ポケットでモンスターな世界にて   作:生姜

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1995/秋 字あまりで、3日目

 

 ――

 

 ――――

 

 

 

 Θ―― 管理棟/屋上

 

 

 学園祭の日程も最終日となる、3日目。

 ラムダとの決戦から一夜を置いて、俺ことショウは管理棟の屋上で人を待っていた。

 因みにマイからロコンを受け取った後、シュンは何やら準備をはじめ、早々に管理棟を後にしていた。恐らく改めてナツホを誘い行ったんだろうな。順調な様子で何よりだ。

 ……因みの因みに、少し時間を置いて、学園祭に遊びに来たらしいコトブキカンパニーの令嬢とにらみ合うナツホの姿が目撃されている。うーん、若いって素晴らしい(遠い目)。

 つってもシュンもある程度の「答え」は出すことが出来たらしいし。これは、年末のトーナメントを楽しみにしていようって振りだよな。うん。良きかな。

 

 などと考えつつも俺は現在、屋上庭園の見回りを行っていたりするんだが。

 

 

「さてさて……ん、この樹も無事だな」

 

「ブイィー。……ブィッ♪」

 

「……っと。それはお前もなんだぞ? 無事だったから良いものを」

 

 

 はしゃぎながら頭に飛び乗ったイーブイ(・・・・)の、茶色の尻尾を上目に捉えつつ。

 俺は枝バサミを持ち、『だいばくはつ』によって焼け焦げた枝を切り落として日の通りを良くしてやる。これで根元に異常が無い限りは大丈夫だろう。あとは樹自身の回復力にお願いだ。あの短期間の雨程度であれば、水分の取りすぎで根腐れすることもないだろうしな。むしろストレスとしては良い具合になるかもだ。

 微妙に遠い学園祭の喧騒を聞きながら作業をしていると……園芸のお供、ラジオのスピーカーが震え出した。

 

 

『ガガガッ。……はいはいそれでは、記者放送サークルより、番組を始めますー。本日の昼放送は、昨日のトーナメントに出場しましたおてんば半魚人さんにゲストとして来ていただいています!』

 

『えっ、半魚人ってどこよっ?』

 

『あなたの事ですよカスミさーん。それではそんな愉快なおてんば半魚人さんをゲストにお迎えしまして……タイトルコール! あなたの昼食に素敵な差し水!』

 

『差し水なの!?』

 

『はい、それでは最初のトークテーマ。一般トレーナークラスでありながら大会で優勝しましたカスミさんから、喜びの言葉をいただきたいと思います! この大会での優勝はジムリーダークラスでの単位にもなりますが、進学についてはどうお考えですか?』

 

『……随分とマイペースね貴方達。……でも、わたしが優勝できたのは偶然です。スクールチャンピオンであるイブキさんが生徒会のお仕事で参加しなかったという偶然もありましたし、決勝で戦ったヒトミさんは、わたしなんかよりもずっと強いトレーナーでした。あそこで雨が降り、水ポケモン有利になるという、天候に恵まれなければ全く持って ――』

 

 

 記者放送サークルによる放送番組が始まったようだ。

 先日開かれた学園祭のメインイベント「ポケモンバトル大会」の優勝者である少女……ってか、カスミな。カスミがバトルの説明をしたり、インタビュアーに食って掛かっていたりするのだ。

 因みに俺たちの1つ下のカスミは、一般トレーナークラスに在住のハズ。そんなカスミがよく優勝できたなぁとは思うものの、シュンのアカネが使用した『あまごい』がバトルトーナメントにも影響をもたらしていたらしい。シュンの友人であるヒトミは負けたにしても楽しそうだったし、まぁこういうこともあるだろうと。

 さて、ジムリーダーの単位になる。つまりカスミは、ジムリーダーカッコ仮として活動出来る資格を得たという事だ。最年少ジムリーダー爆誕は原作通りだな。

 

 

「―― 居たわね」

 

 

 カスミの流れに相槌を撃ちつつ、切った枝根にニスを塗り終え腰を下ろした所で、樹の影から声がかかる。

 こんな……脳内は無駄に賑やかだが、実際には非常に静かな……屋上に先んじて姿を現したのは、我がゴスロリの幼馴染。

 勿論、突然現れたことに驚いていてはきりが無い。適当に片手を挙げつつ応対しておく。

 

 

「よっすミィ。お疲れさん。マイの情報と護衛、ありがとな。出来る限りの速さで駆けつけられた」

 

