ポケットでモンスターな世界にて   作:生姜

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Θ17 研究とRと、たまに化石

 

 

 1992年、同じく9月。

 

「あれから結局バトルの実践練習できて無いけどな!」

 

 

 ……いや、忙しいんだよ。かなり。

 

 そんな俺が現在いるのは、またもグレン島。

 フジ博士との共同研究調査の成果確認(と書いて、後片付けと読む)を行い終えたところだ。

 

 

「ショウ君、今回もありがとう。来てくれて助かった」

 

「まぁ、確かにここまで来るのは大変でしたけどね」

 

 

 とはいえ、フジ博士の研究はこの島にある屋敷の地下でしか行えないしな。機材的に。

 

 ……などと俺が考えていると、フジ博士が妙にソワソワしているようだった。

 なんだ?

 

 

「えーと、何か」

 

「あぁ。あのポケモンはどうなったかと思ってね」

 

 

 ミュウのことだな。

 ……フジ博士は既に存在を知っているから、決まったことくらいは告げて良いだろう。

 

 

「やはり、データの存在自体が秘匿扱いだそうです。稀少ですから」

 

「……」

 

 

 そう告げられたフジ博士は少し苦い顔をしている様で、

 ……あぁ、そうか。

 

 

「大丈夫です。マサラにいる間は外で遊ばせてあげられますし、私としてもこいつが不幸になることは望んでません」

 

 

 ド田舎なあそこなら、外からの人にだけ少々気を使ってやれば「ふーん。まぁ、あれもオーキド博士の研究で見つかった新種の1匹だろう」位にしか思われない。

 でもって俺が既に捕獲しているから、離れすぎなければ盗られるということも無いだろう。

 

 研究中の遊び相手は俺のポケモンが勤めているため、少々こいつらにとっては大変なのかもしれないが……いや、この前楽しそうに鬼ごっこしてたし大丈夫か。飛べないニドリーナが涙目だったけど。

 

 

「……そうか」

 

 

 うん、少しは安心してくれたようだ。

 では、次はこちらからの質問。

 

 

「博士のほうの研究は順調ですか?」

 

「……あぁ、順調だよ。サンプルの解析も終わって、次の段階も中盤くらいまでは進んでいる所だ」

 

 

 ……「中盤まで」、ね。

 

 

「何よりで。では、博士からの成果発表を期待して待っていることにします」

 

「……そう、だね」

 

 

 今はまだ触れることができないだろうな。

 なにせ作っているのは、……「ミュウツー」だろうから。 

 

 

 俺とフジ博士の間に沈黙が流れた一瞬だった……が、そこへ、

 

 

 ――《バン!》

 

「博士!」

 

 

 1人の男が扉を開けて走りこんできた。

 ……ただしゲームで見た「けんきゅういん」そのまんまのヤツではなく、白衣の下の胸には「R」のバッジがつけられている奴なのだが。

 つか、白衣が翻る程度で見えるような位置につけるなら隠すなよ。もしくはいっそ、つけなければ良いんじゃないのか……?

 

 そんな走りこんできた研究員(Rバッジ付き。以下、Rと略す)は、慌てた勢いそのままにフジ博士に話し始める――

 

 ――と、思いきや。

 

 

「……? どうかしたかね?」

 

「……ちっ、」

 

 

 入ってきた男は俺を見て露骨に嫌がり……舌打ちまでしなくて良くないか、とは思うが……なるほど、邪魔なのだろう。

 

 

「あぁ、良いです良いです。俺はここでお暇するんで」

 

「悪いね、ショウ君」

 

「……」

 

 

 あー、目つき悪い目つき悪い。もうちょっと悪ってところを隠そうとしろよ……。

 そんな研究員(R)からの睨み熱視線をうけ、俺は手早く荷物をまとめて立ち去ることにする。

 

 

「では、フジ博士。お元気で」

 

「あぁ、キミもね」

 

「……博士! 早く!!」

 

 

 俺が玄関へ向かうと同時に、博士は研究員(R)に引っ張られて行ってしまった様だ。

 

 

 やっぱりもうロケット団いるのな、とか思いながら玄関から出た俺は、扉を閉めようと振り返る。

 すると、相変わらずの豪華な装飾やカーペットや彫刻の数々が目に入り、

 ……なるほど。

 

 

「(この豪華な屋敷といい、あいつらが出費してたのかもな)」

 

 

 フジ博士が頼んだのか先代が勝手にやったのかはわからないが、

 ……確かに、いくらフジ博士が有名な研究者だからといって、グレン島を殆ど1人で開発したような現在の状況には「金銭」が足りないだろう、と思う。

 

