魔法少女リリカルなのは Preparedness of Sword   作:煌翼

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これから為すべきこと

 海鳴市郊外に出現した3つの結界が消滅した。

 

 烈火とシグナムは自らを拘束していた結界が解除されたにもかかわらず周囲の景色が変化していないことに対して未だに警戒態勢を解かずにいる。

 

「シグナム!烈火!」

 

「2人共大丈夫!?」

 

 そんな2人の前に姿を現したのはフェイトとなのはであった。

 

「無論だ。そちらこそ無事か?」

 

 なのはの純白の防護服(バリアジャケット)は大きく汚れており、フェイトに関しては斬り裂かれたような筋が幾重にも入っているが当人達の外傷は既に治癒済みであるのか元気な姿を覗かせており、シグナムも2人を見て目尻を下げたようだ。

 

「苦戦しちゃいましたけど何とか!」

 

「でもお話を聞けませんでしたし、逃げられてしまいました」

 

 なのはは自らが無事であることを誇示するかのように握り拳を作り、フェイトはエリュティアらを取り逃がしてしまったことを悔いているのか沈んだ表情を見せている。

 

 フェイトと同様に隣のなのはも今回の一件に関して思うところがあるのかいつもの調子が出ておらず、どこか空元気に見える。

 

「そうか・・・我らも似たようなものだ。情けない話だがな」

 

 シグナムもイヴとヴァンを退けこそしたものの愛機であるレヴァンティンを中破させられてしまい、逃亡を許してしまった為か表情が硬い。

 

 

 

 

「いや、突然の襲撃者に対しても我々の陣営は全員無事だった。そう悲観する物じゃないよ」

 

「クロノ君!?」

 

「お兄ちゃん!」

 

 話し込んでいた一同の前に姿を現したのは漆黒の防護服(バリアジャケット)を着込んだクロノ・ハラオウンであった。

 

 そして、現れたのはクロノだけではなく、他にも武装隊員の姿が何名か受けられる。

 

 

「僕達は急な魔力反応に際して緊急で出撃して来たんだ。現在逃亡中の敵魔導師達はエイミィと支部のみんなが追ってくれているよ」

 

 結界解除当初に周囲の光景が変化しなかった原因は時空管理局の魔導師部隊がなのは達を閉じ込めていた3つの結界を覆うように大きな結界が形成していた為だったということだ。

 

 

「あぁ、ああ!!もうっ!!5つに分かれて連続転移とか!明らかに素人の動きじゃないね!!」

 

 逃亡したイヴ達5名に関してはオペレータとして古巣の東京支局の設備を借り受けたエイミィを始めとして、現地の局員による追跡が行われている。

 

 5名はレーダ追跡から逃れるように小刻みに高速で転移を繰り返しているようであり追跡は困難を極めているようだ。

 

 

 

 

「君達4名はとりあえず大丈夫そうだが、問題はあちらか・・・」

 

 クロノの視線の先には項垂れるように地面に座り込んでいるはやてとヴィータ、そして上半身が丸ごと吹き飛んでいる人間の下半身らしき物体が転がっていた。

 

 それの接合部は血肉ではなく機械で出来ているのが遠目からでも見て取れる。

 

「主ッ!ヴィータ!?」

 

 シグナム、なのは、フェイトは血相を変えてはやてらの下へ駆け寄って行く。

 

 

 

「私らは大丈夫やけど・・・」

 

「アタシの失態だ!」

 

「そんなことあらへん。私かて・・・」

 

 なのはらは外傷がない様子の仲間の姿を見て僅かに胸を撫で下ろすが、当のはやてとヴィータは暗い表情を浮かべたままだ。

 

 共に戦っていないなのは達からすればはやてらに何が起きたのかは予想の域を出ないが、結界発動前にいた女性の姿が消えていることと付近に転がる機械の脚という事柄から良い状況ではなかったことは伺える。

 

