魔法少女リリカルなのは Preparedness of Sword 作:煌翼
光を失ったオールストーン・シーで2つの影が閃光の様に交差する。
「よっと、ほい!てりゃ!!!」
「あ、ちょっと!?待って!」
気の抜けたような声とは裏腹に手にした戦斧〈バルフィニカス〉を豪快に振り回す少女---レヴィは青い軌跡を残しながら園内を縦横無尽に飛び回っている。
レヴィは魔力光と同色のスフィアを牽制として3発射出し、追いすがる金色の閃光の脚を鈍らせて、その間に周囲を興味深そうに見渡していた。
対するフェイトはレヴィが打ち放った牽制弾を試作電磁装備〈ハルバード〉で斬り払いながら制止をかけるが残念ながら意味を成していない。
「うるさいなぁ!せっかく外の世界を楽しんでるんだから邪魔しないでよね」
レヴィは眼前に広がる多数のアトラクションや出店、コミカルなキャラクター達に彩られている華やかな園内を楽しげに見渡していたが制止を呼び掛けるフェイトに対して彼女に限りなく近い声音、どこか舌足らずな口調で不満げに頬を膨らませていた。
「それともなぁに?キミがボクと遊んでくれるの?」
機動力に自信がある自分についてくるフェイトに対して八重歯を見せながら笑みを浮かべるレヴィは彼女を突き放すかのように一気に速度を上げる。
まるでついて来れるならついてこいと言わんばかりだ。
対するフェイトは白いマントを翻しレヴィを追いかける。
2つの閃光が音を置き去りにして園内を飛び交うが、レヴィの攻撃を一つ一つ叩き落しているフェイトが僅かに遅れているといった様相を呈している。
「へぇ、やるじゃん!」
レヴィは戦闘の最中、閉じているドアを叩き割って館内に飛び込み、同様にフェイトも後を追うように突入した。
「おぉ!魚が一杯だぁ!」
「ここは!?」
周囲を見渡して楽しげなレヴィと驚いたような表情を浮かべているフェイト。2人が飛び込んだのは日中にフェイトらバニングス家御一行の年少組が訪れた水族館スペースであった。
「とぉりゃっ!!」
レヴィは旋回軌道を描いて円柱状の水槽の周りを回転し、フェイトに向けてバルフィニカスを叩きつける。
「くっ!?」
フェイトはレヴィの一撃を正面から受け止め、思った以上に重たい攻撃に表情を歪めた。レヴィはそんな様子のフェイトを尻目に彼女の傍から離れて再度攻撃といった一撃離脱の戦法で攻め立てる。
「あ~らよっと!ほい!ほい!」
「このままじゃ!ああ、もうっ!!」
「なぁっ!?ちょっと、いきなり出てこないでよ!」
レヴィはこれが高機動型魔導師と言わんばかりのスピードを維持したまま館内を気分よく飛び回っていたが、攻撃の嵐に脚を止めていたフェイトが進路を遮る様に飛び出してきたことに対して素っ頓狂な声を上げた。
「無闇やたらに魔法をばら撒かない!物を壊さない!此処は遊んじゃいけない場所ですっ!!」
「えー、なんでー?」
フェイトは多くの人々の想いが込められている大切な場所を壊してはいけないのだと注意を促したがレヴィは少しも悪びれる事もなければ聞き入れる気もないようだ。
レヴィの高速機動やバルフィニカスを振り回す余波で周囲の水槽の強化硝子は震え、そのいくつかには亀裂が入っており、中から海水が漏れ出している。
魔力弾然り、振り回される戦斧然り、フェイトはできるだけ被害を抑えるように立ちまわっていこそいるが、無邪気に遊ぶ子供の様に飛び回るレヴィを捕らえきれずにいた。
ただの子供であれば捕らえて間違いを正すなど訳ないであろうが、レヴィにはあまりに大きく、危険すぎる魔法という力が宿っている。
