ポケットでモンスターな世界にて   作:生姜

152 / 189
1995/冬 冬でも青い

 

 オレの日課となったバトル練習にケイスケが加わり始めて、数週。

 黒板の前。学長とエリカ先生の挨拶の後。教壇に立ったゲン先生はマイクを掴み、朗々と口を開く。

 

 

『それでは皆、年末のトーナメントに向けて休みの間も研鑽を積んでくれ。……解散!』

 

 

 声に応じて、エリトレ学生らが休みの予定について話しながら方々へと散ってゆく。

 11月の序盤。エリトレスクールは年内の講義すべてを消化し、遂に冬休みに突入した。

 因みに、講義の内容もルリの言っていた「技」なんかに食指を伸ばし、大詰めを迎えていた。とはいえそこから何を学ぶのかはオレら次第なので、やはり自主性が大きいな。うん。エリトレクラスってこんな感じだよな。

 

「(……さて。オレも今日こそはショウに相談したいことが……と)」

 

 結局あれから、ショウと顔は合わせるにしろ、ゆっくり話す機会がなかったからなぁ。この休みの入りを是非とも狙いたいと思っていたのだ。

 階段状になった大講義室の中ほど。オレも伸びをしておいて、白衣を抱えた標的(ターゲット)を前列に確認。

 それじゃあショウを、と。

 

 

「なぁ、ショウ。話したいことが ――」

 

 

 前列窓際に座っていた男子目掛けて声を降らす。

 しかし。当のショウは、微妙に顔を強張らせて素早く腰を上げていた。オレは声掛けを中断しつつ。

 

 

「―― ってどうした。挙動不審だな、ショウ? 隕石でも落ちてくるのか」

 

「おっと……そんでもって隕石から現れた謎のポケモン、未知との遭遇……となるとロマンだけどな。いや悪い、シュン。時間がないんだ。次いでカトレア、今日の講義は夜にな!」

 

「……あっ」

 

「……」フリフリ

 

「おいー……って、もう居ないし」

 

 

 隣に居たカトレアに声をかけ、最近やけに一緒に居るミカンに目線を送り。ばっと身を翻し、ショウは何処ぞへと消え去ってしまう。

 そしてすぐ後。……そんなショウの居た辺りに2名、青縁と深青の髪を揺らす双子が駆けて来た。

 

 

「……っ、居ませんわっ!」

 

「居ませんねー」

 

 

 彼女らの名前はコトノとコトミ。よくよくショウに絡んでくる双子だ。姉がコトノで妹がコトミ。今日はどちらもツインドリル(っぽい)髪型をしているが、妹の方がやや髪色が薄くミドリがかっているのが特徴だ。

 そのまま周囲をきょろきょろと見回す双子。そしてその内、辛うじて話の通じるほう(妹)とオレの視線がバチリ。

 いやさ。バトルも恋も始まることは無い訳だが……仕方が無い、こちらから話しかけますか。妹には日本語が通じたはずだ。姉はちょっと謎言語の使い手なので判らないが……よし。

 

 

「こんにちは、コトミ。ショウでも待って……いや、待ち伏せていたのか?」

 

「こんにちはですシュンさん。……そうなんですけど……この様子だと、逃げられちゃいましたね?」

 

「ご覧の通りだよ。ショウは窓から、こうな」

 

 

 凄まじい加速力で飛び出してたからな。アイツ、連絡を寄こさない双子に痺れを切らして第六感を覚醒させやがったな!

 ……あいつは以前から「悪い予感だけは当たるんだ」って豪語してたな、そういえば。ルリも似たような事を言ってたし。なんだ、ポケモンバトルをしていると第六感に目覚めるのか。オレはまだだし目覚めたくもないけどさ。

 妹はふぅと息を吐き出すと、ショウが逃げた窓を身を乗り出して覗き込んでいる姉の首元を引っ張って体を戻した。妹は容赦ないな……と若干引いたオレに向かって、一礼。

 

 

「情報、ありがとうございます。……でもショウさんに逃げられたのならしかたがないですね。あの人を追っても追いつける気がしませんし。帰りましょうか、姉さん」

 

「ですの」

 

「―― あ、ちょっと待ってくれるか?」

 

 

 その2人を、オレは呼び止める。

 いやさ。ショウに聞きたいこととは別口なんだけど。

 

 

「少しで良い、丁度2人に聞きたい事が有るんだ。時間を貰えないかと」

 

「……? それは内容によりますの」

 

「というか、その、シュンさん。……奥からナツホさんが凄い顔で睨んでいらっしゃるのですが……」

 

 

 現在、背後、凄まじいプレッシャーである……!

