魔法少女リリカルなのは Preparedness of Sword   作:煌翼

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重なり合う刃、選択の結果

 薄暗い部屋に1人の老人が座っている。その目の前には巨大なモニターが鎮座しており、映し出されているのは幾多の魔導獣とたった4名の魔導師・・・

 

 圧倒的すぎる戦力差、数的有利、魔導獣は魔導師を圧倒する。泣き叫び、許しを請いながら死んでいく、そんな姿が映し出される。

 

 

・・・はずだった・・・

 

 

「・・・んだ・・・なんだ!なんなんだこれはぁぁぁぁ!!!!!!?」

 

 

 フィロスは目の前のデスクを力の限り殴りつける。髪を振り乱し、狂ったように声を上げていた。

 

「はぁはぁ・・・かくなる上は・・・」

 

 フィロスはひとしきり暴れ終えて落ち着きを取り戻したのか、息を切らしながらその部屋を後にした。誰もいなくなった部屋でモニターが映し出していた光景は・・・

 

 

 

 

 

 

「はああぁぁぁ!!!!」

 

 シグナムはレヴァンティンを上段から振り下ろし、ワイバーンの首ごと左半身を両断した。吹き飛ばされたワイバーンが他の数匹に激突し、地面に落ちていく。次にシグナムの背後から巨鳥が硬質化した翼に魔力を纏わせて襲い掛かる。

 

「ふっ、この程度!!・・・っぁぁぁぁぁ!!!!!!」

 

 シグナムは背後を振り向き、レヴァンティンの切っ先を巨鳥に向けた。レヴァンティンは刀身を長剣形態のシュベルトフォルムから鞭状連結刃形態のシュランゲフォルムへと変形することによって、剣の間合いの外の刺突により頭部を刃で貫いた。

 

 巨鳥を貫きながら、レヴァンティンの刀身は生きている大蛇の如く空中を動き回る。シグナムが剣を振り回せば、吹き荒れる烈風・・・蛇腹剣が周囲の魔導獣を次々と斬り刻んで数を減らしていく。

 

 

 

 

「数だけは大したものだ」

 

 烈火はウラノスを手に2匹の魔導獣の間をバレルロールの機動を取り、斬り抜ける。2匹の片翼が切断されるよりも早く、その場を離脱し左手に出現させた銃形態のウラノスで魔力弾を振り向き様に3連射。魔導師の一団から孤立しかけていたリョカの周囲にいた魔導獣を撃ち落とした。

 

「・・・斬り捨てる」

 

 烈火の左手にある銃が右手に持っている物と同様の長剣形態へと姿を変えた。そして、両手の剣を交差させるように振り下ろす。重なり合う刀身から放出した十字架の斬撃が周囲を壁のように覆っていた魔導獣を両断し、その一点に風穴を開けた。

 

 

 

 

 

「はぁ、はぁ、全く、とんでもないですね・・・・・・」

 

 アイレは目の前の飛竜の頭部を魔力を纏った槍の穂先で叩きつけながら呟いた。一匹一匹、危険なものから着実に倒していたが、刀の一振りで何匹もの魔導獣を薙ぎ払い、嵐のように戦場を駆け抜ける2人の剣士に思わず言葉を失っている。

 

 

「二刀も使いこなすか・・・斬り合う時がますます楽しみだ」

 

「できればお手柔らかにお願いしたいんだが」

 

「ふふ、ダメだな。私をこれほどまでに疼かせるお前が悪い」

 

 シグナムと烈火はアイレをよそに背中合わせで軽口を叩き合っている。そして、図ったかのように2人共その手の獲物を振り上げた。

 

 

「薙ぎ払う!・・・飛竜一閃!!」

 

 シグナムはレヴァンティンを鞘に納め、カートリッジを炸裂させて振り下ろした。炎と魔力を纏った連結刃が天空を舞う竜の如く踊り狂う。砲撃にも相当する威力の斬撃によって魔導獣の壁を抉り取り、ぶち抜いた。

 

 

 

 

「・・・イグナイトエクスキューション!」

 

 烈火の双剣に蒼い魔力が纏わりつき、両の剣を交差させるように振り下ろす。先ほどの物とは比較にならないほど強力な威力と思われる十字架の斬撃が進行方向の魔導獣をまとめて消し飛ばした。

 

 

 

 

「これならッ!」

 

 シグナムと烈火の斬撃が魔導獣が肉の壁と化しており、先を塞いでいたところに打ち込まれ、大穴を開ける。とうとう進路が確保できた。

 