「マイを、守るのは。私のやりたい事でもあるもの。礼には及ばないわ。ナツメにも後で礼をしておきなさい。……それに、疲れているのは其方も同様でしょう。決着は済んだのかしら」

 

「ド!」「ドォ!」

「ビリリリリ」

「キキィッ」

 

 

 しかし今日のミィはドードーの上に跨り、ゴスロリの上にこれまたフリフリの日傘を構えているどこぞの令嬢スタイル。残暑に優しい格好である。足元をビリリダマが転がり、ドードーの頭にイトマルを乗せるというスクールメンバーのポケモンも御一緒だ。

 そのミィが口にした「決着」という言葉には、微妙に顔をしかめ。

 

 

「決着なー……いきなりその話題か。もう少し明るい話題にしたい所だよな」

 

「ええ、お互い様にね」

 

「ド?」「ド?」

 

「ここまでで良いわ。ありがとう」

 

 

 そう言って、ミィは(微妙に残念そうな顔をする)ドードーを降りて、木陰の椅子に腰かけた。どうやらこの場を離れるつもりはないらしい。

 ……んー……まぁ、暫くこのままで良いか。この学園祭までの期間は俺もミィも忙しくしてたしな。休息は必要だろ。

 俺は頭上のイーブイ帽子を取り、ミィの隣に腰を下ろしつつ。

 ミィのポケモン達は促されると、自由に木の実が食べられる生育スペースでおやつタイムに突入した。ついでに俺も膝の上のイーブイを促してみるも、「ブィィ」。断固として動こうとしない時の声。なら良いか。別に重くないし。

 ミィが四次元手提げ鞄から取り出したお茶をありがたく受け取り……ついでに、仕事の進捗でも聞いておく事にするかね。

 

 

「そんじゃあ……んで、シルフの方はどうだった?」

 

「的中よ。―― 強化ランニングシューズは、出資元が覆い隠されていたけれど。件の『パワードスーツ』に繋がる研究で間違いなかったわ。実際に役には立つのだから、止めるのは野暮。私も手伝う事になりそうよ」

 

「そっか。んー、良いんだか悪いんだか判断しかねるとこだな」

 

「そうね。……其方の、ポケモンリーグへの打診は。どうだったのかしら」

 

「こっちは、会長はおおむね賛成してくれたけどそれ以外は厳しいな。資金源と切り離す為には後押しが必要だ。やっぱり来年か……もしくは再来年が好ましいっぽい」

 

「来年……そう。あの、事件の。後になるわね」

 

「あー、そうだな。やっぱりそこが転機になるんだろ。こうして動いてみても、ロケット団の首領が作ったこの流れは用意周到といわざるを得ない。流石の貫禄だぞーと」

 

「……流れ、ね」

 

「そう。流れ。……少しばかり謎解きと行こう」

 

 

 そんじゃあ順に振り返るとして。

 

 強化ランニングシューズとは、ポケスペばりのあれ。ただ衝撃吸収力がとか偏平足を予防だとかではなく、そもそも走る能力を機械的科学的に強化しようという試みだ。現在シルフ社では第一次商業品として「ランニングウィンディ」の開発を行っており、俺はそのテスターというなの実験台を努めている。

 まだ起動時間が短かったり充電機構をどうしようかという改善部分はあるみたいだが、先日ミカンを助けた際に活躍してくれたからな。大変助かりましたまる。

 

 次にパワードスーツ。これは……XYもしくはBW2で研究されていた器具になる。肉体的な補助だけでなくポケモン周辺機器への関渉能力を備えた、いわゆる犯罪組織のお品。スーツとして大々的に使われたのはXYとORASだな。BW2では、ゲーチスさんの持っている杖にその影があったりする。

 ミィに曰くまだまだあの領域になるまでは時間が掛かるらしいが、シルフで行われていたこれら研究の横流しが素体になっているのだろう。産業スパイ様々だ。

 

 最後に、ポケモンリーグへの打診。

 これはまぁ、事件に直接の関係は無く。つまりは俺の目論んでいる構想のための一手。シュン達のおかげで実践できるという確信が出来たため、本格的に動き出してみていたりする。

 ……説明になってない? じゃあその辺は後々、また無駄思考の中で。

 

 さてさて。

 俺があの場……ラムダとの決戦に急行して、少なくとも幾つかの収穫はあった。

 ラムダがこの場所で行っていた研究 ―― 「強制進化電波」。HGSSで言う「怪電波」に関してだ。

 

