Θ―― 国立図書館/『植物庭園』
オレらが初めてのポケモンを手にしてから3日後。
過ぎた3日間は皆、初めてのポケモンに四苦八苦しながら過ごした。
ヒトミは相変わらずバトル訓練。変わった事といえば、それにユウキやオレが付き合うようになった事か。流石に手持ちがいるだけあって、訓練自体は順調だろう。メタング先輩(思わず敬称)がとても頼りになるし。因みにオレの3匹は未だ連携練習をしている最中なのだが、ユウキの手持ち達は……そののんびりした性格故なのか……指示によく従ってくれているのだ。詳しい部分はともかく、意外とバトル向きなのかもしれないな。ユウキ。
ゴウとノゾミは、2人で色々なサークルを見て周っているらしい。これからの勉学との兼ね合いも考えて、ある程度余裕を持ったサークルに入りたいと言っていた。ポケモン達とも一緒に見て回ることでコミュニケーションも図っているらしいしな。あとは、ゴウ曰く、ヒトカゲが気難しいんだそうで。ま、その点はゴウなら大丈夫だろうと思うんだけどさ。何とかなるなる。
ナツホもオレとサークルを見にいってる、の、だが……今の所はあまりピンと来るものがないらしい。明日明後日辺り、講義の後にショウやミィが所属しているサークルを見学に行く予定だ。何か合いそうなものがあれば良いのだが。いやま、無かったら入らなくて済むだけの話でもあるんだけどさ。折角の学園生活なんだし、と。
さて、経過報告も終えた所だし。今現在の話をしよう。
エリトレ組へ入学したオレ等の勉強は、座学から開始されている。トレーナースクールで習った知識の再確認が主だった内容だ。これからはエリトレになることによる優待などの特典や、ポケモントレーナーとしてより深くポケモンを知るための軽いポケモン学なんかが授業として行われるらしい。
……てのは、後々の話で。
庭園にいる今現在、時間帯は放課後。本日の座学も終え、本来ならば寮に戻っている時間帯……なのだが。
「―― 皆揃った? 揃ったなら、講義を始めたいんですが」
「ミュゥッ♪」「ピジョオオーッ」
目の前、庭園の中心地に据えられた黒板の前で揺れるツインテール。その左右をぐるぐる飛び回るミュウとピジョット。おかげで煽られたツインテールが、彼女のコートに絡まる絡まる。今にも首を絞めそう……あ、2匹がニドクインとクチートに止められてる。でも、モノズは止めないんだな。ルリのプリン共々、ソファで寝てる。……ルリのプリンは
「ありがと。―― ええと。ゴメン、皆はあっちで遊んでてくださればと!」
「ミュッ!」
――《スッ……スイッ》
ルリの呼びかけによって、ミュウを筆頭に、メンバー4匹が庭園の奥にある木の実飼育スペースへと移動していった。プリンとモノズはソファの上に置いてけぼりで。……ま、そんな風にルリの殿堂入りメンバーも気になる所なのだが、一先ずはさて置き。本日オレ等はルリの講義、第2回を迎えているのだった。
開講場所は庭園の奥の方にある、開けた場所。天井には強化ガラス張りの開閉式天井が備え付けられている為、青空教室な気分。
因みにオレ達のポケモン達はただいま、更に奥のスペースで基礎データを採っている最中だ。1年通して継続観察する……その基となるデータであり、ちょっとだけ時間がかかるから、その内に講義をしてくれる手筈となっていた。
うぅん……
「はーい、いない人は手ぇ上げてですー」
「いや、それは無理だろ。定番だけど」
ルリのボケ(恐らく)にユウキが突っ込みを入れる。第一回の講義の殆どを顔合わせと自己紹介に費やした甲斐もあったのだろう。以前はルリの威光威圧異名等々に圧され気味だったオレ達も、この程度のやり取りならば問題なくこなせるようにはなっていた。未だに、ルリのボケは判り辛いけど。
今日のルリはいつも通り、彼女お気に入りであるというトレードマークのダボダボトレンチコート(黒)をだるっと纏っていた。なんだっけな。確かルリの友人がデザインしたとか何とか、どこかの特集で見掛けた事がある気がする。ま、それはどうでもいいか。
