魔法少女リリカルなのは Preparedness of Sword 作:煌翼
全ての戦いが終結した。
フェイトがこの事件において暗躍していた首魁フィル・マクスウェルを拘束しようとした時、不敵な笑みと共に言葉が紡がれた。
―――空をご覧……そうすれば分かるだろう
―――君達の敗北がね
オープンチャンネルで中継された通信を聞き、戦域の面々は空を見上げた。
「なんか、変や。あんな明るい星が……」
真っ先に声を上げたはやてに合わせて誰しもが空に瞬く不自然な星の光とその真意に気づき始める。
はやての放った〈ウロボロス〉の余波が引き次第、残された量産型への対処を行うのみだと僅かに気が緩んでいた司令部の面々の表情が凍り付き、戦慄が走る。
軌道上に浮かぶ謎の建造物……それは悪足掻きというには些か冗談が過ぎていた。
「まだ……こんなものを残していたなんて!」
作戦中は感情的なることが少ないレティですら思わず歯噛みした。
そこに在ったのはこの街一帯を吹き飛ばすことのできる威力を誇る〈衛星砲〉であった。
「ここに来る前に
「そんなことをしたら貴方も死にますよ!?」
フェイトは全てを失って自暴自棄になり、皆を巻き込んで死ぬ気なのかとマクスウェルに詰め寄るが、返答は否であった。
「死なないのさ。少なくとも私の
マクスウェルはまるで自分の命などいくらでも替えが効くと言わんばかりに淡々と言葉を紡ぐ。時間をかけさえすれば何れは元通り……今を生きる事にすら興味を抱かず、自分の目的を探求し続ける狂人にフェイトは言葉を失っていた。
「―――取引といこう」
そんな様子などお構いなしにマクスウェルは時空管理局に取引を持ち掛けた。
「今、
「ッ……!」
脳裏に浮かぶのは海鳴で待つ親友と自分を抱き締めてくれた母親の姿。そして、不機嫌そうな表情で自分の隣を歩いていく少年。
歯噛みするフェイトに本部からの緊急通信が飛びこんで来た。イリス群体が施設の一部を改造し、造り上げられていた打ち上げ台から小型のロケットが発射されたというものであった。
「さて、どうするね。
現場を重苦しい沈黙が包み込む。相手側の主戦力を全て撃破し、機動外殻もイリス群体も封殺した。未知の力を扱う相手と全てのイレギュラーにも対応してみせた管理局側の動きには非はない……戦闘には……勝負には間違いなく勝利したといっていい。
だが、最後の最後で試合に負けたといったところであろうか。
〈オールストーン・シー〉で活動していたイリス達の目的が素材収集であるという先入観に囚われ、製造プラントの建設等で施設に手を加えるという行為自体に何の疑問も抱かなかった事、この施設自体が
これに関しては管理局側の敗北と言って差し支えないだろう。しかし、対抗策が全くないわけではない……だが、建設的な方法とは言えない。
結界班により町全体を防御魔法で覆い尽くし、その間に魔導師部隊による強襲を仕掛けて衛星砲を破壊するという手段が最も現実的であろうがそれも不確定要素が多すぎる。
軌道上の衛星砲まで自力で辿り着いて、宇宙空間での超高高度戦闘が可能な魔導師はこの中でも極一部だ。
無論、転送魔法を用いるという選択肢もあるが、これを行えるのはシャマル、アルフ、ユーノの何れかになるだろう。だが、彼らの本分は支援であり、瞬間火力には些か不安が残る。また、地表を守るのならば、彼ら三名とザフィーラは欠かせない戦力となるため、出来る事なら
加えて、どんなに優れた使い手であったとしても転送直後には僅かな硬直時間がどうしても出来てしまうため、衛星砲に自動迎撃機能が搭載されていた場合は、無防備な所を狙い撃ちにされてしまう可能性が非常に高いと言える。
