ポケットでモンスターな世界にて   作:生姜

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1995/3月 プロローグ②

 

 

「ところで、ゴウとケイスケ。この後は空いてるか?」

 

「どうした。藪から棒に」

 

「藪からスティックー」

 

「それは古いなぁ。と、そうじゃなくて」

 

 

 只今、食事を終えたオレ達3人はプレイルームの端でマッサージチェアーに座っている。だからだろう。今言わないといけない事か? とか言いたそうな2人の態度は。

 だが、今でなくては駄目だ。俺は通信機を広げ、画面が見えるように突き出してやる。

 

 

「ハヤトからメールだ」

 

「お父様大好き委員長様からか」

 

「ハヤトー? なんの用だろー」

 

 

 2人の反応はそれぞれ。ハヤトはオレ達のいたトレーナーズスクール ―― キキョウシティのスクールの17期生の委員長を務めていた友達だ。

 キキョウジムリーダーである父を持つ、まぁ、言ってしまえばそこそこに偉そうな立場ではあるんだが……実際にはそうでもない。意外と砕けたヤツで、ここタマムシに進学した数名からの評判も悪くは無いし。

 ……悪くは無いが、ファザコンなのが玉にキズ。そんな所もまぁ、女子から言わせれば良く見えないことも無いらしいが。

 

 

「それはいい。とにかく、読み上げるぞ。……『今日の晩飯が終わったら、国立図書館2階の多目的室に来て欲しい。キキョウスクールの皆で親睦会をやろう』……だそうだ。オレは部屋に帰ったら寝るから、今の内に時間合わせて3人で行こうぜ」

 

「成る程。僕はいつでも構わない……というかむしろ、晩飯の時間を合わせればいいだろう? 僕から声を掛けにいくぞ。何時が良いかな」

 

「いつでもよろしくー。ボクはー、321号室だからー」

 

「さっき来てたから判ってると思うけど、オレは325号室な。……それなら17時辺りにしておこうか? 張り切ってるいいんちょを待たせるのも、アレだし」

 

「ああ、僕は308号室だ。……よし、わかった。17時に声をかけに行こう」

 

「ドアの鍵開けとくんでー、よろしくー」

 

 

 だるっとした言葉で、既に目を閉じているケイスケ。けど、そうだな。

 

 

「……無用心だけど、オレもそうしようかな。起きられる自信が、全くない」

 

「まぁ、お前達がそれで良いのなら僕も助かるから文句は無いが。……そうだ、シュン。ナツホにも連絡しておけよ。僕はノゾミに連絡しておく」

 

「りょーかい。あとは……ヒトミとユウキか。ヒトミはどうせ、もうバトルの練習をしてるだろうからメールで連絡するとして……ユウキも寮に来てる筈なんだけどなぁ。さっきの引越し手伝いのメールに返信は来ていないし、オレも直接は会ってないんだ。アイツの部屋、何号室なんだ?」

 

「……310号室だ。だが、僕が声をかけた時も居なかった」

 

「んー? さっきー、荷物を忘れたーとか言ってー、タマムシの郵便屋まで走っていった気がするなー」

 

 

 ケイスケのこの言葉に、またもゴウが頭を抱える。

 

 

「……またか、アイツは。学内にもポケモン郵便の窓口はあるというのに」

 

「お、そうなのか。また1つ勉強になったな。……ユウキと言う犠牲を糧にして、ではあるけどさ」

 

 

 ユウキのうっかりはいつもの事。オレ達もネタに出来るくらいには慣れたものだ。

 なら、ユウキにも連絡でいいとして ―― これくらいだな。よし。眠い!

 

 

「なら、17時でよろしく。オレは帰って寝るよ」

 

「おう。後で迎えに行くが、自分でも目覚ましは忘れるなよ」

 

「おやーすみー」

 

 

 2人と別れ、自分の部屋へと向かって歩を進める。

 睡眠は大事だぞー、心の贅肉だ。

 

 ……あれ、なんか違う?