講師であるルリはオレ達と、『残る4人』―― 同じエリトレ組である男子2名と、女子2名を見渡す。
「んー、よし。
「その場合は3人くらいしか残らなさそうねえ」
「うむ。とすれば、ヒトミは残るのだろうな」
「ユウキも残りそう。生命力で。……わたしとゴウは何となくやられてそうだね」
その場合、残る1人はケイスケだろうな。そもそも出撃しなさそうでもある。
ああ、と、話題を戻すが ―― そう。なんと、オレ達の他にも受講生が居たのだ。てっきりルリの存在は秘匿されているのかと思いきや、だ。オレらはあんまり口外しないでと言われているし、実際言ってはいないのだが、オレ等と共通の友人であるショウを通してルリ自身に声がかかったらしい。
「ちょっと。それよりも、さっさと講義始めない?」
「……まぁま、そうカツカツするなよナツホ。カルシウムが足りないかなー」
「う、うるひゃい! ……え、こら、シュン!! 口を、ホホをひっぱるにゃああっ!」
いつも通り空気を読めなかったナツホに、幼馴染コントロールマニュアル(脳内)から引いた悪戯を仕掛けてやる。縦、縦、横、横、丸書いてなんとやら。
よし。終了。オレが手を離す事で頬の自由を得たナツホは口から空気を噴出し、ちょっぴり赤くなった頬を撫でつつ唇を尖らした。頭の後ろで馬の尻尾が揺れているのが見えている。
「……っぷふぁっ! あにすんのよ、もう!」
「いいからさ。ほら、前向こう、前」
「ふふふ。ナツホちゃんとシュン君は仲が良いのですね? ですが一先ずは御希望に沿いまして、あたしの講義を始めさせていただきます。……さて、今日から本格的に講義の開始です。お題目は、こちらっ!!」
ルリが移動式のレトロな手書き黒板をひっくり返すと、そこには『ポケモンバトル講座~準備編』との文字が、妙に小気味良いポップ体(レタリング済)で描かれていた。
「と、いう訳で。月1ではありますが、今回からあたしはポケモンバトルに関する私設講座を開講させていただきます。受講いたしますのはここに居る11名と、たまぁにミィさんも来てくれる手筈ですね。ミィさんは主に講師として、ではあるのですが」
使うのかも判らない……いや、黒板を使用している以上恐らくは使わないだろうが……レーザーポインタを手に、腕を組んで。ルリはそう説明して見せる。
言ったルリはそのまま、前列の『オレ等以外の』4名に紙束を手渡した。その内のお嬢様っぽい娘・カトレアさんと清楚な感じの前髪娘・ミカンちゃんから、オレも紙束を受け取る。左留めにされたこの紙束は、どうやら本日の講義で使用するレジュメらしい。
「そのレジュメはジムリクラスで使うものをパッチワークして流用しただけですんで、他の人に見せるのも別に構わないですから。……さて、みんなに行き渡りました様なので、1ページ目をご覧くだされば。まずは基本的なことから行きましょう」
ルリの言葉に従って、皆がレジュメに視線を落とす。1ページ目の一行目『初めの初めに』として、タイトルが書かれていた。『ポケモンと技』。
「ポケモンの技について、です。これはごくごく個人的に、のお話ですが、ポケモンとトレーナー……その繋がりの内で最も覚えておくべきは、『技』だと思うのですよ。これはバトルがどうこうという訳ではなく、特殊性という意味でですが。……では、皆さんに聞いてみたいです。ポケモンにとって、技とはなんなのでしょうかね?」
「……えぇと、」
「ハイハーイ! ポケモンの攻撃手段だね!」
考え込むミカンちゃんの後ろで、元気な袖なし改造制服の男 ―― リョウが手を挙げ、答えていた。黄緑色のアホ毛も、頭頂部で元気良く揺れている。自律稼動ではないのが残念だ。
その隣。『その他』もう1人の男子であるヒョウタは、リョウとは対照的。眼鏡属性に違わず、生真面目にノートを取っている。……今までの内容のどこをメモっているのであろうか。まだ大した話はしていないと思う。
ルリは、リョウの答えにうんうんと頷いて。