それに、衛星砲の射角も次弾発射までの時間も不明だ。一度防げても海鳴市以外を狙われてしまえば、そこで終わりであるし、万が一連射可能であれば、最早手詰まりだ。
正に八方塞がり……
だが、皆の絶望を振り払うかのように少女の声が響き渡った。
《みんなゴメン、勝手に空に上がった!》
《なのは、何を!?》
《皆さん、申し訳ありません、私も共に上がらせて貰ってます!》
《アミタさん!》
なのはとアミティエの独断先行にフェイトを始めとした面々が驚愕の声を漏らす。誰もが無茶を制止させようとするが……
《勝手は承知ですが、私達ならまだ追いつけます!そもそも、所長が持ち掛けた取引は成立していないんです!》
アミティエの言葉に皆が耳を傾ける。
《今の所長が外部と通信できるような状態ではありませんし、ましてや封鎖結界によって範囲外にある衛星砲に向けて、発射指示を出す事なんで出来ないんです!そして、私達が追っている小型飛行艇には恐らく彼の記憶データが積まれています。それが軌道上のイリスに届いてしまえば、それこそ、本当にどうしようもなくなる》
《だからゴメン!フェイトちゃんは所長さんに悟られないように、そのまま話してて!!》
マクスウェルは〈ブラストカラミティXF〉によるダメージによって通信機能を破損しているようであり、そもそも彼が〈イリス群体〉を結界の外部へ差し進めていた根本は外部との通信を遮断している関東全域を覆う封鎖結界から脱出する為であったのだ。
《危険だ、二人共戻れ!!僕が変わる!デュランダルなら高高度戦闘も―――ッ!!》
現場指揮を預かるクロノが独断先行など許すはずもなく、改めて制止を呼び掛けるが……
《私達の方が、速く飛べる!!》
なのはとアミティエは聞く耳を持たないとばかりに更に速度を上げた。残念であるがこの場にいる面々であれだけの速度に並走できる者がいないことも事実であった。
単純な速度のみであればフェイトの〈ソニックフォーム〉でも希望が見えるかもしれないが、あくまで戦闘中のみの高機動形態であり、軌道上の宇宙空間で防御を捨ててまで機動力にリソースを割く形態は好ましいとは言えないだろう。
キリエやイリスの〈システム・オルタ〉は制限なしでの出力を強化であるため、速度は申し分ないが長時間の移動には適していない。
機動力、超高高戦闘に耐え得る頑丈性、瞬間火力……その条件をクリアしているのはこの二人だけなのだ。
様々な要因はあれどこの二人に託す以外道はない。
《大丈夫です!逆転なんかさせません。協力して撃ち落としてきますよ!》
《軌道上の衛星砲もしっかりと!!》
地上に残る面々に言葉を残し、制止の声が消えた二人は速度をさらに高めながら
ここまでの意志を見せつけられてしまえば、地表の面々も腹が座ったとそれぞれが成すべきことの為へ全力で当たり始めた。
「で、どうするかね?」
「……本部と相談して検討を―――お兄ちゃん?」
戦場に立つだけが戦いではないと自らの
「現場指揮官のクロノ・ハラオウンだ。彼女に変わって僕が貴方との交渉をさせて頂くが構わないな」
「私は誰でも構わないよ。随分若い指揮官殿だね」
クロノはフェイトの代わりに交渉人を務めると名乗り出て、マクスウェルもそれを了承したようだ。
『ここは僕が引き受ける。フェイトは―――』
フェイトはクロノの指示に頷きながら、静かにこの場を去って行った。
なのは達が今も戦いへ臨もうとしているように、彼らも彼女らを支えるために再び動き出していく。
赤と桜色の光は雲を超え、空を超え、成層圏を超え、更に高い宇宙の果てまで昇り詰めようとしていた。護るべきものと皆の想いを背負いながら―――
二人の眼前に小さな光が飛びこんで来た。
「―――射程距離です」
