「ショウ、やるね。君が使う知らない技も知らない戦術も、勉強させて貰おうと思う」
「なにせ、対エスパー戦が経験豊富なものでな-。小細工というか何というか」
あんまりエスパー関係なかったけどな! 『たつまき』に関しては偶然だし!!
指示の内容が「風を起こす」ことよりも「砂を巻き上げる」に偏っていたからこそ起きた、偶然も偶然なのであるからして。
というか、むしろ俺の「原作知識」のおかげだろう。この辺の技に関する知識はさっさと広めて、皆でレベルを上げていきたいところだよな。そんな土壌がないので苦労している訳なんだが。
「ん? エスパーとの対戦が、っていうのはどういうことだい?」
「友人にリアルエスパーがいてなー。俺自身も
ナツメ曰く「俺の未来がみえない」だそうだ。
これは結構イレギュラーな感じがしてる。確かに転生っていう特典はあるんだが、あくまで一般人の範囲を出ないようにするために赤ん坊からスタートしている訳で。精神の発達はそりゃ早いけど……うーん、それをもって干渉防御とはいかんだろうし。
ちなみに。そもそもいくらエスパーでも、肉体接触もなしに思考を読むとか出来ないらしかった。これもナツメ談な。
「それもそうか。世間話は後から、
無駄回想している俺に、すらっと姿勢を伸ばして答える執事。
うん、コクラン素直で良い奴。
「じゃあ、再開するか」
「良いですか? それじゃあ、スタートですー」
手元でパッドを操作していた審判メイドが視線を戻し、審判を再開。
同時にバトルが再開される。あくまで練習を重視したバトルなので、入れ替え制。
……なら、こっちも交換しておくかな!
「んじゃあ、頼む! 二ドリーナ!!」
「行け、ムクバード!!」
俺は二ドリーナ(LV:26)を出す。こちらもピジョン同様、あれからレベリングを頑張って進化していただいた!
尚、レベリングの際にはタマムシジムのお姉さんがたに大変お世話になりました。はい。草ポケモンの放牧地みたいなとこに3日くらい寝泊まりさせてもらってな。
あそこって別に男子禁制なわけじゃあないんだよな……。実際にレッドは入ってるし。でも女の人ばっかだったので居心地は悪かったけど。毎日エリカが会いに来るし。両親結局紹介されたし……。
まぁ、そんなこんなで頼もしくなったニドリーナが力強くフィールドに立つ。コクランが繰り出したのは、最初に強制交代を受けたムクバードだ。
「行け! (かみつくで速攻!)」
「ギャウゥ!!」
「ムクバード、つばさでうつ!!」
「ムクゥ!!」
ニドリーナの『かみつく』と降下してきたムクバードの『つばさでうつ』が相打ちになる。
打ち合った後にムクバードは空中に戻って体勢を立て直し、そして……
「ニドリーナ! (どくばり!)」
「ムクバード、もう1度つばさでうつ!」
お互いの次の指示は、二ドリーナは『どくばり』ムクバードは『つばさでうつ』だ。
……さて、何故こちらの指示が『どくばり』かというと答えは簡単。ムクバードが空中にいるからだ!!
空中にいるポケモンに対して優先的に「直接接触が必要な技」を当てることは出来ないんだよ。相手が飛んでると届かないよね? ……ってことだ。
「(特にこれがシングルバトルだときっつい。スカイバトルっていう理屈自体は通ってるんだよなぁ)」
俺のニドリーナは四足獣。もちろん飛ぶことは出来ず、「飛ばす事のできる技」……「間接技」は『どくばり』しかない。つまり、これしか攻撃を当てられないときている。
これが洞窟内だとか天井があるとかならば手の打ちようはある。また、ムクバードよりも俺のポケモンが早いのであれば、さっきみたいに直接接触技で降りてきた所へ「相打ち」を狙うことも出来る。
しかし、ムクバードより攻撃が後手に回ると相手は既に空中に戻ってしまっており、直接接触が必要な技では反撃できないのだ。
「(で。そういう帳尻を合わせるくらいなら、こっちのテンポで攻撃できた方が仕事は出来る)」
いちおう先手後手の参考程度に種族値を比較。ドリーナのすばやさ種族値「56」でムクバード「80」。降下のタイミングを読み切るのは難しそうだな。空中で勝負できるピジョンに任せたほうがよさそうだ。
因みにさっきの初手で「相打ち」することができたのは、「指示の先だし」があってこそ。ボールから出した瞬間しか無理だな。
まぁ、つまり今回の二ドリーナはアシストに徹しているのである!!
