魔法少女リリカルなのは Preparedness of Sword   作:煌翼

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戦いへ向けて

 都内の大きな建物の展望台に1人の女性の姿がある。

 

「ねぇ、イリス。この本を開けばいいのね?」

 

 癖毛気味の女性---キリエ・フローリアンは八神はやてから強奪した夜天の書を手に取って不思議そうに眺めている。

 

「うん。夜天の書の使い方はある程度分かってるから私の言う通りにやってくれれば大丈夫よ」

 

 キリエの目の前に橙髪をサイドに束ねた少女が姿を現した。エルトリア内にある教会の石板プレートに宿った人工知能---イリスである。

 

 イリスはキリエが所持している石板の子機端末を通して地球に姿を現しているようだが、稼働に制限がかかっている為か現実世界での行動はキリエにその全てを任せていたようだ。

 

「私達の目的に必要ってのもあるけど、こっちの戦力も増やさないとこれから先かなり厳しそうだからね。まさかキリエがここまで消耗するなんて計算外だったし」

 

 イリスは傷だらけのキリエを心配そうに見つめながら呟く。当初の計算ではなのは達をまとめて相手取ったとしてもキリエと数機の機動外殻で戦力的には十分なはずであったが、蓋を開けてみれば予想外の大苦戦を強いられた。

 

 最終的にはイリスの手によってキリエのフォーミュラスーツに搭載された緊急救助用加速システム〈アクセラレイター〉を応用した強化版ともいえる〈システム・オルタ〉をフル稼働させることによってどうにか事なきを得た。

 

 しかし、システム・オルタは心身への負担が大きく稼働時間も短い。

 

 フォーミュラの固有技能である魔導の解析・分解だけで相手取れると想定されていた魔導師部隊に切り札であるオルタを見せた事、加えてシステム発動状態での予想を超えた長時間戦闘によりキリエにかかった負担はイリスの計算を超えていたという事だろう。

 

 キリエの手から夜天の書が離れ浮遊する。イリスの足元に浮かび上がるのは橙色の剣十字・・・

 

 イリスに呼応するように夜天の書が光を放ちながらページを撒き散らす。

 

 舞い散るページの中から紫の炎が出現し、人の姿を形作っていく。その人影を守るかのように深炎と蒼雷の光が周囲を飛び回る。

 

 イリスは夜天の書の奥底に眠るデータの封印を解き、〈王の魂〉と〈2人の僕〉を現代に呼び起こし、〈ヴァリアントシステム〉を用いて肉体を与えた。

 

「この子たちって・・・」

 

 姿を見せたのは3人の少女。キリエは目の前の少女たちの姿が先ほどまで戦闘していた者達と瓜二つであることに驚きを示しているようだ。

 

 

「おかえりなさい。王様」

 

 イリスは3人の少女に視線を向けながら小さく笑みを零していた。

 

 

 

 

「しかし、これは少々厄介なことになったな」

 

「うん、そうだね。まさかなのはちゃん達どころか守護騎士のみんなまでまとめてやられちゃうなんて・・・」

 

「エルトリア式フォーミュラ、魔導師にとっては天敵と言えるだろうな」

 

 クロノとエイミィは違法渡航者、機動外殻となのは達の戦闘映像を見返しながら重い溜息を吐いた。

 

 キリエ・フローリアンという少女の身体能力の高さには目を見張る物があったが主兵装の剣技に関してはシグナムの足元にも及ばない。高機動戦闘においても無駄が多くフェイトのそれに劣っているだろう。

 

 しかし、戦闘技術で優る管理局のエース達はキリエに敗北した。

 

 最後に見せた高機動戦闘も脅威であったが、魔法を解析して分解する力は魔導師にとって反則の一言に尽きた。

 

 事前に解答を持って試験に臨む、じゃんけんで言うのなら相手が出した手に対して勝てる手を後から用意できるというわけだ。

 