 しかし女子に声をかけたくらいで、これか。いや。これもツンデレとしての責務(ツン)なのだろうけど。

 お疲れ様です ―― ナツホのお得意『にらみつける』には目線で土下座をしておいて。ばっちり(じっくり)見つめ返したら赤面して顔を逸らされた。兎に角。

 

 

「話はここでするよ。何かやましい事をする訳でもなし」

 

「―― なになに、面白い事やってるね!」

 

「ぐぇっ……引っ張るなら首もと以外にしやがれヒトミ!」

 

 

 後ろからはヒトミが身を乗り出し、聞き耳を(盛大に)たてている。身を乗り出した際に手をかけていたユウキの襟が引っ張られた結果が上記の悲鳴である。無言ながらゴウとノゾミもやや離れた位置からこちらを見ているようだ。話を聞くというよりは、オレを待ってくれているらしい。ごめんな。そしてケイスケは眠っている。

 ……とはいえギャラリーは関係なく。防御力が底をつく前に、さっさと聞きたい事を尋ねるべく、素早く話題を切り出してゆく。

 

 

「ちょっとショウの事を聞きたくってさ」

 

「「ショウの?」」

 

「ああ。双子はホウエン地方出身だって聞いたんだ。……2人がショウに絡むのって、サイユウシティでのバトルが切欠だったんだろ?」

 

「ええ、忘れもしません。あの時のショウは燦然と輝いておりましたもの」

 

「あははは。わたしも姉さんも、偶然観戦に行っていたんですけどね」

 

「そんな、ショウの事を知ってそうな2人に聞きたいんだけどさ。……なんであいつ、ホウエン地方でのエキシビションマッチなんかに呼ばれていたんだ? 少しでも理由を知ってるかなぁと」

 

 

 うん。とりあえずはここを聞きたい。

 ショウはカント―地方出身で、研究者としては確かに有名だ。天才という肩書もあるし、ポケモン図鑑、化石再生技術や悪・鋼タイプに関連する項目では必ずと言っていいほど名前が出てくる程にだ。それは過去の資料を見ても確かである。

 ただ、ポケモントレーナーとしてはあまり積極的じゃあなかったはずなんだよな。そんなショウが公的な場に始めて姿を現したのが、このホウエン地方リーグ開催エキシビションマッチだ。これはショウを知る為に有用だろう……と考えての質問である。

 双子はいったん顔を見合わせる。ショウについての内容だからか微笑みを浮かべて、姉。

 

 

「シュン。貴方は、エニシダという人を知っておりますの?」

 

「……いや。残念ながら、聞いた覚えがないよ」

 

「まぁ他の地方の人なら仕方がないですよ。……ですがそのエニシダさんという人は、実はホウエン地方ではかなりの有名人なんです。うーん、顔が広いというのでしょうか? ポケモンバトルクラブの人々からの依頼を受けて、土地を探し、出資者を募り、人を集め……遂にはポケモンバトルに長けたサイユウの街を文字通りに『創り上げた』人なんです」

 

 

 それはまた、何というか……すごい人だな。

 後ろのヒトミやナツホからも感心したような吐息が漏れる、が。

 

 

「ええ。実際、すごい人なんですよ。……ただし……あはは。エニシダさん、結構な変人なんですけれど」

 

 

 コトミの一言でぶち壊されていたりするなぁ。

 ああ、なんだろうな。この既視感。凄いと変人はイコールで結ばれているのだろうか!