 これまで倒した中に司令塔になっていた個体がいるのか、同胞の命が次々と消えていくのを感じているのか、魔導獣達の動きが鈍り始める。

 

 先ほどの2つの斬撃で抉じ開けられた穴はまだ塞がっていない。つまり、この包囲網を突破できる可能性は十分にあるということだ。アイレは4人で強行突破をかけようとしたが・・・

 

 

 

 それを遮るように3つの砲撃が撃ち込まれる。視線の先には・・・

 

 

「な、何だあれは!?」

 

 リョカが悲鳴にも似た声を漏らした。

 

 

 先にいたのは今までの魔導獣と一線を画する巨大な影、遠目から見ても大型魔導獣の倍以上の大きさと見受けられる。

 

 影の正体は首が3つある巨大な体躯を持つ龍であるが、魔導師達が言葉を失った理由はその巨大な体躯だけではなかった。中心の首は西洋のドラゴン、左の首は東洋の竜、右の首は神話のヒュドラを思わせる蛇じみた様相を呈していた。肩についたヒレの様なもの、頭部に生えた角、分裂して5つに枝分かれした尾など今までの魔導獣とは明らかに違うものを感じさせる。

 龍種、鳥類、悪魔を思わせる6枚羽の翼が背から生えている。分裂した尾もそれぞれ違う生物のモノである。

 

 それだけでなく全身を覆うような鋼の鎧も装備している。腕は刀剣の様に硬質化しており、尾の先には鋼鉄の棘のようなものが生えそろっている。それらは明らかに自然界で生み出される物ではない。

 

全身継ぎ接ぎの異形の生命体が咆哮を上げた。

 

 

 

 

「アレがこの一帯の食物連鎖における頂点ということか」

 

 シグナムは異形の存在を睨み付けながら、じりじりと引き下がっていく他の魔導獣を一瞥した。異形の魔導獣は見せつけるかの如く周囲にいた一匹の狼を牙で引き裂いて捕食した。先ほどまで血走った眼をしていた魔導獣達から勢いが削がれているのが見て取れた。

 

 

「こんなものが・・・」

 

 烈火は目の前の人為的に生み出された戦闘マシーンを見て悲しげに呟いた。

 

 

 それぞれが思うところがあるようだが、それを掻き消すかのように、魔導獣の3つ首から吐息(ブレス)が放出され、3色の光が魔導師達に襲い掛かる。

 

 

 

 

 

 

 

 

「私達が捜索隊に加われへんてどういうことですか!?」

 

「落ち着いて、はやてさん」

 

 はやては時空管理局本局の一室で抗議の声を上げていた。私服のままであることから、よほど急いできたことが窺い知れる。それを申し訳なさそうな表情を浮かべたリンディが宥めている。はやての隣には、なのはとフェイト、シグナムを除いた八神家が集結していた。

 

「どうやらリベラ統括官が自らの部隊を派遣するということで他の部隊の参加を許可しないということらしいわ」

 

 リンディの口から聞かされたのは、シグナムが参加している部隊の指揮官であるリョカ・リベラの父親が自らのお膝元である部隊を派遣し、他の部隊の出撃を認めないという物であった。

 

「リンディさんがお願いしてもダメなんですか?」

 

 なのはは不安げな表情でリンディに尋ねた。現場の自分達では聞き入れてもらえないのだとしても、リンディならばどうにかなるのではないかという希望を抱いての物であろう。

 

「申し訳ないわ・・・こればっかりはどうしようも」

 

 しかし、リンディからの返答により周囲の雰囲気は一層、重苦しいものへと変わる。

 

 

 

 

 リンディがなりふり構わずといった手段を取れば、はやてらを同行させることは不可能ではないだろう。

 

 しかし、それを行わないのには理由がある。

 

 

 

 その最たる物は管理局でもかなり大きな派閥であるリベラ派にできる限り借しを作りたくないという物だ。

 

 リンディは夫であるクライド・ハラオウンをかつての闇の書事件で失いながらも、年若く提督へと上り詰めた。その息子も十代前半で管理局最難関とされている執務官試験をパスし、AAAランクの空戦魔導師、破格のエリートと言っても過言ではない実力を持っている。

 