 魔力が多いだとか戦闘経験が長いだとかそういう次元の話ではなかったのだ。

 

 

「皆のデバイスの改修とカレドヴルフ社からの武装貸与はどうなっている?」

 

「マリーによると急ピッチで進めてるみたい。機能制限はいくつかあるけど実戦投入は可能でインテリジェントの2機は調整に手間取ってる。カレドヴルフ社の方は順調だね」

 

「レイジングハート、バルディッシュ、それとデュランダルの3機は出撃までに間に合いそうにないということか。他の機体についても万全とは言い切れない・・・」

 

「マリー達の頑張りに期待するしかないね。違法渡航者のアミティエ・フローリアン以外のみんなは軽傷だったからそれが唯一の救いかな」

 

 しかし、魔法が効かないからと手を拱いている管理局ではない。エネルギー、質量兵器に対抗すべく生み出された技術を実戦投入することによって新たな敵への対抗手段とするようだ。

 

 再出撃までの時間が足りないため完成形とは言えないまでも従来の物よりも格段に性能向上を果たし、魔力の物理変換機構の搭載によってフォーミュラや機動外殻との戦闘に投入される新型デバイス、それを操る魔導師達と戦闘準備は着々と進んでいるようだ。

 

「僕、はやて、シグナム、ヴィータを中心とした4部隊がこちらの主戦力になる。加えて本局から派遣されて来た面々の編成も考えなければな。こちらも頭が痛い話だ」

 

 キリエらの反応を追うため包囲網を盤石の物へとするべく頭を悩ませているクロノであったが思わず頭を抱えてしまっている。

 

「あの東堂煉も参加するんだもんね。この大変な時に部隊の指揮を取らせろだなんて」

 

 クロノの悩みの種は本局からの増援の中に東堂煉の名があったからであろう。

 

 煉の参加に人付き合いの良いエイミィにしては珍しく毒を吐いている。東堂派とハラオウン派の対立を知っているからか煉の事を余り良く思っていないようだ。

 

「エイミィ、任務に私情を持ち込むなよ。僕も似たような思いではあるがな。能力は優秀なんだが我が強すぎて扱いづらいのが難点だ。本当なら僕の部隊に加えて制御するつもりだったんだが彼の父親の依頼となると無下にはできないというのが正直な話だな」

 

 東堂煉のデバイス〈プルトガング〉と黒枝咲良のデバイス〈アイギス〉の強化改修は煉の父親による資金提供により既に完了しているため対機動外殻、フォーミュラとの戦闘も可能だ。

 

 煉の戦闘能力もエース級と言って差し支えなく戦力としては申し分ない。

 

 しかし、我の強い性格が指揮官向きではない為にクロノは自身の手元に置いておくつもりだったのが、大派閥のトップである煉の父の頼みとあれば犬猿の仲の派閥同士と言えど無視するわけにはいかないのだろう。

 

 

「まあ、こうなってしまった以上はどうしようもない。残る不安事項は1つだがそちらに関してはもう手は打ってある」

 

「ん、他になんかあるの?」

 

「東堂の様に実害的な被害はないだろうが、ある意味それ以上に扱いにくい不安事項がな・・・」

 

 クロノは増え続ける懸念事項を前に再度、重苦しい溜息を吐いた。

 

 

 

 

「蒼月烈火さんというのですね?では烈火さんと呼ばせていただきます!私の事はアミタと呼んで下さい!!」

 

「あの、フローリアンさん。近いです」

 

 蒼月烈火はオールストーン・シーに隣接しているホテルの一室で赤毛の女性---アミティエ・フローリアンに詰め寄られていた。

 

 烈火は初対面にもかかわらず押せ押せのアミティエに頬を引くつかせているようだ。

 

 

 

 

「フェイトちゃんの彼氏候補の子?いい子そうに見えるけど警戒する必要なんてあるの?」

 