「リョウ君の言う通りです。―― さてさて。では、もうちょっと面倒な質問をいたしまして。『たいあたり』と命じてぶつかるのと、同体格同速度で……ただしポケモンが『意図せずぶつかる』の。この2つが同一箇所に命中した場合、どちらが相手ポケモンにとってダメージが大きいのでしょうか? 判ります?」
今度はリョウも手は挙げず、皆が一斉に考え込んだ。……うーん? どうなんだろう。試す……というか、試そうと思ったことも無い。
この反応を見て、
「うんうん、意図した反応をありがと。ちょっと意地悪な質問だったです。……答えは『たいあたり』を指示した方が大きなダメージを与えられる、なんですよね。これが」
「……む。ルリ、それの意味する所を御教授願いたいのだが」
「そうだね。ぼくも、ゴウ君と同じ。どういう事?」
ゴウと、ノートから顔を上げたヒョウタが質問を返す。この2人は、真面目という部分で気が合いそうだよなぁ。
「そですね。これはあくまで数値計測からはじき出された結果らしいので、詳しい機序は不明なんですが、どうもポケモンの『技を出すという意志』や『ポケモンを対象とするか否か』なんて部分が関係するみたいなんです。―― もうちょっと判り易い様に例を挙げましょう。皆さんは『秘伝技』をご存知で?」
「ああ、勿論さ。その辺はスクールでもやったからねえ。『秘伝技』は、ポケモン以外を対象とした場合や移動手段とする場合に使用すると『普通の技よりも効率が上がる』技で、習得すると忘れない。一般的な技マシンとも違って、認められたトレーナーしか使ってはいけない。違うかい?」
「今のヒトミの説明に付け足すなら、秘伝マシンは生産数が少なく手に入れ辛い。それと一般的な勝負においては、認められなくても使う事が出来る」
「おお、皆さん優秀ですね。ええ。ノゾミさんの付け足し含めて、重大な間違いはなさそうです。そんなら、秘伝技自体の説明は省かせていただきまして。ここで引用したいのは、ヒトミさんの言葉にあった『普通の技よりも効率が上がる』という部分なのです。では、資料を開いて下さい。そこに秘伝技それぞれの特徴と、件の『効率』についてを記載しました」
ページをめくり、ルリの読み上げと共に目を通してゆく。
『いあいぎり』
草むらや断ち切る事の出来る障害物を切ることが出来る。計算上、非ポケモンを対象とした場合ならば『きりさく』よりも断然切断効率が良い。疲労が溜まり難い。
ただし、人の家の生垣や樹木を斬るならば、ばれないように斬るべし。自己責任で。
『そらをとぶ』
通常飛行では不可能なポッポなどの小さなポケモンでも、人を乗せて(というか掴んで)空を飛ぶ事が出来る様になる。普段から人を乗せて飛ぶ事が可能な体格のポケモンでも疲労が溜まり辛くなるため、高空・高速・長距離の飛行が可能になる。
※尚、ポケモンに乗っての飛行はバッジが無いと制限というか処罰される可能性が高い為、さっさとクチバジムでオレンジバッジを取得し、講習を受け、ライセンスを取得する事をオススメしたい。
『なみのり』
基本的には『そらをとぶ』と同様。潜る際には適用されない。潜る際には以下『ダイビング』を参照されたし。
尚、ポケモンに乗って遊泳すること自体は禁止されていないが、ライセンスがあった方が色々と以下略。
『かいりき』
非ポケモンを対象とした場合、動かす為の要求筋力値を明らかに下回っているようなポケモンでも、これを移動させる事が出来る様になる。筋力値の増加と効率化であるため、非ポケモン対象であれば色々と適用される。勿論限界値はあるが。
※尚、同理由からカビゴンを『かいりき』で動かすのは諦める事。戦闘になるし。
『たきのぼり』
ここまで読んだら大体判るだろうが、滝を登る際の効率アップ。人間を乗せようが体格関係なし。ただし濡れる。あと、ポケモンの体格が無いと滝が割れず、トレーナーは痛いので要注意。というか外であれば飛んだほうが早い。洞窟内などで活用すべし。