「ともかく今はこの件に関しての情報を得る事と君達の手当てが先だ。みんなで支部に向かおう。そして、蒼月烈火・・・また君か?」

 

「好き好んでこんな状況に巻き込まれてるわけじゃないんですけどね」

 

 クロノはこの地で起きた戦いについての情報を得るために戦闘を行った魔導師達に時空管理局東京臨時支局への移動を提案し、同結界内で防護服(バリアジャケット)を展開している烈火に呆れたように半眼を向けた。

 

「流石に今回の事については僕の家で済ませるわけにもいかないので君にも事情聴取に付いて来てもらうが構わないね?こちらからは君のデバイスには触れないし、君への制限もかさないつもりだが・・・」

 

「分かりました。この状況では致し方ないですね。俺も襲われた理由は知りたいですし」

 

 烈火はクロノの提案に頷いて答える。地球に来て事件に巻き込まれるのも早何度目か、すっかり互いの対応も慣れたものであるようだ。

 

 

 

 

 クロノに先導されるようになのはらの姿は光に包まれて第97管理外世界地球・日本に設置されている〈時空管理局東京臨時支局〉へと転移を果たし、そのブリーフィングルームへ腰を落ち着けた。

 

 

 室内中央のモニターにレイジングハートやグラーフアイゼンから抽出された今回の戦闘の映像データが再生される。

 

 

 謎の女性との遭遇から始まり突如として現れた5人の魔導師との戦闘・・・

 

 一同の注目を集めたのは特A級次元犯罪者イヴ・エクレウスの存在と彼らのデバイス、襲撃の理由が明らかになったはやてとヴィータの戦闘の3点であった。

 

「ともかく状況を一つ一つ整理していこう。襲撃者は5名の若い男女グループ、狙われたのは彼らと同じ組織に属していたであろう1人の女性か」

 

 クロノは座席に腰かけている一同の前に立ち、今回の事件に関わる重要人物であろう6名の姿をモニターに映し出す。

 

「5名の襲撃者はそれぞれが管理局のエース級に相当する実力を持っており、そのうち1名は特A級次元犯罪者だ。更に銀髪の少年を除く4名はデバイスに少々特異な意匠が見られるわけか。この機構について君の見解を聞かせてもらえるか?」

 

「うーん、この人達となのはちゃん達のデバイスの違いは大きく分けて2つかな」

 

 クロノに意見を求められたのは彼の後輩にあたる管理局のメンテナススタッフであるマリエル・アテンザであった。

 

 マリエル・アテンザ・・・通称マリーはクロノというよりエイミィと親交があり、かつての〈闇の書事件〉の折にヴォルケンリッターに対抗すべくレイジングハートとバルディッシュにカートリッジシステムを搭載するなどといった強化改修を施した人物でもある。

 

 

 

 

 モニターの操作を預かり受けたマリエルはイヴとエリュティアのデバイスが薬莢を吐き出すシーンで映像を止めて、皆に注目を促した。

 

「まずはこれだね。戦闘映像から見るとこの機構は〈電磁カートリッジシステム〉と見て間違いないと思う」

 

「電磁カートリッジ?私達のカートリッジとどう違うんですか?」

 

「一番大きな変化点は質量、エネルギー兵器との戦闘を想定してるってとこかな。対質量兵器用だけど単純にカートリッジシステムの発展形でもあるから今まで通りの用途でもレイジングハート達に搭載されてる物よりスペックも高いね」

 

 マリエルは聞きなれない単語に首を傾げていたなのはの問いに答えた。さらにイヴとエリュティアの隣に2枚のモニターを出現させる。

 

「もう一個は私が言うまでもないと思うけど術者のコントロールを受けて動作する盾武装である〈独立浮遊シールド〉だね。さっきの電磁カートリッジと同じで管理局の技術部門とカレドヴルフ社が現在開発中の新武装でようやく試作機の開発がされ始めたばかりの物なんだけど・・・」

 

