ポケットでモンスターな世界にて   作:生姜

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Θ2 初めてのポケモン

 よう、俺の名前はショウだ! なんて、ようき最速風に始めてみる。イメージはスーパーマサラ人リスペクトである。

 現在、時は過ぎて1991年タマムシシティ。俺とミィは無事、進学と同時に飛び級した。そこからさらに半年かけてタマムシ大学へ進学し、今はオーキドが教授をしている携帯獣学部に籍を置いている。

 携帯獣かー。モンスターなら怪獣と訳すべき……まあ世間的にみて聞こえがアレだし、これで良いんだろーな。

 そして、だがしかし。大学にいるといっても講義に出ているわけではなく、俺とミィはタマムシシティ郊外にまで足を伸ばしていたりする。

 

 

「あなた……ショウ、聞いてるの」

 

「聞いてる聞いてる。聞いてるけどさ」

 

 

 ミィの声が抑揚薄く響く。相変わらず幼なじみで、現在、俺を「あなた」と、(子供声で)呼ぶのを矯正中である。

 余計な苦労を背負いこみそうだしなー。いくらこの世界の子供は成長が早目だとはいえ、小学生のからかい力を舐めてはいけないのである。……あと、ミィは今日もゴスロリ服である。

 話を戻して、なぜ町郊外なんかにいるのを説明しよう。多少遠回りが必要だけど。

 さて、俺とミィはポケモンに関する知識を『持ちすぎて』いるだろう。なにせ大分最新の辺りまで知っている。

 ……といっても、この世界それ自体の経過年数はそれなりなんだろうけどな。レッドさん方の成長を鑑みると、年数の経過は少なくとも「比較的緩やか」なのだろうと推察ができると思う。

 現在のカントー地方は、ポケモンバトルがオフィシャルなものになりかけている、中途な時代だ。今からその頃までにかけてトレーナー数が増え、それに伴ってポケモン研究も進むのだろう。ガラル地方みたいに競技シーンにまで発展するのには、もう少し時間がかかりそうなんだよな。まぁ、カントーは向こうよりも研究は遥かに進んでいるし、ポケモンリーグみたいな別機軸の競技化が進んでいる訳で、一概には一括りにできないっていうのはあるんだけれども。

 また話が飛んだ。戻す戻す。

 先程は俺達に知識が有りすぎると言ったんだが、実際に持っているのは「わざ」「分布」「タイプ」の知識くらいだ。

 しかし、調査が始まって浅いこの時代において分布を知っているのは大きく、その知識を利用した俺とミィはオーキドの調査を手伝っていたりするのである。フィールドワークというわけだ。

 いる……の、だが!

 

 

「俺はポケモンがいないんだよなぁ」

 

「早く、捕まえなさいな」

 

 

 ミィの視線が突き刺さる。視線で‘研究馬鹿がとか言われてそうで何それ怖い。

 しかし……‘そう。いないのであるマイポケモン!

 本来ならばこの世界のカントー地方(1990年代の資格取得規定において)、ポケモン捕獲の資格は「満10才の誕生日を迎えた年の4月」からである。そのため本来であれば、現在7才の俺達は2年はポケモンを捕獲出来ない。

 ……だがその制度には抜け穴がある。やむを得ずポケモンを保持する必要性が認められれば、捕獲権限を持つことができるのだ。特に俺とミィは研究者としての立場をもらっているため、今回は研究者権限でポケモンを捕獲させて頂こうという運びなのである。

 まぁ、借りることもできるんだけどさ。俺がオーキド博士のポケモン借りても言うこと聞かないし。

 ちなみに現在の「ポケモントレーナー」は、ぼんぐりボールを使用しているのがほとんどだ。しかし、ポケモンバトルという娯楽制度自体は既にかなり広まっている。この調子で広まれば、全国的・国民的になるのももうすぐだろう。

 ……ほんとに遠回りだったな。まあそんなわけで、つまりはポケモン捕まえようぜということだ! さて、どこかな野生のポケモンっっ!

 

 

「うし。じゃあミィのポケモンを貸してもらってと」

 

「まぁ、良いけれど。なにを捕まえるのかしら」

 

「うーん……何でもいいんだけど」

 

 

 と言うと、ミィは自分のボールを持ち上げ、中にいるコイルを見る。つか、コイルて。鋼っていうタイプは優秀だと思うけど、カントーにいる間は最終形態であるジバコイルになれなくないか。気に入ってるみたいだし、無機質無性別なポケモンからは妙に懐かれているから良いんだけどさ。

 等々、いつも通り思考を電波に飛ばしていると。

 

 

 《ガサガサッ》

 

 

 遭遇アピール来た!

 と、早急に音のした方向へと振り向く。すると、だ。

 

 

「ポッポー!!」

 

 

 うわ、まじでポッポだよ鳴き声!

