魔法少女リリカルなのは Preparedness of Sword   作:煌翼

33 / 74
苛烈閃々のChaos Ring
Magic the Open fire


 桜舞う並木道を多くの少年少女が談笑しながら歩いている。そのほとんどが聖祥学園中等部に所属している者達であり、春季休業を終えて初の登校日に浮かれる者、学業が始まることに絶望する者と多種多様な反応を見せているようだ。

 

 

 少年少女たちの一番の懸念事項である新学年のクラス分けが学年ごとに張り出されている掲示板の前には多くの人影が見られる。

 

 憧れのあの子と同じクラスになれてガッツポーズをしている者もいれば、親しい友人と別クラスとなり下を向く者もいる。歓喜と絶望が渦巻く、学生たちの集いに一際、目を引く集団が姿を現した。

 

 

 

 

「あ!?見て見て!!今年は5人共同じクラスみたいだよ!」

 

「ホントに!?やったね。なのは!!」

 

 栗色の髪をサイドで纏めた少女と、煌めく金髪を靡かせる少女は嬉しげな表情でハイタッチした。

 

「ふん!まあ、よかったわね」

 

「またまたぁ~さっきまでアリサちゃんも不安そうな顔しとった癖に」

 

「なぁんですって!?そ、そんなわけないでしょ!」

 

 茶化すような小柄な少女に頬を赤らめて声を荒げる育ちのよさそうな金髪の少女。

 

「今年は一緒のクラスだね!そ、そのよろしくね」

 

「ん?ああ、よろしく」

 

 年齢不相応に発育が進んでいる黒髪の少女は大人びた容姿とは裏腹にその顔をさっと赤らめて、黒髪の少年にチラチラと目線を向けている。対する少年は少女の様子を見て、不思議そうに首を傾げていた。

 

 

 周囲の視線を集めているのは、安定の人気を誇る〈聖祥5大女神〉と噂は落ち着いてきたものの、本人が意図しないところですっかり有名となってしまった蒼月烈火である。

 

 

 発表の結果、6名の所属クラスは3年1組となった。彼らの所属先の行方は男女共に注目を集める物であり、周囲の面々は全員が同クラスとなったことに少なからず驚いているようだ。同じく1組に所属することになった者達の殆どは喜びを表し、逆に学園のアイドル達や注目株と別クラスになった者達はその肩を大きく落としていた。

 

 

 

 

 その後、なのはら6名は和気藹々とした様子で自分の教室へと移動する。昨年度はなのは、はやて、すずかの3名は1組、アリサとフェイトは2組と仲良し5人組でクラスが分かれてしまったが、今年度は全員同じクラスということで皆の表情も明るい。

 

 それもそのはずで、高町なのはらにとって今年度は特別な意味合いを持っているためだ。

 

 単純に中等部最後の年という面もなくはないが、こちらは大学付属の私立学校ということで一部の生徒を除けばエスカレーター式に高等部に進級することができるために他の学校比べれば卒業的な意識は薄いと言えるだろうが、なのは、フェイト、はやてに関してそれは当てはまらないものと言える。

 

 なぜなら、彼女達3名は中等部卒業と共に生活拠点をミッドチルダへと移すため、これまでのように地球在住ではなくなるからだ。学生として過ごすのはこれで最後であり、なのは、はやてに関しては生まれ育った故郷を後にすることになる。

 

 正規の局員ではあるが、保護者サイドの意向で学業を優先してきたこれまでとは違い、管理局員としての活動も本格化することが予想される。いうなれば、高校、大学をすっ飛ばして正社員になるようなものだ。

 

 1年の殆どをミッドチルダで過ごすこととなり、地球に残るアリサやすずかとの時間もこれまでの様に取れなくなるであろう。

 

 なのは達5名は最後の年は精一杯思い出を残していこうと意気込んでいるようであり、全員が同じクラスになるということは間違いなく吉報と言えるということだ。なのはの幼馴染であり、付き合いは短いながらも彼女達から信頼を寄せられている烈火も同クラスとなれば、さらに拍車がかかっているようである。

 

 

 

 

 新たな教室内で談笑していた面々は始業の鐘と共に割り当てられた席へ着いて、今年度の担任教師が現れるのを待っている。クラス発表の掲示板には担任教師の名は記されておらず、自らのクラスの担任が誰になるかということは生徒側では分からない為、期待と不安を滲ませているようだ。

 

 そして教室の扉が開かれる。

 

 

 

 

「皆、揃っているな。私がこの3年1組を担当することになった東谷だ。既に顔見知りも何名かいるが、改めてよろしく頼む」

 

