ポケットでモンスターな世界にて   作:生姜

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 意図せずして前後編に分かれてしまったので中継します。
 レベルはバトル前、設定上のもの。たまにダメージとか計算して上下する程度の不確かなものです。
 ですが、今の所イーブイ以外はレベルに大差ないのであまり関係ないです(ぉぃ。


・アンズ
 Θアーボ LV:20 ひんし
 Θベトベター LV:25 バトル中
 Θコンパン LV:23 未出

・シュン
 Θクラブ LV:24 未出
 Θマダツボミ LV:21 ひんし
 Θイーブイ LV:15 ついさっきボールから出た





1996/冬 大会予選 勝ち抜け決定戦・下

 

 

 

『おおっとぉ! シュン選手、次手としてイーブイを選択!!』

 

『アンズさんから許可を貰った「次の局面」に突入した様ですし、解説を始めましょうか。……アンズさんが得意としている戦法は ――』

 

 

 解説が再開されて少しだけ騒がしくなった闘技場(バトルスペース)の中。

 木々に囲まれた草むらの上で、アカネとベトベターとが対峙する。

 さあ。予想通りに進むかどうか、ここが天下の分かれ目。分水嶺とやら。

 オレとアンズさんの指示が飛ぶ。

 ……見せてやろう、アカネ!

 

 

「絡め手、忍法『毒の陣(どくびし)』にござる!」

 

「アカネ、『みがわり』!」

 

『―― アンズさんが得意としている戦法は、この『どくびし』から始まる持久戦なんです』

 

 

 カレンさんの解説に重なって、ベトベターが足の踏み場もないほどの広範囲……オレのポケモンの出現スペース一帯に、『どくびし』をばら撒いた。

 対するアカネは、自分の周りにHPによるバリアーを張る『みがわり』。

 お互いに変化技からの入りになったが……よし(・・)

 

 

「続けて『縮小変化(ちいさくなる)』!」

 

「ベタァッ!」

 

「こっちも『のろい』だ、アカネ!」

 

「ブゥィ」コクリ

 

 

 続けて重ねて、変化技!

 アカネが『のろい』で防御力と攻撃力を上げれば、ベトベターが『ちいさくなる』で身体を小さくして回避率を上げてくる。

 小さくなったベトベターの体長はさっきの半分ほど。まだ大丈夫だけど、このまま小さくなると草むらに紛れて見えなくなってしまうかも知れないな。考慮にいれとこう。

 アカネとベトベターが一定の距離を保ち移動をしながら様子を窺っていると、その間に解説も進む。

 

 

『カレンさん。アンズ選手が持久戦が得意というのは、どういう?』

 

『はい。―― アンズさんの手持ちポケモンはベトベターに限らず、相手を毒状態にする技を多種多様に用意しています。そこへ『ちいさくなる』で回避率を上げて……毒状態が大きなダメージになってくる持久戦を挑んだり、『ベノムショック』や『ベノムトラップ』による追撃を行うんです』

 

『なるほどぉ。それが毒状態を軸にするアンズ選手の戦法、という事ですかぁ!』

 

『ですね。……今、シュン選手のイーブイが使用している『みがわり』はその点について考えると良い手といえます。『みがわり』にはほとんどの変化技……ダメージのない技を無効化する効果がありますから』

 

『流石はカレンさん、詳しいですよぅ!!』

 

『そのための解説席ですからね』

 

 

 カレンさんの詳しい解説が入るものの……その通り。

 アンズさんはこちらがイーブイ(アカネ)を出したと知って、自身の得意とする持久戦を仕掛けてきているのだ。

 ……恐らくだけど、アンズさんはオレのアカネに「決定力のある攻撃技がない」と考えている。それはオレにしてみればアカネの引っ込み思案な性を考慮した結果なのだが、裏を返せば能力をアップさせる「積み技」を使用し易いという事でもあるからだ。

 

 

『既にフィールドに出ているイーブイに『どくびし』は効果を発揮しませんが、『ちいさくなる』によって攻撃があたらなければ、いずれは他の攻撃技によって倒されてしまいます。続いて出てくるクラブは『どくびし』に引っかかり、毒状態のまま『ベノムショック』によって倒される ―― という算段なのでしょう』