 

「怪電波。学園祭が『実験場』になっていたのでしょう」

 

「一応被害は最小限だったぞ? 『大爆発』に巻き込まれた庭園の木々が少々。ついでに言えば『実験』の前段階に巻き込まれたガラガラ達の群れとシオンタウンもだ」

 

「ガラガラ。ポケモンタワーの、イベントね」

 

「そうそう。怨が付くにしろ付かないにしろ、念ってのはやっぱ『居ない奴』よりも『居る奴』のが強いからなぁ。タチサレ云々はあのガラガラの生霊ってオチになりそうだ。……無事群れに返すことが出来たけど、暫くは孤児院で対人のリハビリをすることになりそうだったな」

 

 

 それで女神姉妹からジト目を食らってるんで、Mもとい自業自得だが……もう1個解説を加えたい。

 

 強制進化電波といえば、HGSSストーリー上にてチョウジタウンの「紅いギャラドス」を生み出した実験。あの時は湖丸ごとを仕切って実験が行われていたが、強制的に進化させられたポケモンは何らかの不具合を生み出す……かも知れない、という一例だったのだ。

 どっちにしろ、ポケモン達がこの電波を嫌がっていたのは確か。何せ電波装置を置いていた管理棟に近付こうとしてなかったからな。野生ポケモン達。

 ロケット団員達の使ったポケモンが進化してる割に低レベルだったのも、恐らくはこの実験の一環。バトルで使用するに足るのかを確かめていたんだと思う。

 

 つまりこの学園祭を巻き込んだ一連の流れは、「電波の実験」と「電波によって進化したポケモン達の運用実験」を兼ねた、ロケット団ばかりに得のある事件だったという事でまとめておこうそうしよう! うし!!

 

 因みに、爆弾に偽装されていた謎の物体は電波の中継装置だった。そっちを分解しても電波の仔細は判らないんだそうだ、マコモさん談。……電波が「何の研究によって生み出されたものなのか」には俺個人の心当たりもあるが、確定してないんで一旦置いといて。

 その上で電波を発していた大本の機械は、最後まで配置していたマタドガスの『だいばくはつ』で破壊してくってな念の入り様だったしな。こりゃあ、ラムダ相手には気が抜けないなぁと。結局本人にも逃げられたし。

 

 ……あー、でも、被害といえば。

 

 

「直接の被害者は今の所、好奇心一杯に機器に突撃した俺のイーブイだけだなぁ」

 

「……あの『強制進化』の電波を放つ機器に、突撃ね。影響は無かったのかしら」

 

「いや、実は一度進化したんだ俺のイーブイ。な」

 

「ブィーイ」グデェ

 

「……。……何に」

 

「ニンフィアだった」

 

 

 「なつき」と「親愛」がどうやって競合しているのか不明だけど、俺が園芸をしている間にいつも花畑で遊んでいたからか、それともグリーンの送り迎えでカロス地方にちょっとだけ寄ってったからか……いつの間にかフェアリー技を覚えてたんだよな。『つぶらなひとみ』。ニンフィアに進化する条件は整っていたって寸法だ。それでもあのタイミングで進化したのはやはり、ロケット団の怪電波による影響なんだろうけど。

 

 

「貴方の、イーブイが。ニンフィアになったのは納得だけれど。それで、何故今もイーブイの姿なのかしら」

 

「ブィ?」

 

「判らん。退化したっぽいぞ。だよな」

 

「ブィ!」ピョイン

 

「おう……って、また頭の上か? オニスズメといい、俺の頭上には何かあるのか?」

 

「ブーィーイー」グデッ

 

「見えない、見えないぞ前。尻尾がだれてる尻尾」

 

「……はぁ。いつの間に、退化スプレーは。実用化に到ったのかしら」

 

「ブィ!」

 

「ちょおっと腕の中に居てくれよー……と。ってか退化スプレーて、それはカードゲームの話だろーに」

 

「カードでも、ポケモン世界には。違いないでしょう」

 

 

 確かにそれもそうか。カードも漫画もだな。……俺のイーブイ、流石にポケスペみたいに自由に進化できる訳じゃあないんだけどなぁ。苦しんでもいないし。

 あ、一応言っとくとポケモンカードゲーム(初期)に「退化スプレー」っていうカードがあるんだ。一応な。効果は名前まんまだ。

 

 