その特性上、『なみのり』が無ければ効率が落ちる。陸上で使用した場合、水タイプを帯びるがその実は体当たりである(威力は違うが)。
『きりばらい』
風を起こしながら飛び回り、霧を払う。範囲が広大になり効率も良くなるが、範囲効率を考えなければ『かぜおこし』や『ふきとばし』でも十分。どちらにせよ極めでもしない限り、霧は時間経過で補充されます。
そのせいあってか、一部地域でのみ秘伝技指定されている。我がカントー地方では秘伝どころか技マシンすらないので注意されたし。
『ダイビング』
潜る際の効率化。人間は濡れるし、酸素携帯が必要。使用した場合ポケモンにのみ水圧無視が加わる(検証中)。人間は水圧を度外視した深さまで潜るのは無理なので、その場合は素直に潜水艦を頼ろう(度外視、というだけで実は水圧軽減効果はあるらしい)。使用の折は潜水病に注意されたし。
近場に水が無い場合は使えない。陸上では素直に穴を掘る。
尚、技マシンは無い。
『うずしお』
これは普通に泳いだのでは無理である。効率化云々というより、水を『この様に』操る技。戦闘使用の場合は水が無くとも出現させた(吐き出した)水である程度は事足りる。
尚フィールド使用の場合は、無理して消滅させずとも、マンタインなどがいれば飛び越えても良し。外であれば空を飛んでしまえば良い。洞窟内であれば飛び回るのが難しい為、頼るべし。
尚、技マシンは無い。
『いわくだき』
非ポケモンの硬質の岩や遮蔽物を砕く際の効率化。効率は良くなるため低レベル帯ではお世話になるが、高レベルであれば一般的な技でも十分に壊れる為、効果は限定的か。
そのせいあってか、一部の地域でのみ以下略。
ただし技マシンはある。岩砕き大勝利。
少し休憩しよう。聞いたことも無い技も多いのだが……ふう。それよりもなんだろうこの文章は。突っ込みを入れたい。それに、どこかで見覚えがある気がするんだよなぁ。ノリがさ。
ここで辺りへ視線を巡らす。皆も何かを言いたげな、苦々しくも見えなくは無い顔で資料を読んでいる。仕方が無い。どうやら、まだ続いているみたいだし。オレも視線を落とし、ページをめくる事にする。次のページには、秘伝技以外の例外について書かれていた。
『フラッシュ』、『あなをほる』、『あまいかおり』。
例外の代表として(とりあえず、と書いてある)挙げられたこの3つも、……文章の言い回しを借りるのであれば「非ポケモン」を対象とした場合に効率化されるらしかった。ここで、視線を上げる。
「―― という訳なんです。まぁ、『あまいかおり』は特定のポケモンに……という技ではありませんし、『タマゴうみ』なんかの例外もあるのですが……さて、ではなにが言いたいのかというとですね。つまり『たいあたり』という技は、ただ『身体をぶつける』よりも、『身体をぶつける行為を効率化している』って結論に持って行きたい訳なのですよ」
成る程、そう持ってくるのか。
『なみのり』がただ泳ぐだけでなく、泳ぐという行為を効率化している様に。『たいあたり』は身体をぶつける行為を、『かぜおこし』は風を起こす行為を……ダメージ増加の意味を重視して、効率化していると。『技』ってのはそういうものなのだと、ルリは言いたいらしい。
「それは、ルリ。貴女が?」
「んー? あ、いいえ。この研究なり着眼点は、ショウ君のものでして」
「……ああ、成る程。道理で」
ルリはノゾミの判り辛い口調をいとも容易く解読してから、答えた。
……というか、思わず納得してしまった。この文章、ヤツが書いたのか。きっとアレだ。この間夜中に含み笑いをしながら不気味に書いてた文章が、これだぞ。文章が深夜ノリだしさ。
「技っていえばさー。ルリのあのサイン指示、だっけー? あれってどうやってるのー?」
突然、空気を読まず話題を変えたのはケイスケの一言だ。だがそれはオレも、オレ達も気になる所ではある。
「サイン指示」とは、ポケモンリーグでルリが使用した純然たる「トレーナー技術」だ。知識ではなく、トレーナー自身が主体となって発揮されるそれは、ポケモンバトルの革命と言って差し支えない。かのポケモンリーグ会長も絶賛していたしな。ルリがチャンピオンになった原動力ともいえる。