アミティエは第一目標を撃破すべく、〈ヴァリアントザッパ―〉を狙撃銃形態へと換装し、狙いを定める。
既に彼女らの速度は小型飛行艇を凌駕しており、最早、撃破は容易いといった状況だ。アレに積まれているのはこの事件の、そして惑星再生委員会に多くの悲しみを齎した
こんな状況だからか引き金に指をかけたアミティエは複雑な思いに駆られていた。
―――四十年前。
もしもエルトリア政府が惑星再生の望みを捨てていなかったのならば―――彼は今も、イリスやユーリ、仲間達と共に〈エルトリア〉の為に働いていたのだろうか……
IFの物語を想像することに意味はないと知りながらもそう思わずにはいられなかったのだ。
どんな思惑があったとて、彼の惑星再生に対しての功績は決して小さなものではない。
だが、これだけの事件を起こした彼に対して同情すること自体が被害者や地球の人々へ申し訳が立たないだろう。しかし、アミティエは彼に対して同情の念を感じざるを得なかった。嘘で塗り固められたのだとしても彼が惑星再生のために費やした時間は決して無駄ではない。
グランツとエレノアがそうであったように―――自身とキリエがそうであったように―――
自分の先達の命を奪う代価として、彼の想いを引き継ぐ。惑星再生を成し得て見せるのだと弔いと決意を以て引き金を引いた。
深紅の弾丸は狙いすましたかのように小型飛行艇を撃ち抜いて小さな星となる。
だが、それと同時に天空から差し込んだ一筋の光がアミティエの身体を貫いた。
「ッ、……ぁ?―――が、ぁっ!」
アミティエが撃ち抜かれたと共になのはは弾かれたように飛び出した。彼女を抱きかかえ、前方に〈独立浮遊シールド〉を回して防衛行動に入る。
そんな二人に先ほどアミティエを撃ち抜いた翠銀の閃光が降り注ぐ。その場から動かずに必死に耐え続けるなのはであったが程なくして砲撃は止んだ。クロノの想定通り、どうやら〈衛星砲〉に近づくもののみを排除するという役割を持つ
近づく標的を排除する、それだけならば……
「―――アミタさん。ここから先は任せてください」
この高度からでも自分が注意を引くように衛星砲に近づいて行けば、アミティエを退避させられるということだ。戦えない彼女をこれ以上、傷つけずに済む。
「なのはさん……ですが、私はッ!」
アミティエの苦悶と悲痛が混じり合ったような表情に僅かに揺らぐなのはであったが、断固として譲る気はなかった。
「このままゆっくりと降りて行けば、多分大丈夫ですから……」
その言葉を受けたアミティエの表情になのはの心にも痛みが走る。だが、慰めもしない、同情もしない。彼女には返るべき場所と家族が、救わなければならない
彼らの下へ彼女を返すこともなのはにとっては譲れない一線であるのだから……
アミティエが悔いたのは、彼女の身を危険な戦いへ向かわせてしまう事、戦えなくなった自分自身への叱責だろう。自分より年下で体も華奢な少女一人に地球とエルトリアの運命を背負わせてしまうのだから……
だが、最早どうすることもできない。
刻限は迫っている。今、行動しなければ最悪の事態となってしまうのだ。
迷うことは許されない。引き留める力も覚悟も持ち合わせていない。
「なら……せめてこれを……」
アミティエは手にしていた〈ヴァリアントザッパ―〉をなのはへ差し出した。余分な荷物となり得るかもしれないが、危険地帯での活動を想定した機構が備え付けられている為、万が一の際に彼女の助けとなる事であろう。
〈アクセラレイター〉の領域まで踏み込んだ彼女なら、武装としての使用も可能であろうし、
「分かりました、お預かりします―――
彼女の心に響いたのかは定かではないが、少なくとも理解を示してはくれた。