 

『ほう』

 

『ほほう』

 

 

 アンズさんの許可を得ているからか、カレンさんが随分と突っ込んだ部分……このバトルの後々の展開にまで解説をのばしてくれる。

 ただオレとしても、その辺りは大丈夫。予想できているので、バトルの展開についてはまだ変える必要はない。

 

 

「ベタァッ!」

 

 《シュンシュン!》

 

「ブィ……!」

 

 《グィィッ》

 

「ベタベタァッ!!」

 

 《シュンシュンシュンシュン!!》

 

「ブィ、ブィッ……!!」

 

 《グゥイィッ!!》

 

 

 ひたすら小さくなり続けるベトベター。

 張り合うように(威嚇っぽいポーズで)身体を伸ばしているアカネ。

 ……なんと言うかこう、傍目(はため)に見ている分には微笑ましい光景なんだけどさ! 

 

 

「そういう訳にも、いかないだろうな……と!」

 

 

 ここで向かいのアンズさんと視線が絡まる。「わかっているだろうな」、という此方を値踏みする様な視線だ。

 ベトベターは合計3度『ちいさくなる』を使用した。これ以上小さくなることは出来ない。つまり限界まで回避率を「あげきった」のだ。

 対する此方は、おおよその変化技を無効化する『みがわり』を使用している。だとすれば、選択肢は1つ。アンズさんのベトベターは上げに上げた回避率を楯に、攻勢に出てくるだろうと。

 ……けどさ。

 

 

「―― いざ、参る! 『泥爆丸(ヘドロばくだん)』!」

 

「ベッタァ!!」

 

 

 『ヘドロばくだん』で攻撃するため、今までは草むらに埋もれていたベトベターが ―― その姿を見せる(・・・・・)

 ……この瞬間をこそ、狙っていたから!!

 

 

「ここだアカネ!!」

 

 

 振り返らないまま、アカネがこくりと頷く。

 ベトベターは斜め後ろで飛び上がり……攻撃を仕掛けようと!

 

 

「ベッタァ ―― ベタッ!?」

 

 《バションッ》

 

「―― ブイッ!」

 

 

 粘性の音と共に『ヘドロばくだん』が直撃、弾けた。

 ただ『みがわり』のお陰で、アカネはバリアに使用したHPそれ以上のダメージを受けることがない。

 レベル差のあるベトベターの攻撃によってバリアは剥がれてしまったものの……

 

 ……そう。

 実は今のオレらにとって問題だったのは、ベトベターが上げた回避率でもなく。

 極論、アンズさんらが得意とする毒の状態異常にかかるかどうかという部分でもなく。

 

「(小さくなって草むらに隠れてしまったベトベターの居場所が、判るかどうか!!)」

 

 オレの反撃という指示に反応し、アカネが勢いよく飛び出している。

 ずいと身を乗り出し、草むらから飛び出したベトベターの着地を狙って。

 

 

「アカネ、『のしかかり』!」

 

「ベ、ベッタァ!?」

 

「ブィ」ズィ

 

 

 必死に身をよじって逃げようとするベトベター。

 彼の視線からすれば、さながら巨大怪獣のようであろうアカネが、身体で覆い潰す ―― 『のしかかり』!

 

 

「ベタッ、ベタッ!?」

 

「ブィ」ズズィ

 

「ベタァァッ……!?」

 

 

 

 

 

 ――《 プチッ♪ 》

 

 

 

 

 

『決ぃまったァァァーッッ!! ジー、ザスッ! イーブイ、『ちいさくなる』をものともせずベトベターを押し潰しましたょぉぉォぅっ!?』

 

『クルミちゃんは色々とおかしい気がしますけど……兎に角。今の流れはどういうことでしょう、カレンさん?』

 

『はい。実は『のしかかり』には副次的な効果がありまして……『ちいさくなる』を使用した回避率の上昇を、無視できるんです。しかも攻撃力が倍近くに増します。アンズさんは得意な戦法を逆手に取られた訳ですね』

 

『確かに、言われてみればそんな感じがする技ですね『のしかかり』。カビゴンとかじゃないだけ見た目はマシですけど』

 

 

 よしよし。狙い通りに決まったな!