 そこをつけこまれ、……おそらくは「人の良さ」と「研究への熱心さ」から、断りきれないのだろう。

 

 

「……この島に来る理由がいるな」

 

 

 今日で、俺とフジ博士が会うための口実だった「共同研究」は使えなくなった。

 ここでこれから起こる「こと」を妨害するためには、この島に来る理由が必要になる。

 

 

「……まぁ、何とかするか」

 

 

 そう考えた俺は、少し思いついたことを実践するために、カツラさんの元へと向かうのだった。

 

 

 

 

ΘΘΘΘΘΘΘΘ

 

 

 

 

 そして、グレン島でのやり取りから数週間後。

 

 

「忙しいところすまないな、タケシ」

 

「なぁに、気にしなくていいさ」

 

 

 会話の通り、俺はタケシと会っているところ。因みに、ニビシティの博物館の応接室が現在地である。

 しかし……

 

 

「気にするなとはいってもなぁ……。ジムリーダーになったばかりなんだろ?」

 

 

 そう、タケシは最近ジムリーダーになったばかりなのだ。

 現在11才のタケシだが、化石関連の功績やポケモンジムが家業であったこと、何よりも彼自身の人格が町の人達から認められていることにより、早期からのリーダー就任となったらしい。

 

 ついでに、俺とタケシが知り合ったのは化石関係からだ。

 随分前の遠足で俺とミィが見つけたカブトプスの化石はニビの博物館に寄贈しておくことになったので、その関係で知り合うことができたのだ。

 

 ……で、新人って忙しいイメージがあるんだが……タケシは忙しくないのか?

 

 

「ああ。普段はそうだが、今日はジムの定休日なんだ」

 

「定休日?」

 

「俺は化石発掘の手伝いもしているから。そのために、たまにジムを空けているんだよ」

 

「あー……そんな中で時間取らせてすまんな、タケシ」

 

「なぁに、気にしなくていいさ……2回目だな、これ」

 

 

 今は俺のためにタケシに時間を取ってもらっている状態であるため、なんか申し訳ない……。

 ……ま、ならば貴重な時間をつぶさないためにも早めに本題に入るか。

 

 そんなんで俺はタケシに本題を告げることにする。

 

 

「ちょっと俺たちの班も研究の幅を増やそうと思ってな。……これ、計画書。発案は俺だけど、オーキド博士の了解はもう貰ってるから」

 

 

 そう言いながら、俺はタケシへと紙束を差し出す。

 すると、タケシはその紙束の1枚目に大きく記された研究主題を、律儀にも読み上げてくれた。

 

 

「……化石ポケモンの再生?」

 

「ああ。一応聞くけど、再生関連の研究データとかはココにも無いよな?」

 

「そもそも再生しようと思った人がいないと思うけど……」

 

 

 まぁ化石の再生なんて考えたのは、タマムシ大学でも俺だけだし。

 因みに計画の内容はタケシのリアクションの通りで、……つまりは「化石になったポケモンを再生できないか?」ということだ。

 

 

「その技術が無いのは一応確認した。……だから、俺たちで研究しようと思って」

 

「ショウたちが、か。ショウたちオーキド班なら信用できるだろうし俺に出来ることなら手伝うけど、町を離れるのは難しいぞ?」

 

「そこに関しては心配ご無用。必要なのはニビ博物館の人材と情報だから」

 

 

 ゲームではグレン島で行われていたのが「化石ポケモン再生」の研究だった。

 だが、博物館やオツキミ山などが近いはずのニビではHGSSの時代まで再生は行われていなかったし、そもそもHGSS時代の博物館での再生施設自体もグレン島の噴火に伴って移設したと考えることも出来る。

 

 ……と、いうことはグレン島は「研究がしやすい環境だった」はずで、

 

 

「どこか……『ポケモン化石が良く発掘されるポイント』を知らないか?」

 

「なるほど。研究のためにか」

 

「あー、そうだな。珍しい化石じゃなくていいんだ。数が多く手に入るところがいい」

 

「ちょっとまってろ……」

 

 

 そういってタケシが博物館の研究班長に取り次いでくれる。

 そんで、やってきた班長から資料を受け取り、広げながら……

 

 

「さて、ショウを信用してるから研究の契約云々の前に見せるけどさ」

 

「タケシ……プレッシャー掛けないでくれよ……」

 

 

 信用してるとか、プレッシャー以外の何物でも無いからなぁ……。

 ……とはいうが、まぁこの場で見せてもらえるなら計画も立てやすいし、お言葉に甘えよう。

 

 

「はは。ま、記録によると……発掘数の多さならカブトとオムナイトみたいだ」

 

「別に問題なし。発掘地は?」

 

「グレン島の東にある『ふたご島』周辺の島群からかなり出ているぞ」

 

 

 うし! 予定通り!!