「ええ……絶対の
だからこそ、アミティエは一つの約束を取り付けた。素直で優しい彼女に対して卑怯な気もしたが、自らの本音と彼女を待つ者達の想いをありのままに伝える。
「はい!行ってきます!!」
花が咲いたように満面の笑みを浮かべて天空へ舞い上がって行った白い天使の背を見送るアミティエの表情は焦燥と怒り、やるせなさと申しけない気持ちが入り混じったようなこれまでと違い、憑き物が落ちたかのように晴れやかであった。
自分の出来る事をやり切ってしまったと悟ったのだろう。白い背中に希望を託し、アミティエは静かに降りて行った。
なのははアミティエと別れ、浮足立っているような落ち着いているような不思議な感情を抱きながら一人軌道上を目指して飛び続けていた。
愛機との会話と楽しみながら、思わず笑みを零す。
昔、転んだ自分を起こしてくれた少年に言われた気がした。
―――危なっかしくて見てられないな
当時は気にもしていなかったが、それ以来、彼に手を引かれる事が増えた様に思える。一人で歩くだけでもたどたどしかった自分が皆の想いを背負って、これほど高い空を飛べるまでになった。
それがどこかおかしかったのだろう。
なのはは天から降り注ぐ光を
そして―――彼女は其処へと辿り着いた。
軌道上では小さな建造物の前に佇む女性と白い少女が対峙している。
アミティエと自身に攻撃を仕掛けてきた相手であるが、なのはは武器を構えずに静かに語りかける。
「初めまして―――武器を降ろして、少しお話しできないかな?」
なのはは戦闘が避けられないこの状況においても言葉を交わそうとしていた。綺麗事だということも偽善だということも分かっている上で、それでも戦わずに済むのなら―――
なのははずっとそうしてきたのだ。魔法に出会った時から変わることなく貫いて来た。
だからこそ、今もこうして誰かの想いと向き合っている。目的や望み、考え方の違いからぶつかってしまうのだとしても、何も分からないまま、知らないままでいるのは嫌だから……
「――――――」
返答は無い。
言葉を話せないのか、それとも彼女自身の意志によるものなのか……
それは定かではないが、ただ一つ指し示られた現実は、ここから先はもう闘う以外に道はないということだけであった。
一瞬の静寂―――音のない宇宙空間で二つの砲口に光が灯る。
程なくして、二つの光が激突した。
なのはは激しい砲狙撃戦の中で目の前の女性に悲しげな瞳を向けている。目の前に居る固有型のイリスはこれまでの個体と違い、自我を与えられていないのだろう。どちらかと言えば、これまで何度か戦闘を行って来た〈ガジェット・ドローン〉に近いものを感じさせる。
衛星砲に迫る敵を排除するというただそれだけの為に行動していることが攻防の中ではっきりと感じ取れてしまい、それがどうしようもなく悲しい事だと思えたのだ。
戦うこと自体が虚しく、悲しい物だと判っている。きっと誰もがそうだ。それでも人は自分の心をぶつけ合う。
―――色んな場所で、色んな人が色んなことを考えていて……時々、こんな風に分かり合えずに、折り合えずにぶつかることがあって……
人は一人一人違う生き物だ。幸せ、悲しみ、愛、夢、希望、絶望……皆にそれぞれの形があって、誰もがそれを感じている。
自分と違う形を受け入れられず、自らを正しいと信じて押し付け合うから人々は今も尚、憎み合って戦わなければならないのだろう。
世界中にこんな矛盾と悲しみが溢れていて、憎しみの連鎖となって絡み合う。小さな一つ一つが、星全体を巻き込むまでの渦となる事もある。
―――戦って意志を通すなんて、本当は良くない……でも、戦わなきゃ守れないものもある!