 ……しかし、カレンさんは本当に詳しいな。流石は技の専門家。

 

 

「よくやってくれた、アカネ!!」

 

「ブ、ブィィ……」

 

 

 オレが声を掛けるも、アカネは恐る恐る身体をどけて、押し潰されたベトベターを気遣っている様子だった。

 大丈夫だぞー、アカネ。ベトベターは気絶してるだけだから。「ひんし」っていう状態名を聞くとあれだけどさ。

 

 

「……かたじけない。戻って休むでござるよ、ベトベター」

 

 

 アカネが身体をどけた頃合を見計らい、アンズさんがお礼を言いながらベトベターをボールに戻す。

 そのまま僅かに目を閉じて、口元を覆い隠している布を外し、声が通るようにしてから。

 

 

「……うん。流石はショウ君の友人だよ。……ただあたいも、お父上に近付く為、ここで諦めるわけにはいかないのさ。……コンパン、参る!」

 

 《ボウンッ!》

 

「―― コンッ、パンッ!」

 

 

 手裏剣ボールが空中で開き、いよいよ最後のポケモン……コンパンが小柄なその姿を現した。

 

 

『さあ、アンズ選手最後のポケモンはコンパン!』

 

『イーブイは防御力もあっぷあっぷしてますからねぇ! 生半可な攻撃じゃあ駄目ですけどぉ』

 

『ですね。だとすればアンズさんの……コンパンのとる攻撃手段は1つでしょう』

 

 

 だろうな。

 コンパンは防御力も、ベトベターの弱点だった「素早さ」もそこそこにあるため、本来であれば、他のポケモンが与えた「毒」に乗っかり『ベノムショック』で抜いていく役目を担っているメンバーだ。

 

「(けど、今は違うものな)」

 

 オレは勝利の可能性を手繰ろうとするアンズさんの思考を(・・・)追ってゆく。

 

 

 ――

 

 (少年、思索中)

 

 ――――

 

 

①『みがわり』によるバリアーは解除したものの、アカネに毒状態は掛かっていない。

 →『ベノムショック』による策は封じられている。

 

②アカネが『のろい』によって上昇させているのは防御力と攻撃力。逆に素早さは下降している。

 →なら、コンパンが先手を取れる。特殊攻撃なら通る筈。

 

③先ほどのベトベターは『のしかかり』の『ちいさくなる』に対する特攻効果で突破されたが、本来のアカネは攻撃技に乏しく、レベル差もある。

 →コンパンは、複数回攻撃を受けなければ倒れないはず。

 

④マダツボミは倒したので、『どくびし』は回収されていない。

 →ここさえ乗り切ればクラブは『ベノムショック』で突破できそうだ。

 

 

 ――――

 

 (思索終了)

 

 ――

 

 

 といった辺りになるだろうか。

 ……まぁ、さ。

 この答えから導かれるのは ―― 攻撃、1択だよな!!

 

 

「コンパン、『追毒連撃(ベノムショック)』だよ!」

 

「コッパッ!」

 

 

 アンズさんとコンパンが、予想の通り攻勢に出てくる。

 だよな。オレでも事情を知らなければそうすると思う。

 

 ……ただそれは勿論、さっきの考えが全て(・・)通っていれば、の話で。

 

 あえて間違いを指摘するとすれば③か。

 アカネは確かに攻撃技に乏しい。でも、乏しいって言うのは「無い訳じゃない」んだ。

 アカネには3回積んだ『のろい』の効果がある。アップした攻撃力を足しても、性格やレベル差を加味すれば、普通の攻撃だけじゃあコンパンは突破できない可能性が高い。

 でもさ。

 例えば「効果が抜群」なエスパー技で。

 かつ「積み技によって威力がアップする技」……なんて、都合良い(・・・・)ものがあれば、この状況は打開できるんだよな!