 さらに、ここ4、5年での功績は目覚ましいものがあり、PT事件、闇の書事件の解決、今や管理局では知らぬ者もいないほどのスーパーエース、高町なのは、フェイト・テスタロッサ、無法地帯と化していた無限書庫を立て直したユーノ・スクライア、個人戦力としては最強であろう、闇の書の主と守護騎士を管理局に引き入れた事などが上げられる。

 

 それらの功績と元々の個人能力の高さと相まって、ハラオウン派は管理局でも有数の派閥へと急成長を果たした。派閥自体の単純な戦闘能力や知名度だけなら管理局でも屈指のものだが、急成長を果たしたハラオウン派を快く思わないものも少なからずいる。特に古くから管理局に所属している者達にその傾向があるようだ。

 

 リベラ派もその一つだ。そのリベラ派に弱みを見せてしまえば、付け入る隙を与えることになる。ハラオウン派を嫌っている派閥同士で徒党を組まれてしまえば、台頭してきて年数の浅い自分達がどうなるかは想像に難しくない。

 

 

 

 仮にシグナムが命の危険に瀕している、などといった状況ならその限りではないが、現状の自分達に入って来ている情報は反応の消失のみ。しかも、部隊の全員の魔力反応が同時に消えたと聞いている。敵対している何かに襲われてということもなくはないだろうが、それならば全員が全く同タイミングということはありえないはず、単純な通信障害という可能性も十分すぎるほどあるのだから。

 

 

 敵は外の犯罪者だけではないのだ。本局と地上本部の軋轢、同じ本局内でも熾烈な権力闘争が繰り広げられている。

 

 

 リスクを冒してまで動くのには余りに情報が少なすぎる・・・

 

 

 

 

 

 

 

「あのゴミカス共はそろそろくたばったころか?最高傑作である三つ首の異形竜(トライデント・ドラゴン)に勝てる者などいるはずもないんじゃからな」

 

 フィロスは魔導師と魔導獣の戦闘の最中、さらに地下施設の最深部へと移動し、キーボードを乱雑に叩いているが、その表情は余裕のあるものだった。

 

「管理局がいつここをかぎつけるか分からん。連中のせいでこの拠点の破棄を前倒しにすることになってしまったが、それ以上の見返りは得た・・・あとはっ!?・・・ぐぅうううぅぅ!!!??」

 

 フィロスはどうやらこの地下施設から別の拠点へと移動する予定があったようだ。こんな辺境世界に来るような魔導師なら大した者達ではないはず。ここで口さえ塞いでしまえばどうにでもなる。とはいえ、管理局に連なる者達がこの世界で行方知れずになれば何らかの捜査は入るはず、その前に脱出してしまおうという事だろう。

 

 そんなことを考えていたフィロスだったが、部屋全体を揺らがす振動により床に倒れ込んだ。起き上がろうとしたフィロスの手にバインドが絡みつく。

 

 

 

 

「フィロス・フェネストラですね。貴方を拘束させていただきます。事情は本局の方で伺いますので、同行願いますね?」

 

 天井に空いた大穴から舞い降りて来た4人の魔導師、その先頭にいたアイレによって拘束されたためだ。

 

「な、なぜじゃ!外の我が子らはどうしたというのだ!?」

 

 フィロスは先ほどまでの余裕がどこにやら、何が起きているのか分からないといった様子で喚き散らしている。戦力差は圧倒的だったはず、今頃、魔導獣によって命を奪われているはずの4人が目立った傷すら負わずに研究所の最深部までやってきていることに理解が追い付いていないのだろう。

 

「悪いが、突破させてもらった」

 

 シグナムはレヴァンティンの柄を握りながら呟いた。

 

「ありえない!?私の魔導獣に貴様ら風情は勝てるわけがないのだ!」

 

 フィロスは知る由もない、この研究所の上で3つの首と左腕を根元から斬り落とされ、胴体を真一文字に斬り裂かれた自身の最高傑作がいるということなど・・・

 

「嘘だ!嘘だ!嘘をつくな!!・・・こんなものぉぉ!!!」

 

「何をやっているんですか!?」

 

 フィロスはシグナムの言葉を聞いた瞬間、大声を上げて怒鳴り散らしたかと思えば、縛られている腕を床に向けて叩きつけようとした。だが、アイレがさらにバインドを重ね掛けすることによってそれを止める。

 

「うるさい!お前達のような出来損ないの木偶が私を拘束するなど、許されると思っているのか!!?私の考えを理解しようとしなかった愚か者共と同種の貴様らが自然の代弁者たるこの私をだぞ!!!!!!!」