例え、悪意がなくとも戦場で魔法という力を振るう以上はそれ相応の責任を伴わねばならないがレヴィにはそれがない。気の向くままに新しい遊び場を駆け回る子供のようであるが、建造物の破壊に殺傷設定での魔法行使と遊びの範囲を逸脱した危険な行動を平然と繰り返している為、見過ごすわけにもいかない。
「何でも!どうしてもっ!!」
「むむぅ…」
これには流石のフェイトも語気を強めるが、対するレヴィは唇を尖らせて不満げだ。癇癪を起した子供の様にフェイトを無視して天井部に向けてバルフィニカスを振りかざすが、すかさずハルバードが割って入る。
「あぁ…またっ!」
バルフィニカス自体を受け止める事はできたものの2機の衝突の余波を受けて再び水槽に亀裂が走り、水が漏れ出す。
戦闘中の自分よりも施設の保護を優先する様子を目の前で見せつけられたレヴィは更に不満を募らせ、フェイトを猛追する。
フェイトは通路の広い方へレヴィを誘導し、余波ができるだけ周囲に影響しないように、先ほどの二の舞になるまいとハルバードでの防衛をせず、回避に専念しているが青い閃光はますます面白くないと眉を吊り上げて追いすがる。
「この辺の物、壊すとダメなの?」
「駄目ですっ!ここはみんなが頑張って作ってる大事な場所なんだから!」
「ふぅん…」
レヴィの問いに即座に答えるフェイトであったが、その回答がお気に召さなかったためか勢いを増したバルフィニカスが上段から振り下ろされる。
反撃も迎撃もせずに一方的に攻め立てられてていたフェイトにも限界が来たのか振り下ろされる戦斧をハルバードで受け止めざるを得ない。
2つの戦斧が鍔迫り合いとなるが、重力と遠心力を味方につけたレヴィに分があるのかフェイトは力任せに吹き飛ばされてしまった。
「で、それってボクになんか関係ある?」
レヴィは首を傾げながら純粋な疑問を呈した。
「そ、れは……」
フェイトはその問いに即答する事ができないでいる。フェイト自身からすればオールストーン・シーを守ることは至極当然の事であるし、理由を上げれば片手で収まらないのかもしれないが、目の前の自分と瓜二つの少女にとってはそうではないのだろう。
レヴィからすれば戦場となったのが偶々、ここであっただけであり、この場所には何の価値もない。
時を同じくしてレヴィと同様、
だが、フェイトは目の前の少女に何を伝えればいいのか、自分の想いを押し付ける事が正しいのかを迷ってしまっている。
救いたい。守りたい。力になりたい。
胸の内に秘めた思いは強くとも、それを言葉に出して伝えることができないでいた。
だが、その強い思いを諦める事も出来ずに堂々巡り、出口のない迷宮の中をひたすら歩き回っているようなものだ。
自分の想い---正義…エゴに他人を巻き込むことができずに迷い、立ち止まる---それこそがフェイト・T・ハラオウンという少女の弱さであり、高町なのはとの相違点であった。
レヴィはハルバードを握りしめたまま、表情を曇らせたフェイトに対して言いようのない居心地の悪さを感じていた。
「う~ん。まあ、狭いとこが戦いにくいってのはボクも一緒だし、場所を変えよっか?」
先ほどまで施設を破壊しようとしていたレヴィからの突然の提案。
レヴィがディアーチェから受けた指示は向かってくる敵対勢力の排除。そして、彼女にとっての戦いは楽しいものであり、久々の外の世界だ。
ならば、不調の相手を倒しても面白くないし、自分にとっても相手にとっても存分に戦える場所に戦いの舞台を移してしまおうという事であろう。
「えっとねぇ。お!いいとこみぃ~っけ!ボクについてきて!」
「あ、待って!?」
オールストーン・シーのマップデータを参照しながら満足気な笑みを浮かべたレヴィはフェイトに自身の後を追ってくるように促して水族館エリアから飛び出していった。
「うんうん!思った通りの場所だ」