今ではその利点からか、リーグに参加するトレーナーにはルリと似たような……もしくは同種の技術を使用するトレーナーも増えてきた。が、ルリにはあの「6匹同時指示」もあるのだし、そもそもの熟練度も段違いに感じてしまう。オリジナルは偉大だということなのだろう。
自然と、ルリに視線が集まった。ルリはふむぅ、などと唸りつつ、顎に手を沿えて。
「―― まぁいいでしょう。その内に実践の機会を作って、お教えさせていただきます。理論は簡単なのです。えーと、あたしからショウ君に講義をしてくれるよう頼んでおきますね」
それはありがた……ん? なぜここで、ショウの話になるのか。
「……。あ、あのう……そ、その……。……それも……ショウ、君、が……?」
「ええ。そでs」
「ハイハイ、ハイ! 虫ポケモンでも出来ますかっ!?」
「……まぁ、ええ。ミカンちゃんの疑問にはイエス、と答えます。あたしの戦法、その大元はショウ君が使用していました。あたしはただ、それを真似したというか、教わったというか……代わりに実践したというか。そんな感じなのですよ。んで、リョウ君の質問ですが……虫ポケモンとか関係なく出来るんじゃあないですか? 出来るか否かはリョウ君次第ですが、貴方であれば問題ないでしょう。メンタル的にも天才ですし」
リョウへの天才発言はさて置き。……何と言うか、流石はショウというべきか。元チャンピオン様にまで影響を与えているとは。オリジナルは偉大……あいつが偉大なのかは判断つかないが、兎に角、研究者というのは恐ろしいものであるというのは実感できたか。
「で。ここでついでの解説を加えておきますと、さっきの秘伝技の『非ポケモンを対象とした効率化』というのは、その他『通常技の効率化』より、とってもとっても効率が良いんですね。殆ど疲れがたまらない ―― ポケモンが行う日常動作と同程度までとかいうトンデモ倍率なんですよ。ポケモンが疲弊しきり、『ひんし』状態……戦闘用の体力が無い状態にあってすら問題なく使えるほどにです。とはいえ、多少は精彩を欠きますが……これが『秘伝』という特別視の由来な訳なのでした」
「うっひゃー、そらスゲェな!」
「へぇ……これなら、秘伝マシンも少なくなる訳よね」
「あっはは。まぁ、秘伝マシンが作り辛いというのも大きな理由なのですけどね? ブランド、というものは数が多すぎると希少性が薄れますから。意図して作っていないってな理由もあるでしょう」
元も子もない事をいうなぁ、ルリは。あっけらかんとし過ぎじゃあないのか。……いや、テレビを見る限り元からこの性格だったか、そういえば。今の『暫定チャンピオン』ワタルさんとのデート企画とか、大分アレだったしなぁ。やさぐれていると称しても過言では無いだろう。
《ピリリリリーッ!》
ここまで語った所で、黒板の端に張られたタイマーがやかましい音をたて始めていた。ルリはそれをリモコンで止めつつ。
「さて。話題もそれましたし、タイトル的には一区切りです。あたしも向こうの計測班を見に行かなけりゃあいけませんですし……ここいらで10分ほど、自己学習含めた休憩にして貰っても良いでしょうか?」
「休憩、だいかんげーい」
「PCに打ち纏める時間も欲しいからね。アタシは構わないけど」
「……いい、です。あたしも、ちょっと、考えたい……です」
「あっ、ボクはトイレを捜して来ようかな!」
「皆さん了解ですか? ……ども、ありがとうございます」
ルリの問い掛けに、皆が頷いていた。オレとしても異論は無い。
……っぷはぁ。
休憩の提案と共に息を吐き、庭園に配置された長机(実は親睦会の時にもここから借りた)に突っ伏す。頭は、痛くは無いが……少しだけ重たい。文章の質量がやばかったからな。秘伝技。
「と、と。そういえばそういえば」
黒板を片付けたルリが動きを止める。自らの執務机からファイルを1つ手に取ると、ああ、と思い出したような声をあげた。