 

 

「練習の通り反撃だ、アカネ! 決めよう ―― 『アシストパワー』!!」

 

「……ブゥィ!」コクコク

 

 《……ガリッ!》

 

 

 幾らアカネが「特殊攻撃に強くなるように練習している」と言っても、レベル差のあるコンパンの攻撃を『みがわり』の後……4分の3になったHPで耐えられるかどうかは賭けるしかない。なのでここは練習の通り。走り出す前に「オボンの実」を齧ってから、アカネが突貫する。

 「オボンの実」はHPを回復する効果がある木の実だ。ただ、一定値までHPが下がっていないとその効果が薄くなるらしい。

 なので今回は、途中で使用してもらう。どうせ相手が先手なのだ。もしかしたら、ダメージを受けている途中で(・・・・・・・・)「オボンの実」が効果を発揮してくれるかもしれないと期待をしておいて!

 

 

「……。ブ、ィ……ィッ!」

 

 

 アカネが渦を巻く紫色の液体に、一歩も怯まず立ち向かう。

 未だに少し、身体は震えているけれど。でも彼も、バトルに勝ちたいと願ってくれて。

 騎士然とした性格の、ヒヅキさんのブラウンの様に、せめてトレーナーの前では勇ましく。

 

 

『激突、しますよぅ!!』

 

「―― コッパッ!」

 

「ブィ……」

 

 

 ――《ベチョンッ!》

 

 

「……ブィィッ!!」

 

 

 身体を傾かせながらも……耐え切った!!

 上昇している能力分、威力が増大する。『のろい』3回分の威力が乗っている。

 アカネが尻尾を振るうと、コンパンの周囲が歪み。

 

 

 《ズ》――《グワワワワァァァアンッ!!》

 

 

 2重、3重 ―― 7重。

 連なる念の波が、コンパンに向けて殺到した。

 

 

『うぉぉぉぅ、これはぁぁぁぁーっ!?』

 

『す、凄い威力ですっ! 「森」フィールドの木々が嵐の中のように傾いています!?』

 

『これは『アシストパワー』ですね。エスパー技ですからコンパンには効果も抜群です。……イーブイが使っているところを見るのは、わたしも初めてですが……』

 

『さあ、念波が途切れます!』

 

 

 息を呑む音と共に、解説が一旦途切れる。

 念波が、晴れた。

 

 

「―― よく耐え忍んでくれた! 反撃だよっっ!!」

 

「……コンッッ、パンッッ!!」

 

 

 しかしアカネが慣れていないエスパー攻撃を耐え切ったコンパンは、此方へと飛び掛ってきていた。

 万能性を持ったポケモンだからこその耐久力もある。知ってるぞ。

 

 よし(・・)

 飛び掛ってきてくれた。

 ……今だ!!

 

 

「アカネ! 練習通りに!!」

 

 

 声かけ……とは言っても技名ではないのだが……十分に伝わるはずだ。

 

 

『ふたたび『ベノムショック』ぅぅ!!』

 

 

 降りかかる紫色の液体。

 ……それを『こらえる』で耐えて、「コンビネーション」で先手を取る!!

 

 

「なんだって!?」

 

「ンパンッ!?」

 

 

 念波を突っ切り接近していたコンパンが、アンズさんと共に、満身創痍ながらに構えたアカネに目を見開いていた(複眼だけど)。

 コンビネーション……技の継ぎを意識した流れで、アカネが素早く先手を取り、手足尻尾を振り回す!

 

 

「アカネ、『じたばた』!!」

 

「ブィッ……!」

 

 

 《ビシバシベシドシポカポコドコベフッ》

 

 ―― 《 ズドンッッッ!! 》

 

 

 

「……コンッ、パァァン……」

 

 《トサッ》

 

 

 木々を押し分けて、フィールドのやや向こう。

 倒れたコンパンの前。

 

 

「ブ、ブィィ……」

 

 

 勝利したアカネは、そこに、堂々と立っていた。

 ……それでもまぁ、少しだけ所在なさげなのは、仕方が無いんだけどさ。疲れてるだろうしさ!