「彼らはそれを実戦に投入してきた。管理局と同等以上の技術力を持った団体なのか、それとも内通者が開発データを横流ししたのか・・・」

 

 クロノとマリエルは本来ならばまだ実戦投入できる段階に達していないはずの最新鋭の武装を引っ提げて来た襲撃者に対して意見を交わしている。

 

「奴らの武装は確かに脅威ではあったが、戦闘中に違和感を感じる点がいくつか見受けられた」

 

「それは彼らのデバイスも未完成だからだと思います。そもそも電磁カートリッジはカートリッジから本体に常時給電させることによってデバイス自体の強化を施したり、接触した部分を分解、破断する〈電磁破断機構〉と併用してそこにブーストをかけるための物ですが、彼らの黒剣や深紅の爪にはそれらの意匠は見受けられませんでした」

 

 シグナムは最新技術を搭載しているデバイス使用者と戦闘を行った際に感じた違和感を疑問として投げかけ、マリエルが答えた。

 

「独立浮遊シールドについても同じことが言えると思います。本来は複数機装備することを想定していますが彼らは一機しか携行していませんでした。恐らくは対応装備を管制、コントロールするシステムが完成に至っていないからだと思われます」

 

「これでもまだ未完成か」

 

「はい。電磁カートリッジは従来のカートリッジの発展形ですのでこれまでの様に連続ロードも可能なはずですが彼らの物は常に一回の炸裂しかなく、再使用までにタイムラグがあるようです。独立浮遊シールドの方も一機での運用ですが想定しているスペックには達していないように思えます。従来のデバイスに最新技術の一部を搭載した試作機ではないかという印象を受けました」

 

「なるほどな。試作機でもこれほどの出力を有するとは・・・」

 

「一つ言えるのは、彼らのデバイスには魔力の物理変換効率の低さであったり、稼働するための対応システムの未完成といった問題もあるように見受けられますので、現状ではうちの技術部とカレドヴルフ社が想定しているスペックの半分にも満たないんじゃないかと思います」

 

 クロノはマリエルの見解に驚愕の感情を覚えながら重たい溜息を吐いた。

 

 

 

「私達もフルドライブしてようやく追いつけたって感じだったもんね」

 

 なのはもスリネらとの戦闘を思い返しているようだ。その隣ではフェイトも同意するように頷いている。

 

「でも、烈火と戦った銀髪の人以外はフルドライブを使わなかったね」

 

「うーん。多分、彼らのデバイスは新技術を搭載する上で本体に負担がかかる変形機構やフルドライブモードなんかに機能制限がかかってたんじゃないかな?そこの白い子と戦った人の槍は新技術が搭載されていない従来のベルカ式アームドデバイスだったから戦い方が違ったとか」

 

 マリエルは烈火とヴァンの戦いを再生して、フェイトが思いついたように声を上げた疑問に対して見解を示す。

 

「だが、今回はその機能制限に助けられたというわけか」

 

 シグナムは一線級のデバイスマスターであるマリエルの見解に合点がいったと頷いている。

 

 イヴのカートリッジ再使用までのタイムラグや魔導師にとって一種の切り札と言えるフルドライブモードを使ってこなかった理由と今回の戦闘でデバイススペックが劣る自分達が襲撃者に対抗できた要因に結びついたと断定できたためであろう。

 

 

 襲撃者が使用していたダーインスレイヴ、ゼピュロス、プロメテウス、アストラの4機は通常稼働時ですらレイジングハートやバルディッシュのフルドライブモードに匹敵するだけの出力を有しているため戦闘中は大きな脅威となり得たが、逆に言えば未完成の試作機である為に最高出力が制限されている。

 

 なのは、フェイト、シグナムは自らの最高火力の魔法とカートリッジの連続炸裂で制限がかかっている彼らの上限値を超えたことによりデバイススペックの差を強引に埋める事によって突破口を開くことができたということだ。

 