黙って逃走を許すわけにもいかず、フェイトが水槽エリアから飛び立った先にはプール上の水面に浮かぶ丸い陸地とそれを囲む観客席のような物。そこにあったのは水族館で飼育している海洋生物による水上ショーを行う舞台であり、その上に滞空しているレヴィは得意げに鼻を鳴らしている。
屋外に多数の観客を動員する予定地であるこの舞台は広さもそれなりであり、アトラクションエリアからもある程度距離がある。先ほどまでの水槽に囲まれた館内とは比べれば、戦闘の影響は周囲に出にくいと言えるだろう。
(それにしてもこの子、キリエさんとはいったいどういう関係なんだろう?それにあの姿…)
フェイトはある程度、落ち着きを取り戻したのか自分と同じ姿をしているレヴィに対しての考察を巡らせていた。
目の前の少女が襲撃犯の1人であるのは覆しようのない事実であるし、キリエの側についているのは間違いない。
しかし、厳戒態勢の中で閉演した為、給電が止まっている舞台を自らが出現させた落雷によってライトアップし、それを見て子供のようにはしゃいでいるレヴィはキリエらに脅されて事に及んだようは思えず、彼女らの救済目的を知った上で垣間見るに襲撃者としては余りに緊張感に欠けている。
加えて、何故先の戦いで出てこなかったのか。何故、自分と瓜二つの容姿をしているのか…疑問は尽きない。
「レヴィ…貴女はどこの子?どうして戦うの?」
「どこの子ってボクは王様の臣下でシュテるんのマブダチさ!戦うのは王様から君達の事を足止めして、できるんだったら倒して来いって言われたから!だから、僕らは言われた通りに頑張るのだ!!」
「…王様って人はキリエさんの関係者?エルトリアの人…なの?」
フェイトは王様とシュテるんという聞きなれぬ名前と、同時に自身の問いに対して含む所のなさそうな様子であっさりと答えたレヴィに対して目を細めるようにして疑問符を浮かべている。
「王様は、王様さっ!!そんなことより早く始めようよッ!」
レヴィが肩に担いだバルフィニカスの刺々しい機構が開き、そこから青い魔力刃が姿を現す。
そんな彼女が八重歯を覗かせながらバルフィニカスを横薙ぎに振るえば、有り余る力が雷となって周囲にぶちまけられる。
「場所も用意してあげたしもういいよね?ずっと眠ってたから退屈だったとこに良さげな遊び相手が見つかった特別に待ってあげてたんだよ。だからさぁ!一緒に遊んであげるから…かかってこぉいッ!!」
レヴィは全身から迸らせる電流で眼下の海面を荒らしながら、フェイトに向けて斬りかかった。立ち上がる水柱を吹き飛ばしながらバルフィニカスが振り下ろされる。
「ッ!レヴィ!遊ぶのは、後じゃ駄目?」
「なんだよぉ!しつこいぞ!」
「今、キリエさんを中心にして事件が起きてて、たくさんの人が悲しんだり!苦しんだりするかもしれないの!私はそれを止めたくて…友達も大切な物を取られちゃってて……」
フェイトはバルフィニカスの柄にハルバードの柄を押し付けるようにして進撃してくるレヴィを押し返しながら、自身の想いを打ち明け、彼女に制止を促す。
「僕は王様に君らをやっつけて来いって言われてるんだし、大体!他の人が困るって至って…」
両者の得物が火花を散らしながら何度もぶつかり合う…
「ボクが知らないヒト…だし、ねっ!!」
レヴィはフェイトの意見を一掃し、バルフィニカスを大きく振るえば魔力刃の部分が高速で射出される。
斬撃魔法の様相を呈しているが、蒼月烈火の巨大な斬撃とは違い、ブーメランのように回転して迫る三日月は、フェイト自身が使用する〈アークセイバー〉、〈クレッセントセイバー〉に近い軌道を描いて宙を舞ったかに見えたが、中空で刃が幾重にも分裂した。
「これはッ!」