 黒髪を揺らして教壇に立ったのは昨年度2年2組の担任を務めていた、東谷琳湖であった。

 

 若いながらも生徒目線となって物事を考えてくれるという所から生徒からの人気の高い教師であり、男女問わず支持を集めている彼女の来訪に教室内にいる生徒の殆どが笑みを零している。

 

 因みに男子生徒は黒髪の美女が担任となったことに対して拳を握って喜びを表していた。

 

 

 

 

 新学期初日とあって本日は午前中で解散、そして授業もなくホームルームのみであるようだ。

 

 諸々の連絡事項の伝達を終えた最後の4限目では教室内に激震が入る。

 

「あー、ではそれぞれ、手にしたくじを開け!」

 

 琳湖の指示で教室中の生徒は手に持っている折りたたまれた紙を一斉に開いた。

 

 

 

 

 何が行われているのかというと、新学期早々の座席替えである。

 

 

 座席が変わるということは学生たちにとってはかなりの重要度を示す要因であるだろう。そのためか、教室内の殆どの生徒が血走ったような眼で自らの用紙に記されている番号と黒板に示された座席表を見比べているという異様な光景が広がっていた。

 

 特に男子生徒がそのようになっている理由に関しては言うまでもないであろう。

 

 

 

 

 そして・・・

 

 

「よろしくね。はやてちゃん」

 

「うん。なのはちゃんもよろしゅうな」

 

 座席が隣同士となったなのはとはやてが笑い合う。

 

「う、ううぅぅ。なんでぇ・・・」

 

「よ、よく分かんないけど元気出しなさいよ」

 

 すずかは忌々しそうに手に持っている用紙を穴が開かんばかりに睨み付けており、隣に座るアリサは苦笑いを浮かべている。すずかがどの座席を狙っていたかは言うまでもないだろう。その視線の先には・・・

 

 

「えへへ、また隣同士だね!」

 

「ああ、そうだな」

 

 フェイトが再び座席が隣同士となった烈火に対して花が咲いたように微笑んでいた。

 

 

 すずかはその光景を見て、大きく肩を落としたようである。

 

 

 とは言いつつ、それぞれの距離は若干離れてしまったものの、座席の隣は顔見知りということでなのは達は胸を撫でおろしている。

 

 他の生徒達も思い思いの反応をしており、琳湖はそんな皆を暖かく見守っているようだ。

 

 

 

 

 そして、授業は午前で終了し、部活動に勤しむ者、帰路につく者とそれぞれ分かれていく。

 

 なのはらは部活動に所属していない為、そのまま帰宅するようだ。並んで校門を潜ったところで鮫島が出した高級車に乗り込んだアリサとすずかは習い事の為に一団の中から離脱する。管理局組は3人共予定が入っていなかったようであり、烈火と共に歩きだした。

 

 

 

 

 談笑しながら歩く4人。

 

「あれ?シグナムとヴィータやないか」

 

 運動公園を横切っていた4人の目の前にシグナムとヴィータが現れ、突然の家族との遭遇にはやてが首を傾げながら問いかけた。

 

「はやてじゃん!アタシは今日の仕事を終わったとこで偶然シグナムと会ったから、一緒に帰ってる最中だ」

 

「ほぇ~そうやったんや」

 

「ええ。主達も本日は御帰りですか?」

 

「うん。今日は新学期初日やからな。午前中までなんや」

 

 ヴィータははやてとなのはの姿を見つけて嬉し気に表情を綻ばせており、シグナムははやてに微笑みかけている。

 

 

「きゃっ!?」

 

 シグナム、ヴィータと合流して帰路についている6名だったが、勢いよく走り込んで来た1人の女性がなのはの肩に肩をぶつけて、その衝撃で地面に転んだ。

 

「はぁ、はぁはぁ!す、すみません!?」

 

「私は大丈夫です。そんなことより、大丈夫ですか!?」

 

 なのはは管理局での訓練の賜物か、衝撃を受けても何とか踏みとどまっており、すぐさま転んだ女性の傍に駆け寄る。息を切らした女性の足は痙攣しており、なかなか立ち上がることができないでいるようだ。

 

「だ、だ、大丈夫です!?」

 

 女性は酷く動揺した様子で語気を震わせている。

 

「でもすごい勢いで転んでましたし、大丈夫そうには見えません。怪我だってしてるかもしれませんし、とにかくあっちに座りましょう?」

 

「お気になさらず!い、急いでいますので私はこれで!!」

 

 なのはだけでなくフェイトらも女性の下へと集まって来る。女性は震える脚で無理やり起き上がってこの場から離れようとしているが、なのはは心配そうな表情を浮かべて制止をかけた。

