魔法少女リリカルなのは Preparedness of Sword   作:煌翼

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忍び寄る悪意

 クロノから知らされた衝撃の情報、かつてこの地球で起きた〈PT事件〉で事件の中心にあったロストロギアが次元犯罪者となった者たちによって持ち出され、この世界に持ち込まれたということであった。

 

「そ、そんな!?じゃあ早く探しに行かないと!」

 

 焦ったようになのはが発言した。目に見えて動揺しているのはなのはだけではない。フェイトやアルフも言葉にこそ出していないが相当なショックを受けている様子だ。

 

「分かってるけど少し落ち着くんだ。ジュエルシードに関してはこの場にいるみんなに対して改めて説明する必要はないと思うが、以前の時と違って今回は人間……それも魔導師の手に渡ってしまっている以上、こちらとしても慎重に動かざるを得ないんだ」

 

 なのは達はクロノに制されて多少ではあるが落ち着きを取り戻した。

 

「ヴォルケンリッターの殆どが不在とはいえ、ここにいる我々は管理外世界にたまたま留まっていた魔導師としては明らかに過剰戦力だ。今回の一件を起こした連中と戦っても1対1で負けることはほぼないだろうが相手の人数が非常に多い。1人でいるところを複数で襲われる可能性もあるし、下手に追い詰めすぎると連中が盗んだロストロギアで何をしでかすかわからない」

 

 この地球を拠点として管理局員として働いている魔導師は管理局内を見渡しても戦闘力という面においては異常なほど充実しすぎている。

 

 Sランク魔導師であるなのはとフェイト。個人でロストロギアと融合騎を保有しているはやてに歴戦の騎士であるヴォルケンリッター。クロノも魔導師としてトップエース級の実力を誇り、徐々に前線に出る機会が減っているアルフも優秀な使い魔だ。リンディも滅多に戦闘をすることはないがその腕前は相当なものであろう。

 

 元局員達はこれまで管理局の部隊に追われ続け、どうにか管理外世界に逃げ込んだのだろうが、その地球には高魔力反応が多数あった。下手にこの世界から脱出しようとしても現地に留まっていた魔導師やこの辺りをまだうろついているであろう管理局に察知されて捕らえらえる可能性が高まるだけだ。

 

 現在、犯人たちはかなり切羽詰まった状態であろう。危険なロストロギアを持った連中が追い込まれた反動で何をしてくるかわからないということだ。

 

「とはいえ!このまま手を拱いているわけにはいかない。市街地でジュエルシードを発動されようものならどれだけの被害が出るか分からないからな。奴らの持ち出したジュエルシードは6つ、何としても回収する。そのため各2人に分かれて捜索に当たってもらうことにした」

 

 様々な可能性を述べてきたクロノだったが沈んでいた周囲の重たい雰囲気を取り払うように咳払いをして作戦を伝えた。

 

 なのはとクロノ、フェイトとアルフ、はやてとザフィーラという組み合わせで捜索することとなった。

 

「みんな気を付けてね」

 

 ハラオウン家からそれぞれの組み合わせで外に出ていく面々にリンディが心配そうに声をかける……

 

 

 

 

 魔導師達が新たな事件に直面している時、聖祥中学でもある事件が起きていた。

 

 

「……蒼月君、今日お昼どうかな!?」

 

「駄目よ!私たちと一緒に食べましょ?」

 

 時間はお昼時、転校してきて2日間はなのは達と昼食をとっていた烈火だったが、今日は隣に座っていたフェイトが留守のため、ここが好機と言わんばかりにクラスの女子生徒のグループが押し寄せていた。

 

 転校してきて3日目の烈火だが……単純に転校生への興味、高町なのはとの抱擁に、初日の放課後にはフェイト・T・ハラオウンと手を繋いでいた姿が多数の生徒に目撃されている上に昨日の体育の授業のこともある。加えて聖祥中学でも有名な5大女神と共に過ごしていた男子生徒というだけあって、聞きたいことは山積みでなのであろう。

 

「ごめんなさいね。コイツはアタシと食べることになっているから借りていくわ」

 

 反応に困っていた烈火の隣にいつの間にか立っていたアリサが女子生徒たちに対して言い放った。女子生徒たちは残念そうに諦めがついていない表情で散っていく。

 