フェイトは容姿だけならず戦闘スタイルも似通っていたレヴィが撃ち放った自身にはない標的を追う無数の刃に驚いたような表情こそ浮かべたものの、周囲を取り囲む攻撃に対しての対処法はこれまでの戦いで心得ていた。
ハルバードを振りかざし、身体に迫る物から順に対処していく。振り下ろし、薙ぎ払い、残りの魔力刃を振り切るように加速しながら高度を上げる。
「はぁっ!!」
自身を追尾してくるように誘導した魔力刃を身体を回転させる勢いを乗せた横薙ぎの一閃で全て斬り払い、華麗に宙返りを決めて高速機動から脱した。
「おぉ~っ!!やるじゃん!」
レヴィは自身の魔力刃を全て撃ち落として見せたフェイトに対して表情を綻ばせている。
そんな彼女の楽し気な様子からはキリエの様な鬼気迫った物を感じ取ることはできない。戦っているフェイトや周囲の物に一喜一憂している様子は純粋にこの状況や戦闘を無邪気に楽しんでいるようにさえ思えるものであった。
戦いを楽しむこと自体は悪い事とまでは言い切れないし、フェイト自身も魔法技術の向上やなのはやシグナムとの模擬戦に関していえばレヴィと似たような思考を持っている。
それでも、フェイトにはレヴィに伝えたい事があった。
「レヴィがさっき言ってた事…確かに困る人は貴女にとって関係のない人かもしれない。でも、その人がレヴィにとって大切な人になるかもしれないよ?」
自身の母---プレシアと使い魔のアルフ、今は亡き師であるリニスと愛機のバルディッシュ以外の全てが有象無象であった、かつての自分…
ある指令を受けて降り立った世界で1人の少女と巡り合い、自身の根幹ともいうべき出来事と向かい合う事になり、大きく傷付き、失った物もあったが大切な絆をいくつも紡ぐことができた。
異なる世界、異なる文明、異なる考え方…
それぞれの生き方が違うのは当たり前で相容れない部分もあるのかもしれない。
しかし、そんなものを超えて紡がれた絆が、分かり合えた想いがあることを自身でも経験し、いくつも見て来た。それを知っているからこそ、他者の理想や想い、正義といった物をどうでもいいことだと、いとも簡単に否定して斬り捨ててしまうことが悲しく思えたのだろう。
「むむぅ…その発想はなかったなぁ。言われてみるとボクも大切な人が困るのは困っちゃうねぇ」
レヴィは空中で器用に胡坐をかきながらフェイトの言葉にようやく関心を示し、何かを考えこむような表情を浮かべている。フェイトの真摯な思いが通じたのか、自身の戦う理由に思うところがあったのかは定かではないが、とにかく彼女の胸に響く何かがあったようだ。
王様---ディアーチェからの指示は絶対だが、フェイトの言うことも決して間違っていないと感じ、僅かに瞳が揺れる。
「そうだよ!だから、誰かに命令されたりしても無差別に力を振るって物を壊したり、他の人に迷惑をかける悪いことはしちゃいけないんだ!!」
フェイトは動き回っていたレヴィが脚を止めて話に関心を示してくれている為、自分の想いを伝えようとするが…
「っ!?…ちょいまち!」
「え…?」
「ちょい待ちだよ、フェイト!それってさぁ…ボクらの王様を悪い人って言ってるの?」
それを伝えようとしたフェイトであったが先ほどまでとは明らかに違うレヴィの硬い声音に遮られる。
変化を感じ取ったフェイトの眼前には俯きがちではあるが全身から稲妻を迸らせながら怒気を滲ませているレヴィの姿があった。
「え…いや、ちがっ…」
フェイトは慌てて誤解を訂正しようとするが豹変したレヴィを前にうまく言葉が出てこない。
管理外世界での許可なき魔法行使、殺傷設定の使用、大量破壊行為に違法渡航者への助力…悪いことを上げればキリがないし、それを止めて欲しい気持ちは本物だ。
だが、あくまでそれは危険行為に対してであって、会ったこともないレヴィが言う〈王様〉という人物に対しての物ではなかった。