 

 

『勝利、勝利、勝(WRYYYY)ィィ!! レベルで劣るかと思われたイーブイを軸にして、シュン選手、下馬評を覆す大金星ですぅぅぅッ!!』

 

『確かに。途中までは一進一退でしたが、相手のエースへの反撃を機にシュン選手が流れを掴みましたね、カレンさん』

 

『ええ。それだけチームの攻撃頭というのは重要なファクターだという事なのでしょう。得意な戦法があるだけにマダツボミを無効化してその戦法に持ち込みたいアンズ選手の心理を逆手に取り、狙い通りベトベターにイーブイをあてる。シュン選手が終始作戦勝ちしていた印象ですね』

 

『なるほどぉ、なるほどぉ』

 

『解説をありがとうございます。勝利したシュン選手とそのポケモン達の、本戦におけるますますの奮闘に期待しましょう! ……あ、只今連絡が入りまして、この試合が予選最後の試合になったようです。他の試合も終了して、本戦出場者が決定したみたいですね! 決勝トーナメントの組み合わせは再抽選が行われる予定となっていまして、その抽選が今からタマムシスクール教員団によって実施されるとのことです。それでは中継を戻して、そちらの解説に入りましょう ―― 』

 

 

 アオイちゃんの言葉を最後にスピーカがぶつりと切れ、バトルスペースにはいつも通り、リラックスBGMが流れ出す。

 ……ふぅ。バトルはなんとか、勝利で終えることが出来たな。これについては上々だ。

 でもまだ、試合後のマナーが残っている。オレは一足先に中央部でまっているアンズさんの所へ向かって、歩き寄ってゆく事に。

 すると、木から下りて久しぶりに地面に立ったアンズさんは、何やら気難しいオーラを纏っていた。なんだろうな……などと原因について思考を伸ばしていると、そのまま、オレに向けて口を開く。

 

 

「シュン君。あたいから少しだけ、質問して良いかな?」

 

「えと……まぁ、はい」

 

 

 なんでしょう。というかエリトレクラスに在籍している人って、こうも悩んでいる人ばっかりだったんだろうか。オレも含めて。

 それでも質問良いかとの問いにオレが頷くと、アンズさんは「ありがとね」と挟んだ後、率直に切り込んできた。

 

 

「この大会に向けて、君達はどんな鍛錬をしてたのかなぁって思ってさ」

 

「……うーん……そう、ですね」

 

 

 どんなと聞かれると難しいものがある。

 今回の大会の前の修行にあたって。ショウが示した方針を軸に、オレらは修行の方法について話し合った。

 その結果、オレのポケモン達には、出来る限り「広い範囲」の技を覚えてもらったのだ。

 アカネの攻撃技なんかはその成果として最たるものだろう。勿論それを使いこなせるようにって言う練習もしたけど、どっちにしろ範囲が狭いと「苦手なポケモンが出て来た時に手も足もでない」なんて事になりかねない。トーナメントじゃあ誰と当たるか分からないし、それだけは避けておきたかったんだよなぁ。

 

 

「……成る程。自分のポケモンはどんな技が使えて、どんな技がまだ苦手で。それは相手の事も同様に。……そこまでを君が熟知しておいて、後はバトルに応じて繰り出していく訳だ」

 

「ええ。まぁ、多分」

 

 

 言葉にすればそうなるのかも知れないですね。

 オレはそんな感じの返答をしておいて、これで答えになったのかなぁと戦々恐々としていると。

 

 

「……あははっ! 君らは、やっぱりスケールが違うね! 完全にあたいらの負けだよ! ……この辺りが、あたいとの差だったのかな。父上の背中ばかりを目指してばかり(・・・)じゃいけないって事だ」

 

 

 顔を上げたアンズさんは、心なしか晴れ晴れとした表情をしているな。

 ……うーん、なんとなくは判るぞ。オレも似たような感じだったし。

 でもさ、大きな違いが1つ。

 

 

「オレ、キョウさんは立派なトレーナーだと思いますよ?」

 

 