「前者は違う!後者に関しては蒼月烈火という人物そのものに関しての懸念というより今回の一件に巻き込まれないようにという意味だ」

 

「ふーん。それで保護と監視を兼ねて管理局のお膝元に置いておくってわけだね」

 

「下手に事件から遠ざけたとしても違法渡航者が彼に接触する可能性もある。万が一、戦闘になったとして我々と違ってデバイスの改修を行っていない蒼月烈火は魔法を無効化してくるフォーミュラ使いに対して勝機はないだろう。そもそも民間人を現場に出す気などないし、中途半端に首を突っ込まれても皆が混乱するだけだ」

 

 クロノにとっては、行動がある程度予想ができる煉よりも未だに実力の図り切れない烈火の方が厄介だという事であろう。

 

 加えて、ミッドチルダ、ベルカの術式が解析された以上、ソールヴルム式もフォーミュラには通用しないと予測される。装備改修した管理局部隊はともかく、機動外殻やフォーミュラ使いは今の烈火が立ち迎える相手ではない。

 

「蒼月烈火の戦闘能力は無視できないものがある。何も知らせないのも不安だが、事件にも関わらせたくないという意味での中間択だ。全く、制御されていない大きな力ほど厄介なものはないな」

 

 クロノは烈火の身を守ることとその動きを把握するという意味で管理局の下に置くという選択を取ったようだ。

 

「色々考えてるんだねぇ。指揮官殿は大変だぁ」

 

「茶化さないでくれ・・・」

 

 今回の一件の最高責任者はリンディの旧友であるレティ・ロウランが務めているが現場の指揮は基本的にクロノに委ねられているようであり、リンディはその補佐という形になっている。

 

 エイミィは頭を抱えているクロノの頬を楽し気に指で突き回していた。

 

 

 

 

「なのは、大丈夫なの?」

 

「うん。今度は負けないよ。今度こそお話を聞いて、私の魔法で護れるものは全部護ってみせる」

 

(そういうことを言ってるんじゃないのよ。なのは・・・アンタやフェイト達が全員無事に帰ってくることが一番なんだから)

 

 なのはとアリサはホテルのテラスで夜空を見上げている。フォーミュラと機動外殻という新たな力に対抗する手段は得た。為すべきことは1つ・・・明白であった。

 

 

 しかし、アリサは隣に立つなのはに不安げに視線を向ける。なのはが負傷して戻って来た時、アリサの脳裏に蘇ったのは数年前の記憶。

 

 管理局の任務で一生歩けなくなるかもしれないほどの大怪我をしたなのはの姿。全身に管を繋いでどうにか生きていたなのはの姿を見て涙を零したのを覚えている。

 

 アリサもすずかも思いは同じであった。事件の詳しい事情は分からない。ただ、なのは達が無事に戻って来てくれさえすれば・・・

 

 言いようのない不安を胸にアリサはなのはの尻をパシンと叩いた。

 

 

 

 

「そうおっしゃらずになのはさん達の様にアミタと呼んでください!」

 

 烈火は迫ってくるアミティエに辟易しながら妙な類洞感の様なものを感じていた。

 

---昔みたいに笑えるようにお話聞かせてもらうんだから!

 

 どこか抜けたようなぽわぽわとした感じ。しかし、その瞳は眩しく輝いており、強い意志を感じさせる。

 

(ああ、アイツ(なのは)と同じ瞳なのか)

 

 烈火は目の前にいる陽だまりのような女性から思わず目を背けてしまう。

 

 違法渡航者としての烙印、暴走した妹を止める使命、深く傷ついた身体・・・様々な重責を背負っているにもかかわらずにさもそれが当然だと言わんばかりに振舞うアミティエの姿があまりにも眩しく思えたから・・・

 

 

 

 

《アミタさん。お身体の具合はどうですか?》

 