 

 

 

 

 Θ―― タマムシ南郊外/スクール敷地内

 

 

 辺りは暗くなり始め、時間は17時を回った。

 オレとゴウ、ケイスケ……そして女子寮組であるナツホとノゾミは無事、大図書館へと向かう道で合流することが出来た。

 レンガ敷きの街道には外灯が等間隔に設置されており、木々に囲まれているスクール周辺の中でも比較的明るい場所となっている。一応の防犯対策なのだろう。

 そんな中、オレは集まった4人を眺め、

 

 

「さてと。合流した事だし、大図書館へ向かいますか」

 

「おーう」

 

「なんでアンタが仕切るのよ。……ケイスケは乗ったけど」

 

「うん? ……言われてみれば、確かに。何となくだなぁ。オレがメールまわしたし、仕切るべきかなーって」

 

「……言われてみれば、そうかも知れないわね。でも、こういう集まりっていつもはゴウが仕切ってるじゃない?」

 

 

 どうやら風呂上りらしく肩下まで髪を下ろしたナツホから、いつもの如く辛辣なお言葉を頂戴したので、とりあえず反論。間に入ったケイスケの能天気さが実にありがたい。心の清涼剤だ。刺さった棘を抜いてくれるな、ほんと。

 ……どうせ心的ダメージなんて無いんだけどさ。ナツホとも長いし、既に「受容できている」から。

 俺達に話題を向けられたゴウは、笑いながら返答する。

 

 

「勿論、僕は構わない。仕切りたい訳ではないからな」

 

「あなたはそうだよね、ゴウ」

 

 

 ゴウと、その隣。短い黒髪をなびかせているのがノゾミだ。ゴウの幼馴染で、一団の中では貴重なクールさがアピールポイントである。

 

 

「それより、シュン」

 

「なんだ、ノゾミ。……って、おお」

 

 

 ノゾミの指差した先を辿っていくと、外灯の下。件のヒトミ(紫のポニーテールと眼鏡がトレードマーク)が道の端でパソコンを弄っているのが見えた。

 ……その隣にも、なんか「ある」んだけどさ。人っぽいやつが。

 オレはひとまず皆を待たせて、ヒトミに近寄る事に。その隣でぐったりしている奴は、とりあえず放置。

 歩み寄ると接近に気付いたヒトミがPCを閉じ、手を挙げて陽気に挨拶をしてくる。

 

 

「はぁい、こんばんは。ここまで来てくれてありがと、シュン」

 

「ああ、こんばんは。それにどうせ図書館までの道の上だからさ、気にしないで」

 

「そう、ならそうするわ。……ありゃあ、皆おそろいで来たのね? ごめんなさいね。あたし、」

 

「良いよ。今日も練習してたんだろう。その手に持った分析用PCを見れば、わかるから」

 

「ふふ、そうだよ。―― で、フィールド借りて練習してたら、コイツがね」

 

 

 そう言いながらPCを抱えていないほうの手で、ぐったりとしゃがみ込んでいる男子を指差す。

 

 

「おーい……ユウキ、生きてるかー」

 

 

 新品支給された(筈の)エリトレ制服を既にボロボロにし、小さく丸まっている我が悪友。どうせ小さくなった所で、命中率が下がるわけでもないのだが。

 そして、呼びかけに返事が無い。―― どうやら、屍のようだ。

 

 

「人を殺すなよっ!?」

 

「あ、起きたわ」

 

「それよりオレは、心の中を読まれたのが気になる」

 

「そりゃ読むさ。流石に突っ込みのタイミングはわかるぜ、相棒。っと。葉っぱくらいは払っとくか」

 

「土もね。―― それで、今日はどこを彷徨っていたのよ」

 

「おれもよく判らない」

 

 

 ヒトミは指摘しつつも、ユウキの背中をはたいて汚れを払っていく。なんだかんだで良いコンビだよな、こいつ等。

 

 

「―― さて、と。これでいいや。ありがとな」

 

「はいはい。んで、なんで貴方は空から落ちてきたの? 折角なら空飛ぶ石飾りでも装備すれば良かったのに」

 