「悪い、助かったよ」

「ふん!すずかが待ってるからさっさと行くわよ……今日はなのはとはやてもいないしね」

 

 礼を述べる烈火とそっぽを向くアリサ、どこかで見たような光景だ。

 

「フェイトだけじゃなく、あの2人も休みなのか?」

「そうよ……その、こっちもあんまり聞かないであげて」

 

 烈火とアリサは2組の教室の入り口付近へと向かって歩いていき、すずかと合流して3人で屋上に向かった。

 

「蒼月君ってなのはちゃんと昔会ってたんだよね?その頃のお話とか聞きたいな」

 

 3人で昼食を取っているとすずかが興味津々といった様子で烈火に問いかけた。

 

「それはアタシも気になるわね」

 

 アリサも便乗するように烈火へと視線を向ける。

 

「聞いてもそんなに面白い話は出てこないぞ」

 

 そんな2人の様子にため息をつきながら、烈火は公園で転んだなのはを助けたことやその後は毎日のように遊ぶようになったことを伝えた。

 

「そうだな……アイツはオドオドしてていつも下ばっか向いていたな。何をするにもこっちに確認をとってくるし、すぐ泣きそうになるし、今思えば面倒くさい奴だったかもな」

「あはは……」

「な、なかなか辛辣ね。アタシの知ってるなのはとはだいぶ違うわ」

 

 アリサとすずかは烈火の語る幼少のなのはの様子に対して、最初の幼馴染みからの中々厳しい評価に驚きながらも相槌を打っている。だが、言われてみればなのはは自分から何かをしようとはあまり言い出さないタイプであるし、小学3年の時に魔法と出会うまではどこか自信なさげであったなと思い返す。

 

「でも、困っていても向こうから助けを求めてくることは殆どなかったし、泣きそうになりながら自分で何とかしようとしてたのを見て放っておけなかったのかもな」

 

 烈火は当時を思い返しながら感慨深そうに呟いた。

 

「ふぅん。久々に会ったなのははどうだったのよ?」

 

 アリサはそんな烈火の様子に目を細めて聞き返した。

 

「目付きが違うというか雰囲気が変わっていたというか正直、別人だと思ったよ」

「へぇ~そうなんだぁ……私たちはね……」

 

 烈火に対してすずかも自分たちの出会いを語る。初等部に入学して直ぐに自分のカチューシャを取り上げたアリサと取り返そうとしたなのはが大喧嘩したこと、結果的にそれが切欠で仲良くなったことなど……

 

「……何こっち見てんのよ!」

「いや、別になんでもない……バニングスがいじめっ子だったとか思ってないから大丈夫だぞ」

 

 なのはと文字通り拳で語り合ったこと、すずかに対して行ったことなど自身の黒歴史を掘り返されたアリサは頬を紅潮させている。若干、意味深な表情をして見つめてくる烈火に対して睨み返すアリサだがいつもの迫力は皆無であった。

 

 

 午後の授業も終わって部活動に向かう生徒たち、部活に所属していない烈火は鞄を片手に教室から退出した。アリサ、すずかと共に昇降口に向けて歩いていると目の前から見覚えのある人物が歩いて来る。

 

 

「君たちは相変わらず暢気そうな顔をしているな」

 

 転校初日に烈火がフェイトに校内の案内をされていた時に顔を合わせた生徒———東堂煉と黒枝咲良であった。

 

「……アンタの気取った顔よりマシだと思うけど?」

 

 煉の一言にアリサの眉が吊り上がり、すずかも煉を感情の抜け落ちたような瞳で見つめている。まさに一触即発という感じだ。

 

「ふん、まあいい……いいかい、蒼月君。今回は大目に見たが余り調子に乗らないほうがいい。君程度の存在が女神である彼女に近づくなど分不相応にもほどがあるのだからね。では……」

「……失礼します」

 

 煉は自身に嫌悪感を現している2人の少女には見向きもせずに烈火に対して意味深なことだけを言い残して去った。後ろに控えていた咲良は会釈をし、煉の後を追うように歩いて行く。

 

 

 

 

「ったく!毎度毎度何なのよ!!」

「そうだね……というか蒼月君は東堂君とは知り合いなの?」

 