「しかし、機能制限を設けてまでも搭載する価値がある新武装には違いない。相手が君達でなければ間違いなく全滅していただろうからな」

 

 対質量兵器、エネルギー兵器の新武装であったが試作段階ですらその有用性が従来のデバイスを遥かに凌いでいるというのは映像記録ですら明らかであった。

 

 幾多の修羅場を乗り越えて来たなのは達でなければ一人一人がエース級魔導師を超える実力を持っている今回の襲撃者を撃退することは不可能に近かったであろう。

 

「それと君は氷漬けにされていたようだが体は大丈夫なのか?」

 

 クロノは現状できる一通りの考察を終えて一息ついたのか戦闘映像の中で大技をその身に受けていた烈火に声をかけた。

 

 最新鋭のデバイスに目が行きがちであるがイヴら5名の魔導師としての技術にも目を見張る物がある。

 

 実際、烈火と戦闘を行っていたヴァンは氷結魔法の特性をフルに活用しており、新装備を引っ提げていた4名とは別の脅威を感じさせる実力者であった。

 

 

「ええ、問題ありません」

 

「本当に大丈夫なの?やっぱり医務官さんを呼んできた方がいいよね」

 

「アレは魔法ごと吹き飛ばしたから大丈夫だ。それより近いぞ」

 

「・・・だって、あんな魔法受けたんだから心配だよ」

 

 烈火はヴァンの空間凍結魔法の影響はないと答えるが隣にいるフェイトが心配そうに顔を覗き込んでくるためにどこか居心地の悪そうな表情を浮かべている。

 

 全身を殺傷設定の魔法で氷漬けにされるという普通ならば間違いなく命を落としていたであろう攻撃をその身に受けたのだからフェイトの心配は無理もないのかもしれない。

 

「ん!んっ!!では次に行くが構わないか?」

 

 クロノはフェイトが烈火に体を寄せるように密着していくのを頬を引くつかせながら眺めており、咳払いと共に流れを断ち切った。

 

 

 次に画面に映し出されたのはこの襲撃の核心に迫る映像であったからか2人も画面に向き合うが、フェイトは時折、心配げな視線を烈火に向けているようだ。

 

 

 

 

 画面に表示されたのははやて、ヴィータとバイアとの戦闘映像であり、同映像内にはなのはらに接触してきた謎の女性も映し出されている。

 

 女性が襲撃者と同じ組織に属していた科学者であったことや研究成果である機械人形に記憶データだけを移植した男性であったことが語られる。

 

 その後、バイアを拘束したはやてらであったが突如として降り注いだ魔力の雨〈グレールレイン〉により取り逃がしてしまう。

 

 拘束から抜け出たバイアはその機動力を活かして女性の下へと一気に迫っていく。

 

 はやては白い羽のような魔力刃を手に応戦するが、広域型の彼女にとって近接格闘という専門外の距離(レンジ)でエース級のバイアと打ち合えるはずもなくいとも簡単に吹き飛ばされた。

 

「ひぃっ!!?」

 

 バイアの銃剣型デバイス〈アストラ〉が振り上げられ、女性の口から恐怖の声が漏れる。

 

「させるかよッ!!!」

 

 ヴィータは降り注ぐ魔力弾をものともしない勢いでアイゼンを携えて斬り込んでくるが独立浮遊シールドに阻まれてしまう。

 

(ギガントさえ使えればこんな盾ごとぶち抜けるのによぉ!)