「んー……つっても、イーブイは環境の変化に敏感なポケモンだ。その辺りが影響してるのかも知れん。強制的な進化だったしな。今後にも影響あるのかは、ちょっと経過観察って事で。まぁ、少なくとも俺はずっと一緒にいるつもりだ。命に別状とかそういう話ではないと思うぞ」

 

「そういう話だったら、貴方は。ロケット団の基地に突撃していたでしょう」

 

「あっはっは。実験結果と内容を漁って対処法を探すくらいはしてたかもな?」

 

 

 やはり、イーブイに悪影響が無いのは、……退化が悪影響なのかどうかはさて置き……何よりだ。

 とはいえ、今後の為にもデータを手に入れておくくらいはしておくべきかね。うん。予定に追加しておこう。

 そんな風に俺がまた仕事を(こっそり脳内で)増やしていると、ミィが空へと視線を向けた。話題を少し変えるらしい。

 

 

「この、学園に。在籍しているトレーナー達は。有名所が多いわね」

 

「そりゃそうだな」

 

 

 確かに、登場する人物の割合として原作における有名所がかなり含まれているのは事実だ。

 でも、それは当然でもあるな。だって。

 

 

「有名所のトレーナー……将来ジムリーダーや四天王に就くようなトレーナーが偶々ここに居るって訳じゃあない。順序が逆なんだよ」

 

「……成程。それもそうね」

 

 

 ミィが理解を示してくれる。

 そうだ。「作中有名トレーナーがここに集まっている」んじゃない。

 

 

「今このカントーで優秀な成績を残しているトレーナーだからこそ、『有名所になる』んだって。未来ではな」

 

 

 《ガサッ》

 

 

 ――《ガササッ》

 

 

 ――――《ドサッ!》

 

 

 

 ……あー、うん。

 

 それで、明らかに〆に掛かった俺の言葉を遮った落下音とかな!

 

 

「……いやほんと、何の音だ?」

 

「集合時間だから、かしらね」

 

「あー、成る程」

 

 

 トレーナーツールの時間は確かに集合時間を指している。

 ミィの言葉に納得した心持のまま振り向くと、木の上を伝ってきたのだろう。這い出てきた不審者が、もぞりとその身を起こす。

 

 

「……ん」ササッ

 

 

 そして、素早く身を隠した。……俺の後ろに!

 ミィに影響されたゴスロリ。しかして丈の短めなスカートと、昨年末に俺がプレゼントした花弁を象った髪飾りが黒髪にきらりと映える。

 ……あー、いや。不審者っていうか、妹だ。俺の妹。マイ。

 妹とは言え、マイはれっきとした原作キャラ。プラチナはチャンピオンロードの脇道で出会うトレーナーで、シェイミの一連のイベントに関連していた。その辺りはまぁ、原作を参照していただくとして。

 千葉県在住じゃあないから大丈夫だと思いたいが、それにしても、俺やミィ……カトレアやエリカ辺りに引っ付いて歩いてばかりなのが心配だったんだよな。マイは。けどそれも今回の学園祭を通してシュン達と知り合ったお陰で、少しずつ改善傾向にあるっぽい。その点については、素直に嬉しい出来事だ。

 とまぁそんな妹と、本日は学園祭を回る約束をしていたのだ。集合時間ぴったりの現地集合。とはいえ集合の仕方が「木の上から飛来する」のはミィの影響を受け過ぎている気がしないでもなかったり。

 ……そんなマイが来たからには、こいつも外に出しとくべきだろう。

 

 

「さぁて、と。外は気分が良いぞー! 皆こーい」

 

 《ボウンッ!》

 

「のっ、のっ!」ボチャン

 

「――」スタッ

 

 

 ボールから出て近くの小川(屋上水路)に着水するヒンバス。

 そして、もう1体。赤くりくり巻き毛のおキツネ様はというと。

 

 

「―― コォンッ」プイッ

 

「ん? そこ……木陰よりも日向のほうが良いのか? まぁ日照の一族の末裔ってんなら納得できる」

 

「……コォン」

 

「でもお菓子とかいらんのん」

 

「……」プィ

 

「そっぽ向いたかー。……とまぁロコンはこの調子でな。流石は日照一族の秘蔵っ子って感じで、プライド高めらしい」

 

 

 たっぷり3メートルは距離をとった場所で太陽を見上げて動かないロコン。マイが俺の事を心配そうに見上げているが、まぁ、貰ったばかりのポケモンはこんなもんだろ。今はメガシンカできるほどになったピジョットだって、ポッポだった最初の頃は『かぜおこし』の練習1つするにも大変だったしな。