「……いや。無理言うなって、ヒトミ。……ああ、えーと……まず、郵便を受け取り忘れてて、タマムシの中心まで行こうとしたらな。土地勘がなくて迷った」

 

「うんうん、当然の流れよね。そこまではあたしも予想できるわ」

 

「そしたら何故か海に出たから、多分スクールの南だろうなって思ったんだ。なら向かうべき方角は北か! って思って北を目指したら、今度は工事中のでかい通路に出て」

 

「ああ……きっとそれ、サイクリングロードだな」

 

「おれもそう思った。だから次こそはと道に沿って歩いたら、何故か山の上に居たんだ」

 

「いやそのりくつはおかしい」

 

「そうか? ……でもそこで救世主の登場だ。鳥使いのオネェサンが現れて、おれをここまで送ってくれたという訳さ」

 

「はぁ。最後はオニドリルの脚から落っこちて、あたしのメタングがキャッチしたのよ」

 

「鋼鉄の身体を通しておれに伝わる衝撃が、骨身に染みたぜ……」

 

 

 ユウキがなんか言ってるけど、世間一般ではそれを痛覚と呼ぶ。

 コイツは5感を捨て去っているのだろうか。エムなのだろうか。

 

 

「よっ、と」

 

 

 身体を抱えていたユウキは一通り身なりを整えると、すぐさま仕切り直した。こういう所は復活の早いやつである。

 

 

「ま、んなことより歓迎会だろ! 図書館ってどっちだ?」

 

「あっち。ハヤトは現地で持ってるから、ヒトミとユウキでキキョウスクール出身の奴等は全員そろうぞ」

 

「本当に待たせてしまったみたいね、ごめんなさい。……ほら、ユウキも。一緒に謝って」

 

「ごめん。しょんぼり」

 

「別にいいよ、時間には余裕あるし。……口でしょんぼりとか言われてもあれだけどさ」

 

「おいおい、結局駄目出しかよ! つれないなぁ、シュン!」

 

「相手をしていたらキリが無いわ。さ、行きましょ!」

 

 

 こういう時は扱い慣れているヒトミが頼もしい。

 無事、全員揃って図書館へと向かって行く事が出来そうだ。

 

 

 

 

 Θ―― タマムシ国立図書館

 

 

 風除室を開き、タマムシにある国立図書館、その自動扉を7人で潜る。

 図書館特有の静けさと、空調の効いた居心地の良さがある空間……だが、なんというか……壮大な本棚だな。

 明かりを外から取り入れたエコな照明が夕日の混じった寂しげな光を放ち、そんな明かりに照らされるのは、円柱型に立てられた只でさえ広い室内。しかもその壁一面、天井までが全て本棚といって良い。

 

 

「えぇと、ここの2階だっけ? とりあえず、目指すは上だな」

 

「おいおい、シュンよ。上なのは見りゃわかる。問題は階段がどっちにあんのか、だ」

 

「ふむ……やはりここは受付に聞くのが良いんじゃあないか」

 

「ああ。それは良い案だねぇ、ゴウ。……受付の位置が分かれば、だけどさ」

 

「トイレはー?」

 

 

 葛藤の最後を締めたヒトミが、両拳を腰に当てながら溜息をつく。他の面々も似たような困惑顔だ。ケイスケは変わらないが。

 ……というか、ここまでの広さだとは思わなかったからさ。

 

 

「うーん、そうだねえ。バトルの分析でPC使うには、回線通ってる場所も見とかなきゃいけないし……」

 

「おいヒトミ。おれ、お前はパソコン中毒なんじゃないかと本気で思うんだ。どうだろう?」

 

「バカ言わないの。そういうアンタだって、迷子になる病気なんじゃないかしら、ユウキ?」

 

 

 ユウキはともかくヒトミが言う様なものを発見できたら、何かしらの賞が貰える事だろう。そもそも、そんなありもしないものを探す勇気はないけどさ。

 ……えーと、だな。どうしようか。……うん。

 

 

「しょうがないよ。案内板でも受付でもエレベーターでも良い。分かれて探そう」

 

「最後までシュンが仕切るのね。応援するわ……ただしナツホが」

 