 認識を改めても変わらずやっぱり馬鹿親父と呼べるこっちのとは違って、キョウさんは立派だと思うんだよな。社会的に認められる貢献度、バトルの強さ、性格。父親としてもジムリーダーとしても、そして一端のトレーナーとしてもだ。

 人間性って言う意味では、オレの親父とは比べるべくも無いですよ……と。

 

 

「ははん。知ってる! ……でも、だから、そればかりじゃあいけないんだよ。やっぱりさ。あたいはあたい。君は君。それでもって、お父上はお父上なんだ」

 

 

 そう(誇らしげに)言いながら、アンズさんはうんうんと首を縦に振る。

 実際、今大会でアンズさんが軸にしていたあの戦法は、キョウさんが愛用する戦法の1つ(・・・・・)なのだ。それを耐久型に捻ってるんだよな。父親の背を見ていたというか、追っていたというか。ファザコンというか。

 ……いや、ファザコンじゃない。それだとかつてのオレも……なんでもない。違いますよね(疑問系)!

 そんなオレの脳内葛藤を知る由もなく、アンズさんは一頻り頷くと、納得したという感じでこちらに手を差し出していた。

 

 

「ありがとう。君たちとバトルができて、良かったよ!!」

 

 

 バトルはとっくに終わっている。昨日の敵は今日の友。昨日の友達は、きっと、明日も友達だ。永遠かどうかは判らないけれども。

 オレも一歩進み、その手を取って、握手を交わす。

 

 

「うん、決めた。あたいはジムリーダークラスに進学する。もっともっと修行して……それでいつか、あんたにも父上にも負けないようなトレーナーとそのポケモン達になってみせる。いつかあたいがジムを継いだら、挑戦にきてよ? 2度と負けないからね!」

 

 

 そう、忍者らしくはない満面の笑みを残して。

 アンズさんは(やはり一瞬で)フィールドを去っていったのだった。

 

 






 今回更新分は、予選が終了したこの辺りにて終了となります。
 アンズさんの「ははん」は原作の通りです。むしろ原作だと拙者とかござるとか言ってないんです。父親が大好きなんです。

 さてさて、ここでこうしてアンズさんが敵として立ちはだかっているという事は、つまり……?
 という辺りで次回更新分では、本戦に向けた短い幕間を挟みます。作中は2月ですからね。忘れてはいけませんよね。
 では、では。


 以下、長ぁいあとがき(いいわけ)第2弾です。
 今回から(一応、拙いながらに)第6世代を知らない方向けの解説も挟んでみています。
 ……文章が一層酷いですので、どうぞ心して。



>>ベノムショック、ベノムトラップ

 第6世代(XY)から追加された技。
 『ベノムショック』は「毒状態」の相手に威力が2倍(技威力130相当)になる攻撃技。
 『ベノムトラップ』は全ての「毒状態」の相手の攻撃、特攻、素早さを下げる変化技。

 アナフィラキシーショック的なイメージでしょうか。
 弱り目に『たたりめ』程メジャーであるかどうかはまた別の話。


>>みがわり

 最近の『みがわり』は、先手で張っていると、解除されるまでは状態異常や能力変化技を遮断できます。あと多分、水を弾きます(ぉぃ。
 ただ『アンコール』、「音を利用する技」、特性「すりぬけ」のポケモンなど一部のものは無効化できませんのであしからず。

 ……うーん。つまり『アンコール』は拍手の音そのものに効果があるという事なのでしょうか?
 ……いやでも、特性「ぼうおん」で無効化できないですし……(無駄思考)。


>>決ぃまったァァァーッッ!!

 解説に先んじたこの時点で決まったと叫んでいる辺り、アナウンサー(少なくともクルミさん)は『のしかかり』の効果を知っているご様子。
 ……それでも。
 知っていても解説役に尋ねるのが、解説のお供という職業なのです。


>>大金星ですぅぅぅッ!!