 

 鉄槌の騎士の代名詞であるフルドライブ〈ギガントフォルム〉であればバイアの防御の上からでも攻撃を加えることができるだろうが威力の反面、周囲に与える影響が大きすぎる為、防護服(バリアジャケット)すら纏っていない非戦闘員の目の前で発動させるわけにはいかないのだろう。

 

「や、やめてくれ!!魔導人形のブラックボックスとなっている公開していないデータも全てお前達に渡すから命だけは!」

 

 先ほどの魔力弾の雨により女性---科学者の男性を包み込んでいたはやての結界に小さな(ひび)が見受けられバイアが刀身で小突けば硝子の様に砕け散ってしまう。

 

「自分で望んでこっち側に来たくせに立場がヤバくなったら逃げ出して、挙句の果てに管理局に命乞い。それでもダメだと思ったらまた私達に尻尾を振るなんてどこまで腐ってるのかしら?貴女の欠陥品に価値がないからこうなってるのがまだ理解できてないようね」

 

 無慈悲にもアストラが振り下ろされるが遠隔展開された白い剣十字がその刀身を受け止めた。

 

「やらせへんよ!」

 

「もう立て直してくるのね。でも遅いわ」

 

 バイアはアストラのカートリッジを炸裂させ灰色の魔力刃で目の前に展開されたはやての魔力障壁を斬り裂いた。

 

「わ、私が悪かった!!無限円環(ウロボロス)に歯向かったりしないから・・・」

 

「もう死になさい。フルゥーヴグレール」

 

 恐怖に全身を震わせる男性にアストラの銃部から灰色の砲撃が打ち放たれ、腰部から上をすべて吹き飛ばした。血飛沫が舞わずに断面から覗く機械部が彼が人間でないことの証明となっているようだ。

 

「て、てめええええぇぇ!!!!!」

 

「貴方も一手遅かったわ。もう会うこともないでしょう。じゃあね」

 

 ヴィータは無残に命を散らした男性の姿を目の当たりにした事により怒りを爆発させながら飛び掛かるが、勢い良く振り抜かれたグラーフアイゼンは空を切る。

 

 

 

 

 俯くはやてとヴィータ・・・アイゼンの攻撃が炸裂する寸前にバイアの姿は結界内から消え去っていたのだ。程なくして周囲を包み込んでいた結界が解除されたところで映像が終了した。

 

 

 

 

「アタシがしっかりしてれば・・・」

 

「いや、なのは達ですらどうにか撃退するので精一杯の相手だ。その相手に対して防衛対象を抱えたまま戦うのは不利どころの話じゃない。管理局員としてたとえ犯罪者だとしても人命を守れなかったことは遺憾だが、それは君達だけの責じゃないよ」

 

「そうね。しょうがないっていう言葉は使いたくないけれど、あの状況でエース級の魔導師5人に襲撃されちゃ誰が戦っても結果は変わらなかったと思うわ。それよりもこれからどうしていくかを考える方が先決じゃないかしら?」

 

 クロノと今まで静観していたリンディは敵組織の重要人物の防衛に失敗したことに責任を感じてか悔しさを滲ませるヴィータとはやてを励ますように声をかけた。

 

「そうですね。はやて達の戦いによって例の組織に関して少なくない情報を得る事が出来ました」

 

「ねぇ、クロノ君。例の組織って何のこと?」

 

 なのはは今回の襲撃によって得た情報を無駄にせずに次に活かしていくことが重要だとクロノが漏らした一言に気になる部分があったからか首を傾げながら問いかける。

 

「先ほど映像で出ていた無限円環(ウロボロス)という呼称はある組織の事を指しているんだ。その起源は管理局黎明期、伝説の3提督の時代まで遡る。歴史の闇に常に存在し続ける謎に包まれた犯罪組織・・・それが無限円環(ウロボロス)だ」

 

 クロノの口から語られるのは謎の犯罪組織〈無限円環(ウロボロス)〉についてであった。

 

「表舞台に滅多に出てこない為にこの名を知っているのは管理局に古くから所属している上役の一部だけだ。しかし、この無限円環(ウロボロス)という名が関わる事件は次元世界が消滅するなどといった多くの命が失われる大災害を(もたら)したという記録もある。組織単位で幾つものロストロギアを保有、凶悪犯罪者を戦力として迎えているなどといった噂が囁かれている危険組織という話だ」

 

「次元世界の消滅にロストロギアを持っているって・・・」

 