 烈火とアミタに通信が入る。モニターにフェイトの姿が映し出され、その背後ではリンディが壁に背を預けてもたれかかっている。

 

 

 

 

《このド天然!今から真面目な話をすんだよ!》

 

《ふ、ふえええぇぇ!!?》

 

 画面こそ表示されていないが聞こえてくる声からなのは達にも通信が繋がっているようだ。

 

 

「管理局の皆さんのおかげでだいぶ良くなりました。ありがとうございます」

 

《いえ、当然のことをしただけです。それで今から事件のお話を伺うわけなんですけど、どうして担当に私を指名してくれたんですか?》

 

「え、と、フェイトさんはお優しそうな方でしたので穏やかに話を進められるかなと・・・」

 

 フェイトが首を傾げながら問いかけるとアミティエは指で頬をかきながら恥ずかしそうに答える。

 

《ほら!私の言った通り!》

 

《ま、マジかよ・・・》

 

 得意げななのはと引き気味なヴィータ、他に笑いを堪えるような声が通信から零れていた。

 

 

 

 

 そして、アミティエから語られる事件の全貌・・・

 

 なのは達と戦闘を行った違法渡航者はアミティエの一歳年下である妹のキリエ・フローリアン。

 

 その目的は不治の病に侵された父親---グランツ・フローリアンと荒廃し、死にゆく故郷〈惑星エルトリア〉を救済する事であり、彼女はそのための力を夜天の魔導書に求めた。

 

 そして、夜天の書の使用方法は不明だが、キリエを手引きした謎の存在がいる事が明らかになる。

 

 

「この度は妹が皆様に多大なご迷惑おかけしてしまい申し訳ございませんッ!!でも悪い子ではないんです!どうか寛大な処置をお願いします!!」

 

 アミティエは手が白くなるほど拳を握りしめてフェイト達に向けて深々と頭を下げる。心中に渦巻くのは妹の暴走を止めきれなかった情けなさか、地球と管理局への申し訳なさか・・・

 

 キリエ捜索のために導入されている人員や設備とて無料ではない。それもこれだけ大規模に展開されている上にデバイスの改修と、とてつもない額の費用が掛かっていることだろう。

 

 それに頬に絆創膏を付けたフェイトの姿、他の面々も少なからず傷を負っていることだろう。

 

 加えてはやてにとって大切なものである夜天の書を強引に奪い取るという強盗紛いの行為まで働いている。

 

 

 アミティエはせめてもの力添えとしてなのはらの武装改修の際にフォーミュラの技術提供をして、その能力を格段に引き上げたがそんな物は何の償いにもならないだろう。

 

 結局のところ、エルトリアの状況がいかに劣悪と言えど既に成人を迎えているキリエの行動が許されるわけがないのだ。

 

 

 

 

《頭を上げて下さい。私達はキリエさんを酷い目に合わせる気なんて最初からありませんよ。どうしてあんなことをしたのかお話を聞いて、協力できることがあるなら惜しまないつもりです。お父さんの事、エルトリアの事、私達にもお手伝いさせてください》

 

 アミティエはフェイトの言葉に驚きの表情を浮かべながら顔を上げた。

 

《そういう事情があるなら最初から言ってくれれば力を貸したんやけどなぁ。夜天の書は返してもらなあかんけど》

 

《もう一回、今度はちゃんとキリエさんにお話を聞かないとだね!》

 

 単独で襲撃されて最も被害が大きかったであろうはやてや他の面々もフェイトに賛同するように声を上げている。

 

「み、皆さん!ありがとうございます!!」

 

 アミタは地球の魔導師達に再び頭を下げて感謝の言葉を述べた。

 

 

 

 

(フローリアン姉妹もエルトリアも救う、か・・・)

 

 管理局側の方針に驚きを示したのはアミティエだけではなかった。烈火も組織視点からすれば最適解とは言えないそのやり方に少なからずの驚愕を覚えていたのだ。

 