 

 ノゾミがオレを見てクールに笑い、次いで、隣に居たナツホがギロリとオレを睨む。やめてくれ、そういう気はないんだ。

 だが、一旦目を閉じた後。ナツホの口から出たのは予想外の言葉だった。

 

 

「……まぁ、別に良いわ。個人的にも応援してあげるから、適当に分かれて探しに行きましょう。ほら、行くわよ。シュン!」

 

 

 なんと言う事でしょう。ツンデレが売りの彼女が、彼女にしては比較的素直な言葉を発していたのだ。

 吃驚したせいで、こっちのレスポンスも鈍る。……え、と。

 

 

「あ、ああ。……そうだ、ヒトミ達も見付かったらメールをくれ。あとは、えと、この真ん中の柱の前に集合で!」

 

「お達者で~」

 

「頑張って」

 

 

 ヒトミとノゾミによる謎の応援を受けながら、俺はナツホに腕を引っ張られるがまま進んでいく事に。

 というか。行くのは良いが、当てはあるのか? ナツホよ。

 

 

 ……、

 

 ……、

 

 

 そして、無為に5分が経過しました!

 

 

「……ないな」

 

「……ないわね」

 

 

 オレとナツホが探すも、エレベーターらしきものすら存在していない。エレベーターなら壁際をなぞって1周すれば、何処かにはあると思ったんだけどなぁ。これで無いとなると、じゃあ何処にあるんだよって話。

 

 

「……困ったわね。やっぱり受付を……」

 

「いや、残念ながら受付は近くに無い」

 

 

 ナツホの目の前の検索端末に張ってある張り紙を指差して、読み上げてやる。

 ―― 『受付は2階です』。

 だ、そうだ。

 

 

「だ、そうだ。……じゃないわよ!」

 

「詰め所に職員は居るだろうけど……詰め所も上の階みたいだ。貸し出しが電子化されてるから、司書も事務仕事がメインなんだろ」

 

 

 貸し出しはバーコードの読み取りで行う仕組みだ。殆どは貸し出し業務なのだと推察すると、1階の本スペースは少しでも広い方が見栄え的にもスペース的にも実用的にも確かではある。

 

 

「この端末にマップは入ってないの?」

 

「どれどれ……ないな。名前を入力すると書架を検索してくれるだけだ。技術と端末容量の無駄遣いだな、こりゃあ」

 

「あー、もうっ! こうなったら、脚で勝負! とりあえず歩いていれば見つかるでしょ!」

 

 

 もう既に、そのパターンを5分ほど繰り返したと思うんだ。ナツホはどうも、沸点が低くていけないな。

 オレはここでこそ冷静に、と周囲を確認する事に。

 ……いい『者』を発見した。

 

 

「……待ってて。もうちょっと良い方法を思いつけた」

 

「え? ちょ、ちょっと」

 

 

 オレは怒り出しそうなナツホを手と声で制し、眼前に定めたターゲットへと近づいていく。

 そうだ。受付は居ないとはいえ、図書館自体は閉館していない。ならば、利用者がいるじゃないか。

 非常に目立つその利用者(ターゲット) ―― ゴスロリ少女へ向かって、近づいた所で。こちらから挨拶を仕掛ける。

 

 

「どうも、こんばんは」

 

「……あら。私に、話しかけているのかしら」

 

「はい。実は、お聞きしたいことがありまして。お時間を頂いても宜しいですか」

 

「えぇ、構わないわ。……あら」

 

 

 そう言って、ゴスロリ少女は、本を閉じてからこちらへ身体を向けた。

 ふと横目に、机の上に置いた本のタイトルが目に入る。「ポケモン技タイプ別与ダメ比較集」。その下には「リーグ年鑑バトルスコア集1994」。どうやら見た目のインパクトとは裏腹に、勤勉タイプの生徒らしい。

 ゴスロリ少女と正面から向き合う。その顔に、その服装に、オレは大いに見覚えがあった。

 

 

「それで、何を聞きたいのかしら ―― シュンとナツホ」

 

