ポケットでモンスターな世界にて   作:生姜

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1995/秋へ リーフの思うこと・その3 new!

 

 とある映像を、終える。

 テレビの電源を切って、俺ことショウが振り向いた。

 問いかける。もうひとりの少女へ。

 

 

「……なぁ、リーフ。この試合をどう思う?」

 

 マサラタウンのとある家。

 テレビに繋いだ記録媒体から、とあるポケモンバトルの試合を流したところだ。

 俺の隣に居たリーフは、少しぶうたれながらも。

 

 

「……ねえ、ショウさー。これに答えたら、あたしと一緒にカントーの旅、してくれるの? ホントに?」

 

「答え次第、って感じ。もう半年近く待たせてるのは悪いと思うが……」

 

 

 こちらとしても言い分はあるので、適度に台詞を返す。

 

 

「そもそも俺だって旅に出るのは来年なわけで。その旅のための時間を、リーフに使うってことなんだぞ? そら俺にも利がないといけないだろ」

 

「むー。一緒にポケモン捕まえたりとか。ポケモンバトルの相手をするとか。そういうんじゃだめだってことー?」

 

「そういうデータで済む様なとこは、間に合ってるんでな」

 

 

 にやりと笑って見せると、リーフはますます不機嫌になった。

 ご機嫌は……まぁ一応、取っておくとするか。

 

 

「つーて、リーフには一応別のご褒美も用意したよ。このバトルの感想を聞かせてくれたら、レッドとグリーンと一緒に俺の大学の大学祭に招待するぞー」

 

「ほんと!? ショウの大学って、タマムシ大学の!? 答えるだけで、いーのね! ウソは言わないでよー?」

 

「ほんとほんと。だからまぁ、見るだけ見ちゃあくんないか」

 

「わかった! 貸しいちね!」

 

「貸されちゃあいないんだなこれが」

 

 

 なんともマイペースに、リーフはくるりとテレビの側へと向き直る。

 もう一度、映像を流してやる。……先日の夏合宿におけるベストバウト。「シュンvsイツキ」の試合を。

 むーんと、リーフは少し悩んで。

 

 

「……ルリ(・・)と似たにおいを感じる」

 

「ほーん」

 

 

 それはまぁ、そうだろうけど。

 

 

「もっと詳しく」

 

「ポケモンバトルって、とにかくポケモンを最終進化させて、タイプの相性をつくっていうのが『決めて』だった。少なくとも、数年前までは」

 

 

 リーフがこっちを……俺を見る。

 その所感は正しい。これまでのポケモンバトルを、極限まで圧縮して言語化するとそんな感じになる。

 

 そう。俺がリーフに期待している能力が、これだ。

 彼女はこの世界の人間でありながら。一歩引いた、俯瞰的な視点を持っている。

 

 あれなんだよな。実は、マサラタウンに研究所が移ってからしばらくした時。

 俺は『リーフにモンスターボールを投げられ、何度もぶつけられた』ことがある。

 

 ……最初は冗談だと思ってたんだよ。けど、どうも本気らしくてなー。

 そっから色々とリーフと話もするようになったんだが……。

 

 彼女はレッドやグリーンとは少し違い。家でポケモンバトルを「見るのが趣味」だ。

 つまりそれは「ポケモンバトルを断片化、データ化したものを自分なりに読み取れている」ということで。

 既存のトレーナー達とはひとつもふたつも世代の違う、新世代のトレーナー……に、なれる可能性のある人物だという事である。

 

 話を戻そう。

 リーフが感じていた「数年前」までのリーグでの試合をみると、そういう感想にはなるだろう。

 もっと詳しくと言われていたので、リーフ(9才)なりに頭を悩まして。

 

 

「ショウに合うといっつもこういうむつかしいことされるからなー。改造人間にされちゃうよ」

 

「それはスマン」

 

「だからさー、いっつも言うけどさー。ショウ、あたしに捕まってみない?」

 