「資料の最後にポケモンの技の内、効果が判明しているもの達をだらららーっと載せてみてます。暇だったら、それを眺めていてくださればと。―― 皆様にお茶をお願いしても良いですかね、コクラン君?」
「ああ。次の茶菓子用にいくつか実を貰ってもいいのなら、受け付けるよ」
「勿論構わないです。リストの提出をお願いしますね。……ではでは、暫し御歓談をー」
手を適当に振りながら、ルリは木の実区画の奥へと早足で消えていった。
……さて、ついに来てしまいました。判り辛い説明回が。考えるのは好きなのですが、それを文章にするとなると……うぅん。
この回が主に時間を食っております次第。これさえなければ、もっと早く進められるのに、と。自らの力の無さを悔やんでいたりなんだり。
残念ながら、次の話も判り辛さが満載です。更に面倒なことに、今回の話しの内容を踏まえたうえで、の話になります。畜生め(ぉぃ
どうぞ、突っ込んでやってくだされば。私が幸せなのです。
>>ルリとワタルさんとのデート企画番組
The 黒歴史。
地味ーに、ルリがリーグの一線を引退したことによる空位カントーチャンピオンの座についての説明が成され様としております。はい、伏線です。これはその内、ルリやらショウやらから説明させる心積もりなのです。
>>ミカンちゃん
露骨で大喰らいであざとい。だがそれが良い。……シャキーン!!
ついに原作人気キャラの御登場です。エリカ様で彼女を弄る時がやっと来たのかと思うと、今から楽しみでなりません(ぇぇ
以下、人物紹介です。まだ原作主要キャラしか出ていませんので、軽い紹介のみである点、ご容赦を。
●ヒョウタ
DPPt(ダイヤモンド・パール・プラチナ)にてクロガネシティのジムリーダーを勤める少年。眼鏡と、炭坑夫というよりは探検隊っぽい装備が特徴。専門タイプは岩タイプ。原作一人称は『ボク』。
同作品内、ミオシティで鋼タイプのジムリーダーをしていたトウガンの息子。(本拙作ではトウガンさん出演済み。シンオウ編をご覧いただければ)
本拙作独自の設定としては、トウガン絡みでショウと知り合い、遥かシンオウから単身で引越してきている。慣れない寮での初1人暮らしには四苦八苦している模様。作中の手持ちポケモンはヨーギラスとイシツブテ。ショウ(の班員)から譲り受けたズガイドス(化石復活)。
●リョウ
DPPt(ダイヤモンド・パール・プラチナ)にて四天王の先方を務めていた少年。アホ毛。飛び上がったり、飛び上がらなかったり。原作一人称は『ボク』。被っているため、ヒョウタの方を『ぼく』で統一して記載したい(願望)。
原作では、私見だが、ミオ図書館イベントのあるゴヨウ、デンジとタッグのオーバ、キクコの面影のあるキクノ……といった、他の四天王の面々に圧され気味。だがそこが良い。言い回しといい、虫の専任タイプといい、個性はあると思われる。
本拙作独自の設定としては、虫ポケモンをより学ぶ為にポケモン学の最先端、カントーまでやって来ている。エリトレ専攻もその一端。ショウとは図書館仲間である。……つまりは「本の虫」である、と(すいませんです、はい)。作中手持ちはヤンヤンマ、ストライク、ヘラクロス。進化前でも大分強いメンバーだが、リョウ自身はまだバトルにあまり興味が無い模様。
●ミカン
今はまだ、前髪少女という設定で。
彼女については、その内にショウが語ってくれるでしょう。ので、割愛させて頂きます。
●カトレア
未来の四天王、兼、エスパーお嬢様。本拙作中で何度か紹介されているので、同じく割愛。
宣言通り、ショウやミィと共にエリートトレーナーコースへ進学しています。コクラン付きで。
●コクラン
執事のため基本的事項は割愛。まだキャッスルバトラーではなく、また、学生でもありません。
男子学生共の猥談(というには可愛らしいが)にも柔軟に対応して見せるほどの話術を持ち合わせる多芸さは、まさに執事の鑑。
更に、因みに、件の学生達は11才である事をお忘れなく。