改めて制止を促すフェイトを尻目に、敬愛する己が王を侮辱されたレヴィの怒りは臨界点を超え、説得にも対話にも耳を貸すような状態ではない。
フェイトの事を完全に倒すべき敵だと認識し、その言い分を斬り捨てるかのようにバルフィニカスを宙に翳す。
「王様はこの世界でたった一人、この人について行くって決めた人なんだ!その王様を悪い人だとかいう奴は---」
レヴィの激情を表すかのように周囲に弾けるスパークが勢いを増し、その手のバルフィニカスが姿を変えていく。
基本形態である戦斧〈クラッシャー〉、先ほど魔力刃を撃ち放った薙刀形態〈スライサー〉…そして、第3形態が姿を現す。
展開されていた魔力刃が引っ込んで、円型の両刃が形成され、破壊と火力に特化した大戦斧とでもいうべき風貌の〈ギガクラッシャー〉だ。
「---ボクがこの手でブチ転がすッ!!」
レヴィは自身が慕う王を穢された怒りに震え、先ほどまでの戯れとは一転、本気でフェイトを潰しにかかる。
フェイトは答えを急ぎすぎ、選択を誤ったことにより、この状態から対話での解決は望めないであろうことを痛感しているが、せめて先ほどの発言の誤解だけでも解こうと口を開こうとしたが、眼前を横切ったバルフィニカスによって遮られた。
先ほどのディアーチェへの発言の意図がどんなものであったにしろ、自分の敬愛する大切な人を貶されたことには変わりない。
だが、今までの語らいからもフェイトの言うことが全て間違っているとも思えない。
しかし、そんなものは今のレヴィにとって何の価値もない物であった。
これから先、誰に出会ったのだとしても、大切な人が増えたのだとしても
「王様をDISる奴は悪い奴!僕はそのくらいシンプルでいいって、シュテるんが言ってくれたもんねっ!!」
自身にとっての大切な味方を守ってそれ以外を全て倒す。
戦う理由など初っ端から決まっている。
それ以外に考えるべきことなどないのだから…
「レヴィ!私は…!」
「さっきから!うっ、さい!なぁ!!」
どうにか食い下がろうとするフェイトであったが、レヴィは最早話すことなどないと言わんばかりに力任せに彼女の身体を吹き飛ばす。
怒りに身を任せて本能のままに突っ込んでくるレヴィの動きはセオリーが通じず、読みづらいことこの上なく、子供の癇癪のような乱暴な攻めであるが一撃一撃に込められている暴力的なまでな力は十二分に脅威となり得るものであった。
大戦斧というバルフィニカスの形態上、攻撃が大振りとなっており、防戦に徹すればやられこそしないものの、フェイトは苛烈な攻めを前に何度も弾き飛ばされ、時には客席や壁に叩きつけられて動きを鈍らせてしまっている。
「がっ…ぐっ!」
再び客席に向けて弾き飛ばされながらも空中で体勢を立て直そうとするフェイトであったが視界の端にバルフィニカスを横薙ぎに振るうレヴィの姿が映る。
刀剣と比較すれば多少、柄が長いとはいえ自分がいるのは大戦斧の間合いの外…しかし、フェイトの身体は横方向へと大きく打ち飛ばされることとなった。
フェイトは体の側面に咄嗟にハルバードを滑り込ませたことにより致命傷こそ免れたものの、空中を吹き飛ばされており、更に逆サイドから青い光が迫る。
レヴィの攻めは留まることを知らない。
フェイトに回避軌道を取らせる間もなく、空中で右から左に、上から下に、下から上にと何度も彼女にバルフィニカスを叩きつけている。対するフェイトは魔力障壁と得物でどうにか防いでいるものの、防戦どころか一方的に攻撃を受け続けてしまっていた。
レヴィとフェイトの魔導師としての技量の差に大きな開きはない。それどころか総合力や経験値で言えばフェイトに分があると言っていいかもしれないが、現在の戦況はレヴィがフェイトを完全に圧倒している。