「もっとリーフの立場が上になって、福利厚生がしっかりしてたら考えるよ。……ほい、考えはまとまったか?」

 

「ん」

 

 

 リーフは膝に行儀よく手を置いて、首を左右にふりふりする。

 ぴた、と止めたところで口を開く。

 

 

「眼鏡のないほうのトレーナー。『壁を割る』とか『タイプを読まれない技』を駆使してる。『相手も自分のポケモンについて知っていること』を前提にした、『作戦』を持っているトレーナーだ」

 

 

 シュンについての批評。

 次に、イツキについての批評。

 

 

「眼鏡のある奇術師みたいなトレーナー。『自分の強みを押し付け』つつ、『統一性を一点突くことにカウンターを用意』している。普通のトレーナーではないけど、自分の知識に戦法をうまく乗せてる。ジムリーダーとか四天王みたいな、今のポケモンリーグでの勝率が高いオーソドックスな戦法を……だね」

 

 

 ふん、と鼻息荒く。

 リーフは腰に手を当てて、偉そうに。

 

 

「でも、あたしが推す(・・)としたら前のトレーナーだ。負けちゃったけど」

 

「どういうところが好きなんだ?」

 

「うん。相手の策を打ち破る速度がスゴい。何パターンも用意された構築に、即時対応をし続けている。そして自分の武器も用意……しようとしてる、よね? だって、あのポケモン達、トレーナーを信じるってだけじゃなく……最後まであきらめない目をしてる」

 

 

 ……リーフはテレビから視線を外すと、こちらの側を振り向いた。

 彼女にらしい、どや顔で。

 

 

「で、どう? あたしはショウのお眼鏡にかなったかしら?」

 

「そーな。合格」

 

「やたっ。……そうよね、ショウを捕まえるんじゃなくて、あたしが捕まるのもアリよね!」

 

 

 拳を握って天にガッ。

 喜ばしいことで。ただな。

 

 

「実のところ、リーフの旅には最初から付き合うつもりだったんだけどな」

 

 

 その方が「抑制」も「促し」も出来るだろーな、って結論だ。

 この世界に生まれた因子だのに、例外でもあるっていう……源流の特異点。

 その傍にいることは、悪いことじゃあないだろう。向こうが要望出して来てるんだしな、そもそも。

 なんて、正直に言うとリーフは……まぁ、予想の通り。

 

 

「んはー? なにそれー! 聞いてないんですけどー!」

 

「言ってないからな。だって言ったら慢心するし」

 

「慢心しないー!」

 

 

 ぼふぼふとモンスターボール型のソフビボールを俺に投げまくってくるリーフ。

 全部掌でさばいてキャッチして、むむむと唸って噛みついてくるのでそれも捌いて背負い投げ。ソファーの上へ!

 

 

「暴力系ヒロインはモテないぞーぅ。……いや、ご時世的には全盛期かもしれんが」

 

「暴力じゃなーい! ちっくしょー、やっぱりショウは捕まえないとダメかーぁ!」

 

 

 ばたばたとソファの上で四肢を動かす彼女をなだめつつ。

 さーて。これから秋は、リーフらも招待することだし。

 学園祭とかの準備を始めておくべきかね? んー、仕込みしとこ。

 

 







 リーフに組み込まれる要素はまぁFRLGでしかないんですが。
 彼女が黒ワンピースを着ている限り、ピカブイという要素が少しだけ後押しをしてくれます。

 彼女のイベントについてはつべとかで動画でもどうぞ。
 これは世界観的にもかなりのイレギュラーで、作者私的にもおもしろいなーと思っています。
 彼女の「要素の薄さ」に、「外来要素」が割り込んでいるというわけです。

 だからこやつらに目ぇつけられてるって感じですね。
 こやつら。


 あと今日は23時くらいにbwの閑話があがります。
 ノイズのベータ。


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