やはり、メインはフォワード陣、後半ヴィヴィオ関係が話の主軸となっていたので、その辺は割と流された感があるなと思っていました。

自分的にはフォワード関係よりも、管理局の闇に対してのはやて達の行動や、某マッドサイエンティストとそれを追うフェイトがもっと見たいなぁとか、三脳があっさりと退場してしまいましたし、その後、管理局がどうなったかとかそういう関係がメインで見たかったと思っていたりしています。

続編というか外伝のvividは無印~STSまでとかなり作風が変わった関係もあってか、その辺が描写されることはなくなってしまいましたのが残念でなりません・・・

この作品では、自分の妄想でしかないですが、管理局のダークな部分を多数登場させていくと思います。
別にアンチ管理局作品というわけではありませんが、局も慈善事業団体ではないですし、原作の時点で違法研究をしている黒い部分があるのは明らかなので、この今作では管理局関係の話はそういう方向に行くことが多いかもっていう感じですかね。

勿論、この第2章でもなのフェイを始めとしたリリカルガールズにもしっかりと出番がありますのでご安心ください。

無人世界で交差する悪意、謎の生物達、奪われたジュエルシード、突如として、戦闘に介入した主人公、いろいろ気になるところはあるかと思いますが、それはまた次回以降ということで・・・

話数も少しずつ増えて来たので章付けとあらすじを修正いたしました。

感想、お気に入り等していただけると感謝感激でございます。
モチベが上がるとお届けできる速度も上がるかと思います。
ではでは!
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