 

 

 

 

「待ってくれるか?」

 

「な、何でしょうか!?」

 

 女性に対して進行方向を塞ぐように立ちふさがったのは烈火だ。

 

 

「単刀直入に聞くが・・・お前何者だ?」

 

 烈火は女性に対して、鷹が獲物を刈るような鋭い眼差しを向けている。

 

「烈火、どうしたの?」

 

「いきなり何言ってんだ?」

 

 フェイトは厳しい表情の烈火に戸惑いを示しており、ヴィータは訝し気な表情を浮かべた。

 

「そうだよ。早く手当てしないと!」

 

 なのはも未だに膝を震わせている女性の傷の手当てを優先すべきだと声を上げる。

 

「その必要はない。そいつは普通の人間ではないからな」

 

「な、何を言っているんですか!?失礼にもほどがありますよ!!」

 

 烈火の言葉に戸惑いを隠しきれないなのは達、女性も憤慨していると言わんばかりに声を荒げた。

 

 尚も鋭い目つきのまま警戒を解かない烈火と動揺を隠しきれないでいる女性・・・急展開した状況に対して、フェイトが烈火に言葉の真意を訪ねようとした瞬間・・・

 

 

 

 

「全員、身を守れッ!!」

 

 シグナムの怒号が周囲に響く。

 

 

 そして、辺りを衝撃と共に光が包み込んだ。

 

 

 

 

「ここは・・・結界の中?」

 

 なのはは突然の現象に対して、自身の身体を桜色の防御障壁で包み込んで事なきを得たが、周囲の景色が先ほどまでとは違うことに戸惑いの声を漏らす。

 

「なのは!怪我はない?」

 

「うん。フェイトちゃんは?」

 

「私も大丈夫だけど、他のみんなの魔力反応がない」

 

 フェイトもなのは同様の方法で乗り切ったようで外傷はなさそうである。しかし、なのは同様に周囲の状況については何もわかっていない。ただ一つだけ言えるのは、仲間達の魔力反応が感じ取れないという事だけのようだ。

 

 

「貴方達の仲間なら他の結界で私達の同胞と遊んでると思う」

 

 そんな、なのはとフェイトの前に2人の少女が姿を現した。燃えるような赤髪の少女と透き通るような翠髪の少女、外見的な特徴から判断するに、なのは達と同世代と思われる。

 

 先ほど、口を開いたのは翠髪の少女だ。

 

 

 

「ふぅ~ん。どうやらアタシらはハズレを引いちまったようだな」

 

 赤髪の少女は周囲を見渡すと、地面に唾を吐き捨てながら気怠そうに言い放つ。

 

「こちらは時空管理局です。先ほどの攻撃行為は重大な法規違反となります。詳しい事情をお聞かせ願いたいのですが?」

 

「ふん!はい、そうですかってノコノコ従うならこんなとこ来てねぇよ」

 

 フェイトが赤髪の少女に対して襲撃に対しての説明を要求したが、答えは拒否。

 

 

「どこの子!?どうしてこんなことをしたの?」

 

「貴方には関係ないわ」

 

 なのはも翠髪の少女に対して問いただしたが、返って来たのは断固拒否。

 

「いきなり襲われて関係ないわけないよ。貴方達のお話を聞かせて!?私達が力になれる事はきっとあるよ!!」

 

「分かったような口を利かないで、不愉快よ。あなたに話すことなんてない。だって、此処で2人とも死ぬんだもの!!」

 

 翠髪の少女はなのはを睨み付けながら、敵意を剥き出しにしている。

 

 

 

 

「あら?あら、あら?どうやら大当たりを引いちゃったみたいね!!」

 

「いや、姐さん。標的(ターゲット)はこの結界の中にいませんよ。俺達はハズレを引いたんです」

 

 楽しげに笑う金髪の女性に対して、少年は冷静にツッコんでいた。2人の視線の先にいるのは烈火とシグナムだ。防護服(バリアジャケット)は展開していないものの、それぞれがウラノスとレヴァンティンを刀剣状態で握って臨戦体勢に入っている。

 

 既にシグナムから成された武装破棄、同行要求は拒否されているようだ。

 

 

「何言ってるのよ。私の標的(ターゲット)君なら目の前にいるじゃない!映像で見るよりもそそるわね」

 

 女性は自身の豊満な肉体を抱き締めて震えながら、烈火の方に熱っぽい視線を送っている。女性の細腕は自身の深い谷間に挟み込まれてしまい、押し出された胸が横に広がっており、内股で何かに悶えている様はいろんな意味で目に毒な光景であった。