 

 

「さて置き。エニシダ方に見込まれた人たちが中心となって作り上げられた場所こそが、サイユウシティ ―― ホウエン地方のポケモンリーグですの。お判りでしょうか?」

 

「すごい(変な)人がいて、ホウエンにポケモンリーグを造ったっていうのは判ったよ」

 

「その理解で構わないですよ。シュンさんが聞きたいのはここからでしょうし。―― そして、そんなリーグ開催に伴って、エニシダさんはエキシビションマッチを開催します。どこからか訪れていた見知らぬ少年をゲストとして、ですね。ここでショウさん登場です」

 

「ショウが選ばれた経緯などは、コトミだけでなく、関係者の殆どですら知らないですの。エニシダその人が強権でもって、天才少年研究者だという一点を突っ張り通したというのが実情かもしれません」

 

 

 見知らぬ少年を、という表現に当時の風評がうかがい知れるな。それでもショウは結果を残したので、結果的にエニシダさんの人を見る目は確かだったという顛末なのだろう。

 戦績は、確か合宿の時に聞いた筈だ。オレの思考を、後ろに居て聞いていた(転勤族。元ホウエン出身の)ヒトミが引き継ぐ。

 

 

「現ホウエン四天王のプリムさん、ゲンジさんに勝利。カント―四天王のシバさんに勝利。チャンピオン……は今は代行に頼んでるけど、本来のチャンピオンのダイゴにも勝利したんだったよねえ」

 

「ですの。……嗚呼! あの時のショウの見事なまでの策略の冴え! 意を汲み、華麗に応えてみせるポケモン達!! 次々と光を放つその様は、まるで地上に降り立つ太陽神(キマワリ)が如く ――」

 

 

 おおっと、姉の悪い癖が出ているな。

 姉の口上はBGMに回しておいて、妹がフォローに入る。

 

 

「でも、姉さんの言い方は、この件に限って言えば大げさ過ぎる表現という訳でもないんですよ?」

 

「それは、どういう?」

 

「だってショウさんはプリンとピジョン、それにニドリーナ……最後はニドクインに進化しましたが……まぁ。そんな未進化の、別段に珍しい訳でもないポケモン3匹で勝ち進んだんです!」

 

「しかもその年には四天王になるレベルの実力者を相手に、だねえ?」

 

「はい! それって、他でもなく、トレーナーのショウさんが凄いんだ! ……って年齢関係なく誰にでも、一目で判ると思いませんか?」

 

 

 注釈を挟んだヒトミの言葉に、コトミは拳をブンブン振り回しながらテンション高く応えた。……それは、そうだな。思うかも。

 妹の言葉に続き、ようやくとテンションを取戻した姉は誇らしげに頷く。

 

 

「事実、あの頃のホウエン地方は『バトルクラブのトレーナーには負けても仕方がない』といった風潮がありましたの。今思えば、エニシダ方はそんな空気を打開したかったのやも知れません」

 

「おかげで第1回のポケモンリーグ本戦はかなり賑わいましたからね。かくいうわたしも姉さんも、そんなショウさんを見て、カントーに帰ったらエリートトレーナー資格を取ろうと決心しましたから。……本人にあえるかもという下心もありましたけれどね」

 

 

 あはははと誤魔化しつつ笑うコトミ、あくまで誇らしげに胸を張るコトノ。

 でも、2人の言葉のおかげで何となくだけど判ったぞ。ショウがホウエンの人たちに尊敬されている理由が。

 そして、ショウの立ち位置が……元チャンピオンと同じ高さにあるという事も、同時に判明。ホウエンの人々を奮わせたショウのエキシビションマッチは、「カントーにおけるルリ」のそれらと全くもって同じ役目を持つ立ち位置にあるのだ。

 

「(ルリのあの動画、そしてチャンピオン位への就任が、カントーとジョウトに大きな影響をもたらしたってのはオレも身に染みて実感してるからなぁ)」

 

 つまりは、ホウエンにとっての転換期。

 ポケモンを鍛えレベルを上げる事こそがトレーナーの至上命題とされた過去(かつて)とは一線を画す ―― ポケモンバトルが迎えた新たな局面への。

 