 今回の一件を引き起こして法治組織である管理局に襲撃を仕掛け、現地世界に少なくない被害をもたらしたのは間違いなくキリエ・フローリアン本人。

 

 戦闘映像を見る限り洗脳の様なものをされているようには思えず、自らの意思で行動しているように思える。キリエを唆したと言われている何者かという懸念事項こそあれ、彼女自身は立派な成人女性であり、善悪の判断などとっくについているはずなのだ。

 

 エルトリア側の事情もアミティエの証言によりあらかた把握し、結論から言えば今回の事件の原因はキリエ・フローリアンの暴走と言える。

 

 そして、管理局の最大目的は夜天の書の奪還とキリエの身柄確保だ。はっきり言ってしまえば管理外世界ですらなく、既に住民にすら捨てられた星がどうなるかなど二の次であろうし、管理局と聖王教会の重要財産である夜天の書を自らの意思を以て奪った相手に関してこれ以上話を聞く必要などないはずなのだ。

 

 加えて、機能の大半が失われているとはいえ夜天の書自体が危険性を秘めている事には変わりない。それこそ扱い方を間違えれば地球にも被害が出る恐れもあるのだから尚更であろう。

 

 

 

 

《一緒に頑張りましょうね!アミタさん!》

 

「本当に・・・ありがとうございます!」

 

 笑顔を浮かべるフェイトと涙混じりのアミティエ。

 

 フェイトに賛同する仲間達・・・

 

 

 

 

 烈火は目の前で繰り広げられているやり取りをどこか遠くの世界での出来事の様に感じている。

 

 キリエに奪われた夜天の書がはやてにとってどれほど大切であるかはルーフィスでの一件で目の当たりにした。

 

 しかし、なのは達ははやても含め、自分や友人の命以上に大切なものを強引に奪い、それを勝手な理屈で使おうとしている者にさえ救いの手を差し伸べようとしている。

 

 烈火はなのは達が一致団結していく光景を通信終了の時まで静かに見届けた。

 

 

 

 

「む、テスタロッサか?」

 

「遅れてすみません」

 

「そんなことはいい。デバイスは間に合わなかったようだな」

 

「大丈夫です。この子も優秀ですから」

 

 シグナムを先頭に海上を飛行する部隊にアミタとの情報交換を終えたフェイトが合流した。しかし、彼女の手にバルディッシュの姿はなく代わりに握られているのはカレドヴルフ社製の〈ハルバード〉と言われる試作電磁装備をフェイト様にチューンアップしたものである。

 

 

 そんな〈シグナム隊〉の上空から一つの隕石が飛来してくる。

 

「ここは私がやる。レヴァンティン!」

 

≪Explosion!≫

 

 シグナムは飛び出そうとしたフェイトを制し、納められていた〈レヴァンティン改〉を抜き放ち、電磁カートリッジを炸裂させながら鞘と連結させた。

 

「翔けよ・・・隼ァ!!」

 

≪Sturm falken!≫

 

 紅蓮の不死鳥が漆黒の空を飛翔する。

 

 電磁加速により神速の如き速さで喰らい付いた不死鳥の爆炎により隕石は見るも無残に砕け散った。

 

「新装備の感触は悪くない。しかし、これでもまだ試作機か」

 

 シグナムは電磁カートリッジを搭載し、姿を変えたレヴァンティンを見て小さく呟く。

 

 鍔のカートリッジ部を中心に内部フレームや刀身の材質も見直され、性能の大幅な向上と対フォーミュラ、機動外殻への戦闘能力を得た。

 

 しかし、このレヴァンティンはあくまで電磁カードリッジを緊急装備に対しての調整をしただけであり完成には程遠いとのことである。

 

「そして、あちらもこれで終わってはくれぬか」

 

 シグナムは爆炎に飲まれ砕け散った隕石の噴煙を厳しい表情で見つめていた。

 

 

 

 