フェイトは僅かに気持ちが揺らいでしまっており、レヴィは自らが戦う理由を明確にしている。加えて、非殺傷と殺傷設定の魔法の撃ち合いという差はあるが、何よりの違いは両者のデバイスであった。
現在、フェイトが装備しているのは使い慣れた愛機〈バルディッシュ・アサルト〉ではなく試作型の電磁装備の中で戦闘スタイルに最も適したものをチューンアップしたものである。
フォーミュラ使いと機動外殻に通常の魔法が効果的でない為に、各員は装備の改修を行ったが強度も低く、扱いの難しいインテリジェントタイプ…それもワンオフ機であるレイジングハートとバルディッシュはクロノのデバイスである〈デュランダル〉という例外を除けば、調整の難度も他のタイプの比ではなく、実戦配備に間に合わなかったのだ。
だが、なのはのレイジングハートは待機状態で戦闘には直接参加せず、
しかし、フェイトは高機動型の魔導師であり、砲撃型のなのはとは勝手が違う。戦闘に耐えうるレベルの完成度がなければデバイスを実戦投入する必要はないし、外付け装備を持ち出すのなら尚更だ。
実際、バルディッシュで行使する今までの魔法は新たな敵に対して有効ではなく、ハルバードを装備したこと自体は、今回の事件に関しての判断としては間違っていないと言える。
だが、あくまでそれは対フォーミュラ、機動外殻を想定しての話だ。相手が魔導師…それもAAA~Sランク相当の実力を持つであろう現状においては新型装備が悪手となってしまっていた。
ハルバードではこれまでの大鎌形態やフルドライブの大剣形態といった機構変化は行えず、それに追従する魔法も使用不可能となっており、切れる
加えて、長年使い慣れたインテリジェントからストレージへのタイプ変更や機体重量の変化…これまでとは僅かにズレが生じてしまっているのだ。
だが、フェイトは新デバイスの性能を十分に引き出しているし、ハルバードの性能に問題があるというわけではない…
戦う相手と状況が悪かった…ただ、それだけであろう。
フェイトは悪い状況を変えようと動きを見せようとしたがレヴィのバルフィニカスによって防御の上から力任せに吹き飛ばされ、水面に設置されている浮島に叩きつけられた。
「か…はっ!」
叩きつけられた衝撃で思わず息が止まり、立ち上がることができない。しかし、這ってでも離脱しなければ…その思いがフェイトを突き動かす。
高機動型の魔導師に対して一瞬でも隙を見せれば命とりとなる。そのことを誰よりも分かっているのはフェイト自身であるためだ。
だが、残酷にも青い稲妻が迸る…
レヴィの手にあるバルフィニカスが巨大な大剣へと姿を変えている。長いリーチを生かして、間合いの外からフェイトを迎撃したのはこの形態であろう。
フルドライブモード〈ブレイバー〉…レヴィの切り札だ。
ブレイバーは一見してフェイトのフルドライブを思わせる形態であるが、斬撃を主とする〈ザンバーモード〉とは違い、刃に鋭さこそないが標的を叩き潰して捻じり切ると言わんばかりに力が結集しているのが見て取れる。
「蒼破---極ッ~光!斬っ!!!!」
そして、青雷の大剣が振り下ろされる。
「どっ!せぇぇぇぇいっ!!!!」
雄叫びと共に真上から迫る青い光がフェイトを呑み込み、水面を割り、戦場となっているステージを破壊し尽くした。
最後まで読んでいただきありがとうございます。
1話で収めるつもりが全く収まりませんでした。
因みに今まで伝えたかどうかは分かりませんがマテリアルズの外見年齢はなのはらと同じ14~15歳です。
皆様の感想が私の原動力となっていますので頂けましたら嬉しいです。
では!
ドライブ・イグニッション!