 だとすればやはり、ここから先は本人へと直接尋ねるべきなのだ。

 

 

 

 ΘΘΘΘΘΘΘΘ

 

 

 

 双子にお礼を言って解散した後、オレはユウキからの(ヒトミとのバトル練習をなすり付けようとする)誘いを丁重にお断りし、ゴウとヒトミに断りを入れ。ナツホには土下座を繰り出し、1人でタマムシシティの北側へと脚を向けた。

 理由は単純。というか話の流れ。ショウに合うためだ。

 校舎を出たところでショウへ話がしたい旨のメールを送った所、やはり双子から逃げていただけらしく、時間は有るとの返信が届き。流石に逃げていた側であるショウを呼び戻すわけにもいかず、オレがそちらに向かっているという流れだったりする。

 ……ただ、なぁ。

 

 

「その移動先がタマムシ郊外の森の中というのは、学生としてどうなんだ?」

 

 

 なんかこう、やましい事をしてます的な感じがする。それは嫌だぞ。

 それにオレとしては学園祭のマイの事件の例もあって、良い感じがしないというのも大きいな。今にも木の陰からひょこっとロケット団とかが出てきそうというか。いやさ、実際にはひょこっとだなんて軽快な音はしないのだろうけど。むしろ警戒な感じ。

 しかしそのまま、添付されていた衛星地図に従いずんずんと進んでいくと、少しずつ木々が薄くなってくる。

 ……いたいた。ショウだ。

 

 

「いや。居たけど、さ。なんだあれ?」

 

 

 疑問符が浮かぶのも当然。

 

 ―― 何せ、目の前にいるショウは「ちょっとだけ浮いている」のだから!

 

 うん、大丈夫。エスパーに開眼した訳じゃあないだろ多分。その種は足元に有ると見た。なんか空間とか歪んで見えてるし。

 などと考えを展開させつつ近寄っていくと、ショウも此方に気づく。地面に降りたショウに向かって、オレは適当に手を挙げた。

 

 

「よっす、ショウ。浮いた話には事欠かないな」

 

「おいっす。悪かったな、シュン。わざわざこっちまで来てもらって。……ってか浮いた話に事欠かないって只の警句だぞおい」

 

「実際、警句だからな。というか話が有るって持ちかけたのはこっちだから、ここに来るのは別に良いさ。それと大丈夫。双子は今日は諦めるって言ってたぞ」

 

「おおっと、それはありがたい」

 

 

 おどけながらも、ショウは足元で「靴」の腹を触る。ぽちっとな。何かしらのスイッチを押したような。

 ……流れで何となく判るけど、後学の為に聞いとこう。

 

 

「それで、双子から逃げたショウはこんな場所で何してたんだ?」

 

「あー、実はオレ用のランニングシューズを試作で思索しててな。試し走りしてたんだ」

 

 

 この場合の「ランニングシューズ」はただの靴じゃない。この間にルリも履いていた、シルフ社開発の加速装置(夢とロマン)の事を指している。

 言いながら、ショウは左右の靴を持ち上げてみせてくれた。

 眩しいまでの真っ白々(まっしろしろ)を基調としながら……しかし、靴の側部を彩る蛍光ラインの色が違っている。右は淡い栗色で左は紫。ただ、コントラストは歪ながら形は揃っている。靴を左右で間違えたとか、うっかりの類ではないらしい。

 

 

「今使ってる機能は右がフライングピジョット、左がプレジャーⅡ世(ジュニア)だな」

 

 

 左は兎も角、右にご注目。ごつい外付けパーツが附属している、ピジョットの名前がついた靴。

 ……聞き逃せない単語があったぞ今!!

 

 

「フライング、って。まさか……まさかだ!?」

 

「あー、ご想像の通り。どうやら機能をキチンと使えれば飛べるらしいな。反重力なんたらで! ……まぁ今の俺はそこまで慣れてないんで、この通り、左足の念力場フォロー機能を使って多段ジャンプが良い所。要練習だな!」

 

 

 それは人類の発明で良いのだろうか ―― いや、流石はシルフカンパニー!