 

 フィロスは血走った瞳でアイレ達を睨み付けた。アイレ達は発狂していると言っても過言でないフィロスの様子に驚きを隠しきれないようだ。狂ったように大声を張り上げている様子はとても老人とは思えない。

 

聞き及んでいたフィロスの過去から言わんとしていることは多少なりとも分からなくもないが・・・

 

 

 

 

「自然の代弁者か・・・その様じゃ、呆れて言葉も出ないな。さっさと渡すものを渡して結界を解除してくれないか?」

 

「・・・ゃと・・・なんじゃと・・・小僧っっ!!!!世界に選ばれた私に与えられた称号を否定するなどと、どの口でほざくんじゃぁ!!!!」

 

 烈火は両腕を縛り上げられ芋虫のように床を転がり、喚き散らすフィロスを溜息をつきながら見下ろして結界の解除と奪った物の在処を吐くように促した。しかし、フィロスはその言葉を聞いて動きを止め、顔を上げた。顔を上げたフィロスは額に青筋を浮かべ、鬼のような様相で烈火に食ってかかった。

 

「お前のようなくだらぬ経験しかしてこなかった愚か者には分かるまい!!!私の崇高な理想が否定された絶望を!彷徨い歩いた地獄の日々を!!・・・・・・もう何もかも終わりだと思っていた時、私はあの方に救われた。あの方は私の理想を理解してくださった。だからこそ、その思いに報いるためにも我が子らの力をもって魔導師どもを駆逐し、時空管理局を壊滅させるのだ!!」

 

「あの方・・・?」

 

 烈火はフィロスの言葉の端々に出てくる単語に訝しげな表情を浮かべている。

 

「管理局に対して戦いを挑むつもりだったのですか!?」

 

 アイレはフィロスの思想に驚愕といった様子だ。

 

 魔導獣の戦闘力には目を見張るものがあり、万が一これがミッドチルダの市街地に放たれようものなら非殺傷設定どころか、理性すらあるか怪しい狂獣が暴れまわり、街は大混乱に陥ることだろう。

 

 リョカの部隊で瞬時に魔導獣に対応できたのはシグナムだけ、つまりは大多数の魔導師は事前情報がなければ今回犠牲になった者と同じ末路を送るであろうことは想像に難しくない。

 

 管理局が敗北するとは思えないが、受ける被害は決して少なくないはずだ。このフィロス・フェネストラは管理局の目を盗み、数十年の時をかけて反旗の狼煙を上げる機会を狙っていたということになる。

 

 

 

 

「管理局を打倒すれば、魔導獣が魔導師よりも優れているという証明になる。学会の愚か者共に私の思想が正しかったのだと思い知らせることもできる。管理局の上役共の権力闘争、魔法至上主義、増え続ける犯罪に対応できないにもかかわらず何の手も打たない馬鹿者共、醜い者達によって支配されている、この薄汚れた世界を正常に戻すのだ!」

 

 明かされたフィロスの行動理由、それはある種の思想家とも言えるものであり、管理局の完全打倒、それを行うための戦力配備、本気でこの次元世界の中心である時空管理局に戦いを挑み、その後の世界の行く末を自らの手で導くつもりなのだということを感じさせた。

 

「・・・くだらないな」

 

 烈火は自身の理想を誇らしげに語るフィロスを冷めた目で見つめていた。

 

「貴様・・・今何と言った?何と言ったと聞いておるんじゃ!!!!?」

 

 フィロスは再び烈火に対して激高した。

 

「言葉の通りだ。自然の代弁者だの、管理局の打倒だの、大層な言葉を並べているが、自分の考えを他の人間に認めて欲しかった・・・それだけじゃないのか?」

 

「違う!違う!違う!違う!違う!違う!違う違う違う違う違う違う!!!!!!!私は崇高な理想を実現するために!!!!」

 

 烈火の言葉に反論するように、フィロスは地面を転がりながら否定の言葉を吐き散らしている。

 

「貴方は魔導獣理論が理解されなかった事に対して、少なからずあったであろう自らの非を認めることなく、全てを周りの人々の責任だと・・・癇癪を起している子供と何も変わらない」

 

「違う!違うっ!!」

 

 フィロスは淡々と話す烈火の言葉が耳に入ってこないようにと大声を張り上げる。両手を縛り上げられて、耳を塞げないフィロスの唯一の防衛手段であった。

 