 巻き上がる煙の中から青色の機械魔神の姿が垣間見えた。

 

 イリスが用意した大型機動外殻であろうそれは噴煙から半身を覗かせており、手には巨大な鉤爪、脚部に刺々しい意匠が施されており人型に近いという印象を受ける。

 

 

 

 

「なんだよぉ~もう!いきなり攻撃してくるなんて卑怯だぞ!何者だ!名を名乗れ!!」

 

「時空管理局所属魔導師、シグナムだ。お前を魔力の違法行使、大規模破壊の現行犯で逮捕させてもらう」

 

 大型機動外殻の傍に現れたのは青い少女。周囲がその姿を見て驚きに固まっている中、シグナムは少女に対して逮捕勧告を言い渡した。

 

 しかし、時空管理局という呼称や逮捕というこれからの彼女の身の振り方を聞いても少女は微動だにする様子が見受けられない。

 

「貴方の名前と出身世界は?どうしてこんなことをするの?」

 

 フェイトは目の前にいる自分と瓜二つの少女に対して戸惑いながらも問いかける。

 

「どこから来たか!何が目的かなんてボクは知らんッ!でも名前が知りたいというなら教えてあげよう!」

 

 反応を示さなかった青い少女はフェイトの言葉のある部分が琴線に振れたのか饒舌に口を開きだした。

 

「誰が呼んだかは知らないが!僕はレヴィ!・・・雷光のレヴィとはボクの事さぁ!!」

 

 青い長髪をツインテールに束ね、刺々しい戦斧〈バルフィニカス〉を手にしたフェイトと同じ姿をしている少女---レヴィは問いに応え、楽しげに口元を歪めている。

 

 

「さあ、遊んであげるよ。ボクの僕・・・〈海塵のトゥルケーゼ〉と一緒にね!」

 

 レヴィは玩具で遊ぶ子供のような満面の笑みを浮かべ、大型機動外殻〈海塵のトゥルケーゼ〉を包み込んでいた噴煙が収まったと同時に魔導師部隊に飛び掛かって行こうとしたが・・・

 

 

 

 

「あ、ああああぁぁあぁぁぁ!!!!??ボクのトゥルケーゼがぁぁ!!!」

 

 間の抜けた大声を出しながら空中で急停止をかけていた。

 

 全貌が明らかになったトゥルケーゼは左腕の鉤爪が3本ほど(ひしゃ)げるように焼き切れ、同じく左の脚の突起部は半ば中心で弾け飛んでいる。恐らくはシグナムのファルケンによって吹き飛ばされたものと思われる。

 

 海上での戦いの始まりは何とも締まらないものとなってしまったようだ。

 

 

 

 

「私と・・・」

 

「・・・同じ顔」

 

 他の戦闘区域にもフェイトそっくりのレヴィと同様にそれぞれなのは、はやてと瓜二つの少女が姿を現し、結界内に何機かの大型機動外殻が出現していた。

 

 時空管理局の魔導師部隊はそれらの対処すべく戦闘行動に入る。

 

 とうとう始まってしまった大規模戦闘・・・

 

 

 

 

「ようやく始まったわね。お互いに潰し合ってみんな死んじゃうと楽でいいんだけどね。じゃあ、私は私のやることをやりますか」

 

 その裏で誰かが心底愉快だと口元を歪めていた。

 




最後まで読んでいただきありがとうございます。

休みが終わってまう。
地獄の日々が始まってしまいます。

今回は小休止回ですね。

因みにキャラクターの年齢ですが

Refとinnocentを照らし合わせると

なのは(小5)11歳

アミタ(高2)17歳

キリエ(高1)16歳

かなと思います。


今作ではその4年後となりますので

なのは(中3)14歳

アミタ    21歳

キリエ    20歳

となっています。


皆様の感想が私の動力源となっていますので頂けましたら嬉しいです。

では次回お会いいたしましょう。

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