 ……そういえば出た瞬間鳴き声出すって、なんか名乗り上げみたいでカッコイイよな。野生動物としてどうよ、とは思うけど。

 

 

「ほいよっと、そんじゃあバトルからの捕獲と行きますか!」

 

「私が、出すんだけれどね……お願い。コイル」

 

 

 ありがとどうも!

 お礼も束の間、ミィはやたら覇気のないポーズで白色のボールを前へと投げ出す。

 

 

「キュー↓ イー↑」

 

「ッポーッ!」

 

 

 鋼の体に左右の磁石。不動の人気ポケモン、コイルの登場である!

 さてはポケモンバトル。俺の目の前で、コイルがポッポに向かって加速していく。

 

 

 ――《ズガッ!》

 

 

 鈍い音がしたあと、ポッポがよろける。だが、コイルも多少よろけ飛んでいるようだ。今のは……『たいあたり』の打ち合いになったのか? ……分かりづらい!

 低レベル帯のため電気技もないものなー。倒されても困るんで、ありがたいのだけれども。

 ちなみにポケモンはバトルで倒してしまっては捕獲することは出来ない。当然だが、ここはゲーム準拠なのである。詳しい仕組みを言って仕舞えば、ポケモン……ポケットモンスターという種族を捕獲する際には、「弱ると体が小さくなる特性」を利用している。この特性を100%引き出すのに必要なのがモンスターボール、もっと言ってしまえば捕獲ネットの持つ機能なのだが……いかんせん、HPが減り切ったポケモンは「きぜつ」状態となり、この特性を発現しなくなってしまうのである。

 だからまぁ、ゲームの通りに弱らせる必要があるんだよな。とか何とか脳内解説を悠長に挟んでいると。

 

 

「ッポー!?」

 

「キュー→」

 

 

 何度かの「体当たり」が交わされた。俺とミィにはゲームで培った「体力勘」があるので、ポッポが「ひんし」に追い込まれているのはよくよくわかる。まぁ、知らなくても明らかによろめいているから判るんだどなこの場合。

 

 

「捕まえるのかしら」

 

「おう。ボール投げるんで、コイル下がらせてくれると助かる」

 

 鳥ポケモン好きだし。ピジョットはモフモフしてそうだしな。というか最初のポケモンに貴賎なんてあるわけないし。楽しみ過ぎるし! 早目にポケセン連れてってやろうな!!

 またまた因みに、現在はポケモンセンター施設も各主要都市に建設途中。それでもカントー地方およびジョウト地方全域にそれらを配備する決定権限があるだけでも、カントー地方の先進ぶりが窺えると思う。ポケモンバトルに関するインフラを、本気で揃えてやろうという強い意志を感じるよなぁ。とはいえ、タマムシシティとヤマブキシティだけは大都会だけあって、ずいぶん前からポケセンは配備されているんだけどな。

 さて。俺が捕まえる意を伝えると、ミィはコイルに下がるよう指示してくれたようだ。スペースが開く。ポッポが着地した今の内!

 俺は素早くポーチの中の着色されていない白の試作品ボールをつかみ、ワインドアップで振りかぶる。 ワインドのせいで素早くボールを取り出した意味が無くなったが! ああ、野球は大好きだとも!

 

 

「そー……ら!」

 

 

 ボールを投げるとシュルルル! と妙に良いバックスピンがかかって飛んでいき、当たり……ボワンと音がした後に、ポッポがボールに入った。まずは成功。

 ポッポを収めたボールが地面に跳ね、今度は揺れ始める。

 

 

 ……1度……出るな……。

 

 

 ……2……出るなよ……!

 

 

 ……3……「ああっ」と隣で声をだすミィ。出てませんー。

 

 

 ……《カチッ》。

 

 

 ボールが完全に閉まった音が響く。ということは……

 

 

「しゃあ! 捕獲っ!」

 

「おめでとう……ショウ」

 

 

 駆け寄ってボールを拾い上げる。これが俺の初ポケモン! 全国的に見ても珍しさはないポケモンだけれど、それはそれとして嬉しいもの!!

 んーっとニックネームは……と、頭の中でまとめ、改めて喜びを噛み締める。ボールを覗き込み……良い! ポッポ! 小鳥ポケモン! かわいさとかっこよさを持ち合わせた感じとか最強!!

 さぁ、ポケセンに……と、その前にミィにお礼をしようと思うんだ。代わりに戦ってくれたしな。そう思って隣のミィを見ると、じっとこちらを見上げているみたいだ。

 

 

 ……。

 ……なんだろうな、この間。

 

 

「……ゲットだぜ! とか、言わないの」

 

「言わないなぁ!!」

 

 

 人前でやると恥ずかしいだろうが! あれ!!

 あと人さまのを丸パクリは良くないと思いますっ!

 

 

 




2020.11.16 だいぶ改訂



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