 

 

「ならこっちでグレン島に研究施設を借りるから、発掘班と研究班をニビの博物館から借りてもいいか?」

 

「それは良いさ。けど、もう話はついてるのか?」

 

「少なくともグレンの研究者のトップとジムリーダーの2人には顔が通ってるから大丈夫だろ。多分。」

 

 

 実はカツラさんには既に許可も取ってるんだけどな。

 しかしこうも予定通りだとは……まぁ良いか。上手くいくのは良い事だしな。

 

 さて、概要はもう纏まっただろうと思う。タケシの時間のこともあるし……

 

 

「んじゃ、こんな感じでいいか?」

 

 

 と話を切り上げようと声を出したが、その時。

 

 

「まぁ、ちょっと待て。まだ詰めなきゃいけない部分がある……」

 

 

 件のタケシに止められることとなった。

 ……おおう……あまり笑わないタケシが黒い笑みをしているぞ……。

 

 

 ――相。

 

 ――談。

 

 ――中。

 

 

 はい終了。

 

 

「おいおい……ショウはこれで良いのか?」

 

「別に構わないな。発掘班も研究班も、実質はニビ博物館から殆どが出るし」

 

「でもな……研究結果の化石のデータも博物館側が保管、再生方法の開発についても博物館で技術独占ってのはこちらが有利すぎじゃあないか?」

 

「俺は研究自体が出来れば良いからな。それに、タケシにとっても職員には有益な契約が出来たほうが良いだろ?」

 

 

 さっきのタケシは、万が一にも博物館員の不利益にならないようにと頑張っていたのだろう。

 全く……只でさえジムリーダーで大変だろうに少しでも町のためにと動くタケシを見ていると、どうしても応援したくなるんだよな。心情的に。

 タケシはこんな性格をしていて、……町のためや誰かのために頑張ることができるからこそ、この年でのジムリーダーなのだ。

 

 ……それに、どうせグレンは噴火するしな!

 データとかニビにあったほうが色々と便利だよきっと!!

 

 とまぁ、こんなのの他にも色々な理由はあるし。

 今タケシと計画を詰める事が出来て、一応大学としても利はあるようにしたから、これなら企画は無事に通ると思う。

 何より、これがグレン島に行くための「理由」になるだけで十分なのだから。

 

 

「……ま。あんまり気にすんなよ、タケシ」

 

「こうも一方的では、お前の友人としてそう簡単には納得できないさ」

 

 

 むぅ。やはり生真面目だな、タケシは。まぁこんな性格をしているからこそ同上。

 俺としてはそんなに恩着せがましくしたくは無いんだけど。

 そういう訳でここは明るく、

 

 

「んじゃあ、これはとりあえず貸し1つってことで!」

 

「ショウへの借りは正直気乗りしないけど……」

 

 

 

 ……俺、質の悪い高利貸しとかじゃあないんだけどなぁ。

 とか、考えていたらどうも顔に出ていたらしい。

 

 

「あぁいや、ショウが性格悪いとかじゃあなくてだな……」

 

 

 

 

 ……へぇ。

 

 

「やっぱ貸しは今使う! タケシ、お前今度のジム戦は上半身裸でバトルしろや!!」

 

「待ってくれ! 露出好きだと思われるからそれは勘弁してくれ頼むから!!」

 

「それが嫌ならその辺の女の人に『おねぇサーン』とか言いながら言い寄っていけ!」

 

「俺のキャラじゃないし、それじゃあ只の罰ゲームだろう!?」

 

 

 くっくっく……! 初代ではやっていた事だし、アニメでのお前のキャラなら簡単だろうが!!

 

 

 ……などと無駄思考するが、まぁ貸しを作っておくのも嫌いじゃないので結局は許すのが俺だったり。

 

 







 私の原作キャラについての情報源は、主にHGSS本編とFRLGのボイスチェッカーです。
 それによると、タケシはまぁこんな感じの人となりだそうで。

 タケシの様にアニメのレギュラーキャラについては、アニメでのキャラに引きずられないようにしたいのです。
(といっても、私はアニメの方をあまり知らないのですが)

 ……ですが、そもそも64とかではアニメに影響されまくった手持ち(ロコンとか)を披露してたりするので、年齢はアニメの方を参考にしました。
 タケシの服装もFRLGではアニメから逆輸入してましたし。


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