 昇降口に辿り着いたものの、靴に履き替えたアリサが癇癪を起している。原因は先ほどの煉とのやり取りであろう。すずかもかなり不機嫌そうだったが、それよりも先ほど煉が烈火の事を呼んでいたことが気になったのか、疑問を投げかける。

 

「ああ、初日の放課後に顔を合わせた程度だが一応な。フェイトに言われた通り、余りお近づきにはなりたくない感じだな。言っていることの意味もさっぱり分からなかったし」

 

 2度目の邂逅であったが烈火の中では既に煉に対しての印象はあまりよろしくないようだ。

 

「全くよ!フェイトに付き纏ってる変な奴なんだから……あ、迎えが来たようね」

 

 吐き捨てるようなアリサの様子から煉に対する評価の低さが伺える。

 

 校庭を抜けて歩いていくと駐車場には黒塗りの車体の長い高級車が停車していた。

 

「今日もアタシとすずかはお稽古ないし、送っていってあげるから乗ってきなさいよ」

「でも、昨日も送迎して貰ったし迷惑だろ?」

 

 昨日、怪我をしたフェイトを送っていく際に家が隣同士の烈火もバニングス家の執事の運転するこの高級車に乗せてもらっていたようだ。今回はフェイトを送った時のような特別な理由もないと遠慮をした烈火だったが……

 

「アリサちゃんは蒼月君ともっとお話ししたいからこうやって言ってるんだよ。早く行こ!」

 

 すると、すずかが烈火の背を後ろから押し始めた。

 

「す、すずか!!?アンタ何を言ってんのよぉぉ!!!!」

 

 顔を真っ赤にしたアリサが声を荒げたが、すずかは華麗にスルーして烈火を車に押し込んだ。にこやかな表情とは裏腹に女子とは思えない力で体を押されている烈火も内心、冷や汗をかいていたようだ。

 

 

 

 

「いい!?さっきすずかが言ってたことは間違いなんだからねッ!!」

「分かったからちょっと落ち着けよ」

 

 走っている車の中で吠えるアリサを宥める烈火とそれを楽しそうな表情で見ているすずか。この月村すずかという少女は意外とイイ性格をしているようだ。次第にアリサも落ち着きを取り戻し、また談笑し始めた時、異変が起きた。

 

「な、何っ!?」

「きゃぁぁぁ!!!??」

 

 大きな物音と共に乗っていた車が左右に大きく揺れ、車内を衝撃が襲ったのだ。アリサとすずかの悲鳴じみた声が響き渡る。その後、自動車のドアが吹っ飛び、車内にフルフェイスのヘルメットをした黒服の男が数名押し寄せてきた。その手には黒光りする鉄の塊が握られており、引き金には指がかかっている。

 

「動くな!」

 

 向けられた拳銃に対して身動きが取れなくなる3人。そしてアリサ、すすか、烈火の手首に灰色の光を放つ腕輪のようなものが出現して纏わりついた。

 

「……えっ、これって」

 

 この現象に心当たりがあるのかすずかが小さく呟く。

 

「対象の2名を確保。拘束しました。また、対象の2名と同じ学校のものと思われる制服を着ている少年1名も車内で確保しましたがいかがいたしましょう?……了解しました」

 

 フルフェイスの男は端末で誰かと通信している。

 

「3人とも運び出して撤収しろ!」

 

 端末を持っていた男の指示を受けた者たちに拳銃を突き付けられたアリサ、すずか、烈火は似たような様相をしている者たちが乗っている黒い車に押し込まれ、その場から連れ去られてしまった。残されたのは電柱に激突して運転席が潰れたボロボロの車だけ……

 

 

 バニングス家の車両が襲撃されてから十数分後……街を離れた森林地帯に突如として封絶結界が展開された。




最後まで読んでいただいてありがとうございます。
とうとうDetonationの公開日が決まりましたね!
今から楽しみでしょうがありません。

WSのなのはreflectionを購入したりもしまして1人で盛り上がっていました。
自分は決闘者ではありますがWSはコレクター専門なので実戦で使われることはないですけどねww

感想等ありましたら是非お願いします。
次回も読んでくれると嬉しいです。
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