「おっす、ミィ。ご足労ありがとさん」
「それは、えぇ。そうね。この暑い中をセキエイ高原まで来たのだもの」
「セキエイまで来たのはエリトレクラスの課外授業だからしゃーない。遠いのはそうだけど、資格取るなら結局は授業参加しなきゃならないしなー」
だからこそ俺ことショウも、海外での活動を終えて大慌てで戻ってきているのだからして。
「グリーンとの、カロス旅は。どうだったかしら」
「おー、新発見ばっかりだった! 俺は半周しか出来なかったけど、向こう行ったプラターヌ兄とも会えたし遊べたし。ん、いい旅だったって言えるだろーな!」
「そう。重畳ね」
バサッと
遠路はるばる、無茶に等しいスケジュールでセキエイ高原にすっ飛ばしてきたのだから無理もない。
……身体はあんまし動かしてないんだけどな? ご友人方々に『テレポート』で中継してもらったから。いやでもあれなんか身体も心も疲れるのはホントなんだよ。ホント。
「で。相談がある、だったかしら」
率直に話題に斬りこんでくれる。
疲労もあるんだろうに、ありがたいことだなぁ……としみじみ幼馴染を堪能しつつ。
「リーフにな、こないだ旅に誘われたんだよ」
「……」
ジト目が痛ぁい!!
予想の範疇なので(冷静)話題を続ける。続けるしかない……。
「来年はほら、1996年だろ? レッドとグリーンは旅に出るって聞いてるけど……」
本人たちがそう言ってるからな。俺がマサラタウンで直接聞いたし。むしろ聞かされた。宣言されたわ。
そうだな。もう来年なんだし、ここで一応、「年下組」の関係性について整理しておこう。
長男レッド。次女リーフ。年始と年末で生まれてるんで、双子ではないのに同学年の兄弟となっている。
あとはそのお隣さん。我が幼馴染2号のナナミの弟、グリーン。この3人が年下組だ。
年下組っていう括りを使うのには、言わずもがな理由が在る。
この3人は原作「ポケットモンスター」において、無印リメイクを問わず重要な子どもであるからだ。
「レッドは、ポケモンバトルに。精を出しているみたいね」
「らしいなー。トレーナーズスクールではぼーっとはしてないってさ。ちょっと逆に見てみたくはある。無口なのは変わらないみたいだけど」
レッドは初代およびそのリメイクであるFRLGの主人公。ポケットモンスターの原点とも呼べる男の子。
無口だが、ポケモンに強く興味を示す。ポケモン側からも好かれるタイプだと言えよう。なにせあいつ、かなり高レベルのオーキド博士のポケモン達に、物怖じせずに絡みに行くからな。大丈夫だって判ってても、ちょっとひやひやするくらいだ。
最近ではポケモンバトルに興味を持ち、スクールでは座学だけだけど好成績を収めたという。俺としてはまだ「主人公」っていう器を見たことないんで、レッドには十分に期待をさせてもらっている。
「グリーンは、今回は。どの街へ行ったのかしら」
「ヒャッコク、シャラと来たんで、いよいよミアレシティに。あそこのスクールはでかいからなぁ。カルチャーショックとかでいじけてないと良いけど」
あえて次はグリーン。レッドのライバルの立ち位置に居る男の子。
キザで、最近はカロスの留学に数度出かけているせいか、やや外国にかぶれて……んん、いや、かぶれてるから別にいいか(放棄)。まぁそんな感じで慣れてない外国語で、伝える気のないコミュニケーションを図ろうとしてきたりする、やや意地悪な面も見える奴だな。うん。
ただまぁ一応言っておくと、グリーンが
他の人に対してはキザだけど悪態とかはつかないな。キザだけど。
「問題の、リーフね。どうするのかしら」
「どうしよかねーぇ」
リーフ。この子だけが立ち位置が特殊なのだ。
ポケットモンスター……いや、地方の括りが判り易いか。ので、地方ごとの冒険で語ることにしておいて。
メタ的な目線において、「カントー地方を巡る冒険」というのは3つもある。
ひとつは初代ポケットモンスター。無印とも呼ばれる、ゲームボーイを発端とするものだ。
バージョンが最も多く存在し、赤、緑、青、黄色の4つ。それぞれ微妙に出現ポケモンが違ったり、ミュウが入れられて返送されたり(されるんだよ)、黄色に関してはそもそも御三家の入手イベントが追加されていたりする。