 知っていても驚いて見せるのが以下略。


>>『のしかかり』

 ・『ちいさくなる』の回避率無視
 ・『ちいさくなる』を使った相手に威力2倍
 ・『ちいさくなる』を使ったベトベターの心境「ぅゎぃ-vっょぃ」

 最近では他にも、『ドラゴンダイブ』や『ふみつけ』なんかにこういった『ちいさくなるの効果を逆手に取れる効果』が付与されています。昔と違い『ちいさくなる』の回避率上昇効果は2段階となっており(かなり)強化されているため、そのための対応策と言う訳ですね。
 ……ただ『かげぶんしん』など別の技には効果が無く、最近は特性の『するどいめ』などに回避率上昇を無視する効果が付与されましたので、そのためだけに採用するかと言われると技スペースが微妙なんですよね。悩みます。

 タイプ一致で使用するなら(麻痺の追加効果もありますし)『のしかかり』は採用できるかもですが、実は『のしかかり』、レベルなどで習得するポケモンは兎も角、イーブイの場合は「FRLG、エメラルド専用の教え技」だったりします。
 ええ。ショウ(他の大会参加中)が居ないのでここで解説をしますが、FRLGではこうした「過去作で技マシンだった技」が人からの教え技という形で覚えられるのですよね!
 他にも『カウンター』とか、後々に登場するそれ(どれだよ)とかも、教え技として使用できます。


>> コンッ、パンッ!

 いや本当、なんて鳴くか悩みましたが(ぉぃ
 虫ポケ的には「きゅいきゅい」とか「ぎちぎち」が似合いそうなんですが、前者は今後盛大に被りそう。後者はそもそもコンパンに節足がないという事で見送られました。「コォンパァン」などと伸ばすのと2択になった結果、ぶつ切りに。
 ……BWモルフォンのグラフィック、私、羽ばたく早さが好きだったんですよね……(涎


>>アシストパワー

 通常威力20。能力一段階上昇毎に威力が+20される。
 本編では念の波一重あたり20、イーブイは140相当のアシストパワーをうちました。能力が下がっているとマイナスだとかそういう効果は無いのでご安心。
 ……ただコンパンなら、この程度は耐えてきますよ!


>>こらじた

 『こらえる』+『じたばた』。HP極定値で威力が200にまで上がります。
 コンビネーションについては夏大会を参照してくださればと。


>>持ち物

 今回のネタの裏軸、ゲーム外特典となっております本項目。
 「HPは技を受けた瞬間に下降しきる」のではなく、ゲームの様に「徐々に下降する」仕組みになっていますという。この点について直接接触技は減少がかなり(ほぼ一瞬)素早く、遠距離技は当てていく毎に徐々に下降するという感じです。確かこれについては、原作前編のプリム戦の『れいとうビーム』を当てきるのがどうこうといった辺りで少しだけ触れてますね。
 しかしつまり、オボンの様な回復木の実の発動タイミングが練習次第では……? と(なので一応、HPが下降しきっていないと効果が薄い、という感じになってますが)。
 この仕組みでないと半減実の仕組みが説明し辛いという理由(へりくつ)もあり、こうなりました。
 ……なってしまいました(ぉぃ。


>>いえ、アンズちゃんの方のポケモンの持ち物はどうなってましたかと

 ……あ、いえ。
 作中はシュン視点なので解説し辛かったのですね(言い訳
 長くなると読みづらくなってくるのは駄作者私の悪癖ですし。
 こんな感じでした。

 アーボ   →「どくバリ」(ただし相手がマダツボミ。毒技は使用しなかったです)
 ベトベター →「くろいヘドロ」(回復アイテム。でも一撃で潰されたので出番なし)
 コンパン  →「どくバリ」(重複してますが今のメインルールでは制限ありません)

 バトルに詳しい方ならもっと他に持たせるべきものがあったのでは? と思うかもしれませんが、エリトレ……しかも学生が手に入れられるものとなると(基本的には)この辺りが限度なのではないかと。
 いえ。学生が「どくバリ」とか「くろいヘドロ」を手に入れられるあたり、世紀末感が半端無いですがっ!!
 因みに青いほうの主人公(ショウ)があれだけ苦労して手に入れた「くろいヘドロ」を、アンズさんはタマムシゲームコーナー横の湖に居るベトベターらから悠々と拾い上げました。……なんともご無体な……。

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