「ああ、危険度で言えば最高のSランクの範疇を超えているだろうな。そして彼らは〈ルーフィス〉で起きた事件の首謀者、フィロス・フェネストラに協力していた組織に間違いない」

 

「ルーフィスって、あの魔導獣の?」

 

 なのはとフェイトは記憶に新しい〈魔導獣事件〉と今回の襲撃者たちの繋がりに驚愕の表情を浮かべて顔を見合わせている。

 

「今回の襲撃者の実力は生半可な魔導師では相手にすらならないほど強大なものだ。そして、管理局ですら実稼働に至っていない最新鋭の技術を搭載したデバイスを保有している。前回の戦いで君達を苦しめた〈魔導獣〉に話にだけ出て来た〈魔導人形〉とやらの存在も気にかかるな」

 

 クロノの口取りは重い。

 

「僕らの脅威は無限円環(ウロボロス)だけではない。魔法を無効化する〈AMF〉に新たな質量兵器である〈ガジェット・ドローン〉。次元犯罪者がこれらの技術を我が物としたのなら僕たち魔導師が戦い抜くのは困難を極めるだろう」

 

 これまでの魔導師の戦闘は魔法という最強の力を以てしての潰し合いといった面が大きかったため、強大な魔力と戦闘技術を持つエース級の魔導師が戦場を支配してきたが、次元犯罪者たちは魔法という現象そのものを無効化するという手法を取り始めたため、今までの戦い方が通用しなくなる可能性が大いにあるということだ。

 

「だからこそ!僕達のすべきことは明白だ」

 

「魔法無効化状態への対策とデバイスの強化改修か・・・」

 

「その通りだ。次元犯罪者に好き放題されるのを指を銜えて見ているわけにはいかないからな」

 

 シグナムはクロノの意図を汲み取ったかのように呟いた。

 

 近接型で言うのなら物理攻撃の強化、射撃型で言うのやら多重弾殻射撃といったAMF対策の技術習得が例に挙げられるであろう。

 

 そして、何よりも優先すべきで最も効果が出るのがデバイスの強化である。

 

 質量兵器や通常エネルギー兵器、魔法無効化対策の新技術の有用性は今回の戦闘で証明されたばかりだ。

 

 しかし、無限円環(ウロボロス)の面々が使っていたデバイスですら規定スペックの半分にも満たない。完成された次世代デバイスを使いこなすことができれば強大な戦闘力向上となるのは誰の目から見ても明らかだ。

 

 

 

 

「それにスリネさん達が何でこんなことをしてるのかお話を聞かなくちゃね」

 

「うん。私もエリュティアがどうしてあんなに怒りに身を任せるのかを知りたい」

 

 なのはとフェイトは自身と相対した少女達の姿を記憶に呼び起こす。

 

 スリネとエリュティアに共通していたのは強い怒りの感情・・・だが、その瞳の奥からはどこか悲しみのような感情を感じさせた。

 

 その瞳の奥の悲しみはかつて家族内で孤立していた自分と母親の操り人形となっていた自分とどこか重なって見えたから・・・

 

 

 

 

「アタシもやられっぱなしでいるわけにはいかねぇ!」

 

「失態は取り戻さへんとなぁ」

 

 ヴィータ、はやても無限円環(ウロボロス)相手への闘志を燃やしている。

 

 

「デバイスの開発はできるだけ急ぐつもりだけどこればっかりは何とも言えないかな。とりあえず、なのはちゃん達で言う夏のお休みくらいには試作機をロールアウトさせれるように掛け合ってみる」

 

「頼むぞ。デバイスの強化改修は急務と言えるからな」

 

 クロノやマリエルも自らのやるべきことを明確に判断し、行動する意思を固めている。

 

 

(また無限円環(ウロボロス)か。今回の襲撃と月村の一件にこんな繋がりがあったとは・・・)

 