自分の想いも守りたいものも、どちらも譲れないもので失いたくないものに他ならない。
―――守りたいもの、守れなかったモノを!私の背中にある
なのはの背には青い
なのはの放った砲撃と固有型の放った砲撃とが零距離でぶつかり合い、ストリーマの砲身が砕け、機体そのものが溶けていく。対する相手の主兵装もかなりのダメージを負ってはいるが、まだ使用可能なレベルを保っていた。
押し比べで敗北したのはなのはであったのだ。
固有型は表情一つ変えることなく、主兵装が大破した相手に砲身を向ける。だが、今のなのはにはまだ攻撃オプションが残されている。
アミティエから託された〈ヴァリアントザッパ―〉を突き出すように撃ち放った。
結果は両者の手に合った武装が蒸発するという痛み分けに終わり、共に勢いに負けて吹き飛ばされた。これで、武装保持という優位性を示すことが両者ともに出来なくなったのだ。
しかし、無手同士となってしまえば、圧倒的に優位に立つのはイリス群体の方だ。武装を失った今、なのはは普通の女子中学生でしかないのだから……それに引き換え、固有型は地球人の十倍以上の筋出力と身体スペックを誇っている。勝ち目などあるはずもない。
子供相手にも慈悲の一つも見せない剛拳を向けられても尚、なのはは退くそぶりを見せない。
なのはの足元で桜色の翼が大きく羽ばたいた。
この事件で〈レイジングハート〉の改修を行ってから使わなくなった、慣れ親しんだ飛行魔法……それが再びなのはを前に進ませるための力を与えている。
なのはは推進力をフルに使って、固有型の頬へ右の拳を見舞った。右手が軋み上がり、鈍い激痛が襲い掛かるがそんなものはお構いなしだ。
そして、迫り来る拳を左腕で受け止めた。
魔法は誰かを傷つける事も何かを壊す事にも使えてしまう。それは、変えようのない現実だ。だが、それだけではない。
それこそがなのはにとっての〈魔法〉という力であり、その意味となる。
「私達の魔法は、その為にあるんだ!!」
護る為の力、想いを伝えるための力―――そんな覚悟を秘めた叫びと共になのはは最後の砲撃を撃ち放つ。
彼女が初めて使った攻撃魔法……
高町なのはの代名詞ともいうべき魔法を……
光り輝く桜色の極光は底知れぬ悪意を照らし、今度こそ全てを吹き飛ばした。
空を超えた宇宙空間で桜色の星の瞬きが終わると、そこには衛星砲の残骸が漂っていた。
砲身と制御機構を失ったなのはは左の掌から〈ディバインバスター〉を撃ち放ち、固有型の群体イリスごと衛星砲を破壊してみせたのだ。
「ぅ…ぅぅ、ぁ……」
なのはは荒い呼吸と共に刹那の交錯から意識を呼び戻した。
周囲は自分以外に誰もなく、音一つ聞こえない静寂に包まれていた。
衛星砲を破壊し、脅威を払い除けたにもかかわらず、なのはの表情は優れない。そこに在るのはこの事件への……自身が消し飛ばした固有型への追想か……
だが、この一瞬の追想、彼女の優しさは皮肉にも自身に危険を齎すこととなった。
冷たい鉄の腕によって羽交い絞めにされて、拘束されたのだ。僅かな隙を突いて奇襲を仕掛けて来た固有型によって……
全身をスパークさせ、今にも止まりそうな状態であるにもかかわらず、顔色一つ変えていないその様子から、少なからず痛覚を持っている他の群体イリスでは不可能な奇襲だったと言えるだろう。
だが、その拘束はなのはを倒すためのモノではない。
人口肉が抉れた顔部で剥き出しになっている固有型の瞳が何かを刻むように赤く点滅していた。
なのはも逃れようと足搔くが、単純な腕力ではどうやってもかなうはずもなく……
勝敗を歪ませ、戦いの決着を告げる一つの星が光り輝いた。
本部から現場各員へと軌道上の衛星兵器消失の報が飛びこんできた事、先ほどまで降り注いでいた翠銀の光の気配が消えた事から、彼女達が役目を果たし、街の命運を守ったのだとその場の誰もが理解した。
だが、まるで世界から取り残されたように空を見上げている者達がいた。
「……なのは」
ユーノとリンディはまるで何かを願う様に空の彼方を見つめている。
ヴィータ、シグナムもクロノも、エイミィらも彼女と親しい者達は皆一様に空を見上げているのだ。誰しもの脳裏に最悪の結末が過るが、それを否定するように彼女の無事を案じている。
しかし、彼女が戻って來ることなく、無情にも時計の針は進み続けていた。
最後まで読んでいただきありがとうございます。
デトネのBDの影響か僅かではありますが、なのはSSが増えたような気がしなくもないですかね。
では次回お会いいたしましょう!
ドライブ・イグニッション!