「ニドリーナ!(もう1度、どくばり!)」
「ギャウ!」
「ムクバード、さらにつばさでうつ!」
「ムゥー…クゥ!!」
――《ズガ!》
コクラン側は手持ちの数が不利なので、攻撃力に劣るムクバードの遠距離攻撃は選べない。
同じ技の打ち合いが続いて。
「……ギュゥウン」
「ニドリーナ、戦闘不能ですー!」
計3回目の『つばさでうつ』で、ニドリーナは倒れた。
「ありがとう、ニドリーナ」
ボールを腰のホルダーに戻しつつ、ステータスというよりはバイタルだけチェック。うん。
ニドリーナはホントよくやってくれた。捨て駒役のようなものなのに、必死に指示に従ってくれる姿は凄いグッと来るものがある。申し訳なさとかそんな感じの。
……負けられないな。おかげで勝つための道筋は整った。
「(……ムクバードも『毒』を受けてくれたようだし)」
『どくばり』と特性の『どくのトゲ』で受けたのだろう。よくみるとムクバードは呼吸数やや増。瞬きの間隔も狭まった。苦しそうにしているな。
コクランも気づいてはいるようだが、それでも攻撃させるしかない状況だ。
これなら、あとはこちらが素直にスカイバトルを仕掛けるだけで展開有利に押し切れるだろう。
「つーわけで、さあ、いこう! ピジョン!!」
「ピジョッ!!」
俺はピジョンを繰り出して攻撃を指示し――
「ムクバード、戦闘不能。ショウ様の勝利になりますー!」
ΘΘΘΘΘΘΘΘ
さて。
バトルを終えた俺とコクランは、ゲート外から内へ。ヒウンシティに戻ってきた。
後ろをまたぞろぞろと、メイドさん方がついてくるのだけれども。
「うん。
「いやいや、コクランもな。今のは先手を俺が取れたってだけだしな。どっちが勝ってもおかしくはなかったぞ」
「その先手を、キミは狙って取りに行っただろう? オレは最初、初めて見るポケモンに慎重になり過ぎてたよ。『かげぶんしん』で出方を見ようとしてた」
「いやー、間違いじゃあないと思うぞ。何回かは攻撃耐えられる対面だったからな。俺の指示が偶然、結果としては良くなったが」
その辺は先手後手はともかく、技知識による部分が多いからなぁ。
実際、最初のターンから『つばさでうつ』を連発されていたら、ピジョンは落とされていただろう。そうなってはニドリーナでは空中対策がなく、仮に毒を利用した守勢でムクバードは倒したとしてもキルリアを倒せた保証は無かった。まぁ、エスパー対策のために「ウタンの実」は持たせてたけど。エリカお嬢のとこで修業したおかげで、ちょっと木の実は
「まぁなー。五分五分っぽかったし、今度また会った時に2回戦しようぜ」
「……そうだね。ショウ、次は負けないよ」
再戦の約束をする俺とコクラン。
いや、本当にいつになるやら分からんけどな。
……さて!
「んじゃ、昼飯はコクランの奢りなー! ヒウンシティて何が美味いんだ……?」
「敗北したオレの支払いだね。任せなよ」
きっちりと条件つけといて良かったですマジで!!
……だがしかし、俺はすぐに後悔する。
その後、最初に打ち合わせしてたビルのレストラン階でコクランとその他執事メイドから給仕を受け、俺だけが飯を食うというカオスな状況になったのだった……!
ついでに言うと、食事中にはコクランとさっきの戦闘中に後回しにした「俺の対エスパー戦の経験」云々について話をしていたが、それでも晒し者だった……むしろ罰ゲームか!!
まぁ正直、有名なエスパーの家系とか言うのには興味があったから、なんだかんだで楽しめたのかもしれない。うん、そう思っておこう。
「(検証どころじゃあなくなっちまったな。『たつまき』についてはもうちょい後で考えるとしよう)」
などと面倒な思考を後回しにすることを決めて、後ろを見てみると……コクランは何か考え事をしているようだった。
目が合った。笑顔。
「(……何の笑顔だ、何の!? 嫌な予感! 今回フラグ立てて無いはずなのに!!)」
ただでさえこの後の現地調査も大変だと言うのにな!!
ΘΘΘΘΘΘΘΘ
―― Side コクラン
目の前で昼食を食べているオレの新しい友人・ショウは、心も体もポケモンも、本当に強かった。その見た目以外は8才とは思えない。
その「強さ」は、今でも努力を怠っていないつもりであるオレたちも、もっと研鑽が必要だ……とひしひしと感じるくらいのもの。
「(ショウならば……やってくれるのかな)」
聞いてみれば、彼にはエスパーの友人がいるらしい。
そのせいなのか、俺の仕えている「御家」のことを話しても全く嫌悪しておらず……むしろ興味を持っている様だった。
イッシュ地方では
「(ふむ。お嬢様に万が一があったらショウを頼ってみるのも良いかもしれないね。面通しも必要か。となると……)」
「御家」の血筋においてもかなりの力を持っていると予想されているお嬢様。その力の許容量は家系トップを悠々と超えており、暴走する可能性すら持っているという。
そんな「エスパー」への偏見がなく、「力」もある彼のような人はなかなかいない。
……まぁ、嫌悪感が無いことイコール良いこととは限らないし、偏見が無いことすらも良いとは限らないのがエスパーという特徴の厄介な点ではあるのだが。
……それでも彼なら、と思わせてくれる気がしている。
とはいえ、だ。
「(まずは俺達がお嬢様を精一杯お守りしないとだね)」
実際に、外国にいる彼との再会ができるのはいつになるか分からない。
だが、その時が来たならば……頼ってみようとも思うのだ。
駄目作者(わたくし)がSide使いをしておりますのは、ポケモンのキャラ数の多さが主な理由です。
今後も、非常に多くのキャラが出てきますために、わかり辛くなってくる可能性が非常に高いと愚行しましたという次第。
(口調などを出来る限りゲームに準拠させるため、個性が……と。それもひとえに私の力不足なのですが)
この点については、なにとぞご容赦下さればありがたいです。
・交換制
出すポケモンがばれない(ゲームシステム)のなら、「戦わせたい体面を作る」ことにかけてはアドがあります。
HPや展開によらない、ポケモン同士の対面を重視した練習としてはよろしいのではないのでしょうか。
20220811/改稿
統一しようかは迷いましたが、なんとなく分割のままがテンポ良さそうだったのでそのまま。
展開の追加はなし。地の文、会話の調整はそこそこ行いました。