 

 

 

 

「このような形でまた肩を並べる事になろうとはな」

 

「ああ、予定外の事態だ。また面倒事に巻き込まれたってことだな」

 

 シグナムの言葉に烈火が頷く。この結界内に他の仲間の魔力反応を感じ取ることができないでいる。つまり、2人はなのはやフェイト達とは別の結界に閉じ込められてしまったということだろう。

 

「ふざけた態度だが、連中は・・・」

 

「ああ、分かってる」

 

 シグナムと烈火は目の前の2人に対して鋭い眼差しを向けていた。

 

 

 

 

「ふふっ、どうやら私が当たりを引いたみたい」

 

「何の話だ!?」

 

 なのは、フェイトとシグナム、烈火とは別の結界に閉じ込められたヴィータの前で1人の少女が口元を嬉しそうに歪めている。ヴィータは黒髪を肩口で切りそろえている少女に対して噛みつくように声を荒げた。

 

「秘密よ。まあ、やることやってさっさと帰っちゃいたいんだけど・・・」

 

 少女の視線の先には白色の剣十字が形成されており、その中には先ほどなのはにぶつかった女性の姿がある。

 

「時空管理局です!武装を解除して、何が目的なのか教えてください!」

 

 女性の隣では、はやてが少女に対してこの状況に関しての説明を求めていた。この結界に閉じ込められたのはヴィータ、はやて、先ほどの女性ということになる。

 

「だから、言うわけないって。でも、障壁を張られたおかげで仕留めそこなっちゃったわね」

 

 少女は武装解除宣言を鼻で笑って一掃したが、言葉とは裏腹にその表情は真剣そのものであり、はやてらに対して警戒するように目を細めている。どうやら先ほど一同を襲った攻撃は彼女が繰り出していたようだ。そして、はやては自身と女性の周りに障壁を展開して、それを防いでいたということだろう。

 

 

 

 

 なのは達は襲撃者によって同時に展開された3つの結界にそれぞれ閉じ込められてしまった。3つ全てにおいて、話し合いでの解決は望めない。

 

 管理外世界に現れた謎の一団、正体不明の女性・・・不明点は多いが、ここまでの事態になってしまった以上成さなければならないことは明白だ。

 

 

 

 

「行くよ!レイジングハート!」

 

「来て!バルディッシュ!」

 

 なのはとフェイトが自身の愛機をその手に取った。

 

「ブチ燃やせ!プロメテウス!!!」

 

 赤髪の少女が・・・

 

「舞いなさい。ゼピュロス」

 

 翠髪の少女と共にデバイスをコールする。

 

 

 

 

「参るぞ!レヴァンティン!!」

 

「・・・ウラノス。抜刀!」

 

 シグナムと烈火は自身の剣の銘を呼んだ。

 

「楽しく踊りましょうか。ねぇ、ダーインスレイヴ!」

 

 女性もまた自身の剣を呼び出す。

 

「確かにハズレを引いたが、アイツは俺が・・・オルトロス!!」

 

 少年は敵意を隠すことなく剥き出したまま、デバイスを起動していく。

 

 

 

 

「アイゼン!さっさと終わらせるぞ!」

 

 ヴィータも自身の鉄槌を手に取った。

 

「そうね。早く終わらせましょう。アストラ!」

 

 少女も己の愛機の名を囁いた。

 

 

「リインがおらへんからちょっと不安やけど、何とかしよか!貴方にもお話聞かないといかへんしな」

 

 はやてはその手に金色の剣十字を取って、背後にいる自身の魔法陣で捕らえている女性に目配せする。

 

 

『セットアップ!!』

 

 そして、3つの結界に分散している11名の魔導師をそれぞれの魔力光が包み込む。奇しくも全員のデバイスの起動は図ったかのように同時であり、それが開戦の狼煙となった。

 

 

 

 

 吹きすさぶ烈風、煌めく多数の魔力光・・・

 

「・・・はぁ、はぁ。くそっ!!?何でこんなことに!!」

 

 はやての魔導に捕らえられている女性はその光景を見て思わずといった様子で声を荒げた・・・

 




最後まで読んでいただきありがとうございます。

第4章開幕です。

今までとは違い初っ端から飛ばしていきますよ!

敵対勢力のキャラが多数出てきましたが、振り落とされないように付いてきてくれると助かります。


劇場版の公開終了が迫って来て、なのはレスの恐怖に震えている今日この頃です。

時間が空いたらまた何度か足を運びたいと思っています。


感想等頂けましたら、モチベ爆上がりですので嬉しいです。

では次回お会いいたしましょう!

ドライブイグニッション!
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。