 こんなこともあろうかと、の潤沢なる精神である!!

 ……はい。取り乱しました。多段ジャンプて。若者の人間離れは深刻だなおい。

 

 

「あっはは、判る判る! 加速装置だけでなく飛ぶとなると、テンションあがるよなー」

 

「理解してくれると嬉しいよ。……そういえば、ランニングシューズって名前とかも有るんだろ?」

 

「あるある。これはまだ開発中で本決まりじゃあないが、ドーブルをイメージしてたんで『ペインタービビッド』って呼んでるな」

 

画伯(ペインター)か。それは確かにドーブルっぽいかも知れないな」

 

「だろ。……ただ、開発と調整を担当した技術さん曰く、多機能の先鋭特化(ピーキー)を地で行く『非売品のプロ仕様』だそうで。靴の機能は容量だけを重視しててな? 外付けのパーツとか外部インストーラーで自由に特化機能を変えられる……ってコンセプトなんだ。こんな風に」

 

 

 ショウが踵のパーツを外して端末をぽちぽちすると、栗色から赤、濃い紫、虹色と蛍光線が色を変える。

 話からすると只のイルミネーションではなく、その度に機能が変わっているのだろう。興味は有るけど……お高いんでしょうね!

 

 

「機能からすれば相応だけど、一般的な感覚では高いだろーな。なにせランニングウィンディとかの市販品と比べると機能の枠組みからして違うからなぁ。エネルギーも電気じゃなくて土着の不思議パワーに頼るつもりなんで、バッテリーが摩訶不思議な感じだし。この間マコモさん達と話してただろ? О(オー)パワーとかハイリンクのデルパワーだとか。そんな感じな」

 

「そういや聞いたな」

 

 

 そのまま幾つか説明をしてくれる。

 因みに『プロ仕様』にも理由があり、将来にトレーナーとポケモンが同時に参加して行うスポーツなんかで使う予定らしい。その時には勿論、レギュレーションがあるんだろうけど。

 

 

「そういうのって維持費とかもかかるんじゃないのか?」

 

「それは大丈夫だろ。部品の交換でも行わない限り、維持費の大半って人件費だからなー」

 

「人件費が節約されるってことは……つまりショウが自分でやるって事か。大概だな、相変わらず」

 

 

 思わず苦笑いになってしまう。

 しかし、そんな靴があるならオレも欲しいとは思うけど、流石に「プロ仕様」とやらには手が届かない。

 だとすると、だ。狙いは市販品になるわけだが。

 

 

「……因みに聞いとくけどさ、ランニングウィンディは幾らで売り出す予定なんだ?」

 

「今は市場に競争が無いからな。〆て45800円なり。充電池別売り」

 

「うわ、十分高いだろそれ」

 

「ランニングウィンディの他にもエレクトリカルラッタとか、女の子用のアイドリングピッピとかが同時発売だそうで。こっちのはもうちょい落とせるらしいな、機能も少なくなるが」

 

 

 そして他のは兎も角、エレクトリカルラッタて。何と言うか、危ないだろ。

 ラッタはキチンと電気技を覚えるのでネーミングそのものは別に良い。きっと男児向けに電飾がぴかぴか光るのだろうって予想がつくし。

 ただ……明言は出来ないけど……こう、著作権とかさ。「エレクトリカル」と「ネズミ」っていう語呂の組み合わせがな。夢の国チキンレースというか。むしろそれ、ピカチュウでよくないか?