ふたつめ。上記のリメイク版である、ファイアーレッド、リーフグリーン。
ナナシマが追加されカンナさんについてやや深堀りされたり、ポケモン種の入手幅がやや広がったり、鋼タイプが組み込まれていたりと、最新世代のポケモンシリーズに乗じた改修が成されたものだ。
みっつめ。レッツゴーピカチュウ、イーブイ。これはフルリメイクというよりは、パラレルリメイクというのが適切だろう。なのでまぁ、仔細は語らないでおくとして。
問題はひとつめとふたつめ。そしてリーフという存在の
「今の、リーフは。黒のワンピース。初代の『没女の子』に見えるのよね」
「まぁそうなー。でも旅グッズも充実してきたし、旅に出るんなら普通に着替えるんじゃないか?」
今はそういう風潮があるからなー……と。そう。
リーフは「リメイク版にしか存在しない女の子」なのだ。
「最近のポケモンシリーズだと、主人公として選ばれなかったもう片方は、どこかでキャラクターとして出てくるパターンがあるんだよな」
必ずそうだとは限らないけれども、比率としてな。
ルビーサファイア、ダイヤモンドパール、XYあたりは顕著だろうか。BWみたいにバトルサブウェイの相方として、みたいなパターンもあるのでちょい役の可能性も高いけど。
しかも名前の括りもやや特殊。確かファイル名とかだったはずなんだよな。もちろん、名前の枠組みとして外れている訳じゃあないし。主人公であることは確か。
「それが良い悪いじゃなくて。見たことがあるなら、予測がしやすいってだけなんだけどな」
「えぇ、けれども。リーフにはそれがない。ましてや……」
「そうなー。黒ワンピースの場合、レッドと一緒に旅はしていないってなルートの可能性が考えられる。でも、旅立たせると……主人公の枠を取り合うんじゃないか、ってな恐れもある」
これが自然な流れで「わたしも旅に出る―っ!」って元気よく宣言してくれたんなら心配しなかったんだが。
「その大事な旅立ちの有無を、よりにもよって俺に
「ふふ。いい、プレッシャーじゃない」
うがーってなりそうな頭にコーヒーを注入する。食道経由。
そう。リーフという重要な
「悩むぞー、悩むぞー。悩むぞー……ずずず」
「あら、本当に。悩むのかしら?」
鋭いなぁ。
確かにな。悩むというよりは、ちょっとだけ腰が引けているっていうのが適切な表現だ。
「私たちは。好きに、やるって。決めたものね」
「おう。俺が今よかれと思うことを、やることにするよ。それで駄目ならリカバリに東西奔走するだけだ。それも俺が奔れば良いんだしな」
なんて風に、腹は決めていたりする。
主人公がどうとか、そういうのを決めるのは俺じゃない。
そもそも決める人がいる訳でもないのだから。
「……さて。愚痴を聞いて貰ってありがとな」
「背中は、押して。あげたのだから。頑張りなさいな」
「おー。頑張るぞーっと」
リーフへの連絡経路を考える。メールは……アドレスなし。直接伝えるのが早いか。そうしよう。
決定をひとつ終えつつ、並行作業を欠かさない。
目前に控えたエリトレクラスの夏合宿の課題に目を通しながら……って、おいおい。
「時間的にもう実戦練習始まりかけてるって……! というか俺イーブイしか手持ちいないんだけどまぁいいかなんとかするか練習だしな俺に割り当てられたフィールド何処だーっ」
手当たり次第に道具をかき集め、カントーのエリトレ制服に身を包んで部屋を出る。
うん。慌ただしいことこの上ないな!
ちなみにミィは既に部屋におらず、多分常人は選ばないルート(窓上とかで)で会場に向かったと思われるので足も決断も早すぎる……!
普通に出てこない主人公もいますからね。
そもそもデフォルトネームが同じな様に認識されているけど違う人とかも多いですし。ゴールドシルバーとか。そもそもデフォルトネームすら4つありましたからね。一番上が絶対、なんてことはないわけなんですよ。
強いてリーフと同じ立場に居る人物を挙げるとすれば、クリスとか……(戒め。
だとしても初代(根っこ)はちょっと色々と重要度が違うので、挙げさせて頂いております。
リーフ絡みのお話は多分あとふたつ。
ちなみにですが、主人公たちは(レッツゴーを省いたために)見逃しをしています。
次のお話で回収されるのでご安心を!