「えぇっ、ミィ!?」

 

「やっぱり、ミィさん。いくらタマムシが都会だからといって、ゴスロリの人間がそうそういるとは思えなかったからな」

 

「そう」

 

 

 ミィ。以前、トレーナースクールで出会った事がある人物だ。確かタマムシのスクール出だと言っていたし、何より目立つその服装(ゴスロリ)である。おかげで、遠目からでも当たりをつける事が出来た。

 それにしても、動きが優美。身体からオーラが出ている気もする。

 ……でも、良い人だよなぁ。わざわざ本を閉じて正面向かって話そうとしてくれてるし、自分から自己紹介してくれたし、微笑とはいえ笑顔だし。オーラを気にしなければ良い話だ。

 ナツホは辺りに視線を彷徨わせ、

 

 

「ミィさんが居るってことは……ショウもここに居るの?」

 

「今は、居ないわね。でも恐らく、学内に居るでしょう。……それよりシュンもナツホも、急いでいるのではないかしら。挨拶も世辞も後回し。用件を伺いましょう」

 

「ああ。……えぇと、それで、ミィさん」

 

「……『さん』は要らないわ。私も専攻クラスだから、同年よ」

 

 

 そうだったのか。

 態度、物言い、肩書き。ミィもショウも、どうにも同年とは思えない雰囲気があったからなぁ。先輩だと思っていた。

 ……ならば制服をブッチしている点に、突っ込んでいいものか?

 

 

「そうなんですか? あ、なら、同級生ね。あたし達はジョウトからの編入組で、」

 

「そう。……私は、エスカレーター組。タマムシの校舎に通うのは、2年目ね」

 

「お。それならミィは、図書館の位置にも詳しそうだな」

 

「……成程。貴方達、迷ったのかしら」

 

 

 ミィは微笑みながら、的確な答えを導き出してみせた。見事な推理力だ。両手を挙げて、万歳。

 

 

「おみそれするよ。……安楽椅子探偵?」

 

「『編入組』と、『位置に詳しそうだな』。このキーワードがあればカオスの欠片の再構成には十分足るでしょう。……探偵を開業すれば儲かるかしらね。命名権を上げるわ。灰色オオカミでも眠りのミィでも、小市民でもお好きにどうぞ」

 

 

 茶化しにも律儀に反応するどころか、反撃まで忘れない。うーん、こりゃあレベル高いぞ。

 でも、やり取りは楽しいけどこの辺にしとこう。ハヤトも待っているに違いないし。

 オレはミィの言葉に諸手を挙げて敗北を表明すると、素早く仕切りなおす事にする。

 

 

「本題に入って……オレ達、上に行く方法を知りたいんだ。階段とかエレベーターとか、何処にあるか知ってるかな?」

 

「そう、ね。……ココに来る人は、大体それで迷うわ。あちらよ」

 

 

 ミィはゆらりと腕を上げると、オレとナツホの間……後方……集合地点に指定している……図書館フロアー中心にそびえ建つ「でっかい柱」を指差した。

 って、まさか!

 

 

「あれが、階段兼エレベーターよ。両方あるから、お好きな方を選んで頂戴」

 

「……うだーっ、集合地点にしたから誰も探してないってオチか!」

 

「うわぁー……しょうもないオチね」

 

「ふふ」

 

 

 オレとナツホが脱力している後ろで、ミィは口元を押さえて上品に笑っている。

 まあいい。エレベータは見付かったのだ。ハヤトを待たせてるんだし、急いで戻らなきゃいけない。みんなに連絡しつつ、行くか。

 

 

「それじゃあ。来週だけど、年度が始まったらまた学校で会おう!」

 

「ありがとね、ミィ。それじゃあ!」

 

「……えぇ」

 

 

 ゴスロリの少女は元の微笑に戻ると此方へ手を振り、暫くそのまま見送ってくれた。

 ……さて。昇るなら階段じゃなくて、エレベーターが良いかな。走り回って疲れたぽい。

 

 

 ……、

 

 ……。

 

 

「……やはり、あの子達。なのかしらね」

 


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