「全てをリセットしてゼロから出発するチャンスなど何度でもあったはずだ。だが、貴方はそれを選択しなかった。自分の意見が聞き入れてもらえないと喚き散らし、周囲を見下し、自らは特別だと勝手に孤立した。全て、お前の選択の結果だ。そんなものは絶望や地獄などとは言わないんだよ」

 

「う、うるさい!!私の考えを理解できない低脳共が悪いんじゃ!私は悪くないんじゃ!!!!」

 

 フィロスは片耳を床に擦りつけ、周囲の音を必死に遮断しようとしているが、烈火の言葉は否応なく耳に入ってきてしまう。

 

「俺はお前の過去になど興味もないし、実際に経験したわけではない。だが、これは断言できる・・・自分のくだらないプライドを守るために数えきれない魔法生物の命を弄んで来た。そして、彼らの人権確保という免罪符を使い自らの行動を何もかも正当化している。しかし、お前は魔法生物の代弁者でもなければ、命を創造する神でもないんだ。お前は選ばれた人間なんかじゃない・・・選ばれた人間なんてこの世界にいないんだよ・・・」

 

 烈火が言葉を紡いでいくのに比例して、フィロスの抵抗は小さくなっていく。

 

「いい加減、都合のいい夢から覚めて今の自分を見たらどうだ。お前は・・・ただの犯罪者だ」

 

「・・・ぁぁ・・・あぁぁっ!!・・・ぅぅぅ!!!!」

 

 フィロスは顔をぐしゃぐしゃにし、体液を垂れ流しながら地面で震えている。烈火の隣でその経緯を見守っていたシグナムにはフィロスが数分前より随分と老けて見えていた。

 

 

 

 

「フィロス・フェネストラ、ここまでですね。ジュエルシードの返還と結界の解除を改めて要求します」

 

 アイレは床に横たわっているフィロスに近づいていく。科学者でありながら、自分の3分の1も生きていないような少年に論戦で言い負かされたフィロスの心中は察する物があるが、今の彼は科学者ではなく、犯罪者・・・情をかける必要はないと見下ろした。

 

 

 

 

 

「・・・ぃ・・・さぃ・・・うるさい、だまれ!!!お前たちなどに私を裁く権利はない!!!私の前に平伏すべきなんだぁぁぁぁ!!!!!!」

 

 アイレの視線の先にいるフィロスは俯いてブツブツと何かを唱えているようだ。そして顔を上げた瞬間、地下施設全体が大きく揺れた。

 

 突如として、フィロスの背後、数メートルから後ろが天井まで丸ごと消し飛んだ。文字通り灰になって焼失したのだ。差し込む日の光と共に周囲に響き渡るのは何かの咆哮・・・

 

 魔導師の一団の前に姿を現したのは、全身が水晶で出来ているかのような青い龍・・・先ほどまでの魔導獣とは比較にならない威圧感を発している。

 

「これはかつてこのルーフィスを支配していたとされる伝承の竜種、剣水晶の竜皇(クリスタル・ドラゴニア)・・・私の最終兵器だ!!!」

 

「なんという存在感ッ!?・・・この反応・・・まさかジュエルシードを!?」

 

 フィロスがこの竜皇が最終戦力だと声高らかに宣言した。とてつもない重圧と共に、アイレは目の前の竜種からジュエルシードの反応を感じ取った。

 

 

 

 

「本来なら、この竜皇の遺骨は魔導獣のサンプルとして使うつもりだったのだがな。ジュエルシードももっと別の使い道を考えていたのだが、お前達を殺すためならば致し方ない!さあ、蘇りし、剣水晶の竜皇よ!奴らを八つ裂きにしてしまえ!!ふははははははははっっっっ!!!!」

 

 形勢逆転と勝ち誇ったフィロスの笑い声と共に竜皇の口が大きく開いた。

 

 

 

 

 

「ま、まてっ!こんなところで吐息(ブレス)など放ったら!?まて、やめろっ!やめてくれぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!!!!!」

 

 突如として、顔色を変えたフィロスの大声が部屋中に響き渡る。

 

 

 そして、剣水晶の竜皇が放った灼熱の火炎が烈火達の周囲を包み込んだ。

 




最後まで読んでいただいてありがとうございます!

あぁ、もう休みが終わってしまう。
また地獄の日々が戻ってくると思うと憂鬱でなりませんね。

いよいよ事件もクライマックス、

楽しんでいただけると嬉しいです

感想等あり余したら是非どうぞ!
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