 メガシンカの要因については、実はというか当然というかあまり詳しくはわかっていないんだが……少なくともダイゴから貰った「ピジョットナイト」と、最近ミアレに引っ越したプラターヌ兄弟子との研究で使っていた「キーストーン」が揃っているため進化が出来ていた。

 キーストーンはルリ御用達の(かんざし)に埋め込まれているんで……何だろう。「メガカンザシ」? 語呂が悪いな。でも簪を英訳するとこれ以上に語呂が悪いし、そもそもヘアピンはダイゴと被るんで別に構わない気もする。

 ……あ、そうそう。プラターヌ博士はナナカマド博士の弟子な。「進化」という要素を研究する同門なんだこれが。

 さて。話が跳んだがメガシンカの為に、原作で言うなら「絆」が大事なんだと思う。けど別に懐いてなくてもポケパルレこなしてなくても進化は出来るし……やっぱり不明な点が多い。その辺りはまぁ今後の課題としておこう。また増えたぞ課題。

 と、いう訳で。妹には心配はいらないぞと髪をすいておいて。

 

 

「単純に仲間が増えてくれるのは嬉しい事だって。スクールのメンバー3体も揃ったしな」

 

「成る程、そうね。……私も年末のあれに参加しようかしら」

 

「あれって、あー、あれか?」

 

「ええ。エリカが、何か。楽しそうなイベントを催すと言っていたもの。ナツメも協賛らしいわ」

 

「だなー。エリカの企みとなると楽しそうだ」

 

「貴方の、好みに合った。催しにするでしょうね。エリカなら」

 

「言葉に他意があるぞ、他意が。……でもまぁ、トーナメントは間に合わんだろーけど、俺も参加するか」

 

 

 更に更に、せっかく3体居るのだからとそんな催しへの参加予定も追加しておくとしてだ。

 ……俺は腰を上げる。

 

 

「っと、そっちのけで悪いなマイ。そんじゃ ―― ほい」

 

 

 そして、右手を差し出す。マイはそれを、不思議そうな表情で見つめ。

 

 

「……?」

 

「手。3日目となると人ごみも客引きも凄いからな。離すなよ?」

 

「……。……うん……!」

 

 

 僅かに迷った末、俺の服の裾を離し、手をぎゅっと握った。

 マイは姉代わりのミィに似た能面の中に、笑顔を浮かべてくれた。

 

 

「……うん。……プラチナ嬉しい……」

 

「……はぁ。その知識はどこから得たんだ。というか、プラチナを上級詞として使うのは別の妹に任せておいてくれるとありがたいんだが」

 

「確かに、プラチナ(で活躍する)妹なのだけれどね」

 

 

 などと突っ込みを入れつつも、これにて、学園祭の本当の終幕。

 決め込んで、妹に引かれつつも屋上を降りてゆくことにする。左にはミィ。

 ……うっし。

 暫くは大変だった分、俺達も学園祭を楽しむとしますかね!

 





 ながぁくなりました学園祭編にお付き合いくださり、ありがとうございました。
 私にとっての「ちょっと」が1ヶ月くんだりそれ以上なのは駄作者故の不出来につきご容赦をいただければ。
 付けたしは各所ショウの場面になります。そのため、今話の説明箇所が分割され、前話が短めになりました。
 文章量の比が悪くなりましたが、大分裏話も出来ましたし、そういえば最初ってこんな感じで書いてたなーと振り返ることが出来て結果的には良かったと感じます。
 「謎解きと行こう」の台詞がお気に入り。見るからに役目からに転生者たるショウの題目ですね。
 作者的なタイトルは★学園祭、★バトル展開、★シオンタウンのガラガラ、★メガシンカ、★電波というHGSS伏線、★ロケット団、★ラムダの目論見、★スクールにおけるシュンのバトルスタイル確立、★XY系列への伏線、★イーブイの特殊能力付与、★マイおよびマコモさんご登場、★ショウのスクール仲間3匹目 ―― その他細々。詰め込み過ぎのきらいがあります(苦笑。
 その辺り構成下手なのでしょうと実感しております次第。
 次回は少し日常編(ポケウッドアクションでフラグを完成させたお方のイベント消化)を挟んで、いよいよ冬編の最終章となります次第ですね。おおよそは主人公が解説してくれたので、あとがきでの解説は多分これ以上ありません。
 ではでは。

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