 

 

「んー……パレードする訳じゃあないし大丈夫だろ。むしろそこにピカチュウを混ぜるほうが喧嘩を売ってる感が強いと思うのは俺だけか?」

 

 

 言われてみれば確かに。真正面から拳骨振りかざしてる感じかもだ。

 よし。じゃあやっぱりラッタで良いか(そもそも悪いとは何か)。

 

 

「あー、因みにランニングシューズ第一弾は『新人トレーナーとなったお子さんへのプレゼントに!』って売り文句で、発売は3月初めくらいらしい。四次元鞄やトレーナーツールと並んで、CMにはアイドルトレーナーの方々を起用してたんで、そろそろ放映され始めると思うぞ」

 

「最近のアイドルトレーナーといっても、オレ、テレビはあまり見なくなったしな……。ミミィちゃんくらいしか知らないぞ」

 

「お、でもそのミミィと同じ事務所の先輩だよ。ソロデビューしてから3年くらいの。あの人、最近は女優業にも手を出してるらしいが……はてさて、どうなるやら」

 

「……おいショウ。その口ぶりは、まさかの知り合いか」

 

「あー、知ってるな。連絡先とか」

 

「みてな。お前今に爆発するから」

 

「手持ちに『しめりけ』入れとかなきゃな」

 

 

 等々。

 どうでも良い話題をクッションにしておきながら、オレは切り出すタイミングを見計らう。

 しかし流石に空気を読むのに長けたショウが、先んじて口を開いてくれた。

 

 

「そんで、オレに聞きたいことがあるって言ってたな。それって時間掛かるか? オレは今日実家の方に泊まる予定でここらに居たんだが」

 

「時間……うーん。悪いけど聞きたいことが幾つかと、相談もあるから、時間は余裕を貰いたいかな」

 

「あー、いや、実家に連絡入れるってだけだよ。休みに突入したし、別に時間は気にしなくて良いって。んー……でも、真面目な話っぽいし移動するかね。流石に森の中だと色々と気を使うからな。ロケット団とか」

 

 

 やっぱりロケット団はひょいひょい現れる害虫扱いなのか……との突っ込みを入れる間もなく、ショウは森を突っ切ってゆく。いや。道中で突っ込みはしっかり入れとくとして。

 森を抜けるとすぐ、細い路地に突き当たった。どうやら立ち並ぶマンションの裏側であるらしい。どうにも寂れた雰囲気で、薄暗い。

 

 

「よっ、と……ほい。ここの上にしよう」

 

 

 殊更に軽い調子。あげた親指で、ショウは後ろの扉を指し示した。

 釣られるように見上げると、夕日と森とに囲まれて陰が射している。日陰に佇む扉。マンションの裏口だ。年季が入っているのだろう。錆び付いている箇所がそこかしこに見受けられる。

 

 

「入って良いのか? 裏口とか」

 

「許可は貰ってるよ。ここの花壇の整備は当番制だからな。今日は俺の日なんだ」

 

 

 そういうとショウは鍵を差込み、すんなり扉を潜ってしまった。

 ……仕方が無い。後を追うとしよう。

 





>>11月の序盤
 既に義務教育もしくは高等教育レベルは超えているので、休みの期間はとても長くなりますね。
 連続で休んでばっかりな気もしますですが、冬はバトル連打で尺を取りますのでご容赦を。というか講義部分は長くなってしまうので。


>> まるで地上に降り立つ太陽神(キマワリ)の如く――

 それで例えは合っているのでしょうか……太陽神光臨の様。

 晴れ下で能力を発揮するキマワリさんをネタ的に例えたのが太陽神。
 遂にフレアドライブを習得したのが唯一王。
 それは兎も角、聖なる炎を享受なされた唯一神。
 メガシンカで公式にすらネタにされ続ける宿命を背負うエビフリャー。
 鋭い眼光でにらみつける真唯一神。
 壁や地面を這いまわっていたゴキブロス。

>>三点リーダ
 最近多用しすぎな気も……(ぉぃ。
 とはいえそこで悩んでいると、また速度が遅くなるので、減らせるだけは減らしてあまり気にしない事にしました。

>>ピカチュウ
 それにしても、ポケモンの二次創作を書いているというのに、ピカチュウという単語を使った場面があまり思い出せず。かなり久しぶりに使った気がするのは気のせいでしょうか……(震え声。
 世界一有名な電気ネズミとは、一体なんだったのか。


>>夢の国チキンレース

<コンコン

 ……おや? こんな時間に誰かがご訪問なされた様子です。
 それではでh(


▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。