 烈火はこの短期間に無限円環(ウロボロス)関係の事件に連続で巻き込まれたことに対して考え込むように俯いている。

 

 

 シグナムとリンディはこれから先の未来に向けて意気込んでいる面々の輪に入らずにいる烈火へと視線を向けていた。

 

 

 エイミィらの追跡も虚しく今回襲い掛かって来た5名の逃亡を許してしまったこと、地球周辺の警戒態勢を強める旨が皆に伝えられたところで解散となり、支局に残る者と帰路に就く者に分かれて激動の一日は終わりを告げた。

 

 

 

 

 どこかの施設の通路を5人の男女が歩いている。

 

「あーあ、目的達成したのに大目玉を喰らっちゃったわね」

 

 頭の後ろで腕を組みながら不貞腐れているのはイヴ・エクレウスであった。歩くだけで大きな胸が弾むように揺れている。

 

「バイアさん以外のデバイスは外部にしろ、内部にしろダメージレベルが大きすぎてメンテナンスルームに直行でしたから仕方ありませんね。標的を始末したとはいえ管理局に顔も見られてしまいましたし、暫くは本部で謹慎処分みたいですね」

 

「まあ、私もアストラ本体は無事だったけどシールドは壊れちゃったから似たようなもんよ。退屈だけどデバイスの完成を待つにはちょうどいいかもね」

 

 スリネとバイアはイヴを尻目に頷き合っている。

 

「奴らとはすぐにでも決着をつけてぇが、ボスに地球に行くなって言われちゃな」

 

 エリュティアはイヴの胸元を睨み付けながら不満げな表情を浮かべていた。

 

 エリュティア・プロミナート・・・バストサイズAカップ。残念ながら100cmオーバーのイヴとは天地の差である。

 

 因みに時空管理局のエース級魔導師が何人も滞在しており臨時支局まである地球に私用で向かうことは禁止されたようだ。

 

(俺達が目撃者を殺しきれなかったのはこれが初めてだ。管理局の警戒が高まっている中に攻め込むのは愚策だがこのまま放っておいていいのか?)

 

 ヴァンは話に入ることなく彼らの首領の指示に疑問を呈している。

 

 

 

 

(ふふっ、倒すべき女と私の予想以上だったボウヤ。久々に楽しくなってきたわね・・・)

 

 思い思いの面々を尻目にイヴは頬を染めて妖艶に微笑んでいた。

 




滅び、死にゆく星・・・

「何をしてるんですか!?」

「お姉ちゃんには関係ない!全部救うためにはこれしかないんだから!!」


混乱に包まれる地球・・・

「何なん?この機械は!」

「私達の魔法が!?」


永き眠りより蘇る魂・・・

「王よ。私達の力は貴方のために在る」

「んじゃ、やることやっちゃおうか!」

「我らは宿願を叶えるために!」


絡み合う数多の思い・・・

「母親として私はあの子を幸せにして上げられているのかしら?」

「フェイトさん。君のいるべき場所はそこではないはずだ」


「私は大丈夫だよ。今度はちゃんとお話を聞くんだから!」

(そういうことを言ってるんじゃないのよ。なのは・・・アンタ達が無事に帰ってくることが一番なんだから)




そして、悲しき物語が幕を開ける・・・

「さあ、始めましょうか。全ての終わりと私の復讐を!」


天空を煌めく光芒の星、激突する力と覚悟・・・

目を覚ますのは1羽の悪魔・・・

破滅へと向かう物語を是とせず戦い続ける救済者達・・・

「私が絶対ッ!助けます!!!」


「どんなことがあっても、最後に■■■■■■■■■■」




魔法少女リリカルなのは Preparedness of Sword 第5章 反鏡終焉のDetonation

ドライブ・イグニッション!



皆様、あけましておめでとうございます。

本年も今作をよろしくお願いします。

次回からは新章突入となります。

タイトルと予告で大体察しはついちゃいますねw

感想等頂けましたら嬉しいです。
ではでは!
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